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“警笛”身内に鳴らず 形式監査、連携不足…

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20061220/mng_____...

 JR史上最悪の尼崎JR脱線事故から一年八カ月。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が二十日付で報告書案を公表した。脱線直前まで異常な運転を繰り返した運転士。報告書案はその要因として、安全を軽視したJR西日本の経営姿勢も示唆した。来春にもまとまる最終報告に全容解明の期待を寄せる犠牲者の遺族は「体質が問題」とあらためてJR西を批判した。 

 事故調がまとめた尼崎JR脱線事故の報告書案は、JR西日本側の問題点に多くのページを割いたのが特徴だ。鉄道事故でこれほど企業の問題点を羅列した報告はかつてない。国土交通省幹部は「死亡した運転士一人の問題ではなく、企業体質の中で起きた事故ととらえようとしているのでは」と分析する。

 対照的に、JR西を監督する立場の国交省側の対応を検証した記述はほとんどない。約百七十ページの本文中、国交省の記述は列車自動停止装置(ATS)や速度計に関連した国の規則を記した部分がある程度だ。

 死亡した運転士は事故の十カ月前、百メートルのオーバーランによる八分遅延のミスをし、十三日間の日勤教育という再教育と訓告を受けた。日勤教育は懲罰的内容を含むと指摘され、調査結果も「他の乗務員から見える場所で見せしめのようなことが多く、非常にストレス」(同僚運転士)などと記述している。

 宝塚駅での「小さなミスと未報告」後、伊丹駅での「オーバーランと車掌への過少報告依頼」「その無線報告傍受中とみられる時間帯のブレーキ操作の遅れ、脱線」の一連の動きは、二十数分間に連続して起きた。事故調は、日勤教育を避けたい心理がミスの未報告や隠ぺいに影響した可能性を検討している。

 その日勤教育を国交省は事故の半年前、労組からの中止要請で把握していた。「草むしりなどの懲罰的内容を含めるべきではない」と、JR西に口頭注意した。だが、その後監査した同省近畿運輸局の幹部は「脱線事故まで日勤教育を知らなかった」と話すなど連携不足で、系統的な指導ができていない。監査も事前通告し、書面審査中心の形式的な内容だった。

 JR西への国交省の監督や監査は適切だったのか。今回の調査結果に答えはない。同省の付属機関である事故調には「及び腰」の印象がぬぐえない。 

  (西岡聖雄)

■『原因究明土台に』 遺族ら最終報告に期待

 「やっと原因究明の土台ができた」。尼崎JR脱線事故から一年八カ月を経て、事故調がまとめた報告書案。犠牲者の遺族からは、詳細な内容を評価し、来年春の最終報告書に期待する声が上がった。一方で遺族への事前説明がなかったことに不満も漏れた。

 死亡した乗客百六人のうち約半数の遺族が参加する「4・25ネットワーク」。世話人の一人で、妻と妹を亡くした浅野弥三一さん(64)=兵庫県宝塚市=は「大量の情報が示され、原因究明のための土台ができた。労を多としたい」と話した。

 報告書案が、運転士=当時(23)=の健康状態に問題はなかったとしたことには「どの運転士でも(同じ事故を)起こす可能性があるということ。指令所の指示や勤務ローテーションがストレスになったのでは」とし、落ち着いた口調で「JR西日本の体質に問題がある」と批判した。

 来年春をめどに事故調が公表する最終報告書には「遺族や負傷者が意見を述べる機会をつくり、素人にも分かりやすいようにまとめてもらいたい」と要望。「事故の責任をはっきりさせ、弔いの入り口に早く立たせてほしい」と話した。

 義弟を亡くしたネットワーク世話人の上田誠さん(40)=奈良県香芝市=は「良く調べてくれてはいるが、事故原因を一番知りたい素人の被害者には分かりにくい内容だ」と指摘。「企業体質やなぜ運転士がこんな運転をしたのかという背景要因について、最終報告ではもう少し踏み込んでほしい」と期待した。

 一方、長男を失った小前恵さん(51)=兵庫県三田市=は報告書案の事前説明がなかったことに「一番先に資料だけでも読ませてもらう権利があるんじゃないか」と反発した。

 ネットワークは昨年九月に中間報告が公表される前、遺族への事前説明を要望したが、国交省は公表後に開催。遺族側は今回も事前に説明するように求めていた。

■事故調が指摘したJR西日本の主な問題点

(1)「ヒヤリハット」報告を不問に付さない強硬な姿勢

(2)車種ごとにブレーキをかける地点を記す基準ブレーキ表を作成していなかった

(3)運転士向けのマニュアルが古く、その通りに走ると伊丹−尼崎間はダイヤより7秒遅れる

(4)事故電車は、駅での停車時間の不足など特にダイヤ自体の無理があった

(5)安全技術のトップ、鉄道本部長がカーブでの速度超過による過去の脱線事故例を知らなかった

(6)伊丹駅のオーバーランを防ぐ音声警報装置の位置が不適切で、ミス防止の役に立たなかった

(7)脱線事故時の人命最優先のマニュアルがなかった
2006年12月21日(木) 05:16:44 Modified by umedango




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