6代目225小ネタ

初出スレ:6代目225

属性:男(35歳)×女(20歳)



「さぁ、責任を取ってくれますよね!」

 バンと勢いよく卓を叩きながら、曜子は俺を睨んだ。
 綺麗に切りそろえられた前髪の下では、キリリとしたどことなく男前な瞳がまっすぐに俺を見つめている。

「今更、アレは冗談でした〜なんて言わせませんよ」
「ええと、何と言うか」
「ソレともなんですか? おじさんは自分の言動に責任が持てないと、そう仰るおつもりですか」
「そんな事は無いが……」
「じゃあ、ココに判子を押すのはおじさんの義務ではないですか」 

 そういいながら彼女は俺に一枚の紙を突きつける。
『婚姻届』
 今までの俺の人生に置いて、これっぽっちも縁が無かった言葉が印刷されているソレには、既に欄の半分が記入されていた。

「私、おじさんとの約束を守りました。始めてあった10年前から、成人する今日この日まで。
 おじさん10年前に言いましたよね? 私が結婚してくれと言った時、もし私が成人するまで一度も彼氏が出来ずに、キスはおろかデートの経験すらない
惨めな人間だったら、惨めな者同士結婚しようって!
 だから私、当然処女です! デートの誘いも、付き合ってくれって言う告白も全て断りました! 勿論キスなんて夢の中のおじさん意外とした事なんてない
ですし、男の子と手をまともに繋いだ事もありません!」
「いや、だから、俺が言ったのは、曜子ちゃんだったらそんな事にはならないから、結婚はまず無理だよって言う――」
「当時の私はそう解釈しました! 身持ちの硬い女になれと、そういう意味なのだと!」
「えぇ〜……」

 フンスと鼻息荒く詰め寄ってくる成人したての小娘に対し、今年で35になろうというおっさんの俺はといえば、しどろもどろに後ずさるのみ。
 ドンと背中に衝撃。壁だ。追い詰められた。

「私がどれだけこの日を待ち望んでいたか、わかりますか?」
「いえ、その……スミマセン」

 追い詰められ、吐息が顔に掛かるくらい接近され、目を反らす訳にいかず、改めて曜子を見る。
 昔の俺の読みは当たっていた。俺がもし今より10歳若く、俺とは思えないほどの行動力と勇気があったならば、声を掛けずには居られない女がそこに居る。

「歳を一つ重ねる度に、ベッドの上で悶えるんです。歳を重ねる毎にいろんな知識が備わって、想像が豊かになるんです。こうしておじさんの部屋に遊びに来た
日は決まっておじさんの夢を見るようになるんです。夢の中で、おじさんと色んなHなことをしようとして、恥ずかしくなって何も出来ないまま目が覚めて、
夢だったのなら――せめて夢の中で位!って何も出来なかった夢の中の自分を恨むんです!」

 曜子の目は本気と書いてマジだった。

「三ヶ月前くらいからはもうずっと、カウントダウン状態で……正直に言うとココ三日くらいまともに眠れて居ません」
「……」
「それくらい、想っているんです。今更、おじさんの事を忘れることなんて出来ません」

 そう言って、曜子は俺に抱きつき、俺の胸に顔を埋めた。
 先ほどまでとは打って変わって弱弱しい、震える声で曜子は言う。

「だから、責任を取って下さい。おじさんが今日まで誰とも結婚しなかった責任を。私に、おじさんを諦める切欠をくれなかった責任を――」
「曜子ちゃん……」

 俺は彼女を抱きしめ返し、耳元で囁く。

「分かった。責任は取らせてもらう。……だから、俺なんかを選んだ事を後悔しないでくれよ? 俺は、ソレが一番怖いんだ」
「後悔なんて、そんなことする筈が無いじゃないですか」

 顔を上げ、涙で目を赤くした曜子が笑う。

「私だって、今までデートすらしたことが無いんですよ? 今おじさんと結婚できなかったら、その後一生、結婚なんて出来る機会が現れる事なんてないんですから!」




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2012年03月09日(金) 18:20:01 Modified by ID:2C3t9ldb9A




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