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【定義】

弁道とは、仏道修行精進することであり、道元禅師は日本に帰られた後、最初の体系的な著作として『弁道話』を著した。寛喜3年(1231)8月、深草安養院に閑居しておられたときだと推定されている(面山聞解』の見解)。末尾には「入宋伝法沙門道元」の自著がある(別本では「入宋伝法沙門住観音導利院道元」とも)。また、本来は『正法眼蔵』ではなかったが、95巻本では1巻として収録された。この経緯は、下記の【伝播】項をご参照願いたい。

【内容】

道元禅師にとってみれば、立教開宗の宣言書に相当する著作であり、内容も「正伝の仏法」が坐禅に他ならないことを示し、その坐禅弁道とは、まさに正法眼蔵が開演したものであることを示している。また、「本証妙修」や「修証一等」など、道元禅師の修証観が余すところ無く説示されているのも、その特徴である。

諸仏如来が正法を単伝してきたが、そのために自受用三昧をその正しい方法であるとされ、自受用三昧とは正身端坐に他ならないことを示している。また坐禅の功徳が詳細に説かれ、一時の坐禅であっても三世十方というあらゆる時間・空間が全てさとりを顕すともされた。

中盤以降の内容は18則の問答から成り立っており、詳細は以下の通りである。

1:仏法には多くの修行法があるのに、坐禅だけ取り上げるのは何故か?
2:坐禅だけが正伝の仏法に入る正門となるのは何故か?
3:我々凡夫祖師が行ってきた修行など知りようもない。であれば、経を読み念仏する方がまだ効き目がありそうだ。坐禅をしても空しいのではないか?
4:法華宗や華厳宗、そして真言宗などはそれぞれに素晴らしいが、即心是仏禅宗がそれより優れているとするのは何故か?
5:三学(戒・定・慧)の定学、六度(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・般若)でしかない坐禅が如来の正法を集めるのは何故か?
6:仏家には四威儀(行住坐臥)があるが、その内の1つでしかない坐禅を勧めるのは何故か?
7:坐禅とは悟りを得るための修行であるはずだが、すでに仏の正法を得たものは何を待って坐禅するのか?
8:これまでにも多くの祖師が中国に行って教えを伝えたが、正法は伝えなかった。それらの祖師が正法をさしおいて教えを伝えたのは何故か?
9:これまでの祖師は、正法を会得していたのだろうか?
10:或る者が生死を出離するのは心性常住を知れば良いとしているが、これは諸仏諸祖の教えに契っているか?
11:坐禅をする者は戒律も守るべきか?
12:坐禅をする者は真言や止観をも兼ね修めることに妨げはあるか?
13:坐禅とは、在俗の男女も行うべきだろうか?出家者だけが行うべきだろうか?
14:出家者が集中的に坐禅するのは可能だが、在俗でわずらわしい世事に関わる者がひとすじに修行することなど可能だろうか?
15:坐禅修行によってであれば、この末法の世であっても正法を得ることが出来るのだろうか?
16:即心是仏の教えを理解すれば、我々がまさに悟りの存在であることが分かるのだから、坐禅など不要ではないか?
17:中国やインドでは、さまざまな因縁によって悟りを開いた者がいるが、それは坐禅修行と関係ないのではないか?
18:インドや中国の人は、非常に性格が優れているが、我が日本人は性格の劣った者が多い。そのような者が坐禅して悟りを開くことなど出来るのだろうか?

なお、岩手県水沢市正法寺に伝わる写本では、第4問答と第5問答の間に、「法華教・真言宗・華厳教などの諸宗派にあってはそれぞれに「教主」が立てられているが、現実に生きた釈尊や摩訶迦葉はそれらに及ばない存在ではないか?」という問答が入り、19問答になっている。これは、道元禅師の「本尊論」「教主論」に関する重大な問いであり、今後の研究の指針ともなるものである。

【伝播】

『弁道話』は本来『正法眼蔵』の一巻として書かれたものではなく、道元禅師の時代に編集されたという75巻本、12巻本、60巻本、そして余りの28巻本などには入っていない。さらに後に永平寺で書写された梵清本(84巻本)でも入っていない。その後、『正法眼蔵』に組み込まれた経緯は、次のように指摘されている。
師云く、先づ此の弁道の話の縁起を云へば、もと正法眼蔵の中に編み入たは、近年の月舟卍山の頃のことじや。夫れ故に、懐弉禅師の品にも、義雲和尚の品にも、載って居らぬ。此の話は興聖未開の先き深草御住庵の時き寛喜辛卯の仲秋祖師の御齢卅二歳の時の御撰述なり。根本の出処は公家の菊亭殿と云ふ処に高祖御真筆の弁道話を秘蔵して宝庫に納め置かれしを其の菊亭殿雑将に志しある家老が有つて出家を願ひ、法名は喚応祖三と云うた人が此の弁道話を望んで宝庫より願ひ下して書写せらる。能書故に籠字に写し取つて、後から墨を入れて大切に所持するを、月舟和尚の方便を以て借り出し、片仮名に書して所持せらる。自分も近年不思議の因縁が有つて、祖三所持の品を貸り書して所持して居る。平仮名じゃ。元菊亭殿は祖師の御親族故に宝庫に弁道の話を秘蔵せらる。此の弁道の話は深草の安養院にての御撰述にして、山城名跡志巻十三に云、当時は初め禅宗道元和尚の所開、中比は真言、近世は改浄土とあり。 『正法眼蔵聞解』「弁道話」巻

