第69回TREEセミナー(2013年11月29日)
最終更新：
treeseminar 2014年04月22日(火) 16:26:43履歴
第69回TREEセミナー予定 
11月29日(金) 17:00-18:00
場所:理学部�更羇�2階5203教室（東邦大学理学部へのアクセス）
場所:理学部�更羇�2階5203教室（東邦大学理学部へのアクセス）
タイトル：寄生虫を介した森林と河川の繋がり
佐藤拓哉 Takuya Sato
( 神戸大学大学院理学研究科生物学専攻 / 神戸大学理学部生物学科)
要旨
寄生者は自然界に普遍的に存在し、全生物種の半数以上を占めるとも言われています。
このため、寄生関係の起源や進化過程、およびその生態学的役割の解明は、生態学の主要な研究課題になりえます。
例えば、寄生者−宿主の共進化過程でみられる宿主の表現型改変は、両者の相互作用に留まらず、宿主と他種との相互作用の改変を通して、群集の構造・動態や生態系機能にも影響する可能性があります。
しかしながら、理論研究の進展に比べると、実証研究は断片的なものが多く、野外生態学研究において寄生者の役割を実証する試みはほとんどなされていません。
私たちは、成熟したハリガネムシ類（類線形虫類）に寄生・行動操作されたカマドウマ・キリギリス類が、晩夏から秋にかけて山地河川に大量に飛び込み、河川の高次捕食者であるサケ科魚類の重要な餌資源となることを発見しました。
ハリガネムシ類が駆動するこのエネルギー流は全国各地の山地河川で普遍的に生じており、イワナ個体群の年間総摂取エネルギー量のおよそ60%を占めている場合もありました。
そこで、ハリガネムシ類を介したエネルギー流を実験的に抑制する大規模野外操作実験を実施したところ、魚類による河川底生動物類への捕食圧の増大を通して、付着藻類量の増加や落葉分解速度の低下が認められました。
すなわち、寄生者を介した隣接生態系からのエネルギー流が河川の群集構造や生態系機能にまで影響することが実証されました。
さらに、ハリガネムシ類とその宿主である陸生昆虫類の寄生関係には地域変異があるため、それが森と川のつながりの地域的特徴に影響している可能性もみえてきました。
セミナーではハリガネムシ類にまつわる私たちの一連の研究を紹介するとともに、生態学の進展における自然史研究の重要性についても触れたいと思います。
ポスター:第69回
尚、セミナー終了後に1時間ほど、懇親会もございますので、そちらにも是非ご参加下さい
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