第37回TREEセミナー予告

6月21日(月)16:30 〜 18:00
場所:東邦大学理学部5号館5210教室(東邦大学理学部へのアクセス

生物多様性情報と生態系管理

三橋 弘宗 Hiromune Mitsuhashi
兵庫県人と自然の博物館

要旨
今年10月に名古屋で開催されるCOP10において「生物多様性条約ポスト2010年目標」の採択が予定される。この目標では、これまでの抽象的な表現とはちがい、具体的な数値目標を盛り込んだものが提案されている。生物多様性国家戦略2010をはじめ、各地の自然再生計画や戦略的環境アセスメントさらに地方自治体等の各種公共事業においても、数値目標を設定した生態系管理の推進が期待されている。しかし、これらを施策として体系的にとらえ、実現可能なフレームワークとして提示した実践事例は、国内にはほとんどなく、その方法論についても十分な整理が行われていない。
一方で、地球規模での生物多様性観測の目的から、各地の生物多様性情報を統合する枠組みとして、GBIF(global biodiversity infomation facility)やGEO-BONといったプロジェクトが始動している。特にGBIFでは約2億件のデータが公開されており、近年になって、博物館や地方公共団体、NGOの努力によって、数多くの生物多様性情報が整備され、国内外の学術誌においても引用されるようになった。さらに、これらの情報を活用して、野生生物の生息適地モデルの構築やホットスポット評価が試みられている。しかし、この成果を生態系管理に実務的に反映させる方法論や、行政施策として数値目標を設定する方法論は未だ発展途上であり、多くの場合は「努力の仕方が分からない」評価研究となっている。
今回のセミナーでは、生物多様性情報を解析して、その成果を生態系管理の計画論に反映させる方法論と実践事例について、兵庫県におけるいくつかの事例をもとに、保全生態学の理論を交えて解説する。次に、生態系の評価だけに終始するのではなく、他の計画との整合を踏まえ、実現可能な保全・再生対策の数値目標を位置づけた計画論として、現在審議中である武庫川水系河川整備計画について紹介する。武庫川水系河川整備計画では、環境に関する2原則として、「流域内から種の絶滅を引き起こさない」、「優れた環境に関する総量を維持する」といった方針を定め、これを実現するための複数の指標を定めて数値目標の設定を行った。これまで蓄積してきた生物多様性情報を活用し、地図として生態系評価を行い、大規模な自然再生や環境配慮事業の適正配置を法定計画として位置づけた。さらに、こうした生態系管理計画の実現可能性を担保するための戦術として、市民が参画できる小規模な自然再生についても紹介し、生物多様性情報の蓄積、解析、施策化、グランドワークといった一連の事業を推進するうえでの自然史系博物館の果たす役割について論じる。

ポスター:第37回ポスター

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