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【定義】

嘉禎年中(1235年9月19日〜1238年11月23日)に道元禅師仏道修行に於ける用心を説示された内容を懐弉禅師が記した語録とされる。

【内容】

全六巻であり、写本によって編集が異なる。面山本にとっての六巻目が、長円寺本にとっての第一巻であり、その後の巻は全て一つずつずれている。

内容は、懐弉禅師が道元禅師と仏法に関する対話をされた内容を事細かに記したものである。修行の用心をはじめ、特に大乗仏教では持戒に関して注意を必要とするが、道元禅師は具体的で身近な例や故事を挙げ説示する場面も見られる。当時の日本仏教界を事実上支配していた天台宗で破戒の僧が横行していたともされる時代、聖と呼ばれる聖俗不分の宗教者が盛んな時代であっただけに、この議論は貴重だと言えよう。

さらに、求道心に関しては、道元禅師が日本で修行されていた際の参学師であり、後に一緒に中国へ渡った仏樹房明全和尚(1183〜1225)のこころざしは大変なものである。明全和尚は、その師である明融阿闍黎が死の床に就き、弟子に死に際を看取って欲しいとの願いを振り切って、道元禅師を連れて中国へ渡った。そして、一意専心なる修行によって中国全土に「明全あり」と名前が知れ渡った時に、突然病にかかり壮絶な死を遂げたという。道元禅師にとって如浄禅師と並ぶ師であった。それは『弁道話』に「全公は祖師西和尚(=栄西のこと)の上足として、ひとり無上の仏法正伝せり、あへて余輩のならぶべきにあらず。」とされていることからも理解できよう。

『正法眼蔵随聞記』は、当時修行の初心者だった懐弉禅師や、他の弟子達(俗人もいた)に対して説かれたもので、初心者には特に理解しやすい内容である。また、自分の修行においても指針となり、励みともなる書物である。

【撰述時期・撰述意図】 

『正法眼蔵随聞記』には、懐弉禅師の弟子の手によるものと思われる(誰かは不明)、『随聞記』成立に関する記載が為されている。なお、底本は「長円寺本」の巻末に付されたものである。
先師永平奘和尚学地に在日、学道の至要聞に随て記録す。所以に随聞と謂。雲門室中の如玄記、永平の如宝慶記。今六冊を録集して巻記仮名正法眼蔵拾遺分の内に入。六冊倶嘉禎年中記録なり。

なお、弟子達が、遺品から見つけたものと思われるため、懐弉禅師御自身は『随聞記』を公開する予定はなかったと見て良い。あくまでも自身の参学の指針とされたものだろう。

【主な異本】 

・古くから『正法眼蔵随聞記』といえば面山瑞方(1683〜1769)によって校正され、その示寂後に刊行された明和七年(1770)刊本(通称「面山本」)がその唯一であった。しかし、江戸時代初期には(面山の説によれば)教家(天台・真言宗等)によって刊行された慶安四年(1651)刊本や寛文年間(寛文九・十年、それぞれ1669・70年)刊本が存在する。

・しかし、これらより更に古く、かつ原初形態を保っていると推測される江戸時代初期の写本が大久保道舟先生の御尽力で昭和十七年(1942)に発見された。その寺院に因み「長円寺本」(愛知県)と呼ばれる。この写本そのものは寛永二十一年(1644)に長円寺二世暉堂和尚の書写であるが、奥書から原本が越前宝慶寺にて康暦二年(1380)に書写されたものであることが分かる。

・なお、東隆真先生によって、五つの写本が集められ刊行されたが、そこでは、長野県長野市にある大安寺に伝わった「大安寺本」が掲載されている。この写本は寛永十年(1633)仲春に書写されたものであり、現存写本では最古。

【その後の流布・伝播】

「長円寺本」は、おそらく永平寺にて編集・保管されていたものが宝慶寺に伝わり、それが長円寺に伝わったものである。なお、江戸時代初期の刊本が、面山の説によれば教家によって刊行されたものであり、内容からすれば、確かに禅宗以外にも用いることが可能な内容であり(戒律や世間に対する説示がかなり多いため、宗派に限定されない)、その説も肯うことができる。江戸時代以降は広く用いられたようである。

【解説書等】

●原典としては以下のものがある(他多数)
・和辻哲郎『正法眼蔵随聞記』(昭和四年、岩波文庫)
  同本は「面山本」を底本とする。現在でも版を重ねているため、新刊が入手可能。
・水野弥穂子『正法眼蔵随聞記』(1992年、ちくま学芸文庫)
  「長円寺本」を定本にし、詳細な註と現代語訳が付いている。
・東 隆眞『五写本影印 正法眼蔵随聞記』(昭和五十二年、圭文社)
  『随聞記』に関する古写本を五本(大安寺本・長円寺本・東先生所有本・駒大図書館所蔵本・大昌寺本)集め、対照したもの。なお、「影印」とあるのは、原本を写真によって掲載したもの。限定千部であり入手困難。研究者用。

●解説書としては以下のものがある(他多数)
・篠原壽雄『正法眼蔵随聞記』(昭和六十二年、大東出版社)
・東 隆眞『正法眼蔵随聞記に聞く』(昭和六十年、教育新潮社)
  ただし、この両著は容易に入手できないため、文庫本も示しておく。
・鎌田茂雄『正法眼蔵随聞記講話』(1987年、講談社学術文庫)

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