第38回TREEセミナー予告

6月22日(火)17:00 〜 18:00
場所:東邦大学理学部5号館5210教室(東邦大学理学部へのアクセス

形態的斉一性に隠された多様性−極端な幼形進化的シラスウオ科魚類と始原的脊索動物ナメクジウオ類における分子系統解析

昆 健志 Takeshi Kon
東邦大学理学部・生物学科・系統分類学教室

要旨
地球上の生物多様性の形成プロセスを理解することは,進化生物学の最大の問題の一つであるばかりでなく,合理的な自然保全・管理を考える上での重要な基礎となる.近年,分子系統解析の発展と普及によって,様々な動物分類群に多くの隠蔽種(形態的に判別の出来ない種)の存在が知られるようになった.これらは生物多様性の見積に大きな影響を与えると予測され,特に未発達な形態を示す小型または幼形進化的なグループでは,非常に多くの隠蔽種が発見されている.このようなグループは,熱帯・亜熱帯域を中心に数多く知られていて,特にこの地域における生物多様性を理解する上で無視できない存在であると考えられる.今回のセミナーでは,それら隠蔽種の研究例として,(1)極端な幼形進化を示すハゼ亜目シラスウオ属魚類と(2)始原的脊索動物であるナメクジウオ類について紹介する.
(1)シラスウオ類
ハゼ亜目シラスウオ科シラスウオ属は,インド−太平洋のサンゴ礁池に分布し,脊椎動物の中でも最も早熟(平均37日,10世代/年)で最も小さなサイズである極端な幼形進化を示す魚類である.シラスウオ類には形態的に3種が知られていたが,琉球列島および小笠原諸島で得られた多数の標本で,ミトコンドリアDNAの16SrRNA遺伝子を用いた分子系統解析をした結果,非常に多くの隠蔽種 (21種:Schindleria spp. 1 ~ 21)が含まれていることが明らかになった.さらに海外産の標本から新たに7種が発見されるなど,本属の隠されている多様性が非常に高いことが明らかになりつつある.現在,私たち研究グループは,その多様化パターンとプロセスの解明を試みている.
(2)ナメクジウオ類
ナメクジウオ類は,世界の熱帯から温帯域を中心とした浅海域に広く分布する3属約30種からなる分類群であり,これらは全ゲノムによる系統解析から脊索動物門の中で最も始原的であることが明らかになっている.ナメクジウオ類に,進化生物学的研究に良く用いられているモデル生物のBranchiostoma floridaeなどが含まれているが,本分類群の系統枠の全体像は得られていなかった.そこで,私たちは世界的なサンプリングを行い,ミトコンドリア全塩基配列を用いた分子系統解析による頑健な系統樹を再構築してきた.さらに,この系統枠の中にDNA データベースに登録された多くのミトコンドリアDNAの部分塩基配列をsupermatrix法によって取り込むことにより,形態的に斉一なナメクジウオ類における隠された多様性の実体を明らかにすることを進めている.

ポスター:第38回ポスター

このページへのコメント

AiNwUx I value the blog post.Really thank you! Cool.

0
Posted by check it out 2014年01月21日(火) 20:27:01 返信

ueNoT2 Great, thanks for sharing this post.Really looking forward to read more. Will read on...

0
Posted by watch for this 2013年12月20日(金) 06:11:56 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

管理人/副管理人のみ編集できます