最終更新: treeseminar 2008年08月06日(水) 02:21:15履歴
安部 淳 Jun ABE
岐阜大学大学院 応用生物学研究室 学振PD
要旨
単独性の狩りバチやハナバチの寄生バチであるMelittobia (ヒメコバチ科)は、極端な雌偏向性比(雄率1~5%)を示すことが知られている。本属の雄は羽化した寄主上からまったく分散せず、同じ寄主から羽化した雌雄どうしで交尾が行われる。このため、兄弟間の競争を避けるために、性比が雌に偏っていると考えられる(局所的配偶競争理論;Hamilton 1967)。しかし、この理論では、複数の母バチが同じ寄主に産卵する場合に性比は50%に近づくと予想するのに対し、実際の性比は母バチ数によらず極端な雌偏向のままほとんど一定した。この性比パターンは、局所的配偶競争理論やこれまで提出されている他の理論を組み合わせても説明することはできない。
そこで、まず本属で特徴的に見られる雄間闘争に着目した。雄成虫は羽化後殺し合いの闘争を行うが、この闘争で遅れて羽化する雄は圧倒的に殺されやすいことがわかった。このため、複数の母バチが同じ寄主に産卵する場合であっても、殺されやすい後から羽化する雄を産むのを避け、局所的配偶競争理論よりも雌偏向性比で産んでいると考えられる。雄間闘争の効果を組み込んだ動的ゲームモデルでは、実際の性比や雌雄の羽化パターンに定性的に合う結果が予測された。さらに、本属の雌偏向性比に対する別の要因として、同じ寄主に産卵する母バチ間の血縁関係も考えられる。もし、彼女達の間に血縁関係があるのであれば、血縁のある息子どうしの競争を避けるため、性比は局所的配偶競争の予測よりもさらに雌に偏ると予測される。この効果と実際の Melittobiaの生活史との関係についても検討し、今後の野外調査の研究計画についても触れる予定である。
*セミナー終了後に懇親会を予定しております.奮ってご参加下さい.
2008年5月17日ポスター
このページへのコメント
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