青年×少女

初出スレ:3代目622〜

属性:青年×少女









「ねぇ。ひめはじめって何さ?」
「…………は?」

 突拍子もない少女の問いに、青年は耳を疑った。

「だーかーらー、ひめはじめ!」

 どうやら聞き間違えた訳ではなかったと理解すると、
まず彼は一呼吸おいて自分を落ち着ける。

「誰から聞いたの」
「言っちゃダメって言われたから、ナイショなのさ!」

 シーッ、と言うと、
少女は立てた人差し指を自分の唇に当て、
ニコッと青年に無邪気な笑顔を向けてくる。

 きっと少女は、『ひめはじめ』の意味など予想だにしないどころか、
その意味する行為すら、よく分かっていないだろう。

「はぁ……」
「そんなことより、意味教えてよ!」

 ため息を吐いた青年の気持ちなど、少女が分かる筈もなく
少女は青年に抱きついて、まっすぐに彼を見上げた。

「うーん……ひめはじめって言うのは、大人の秘密だから
お子様には教えられないんだ」
「ええーっ!? そんなぁ!」

 青年は少女に微笑むと、少女の真似をするように、
唇に人差し指を当てて首を傾げてみせる。

 少女は如何にも不満というふうに青年を睨んで、片方の頬を膨らませた。

「でも私、もうお子様じゃないもん!」
「お子様じゃなくても。
お酒の飲めない歳の子はダメなの」

 青年が言うと少女は俯いて、うううと唸り出す。
本当は知りたいのを、懸命に我慢しているようだった。

「そう膨れないの。
大人になったら、ちゃんと僕が教えてあげるから」

 言って、青年がクスクス笑いながら頭を撫でてやると、
少女は拗ねた目をして青年を見る。

「本当?」
「本当だよ」
「嘘つかない?」

 少女がまだ疑いの目で見てくるので、
青年は、自分の背に回されていた少女の腕を離すと、
少し屈んで、自分の手の小指と、少女の手の小指を絡めた。

「じゃあ、指切りしよう。そうしたら忘れないよ」
「……うん!」

 すると、少女は今までの拗ねっぷりが嘘のように、
嬉しそうな笑顔で頷いた。

「じゃあ、ご飯の支度でもしようか」
「私も手伝うー!」

 そうして、少女は青年と仲良く手を繋ぐ。

 だがしかし、この時の青年の笑顔は
少女のように真っ白ではないのであった。







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2009年04月29日(水) 08:02:04 Modified by ID:FwU9VR1qOQ




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