つらつら日暮らしWiki〈曹洞禅・仏教関連用語集〉 - 菩薩戒
【定義】

大乗菩薩受持する戒のことで、大乗戒・大戒とも呼ばれる。なお、天台宗では円頓戒と呼ばれ、禅宗では仏性戒・一心戒・心地戒・禅戒などとも呼ばれる。

【内容】

具体的には『梵網経』『瑜伽師地論』などで説かれた、三聚浄戒十重禁戒四十八軽戒?をその内容としている。中国では、天台宗にて説かれており、他宗派でも取り入れられている。しかし、中国ではインド以来の比丘戒も合わせて受持していた。日本では伝教大師最澄が比丘戒声聞戒)の廃止を唱え、菩薩戒(円頓戒)のみで良く、そのための戒壇(大乗戒壇)を作ることを唱えている。大乗戒壇は、最澄の死後に認められたが、この後日本では、比丘戒に把われない自由な戒観に基づく風習が生まれ、のちの鎌倉新仏教の思想的躍動性の根拠ともなった。

日本曹洞宗では、道元禅師が天台宗の影響を受けてか、菩薩戒の受持を強く主張(比丘戒の位置付けは微妙である)し、更に内容は三帰三聚浄戒十重禁戒十六条戒のみで良いとし、これを「仏祖正伝菩薩戒」としている(『正法眼蔵』「受戒」巻・『仏祖正伝菩薩戒作法』)。現在、日本曹洞宗伝法作法では七日間の加行の五日目夜に「伝戒」が行われるが、それは道元禅師が中国から将来した『仏祖正伝菩薩戒作法』にしたがって「正授道場」を開かねばならず、この時には戒に合わせて『血脈』が師から弟子に付与される。
比丘戒をうけざる祖師あれども、この仏祖正伝菩薩戒をうけざる祖師、いまだあらず。かならず受持するなり。 『正法眼蔵』「受戒」巻

なお、江戸時代の禅戒論争には、様々な菩薩戒の議論があるけれども、曹洞宗に於ける定義の1つとして、『梵網経略抄』に於ける経豪撰述箇所とおぼしき一文を見てみたい。
菩薩戒には三重の道理あるべし。一云、位同大覚真是諸仏子と云故に。二云、声聞持戒菩薩破戒よりも劣也。声聞は自調自度と立。菩薩は先度他と云故に。三云、一分受二分受事也。此戒は一をも受ぬれば、永不失也。重て未来際不失。必可成仏也。仍帯菩薩名異声聞戒也。 『梵網経略抄