ここからは、京都の公家の屋敷に『弁道話』の真筆本が伝わっていたことになる。後には丹波の徳雲寺に道元禅師の本があったともいうが、この面山の説との繋がりは、現段階良く分からない。なお、『正法眼蔵』の一巻として初めて入ったのは大乗寺の卍山道白師によって編集された卍山本の拾遺からであり、その後晃全本(96巻本)や玄透本(95巻本)でも入ることになった。現在手に入る『正法眼蔵』のテキストとして、水野弥穂子氏校訂による岩波文庫本で第1巻の冒頭に『弁道話』が入っているのは、この玄透本で最初に入れたことの名残である。

また、一説では道元禅師が朝廷に献上したという『護国正法義』に当たるのではないかとの説もあるが、現存しないため推測の域を出ない。

【伝写の状況】

面山和尚の『正法眼蔵聞解』「弁道話」巻に依れば、京都の公家であった菊亭殿に道元禅師の真筆になる『弁道話』が伝わっていたという。

また、江戸時代中期の写本だが、万光道輝が書写した『弁道話』がある(蒐書大成続輯二)。これは、寛延三年(1750)5月に、愛知県の龍源寺饒益庵中での書写である。経緯は、愛知県乾徳寺3世の洞雲祖椎(?〜1731)の記事に依れば、元々道元禅師の手沢の写本『弁道話』が、丹波徳雲寺に所蔵され、それをそっくり写し取ってきたものが、大乗寺に収められた(この経緯と、先の面山の説とが符合するものか?)。

洞雲は、月舟の法嗣であり侍者だったが、月舟の許可を得て、その写本を写し自ら蔵した。その後、道輝が元文4年に国字の校正を行い、さらに、寛延3年に道輝自ら書写して、法嗣の派喬に与えたものがある。これは現在、愛知県の妙厳寺豊川稲荷)に収蔵されている。また、道輝によって書写され、弟子(寛良)に与えられた別の写本(蒐書大成続輯二)があり、現在は岸澤文庫に所蔵されている。

岩手県の正法寺所蔵の『正法眼蔵雑文』に、大乗寺本や本山版とは系統の異なる写本(蒐書大成四)が入っており、一般的には草案本として扱われる。同写本は元々、旨国なる者が元徳4年(1332)11月7日に、永光寺にて書写したものを、永正12年(1515)に正法寺独住7世寿雲良椿(?〜1516)が、道元禅師263回忌に報答するために書写している。なお、衛藤即応博士が『正法眼蔵序説』(岩波書店)を著して、同著の意義を高めている。

天明8年(1788)に兵庫県の仏眼寺で刊行された(蒐書大成四)。本書の刊行には永平寺50世・玄透即中も序を著すなどして関わっているが、幹事はその法嗣の復庵が行っている。玄透の序を見る限りでは、玄透も独自に丹波の古刹にて、道元禅師の手沢本を入手しているようである。そして、題名と奥書は道元禅師の自筆本の書体をそのまま転写し、さらに略年譜を付す。

以上の様子から見ると、現在『弁道話』として見ることが可能なものは、大きく3系統あったことになる。まずは、面山も写したという月舟が持っていた大乗寺本(ただし、この写本は知られない)、正法寺に伝わる草案本、玄透が見たという丹波本である。ただし、大乗寺本と丹波本は共に、徳雲寺本(菊亭殿本?)を原型にしている可能性があるため、さらに狭めると二系統ということになり、結果、流布本と草案本という系統になるのである。

【解説書等】

・水野弥穂子校注『正法眼蔵(一)』岩波文庫
95巻本編集の影響を受けて、冒頭に『弁道話』を置く。
・河村孝道校注『道元禅師全集(二)』春秋社
・高田道見『辨道話講義』
・衛藤即応『正法眼蔵序説』岩波書店
・桜井文隆『辨道話の研究』
・西嶋和夫 藤田昌三『弁道話正法眼蔵を語る』金沢文庫・2002年
・澤木興道『正法眼蔵講話 弁道話 (新装改訂)』大法輪閣・2000年
・安谷白雲『正法眼蔵参究 弁道話 (新装版) 』春秋社・1999年
・西谷啓治『正法眼蔵講話(弁道話下) 2』筑摩書房・1987年
・柴田道賢『「弁道話」私講』東方出版・1986年
・余語翠巌『放てば手にみてり『正法眼蔵』弁道話講話』地湧社1985年
・岡田利次郎『正法眼蔵解読(弁道話) 3』弥生書房・1985年
・山田霊林『正法眼蔵弁道話・禅の講話(宝文館叢書)』宝文館出版・1977年
・内山興正『正法眼蔵弁道話を味わう』柏樹社・1981年

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