〜オッサンVS幼女 その5〜

初出スレ:6代目100

属性:男(34歳)×少女(9歳)





さらわれた幼女を助けに行く道程で、
あろうことか自分より年上であろう同性の中年に萌えるという禁忌に触れかけたりもしたけれど、
私は元気です。



無尽蔵に湧いてんじゃないのかと思わんばかりの量で襲いかかる雑魚敵軍団を
ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
夜明けの光を背に受けながら、目的地までひたすら突き進む。
気付いたら徹夜まっしぐらで戦っていたわけだが、気にせずガンガンいこうぜ作戦を維持。

ここまでテンションが保つのも、直前に多少なり酒を入れたせいだろうか。
拳が鈍ってなきゃいいが。
まぁ途中で鉄パイプ拾って、それ武器にしてるんだけどな。
最後まで全部素手ってのもしんどいし。
終わったらあのチビデブ紳士にたんまり返礼を要求してやる。

とは言え隣で一緒に戦ってくれているデカいオッサンの方は、ずっと素手なんだが。
でもさっき取っ組みあった感触からして、あのグローブ何か仕込んでたような。
そういや向こうも徹夜だよな。
身体に障ったりしないのかねぇ、そこん所大丈夫なんだろうか。

アホみたいな強さに物を言わせて、終始無表情で目のついた獲物を片端からドツき回すやっこさんに、
そんな下らん心配はかけるだけ無駄か。無駄だな。

オッサンと共闘とは言いつつも、お互い好き勝手に共通の敵をボコっているだけのような
微妙な距離感を保ちつつ、目的地に大分近付いてきていることを認識する。






たまに有象無象の雑魚共とは一味違う奴が紛れ込んでいる。
部隊長、とでもいった体の。

「…やれやれ。」

薄汚れた軍服を纏った男が倒れ伏しているのを、見下ろしながら呟く。

「あんた結構強かったぜ。」

なんか無暗やたらに動きが素早かったのを振り返りつつ。
いやほんと無駄に強くて困ったわこやつ。燃えたが。
何にせよ目で追いきれない範囲じゃあない。



「しっかし、何でまた軍人崩れがこんな所で。」

大分形が歪んできた鉄パイプを肩に担ぐ。
そろそろ新品に取り換えようかな。
…とか何とか言ってると。

「…そのまま返させてもらうぞ、その台詞。」

返答をもらった。
まだ意識あったのかあんた。

「そんな『剣術』、どこで磨いたんだかな…。」

なかなか下らんことを突っ込んでくる。
しかし、既にまともに起き上がることもできなくなった相手にまで、
わざわざ止めをくれてやる必要も無いか。

「さぁな。自分で考えな。」

そのまま軍人崩れのたわ言を華麗にスルー。
とりあえずこの面はクリアだ。
ようやく辿りついた連中の本拠地…最終面にブッ込むとする。

オッサンは…先行っておっ始めてるのか。
さっさと引き続く。



廃ビル内を上へ上へと駆け上がる。
連中が「ここまで来てね☆」と書き残した場所はここで合ってたはずだが、
無駄に静かだ。敵の姿が見えん。

と思ったら最上階ちょっと手前でいっぱい待ち伏せてらしたんですがね。

ああこの奥に最終ボスがいるのかな、と思って戦闘開始したら
ちょっと間を置いて下の階段、つまり俺達の後ろからも何かいっぱい押し寄せてきた。

「挟み撃ちか。」

小賢しい真似を。
そこそこ高い階層でこれやったのは逃げ場を封じるためか。

「気に食わんな。」


オッサンが忌々しげに吐く。
あんたは最初っから終始、連中に対して気に食わなさげだったけどな。

「後ろを引き受ける。」

「あ?」

俺の確認を取るより早く、オッサンは方向転換して、背後の増援の方に向かって行ってしまった。

おいおいオッサン。
伝統のツンデレ芸「勘違いするな」に引き続いて、
お次はまさか伝家の宝刀、「ここはオレに任せてお前は先に行け」を抜き放つ気か。
あんたは一体どこまで俺に惚れてるんだ。

「…仕方ねぇな。」

あそこであんたと共に戦う流れになったのも何かの縁だったんだな。
オッサンよ…
お前の遺志は…無駄にはしないッ…!!



