呟き尾形の個人的な資料です。

孫子の兵法 19 釜底薪抽

第十九計 釜底薪抽「釜の底より薪を抽く(かまのそこより、まきをぬく)」

 三国志でも、見せ場ともいえる「官渡の戦い」でのことです。
 曹操と袁紹との間で、河北の覇権が争われた戦いだったといわれていますが、この戦いは袁紹軍十万、対する曹操軍は二万と明らかに袁紹軍が優勢でした。
 五倍の兵力の差は、局地戦で勝利ができたとしても、兵力の差は歴然としており、曹操の圧倒的な不利を生める事は出来ません。
 有能な曹操でしたが、五倍する兵力を前にしては、曹操もじりじりと後退する事を余儀なくされていました。
 そこに訪れた転機が、袁紹軍の降伏者がもたらした「兵糧は烏巣にあり」の報だったのです。
 曹操はこれを聞くや、直ちに少数精鋭を率いて夜襲をかけ、糧秣軍需物資をことごとく焼き払ったのです。
 この 烏巣の焼き討ちこそが、曹操がこの戦いに勝利できた大きな要因の一つです。
 烏巣の焼き討ちで、「官渡の戦い」の戦局は変わります。
 袁紹軍は、兵糧庫が落ちたことを聞いて浮き足立ち、内部から崩壊していきます。
 その隙をついた、曹操軍の総攻撃の前になすすべもなく、袁紹軍は、敗走の醜態を晒したのでした。

 「釜底抽薪」は、 「釜の底から薪をぬく」、字義的には煮え立った釜でも薪を取っ払ってしまえば勢いが治まるという意味です。
 つまり、問題を解決するには根本に手をつけなければ真の解決にはならないという発想が基本です。
 たとえば、ぐらぐら煮えたぎっている釜を移動させたいとき、釜は熱くて手が付けられません。
 しかし、別に釜を移動させれば言いだけの話なので、底から薪を抜き取ってしまえば湯が冷める為、容易に処理することが出来ます。
 下手に水を差して冷ますより、効果的です。

 つまり、直接的な方法だけが問題の解決ではなく、問題の根本的な原因さえ、なくしてしまえば、問題というものは解決するわけです。
 これは、相手がまともに戦っても勝ち目のない強敵にわざわざまともに戦う前に、敵の勢力を削げということを述べているわけです。
 ですから、前提は味方が勢力的に不利な状況ですから、直接攻撃することではないのは自明です。
 そのための方法として、相手の弱点に狙いをつければいいわけです。
 もちろん、可能なかぎり、容易に実行でき、効果の大きいものであることが望ましいところです。
 たとえば、下記のような方法が挙げられます。
 1・敵の補給を絶つ。
 2・兵士の士気を下げる。

 というものです。
 1の「敵の補給を絶つ」は、敵の補給を絶つは、大軍であればあるほど有効です。
 なぜなら、大軍を維持するということは、大量の補給が必要になり、補給が難しくなります。
 すなわち、大軍の弱点は補給線であるということがいえるわけです。
 さらに、補給線は、軽視されがちで、少しの戦力で実行が可能です。
 大軍と正面対決するよりも、補給線を断つことで、大軍の戦力を殺ぐことは、戦略としてはとても有効です。

 2の「兵士の士気を下げる」は、兵士にやる気をうしなわせ、組織として機能させなくなくすることで、軍の戦力を低下させるわけです。
 方法としては状況により、さまざまですが、自分達が不利であるという情報をながしたり、将軍の悪い噂をながすなど、兵士の不安を煽るような情報を流すことが多いようです。
 このように、精神的肉体的に敵を追い込むことによって、戦闘以前に戦力の均衡を図ることを目指すのが釜底抽薪だといえるでしょう。

 さて、現代においては、釜底抽薪は、どのような活用方法があるでしょうか?
 それは、ずばり、買い物術です。
 買い物において、欲しい、欲しいという気持ちが、気を焦らせ、本当は欲しくないものまで買ってしまいます。
 いわゆる、衝動買いというやつです。
 これでは、不合理です。
 この、「欲しい」という気持ちが、釜の薪になるわけです。
 「欲しい」という気持ちは、時間を置くと、本物かどうかわかります。
 時間をおいて、「欲しい」という気持ちが強くなれば、それは「欲しい」のであり、弱くなれば、ちょっとした気まぐれだったということになります。
 そして、欲しいという気持ちが大きくなったところで、じっくり調べるというステップをいれます。
 このとき、メンドクサイという気持ちがあると、欲しいという気持ちが落ち込みますが、それでも欲しいという気持ちが残っているものだけを買うようにすればいいわけです。
 そうしている間に、欲しいものでも、より良いものを見分ける力がつくわけですから、欲しいものを、より良いものとして手に入れることができるわけです。
 






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