つらつら日暮らしWiki〈曹洞禅・仏教関連用語集〉 - 寺紋
【定義】

各寺院が自らの由緒を示すために用いる紋のこと。一般家庭の家紋と、機能的には同じ。特に曹洞宗では、『曹洞宗宗制』に於いて、大本山永平寺は久我竜胆(こがりんどう)、大本山總持寺は五七の桐(ごしちのきり)を、「両山紋(りょうざんもん)」として用いることが定められている。

【内容】

両大本山の寺紋だが、江戸時代まではそれぞれ菊の御紋を用いることが許可されており、実際にそれを用いた江戸時代の札や焼き印などが確認されている。ただし、明治時代以降、天皇制強化の影響から明治2年8月25日に「太政官布告第八百三号」として「社寺濫ニ菊章ヲ用ルヲ禁ス」が発せられて、菊の御紋はその使用を著しく制限され、両大本山でも使用を控えるようになったと思われる。

大本山永平寺は1871年(明治4)に住持となった久我環渓禅師(第61世)の影響で、明治8年頃から「久我竜胆」を用いるようになったとされ(笛岡自照師『永平寺雑考』参照)、大本山總持寺は後醍醐天皇との結びつきもあり、菊の御紋の裏紋である「五七の桐」を選択したものと思われる。一方で江戸時代の建築に、この寺紋の使用も見られるという。

なお、両大本山の寺紋を曹洞宗の制度として定めたのは、近代以降である。