まぁあの馬鹿強マッスルが死ぬ心配なんてぶっちゃけ一切してないんですがね。
俺も自分が死ぬ心配なんて全くしてないのと同様に。



前面の雑魚軍団だけを切り開いて更に突き進む。
ボスはどこだ、ボスは。

雰囲気を重視して扉を蹴り破る。
部屋のド真ん中に一人だけ佇んでいた。
いた、ボスいた。
貴様くァーッ貴様が皆ウォォォォッ。

「よォ。」

「…よォく来なすった。」

でもとりあえずは挨拶から始まる俺達。

けったいなロングコートを身に纏って大ボスの風格を演出したがっているこの男は、
俺よりいくらか若いようだ。
20代末ほどに見える。
何だ、親父の後でも継いだばっかりなのか。
雑魚を侍らせず、一人だけで待ち構えていた気概は認めてやらんでもないがな。
ジュースでもおごってやろうか。



「早かったなオイ。昨晩おっ始めて午前中には到着かよ。」

「あんたらが寝かせてくれねぇもんでな。」

ほんとどうしてくれんだこの寝不足。

「安心しろ、今寝かせてやる。」

「そちらからお先にどうぞ。」

大ボスさんは手元の長袋から得物を取り出し―――ってオイ。

その刀は。

「なに得意げに人のもん握ってんだ。」

「そんな大事なもん置きっ放しにしてた奴の言葉かァ?」

我が秘蔵の得物はこの痴れ者の手に渡っていたようだ。

よし、決まりだ。
いや最初っから決めてたけど。

「潰す。」

「上等ォッ!!」

右手親指で首の手前を掻っ切る動作にて挑発する。
奴は抜刀後、鞘を投げ捨てて襲いかかって来た――コラ鞘を粗末に扱うな。



「はッ!!」

正面から振り下ろされる。身体ずらして回避。

「らァ!!」

斜め上に薙がれる。屈んで回避。

「だッ!!」

横薙ぎで振り回される。下がって回避。

「ンのやろッ!!」

顔面に突き出される。首ずらして回避。

「…!!」

辺り構わずブンブンブンブンと。回避回避回避回避。

「………!!」

回避回避回避…。



「やる気あンのかてめぇ!!」

叫び散らしながらも手は休めてくれないが勿論全回避。
髪の毛に掠らせもしないぜ。

「オラオラどうした当ててみろやオラ。」

真後ろに下がり過ぎて壁際に追い詰められたりしないよう、
後退時にやや斜めに角度を入れておくことで、部屋中グルグル回り続ける形にする。

「だァらッ!!」

すかさず回避。

まぁ俺の自慢の硬くて太い…じゃなかった。
厚くて重い長刀を、気軽にブルンブルン振り回す腕力だけは褒めてやってもいい。

「下手くそー。」

「ンぬァァァ!!」

当たらなければどうということはないが。

「一撃も当たらなくてねぇどんな気持ちねぇねぇどんな気持ちッ!?」

「クソがッッ!!」

挑発にキレたらしく大上段に振り被った、
その
瞬間を
逃さず―――

「はいィァッ!!」

手首に強振を叩き込んだ。

がっ、とか呻き声が上がる。
堪らず手元から吹っ飛んだ刀は、後ろの方をガラガラ転がっていく。
物の見事に奴の大攻撃の出鼻を挫いてやった。

いやそんなことより…我が愛刀は無傷だ、よしよし。

「痴れ者が。」

手首をものっそい痛がっている大ボスさんを見下す。
そりゃあもう見下す。



「武器一つ手にすりゃ強くなれるとでも思ったかぁ?」

残念だったなぁ。
それだけで実力が上がるんなら、俺ここまで苦労してねぇよ。

「手前の軍人崩れの方が、あんたよか強かったぞ。」

アレ相手には攻撃全回避といかなかったからな。

「…黙れ…!!」

「どうせその地位も親の七光りなんじゃねーのかぁ?」

「だァァまァァァルェェエエエァアッ!!」

右ストレート襲来。

左で捌いて。

右ボディブローで反撃して。

「ばッ…!!」

左アッパーで、

天井まで、

飛べッ。



「はー……はー……。」

吹っ飛んだ勢いで天井に突き刺さってそのまま落ちてこなくなる…
とまでは流石にいかず、天井を軽く凹ませながら跳ね返って落ちてきた。

狙ってたんだがな。まだパワーが足らんか。
それとも鉄パイプ握りっ放しで拳部分だけ当てるアッパーはちょいと無謀だったか。

ところで親の七光り、は図星だったのかしら、あのキレ様。

「立てよ。」

さておき。
大ボスさんは会心の二連撃を貰いながらも、まだ意識を保っていらっしゃった。



「はぁー…クソが…!!」

ガッタガタの体を何とか起こしなさる。
脚にもきているようだ。

「うちの娘と…あと何かちょっと小柄でふくよかな紳士からさらったっつー娘はどこだ。」

「うるせーよ…。」

