第57回TREEセミナー

7月26日 (木曜日) 17:00 〜 18:00
場所:東邦大学理学部5号館2階5210教室(東邦大学理学部へのアクセス

飛べなくなった甲虫で促進される種多様化

池田 紘士 Ikeda Hiroshi
(森林総合研究所 森林昆虫研究領域 昆虫生態研究室)

要旨
昆虫は非常に種多様性の高い分類群であり、これまでに100万種近くが知られている。
この昆虫において約4億年前に生じた飛翔能力の獲得は、様々な地域やハビタットへの分布拡大を可能にし、
昆虫の初期進化における種多様性の増加に大きく貢献したと考えられている。
しかし、飛翔器官の形成及び維持には多くのエネルギーが消費されるため、様々な分類群で飛翔能力の退化が生じている。
飛翔能力の退化は分散能力を低下させるため、これが退化した種では個体群間の分化が生じやすい。
そのため飛翔能力が退化した系統においては、異所的種分化が生じやすいことが予想される。
甲虫目は、比較的最近生じた目であるにも関わらず昆虫の中で最も種数が多く、昆虫全体の40%を占める。
本セミナーでは、この甲虫目において飛翔能力の退化は地理的分化をもたらすのか、
これによる異所的種分化は種多様性の増加をもたらすのかを、甲虫目シデムシ科ヒラタシデムシ亜科を用いて検証した結果を紹介する。
これまでの研究により、飛翔筋の無い種の方が個体群間で遺伝的に分化しており、飛翔筋が退化した後の方が種分化率は高いことが明らかにされた。
また、甲虫目15科51種のCOI領域のデータを用いたメタ解析においても、飛翔能力が退化した種の方が個体群間の遺伝分化は大きいという傾向がみられた。
多くの系統で生じた飛翔能力の退化は、甲虫における急速な種多様化の主要因の一つとなってきたと考えられる。


ポスター:第57回ポスター

尚、セミナー終了後に1時間ほど、懇親会もございますので、そちらにも是非ご参加下さい

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