答えない気か、生意気な。
俺の得物に気安く触れた時点で十分、この上無く生意気だが。

「手ぇ出してねえだろうな?」

「ガキはあくまで、テメー誘う餌だ…傷もんにするような真似はしてねぇ…。」

ほう、いい心がけだ。

「こっちにも…はー…最低限の面子はある…。」

「拉致なんかしといて何が面子だコラ。」

「ぐッ…!!」

そんな悔しそうな顔したっておじさん許しませんよ。

「そういや紳士の娘の方は何でさらったわけ?」

「あ、そっちはちょっとオレ好みだったんで。」



ああ、そう。

あれ、何を顔を赤くしてるのかな。



「どゥるァァァアアアアアアアアッ!!」

「させるかァァッッ!!」



最後の一撃が交差する。

立っていたのは。

無論、俺。



ファイナルファイト〜ダブルマッスルおじさんがいく!編〜完ッッツ―――!!



一応言っておくが、大ボスさんは壁を凹ませるぐらいにブッ飛ばす程度で済まして
高層階から叩き落としたりはしていない。念の為。





我が秘蔵の愛刀を拾い上げ、鞘も拾って納める。
やれやれ、まさかコレまで盗まれるとは。

…元はと言えば、あいつと一緒に過ごすようになってから、
自分の手を汚す様を見せるのが嫌で封印したんだったか。

あいつが持って行かれたのに気付いた瞬間は、
思いっきりコレで百人斬りに行く気満々になってたからなぁ。
結果的にはこっちも無くなってたおかげで…殺しをせずに済んで、良かったのかもしれん。

さて。
後はあの最後の扉を開けるだけか。

ガチャっとな。

「あ…。」

簡素な部屋に、女の子が、二人。

「おじさん!!」

「おう。」

会いたかったぞマイスイートプリンセスもといド腐れビッチ。
体当たりでもかますかのように抱きつかれたが、その反応は全くもって想定範囲内だ。

柔らかい頭髪を撫でておく。
昨日の晩から本日昼前まで、よく考えれば別に大して時間も経ってないんだが
こいつに触られ、触ったのが随分と懐かしい感触に思える。

よしよし、言ってた通り外傷とかは見当たらないな。

で、だ。

「そっちは…。」

俺が来るまで、こいつが抱きついてた向こうの女の子は、と。

「…助けに、来てくれたんですか?」

改めてその姿を観察する。
ややあどけなさが残るも、成長はある程度終えた少女…16,7歳ぐらいだろうか。
しかしそんなことより、粗末な衣服の下になかなかとんでもない物を二つ抱えているのが
明らかに見て取れることの方が重要だろう。
しかも別に腹がだらしないわけでもない。
更に下を見ると臀部もまぁ、そこそこな。
やだ…何そのバディ…。

囚われのお姫様ってこうあるべきじゃないのか、としみじみ思わされる。
こんな色気の無い体型の幼女じゃなくて。

成程、おっちゃんが言ってたように悪い虫つくのも仕方ないんじゃないの。


「あんたの父親に頼まれてな。」

「え…父親?」

「娘をさらわれたから助けて欲しい、って。」

こいつを助けるついでだが、と付け加えつつ。
…しかしこの少女は、父親という単語に対して何やら訝しげだ。

「親父さんじゃないのか?あの、ちょっと太ったおっちゃん。」

「それは…違います!!」

何故か怒られる。
うんまぁ、確かにおっちゃんとこの子全然似てない。
それとも母親似なのかね、と思いきや。

「私、あの人の所から逃げてきたんです!
 そしたら、ここの人達に捕まってしまって…。」

この口ぶりからして、親子関係ですらないのだろうか。
じゃあ何故あのおっちゃんは娘とか言ったんだ。

「…なぁ君。一体何があったわけ?」

これは詳しいことを聞いておかねばなるまい。

「それは、あの…。」

言いあぐねている。
よっぽど嫌な思い出でもあるのか。

「…うっ…。」

しかも泣き出した。
おいおい。
そんなにやばい事情なのか。

「…どういうわけ?」

俺の腹筋に顔をすり寄せるこいつに振ってみる。
…どうでもいいけど結構汗かいてるんだが、それでもくっつきたいのかお前。

「あのね、この人ね。」

お、何か聞いてるのか。

「しょうふ、っていうお仕事してたんだって。」



…娼婦?

〜まだまだ続く〜





関連ページ/〜オッサンVS幼女 その4〜 / 〜オッサンVS幼女 その6〜 /


2012年03月09日(金) 17:11:36 Modified by ID:2C3t9ldb9A




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