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運転士に危険な『常識』 カーブの速度半数誤解

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20061220/mng...

 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が二十日公表する、尼崎JR脱線事故の報告書案には、JR西日本の現役運転士約五十人へのアンケート結果も盛り込まれている。ブレーキの使い方や列車の遅れを気にする時間など、死亡した男性運転士=当時(23)=と同じ電車区の同僚らの“本音”が出ている。一方で、運転士に実用的な知識が不十分で、ミスの再教育システムの機能不全を疑わせる側面も浮き彫りになった。 (社会部・西岡聖雄)

 調査では、脱線事故現場のカーブ(制限速度七十キロ)で電車が横転すると思う限界速度を聞いた。半数の二十五人の運転士が「百二十キロ未満」としたが、残り半数は「百二十キロ以上」と回答。うち九人は百四十キロ以上と考えていた。

 事故車両が現場カーブに進入した実際の速度は百十六キロ。男性運転士が「この速度なら脱線せずに曲がりきれる」と思い込み、ノーブレーキでカーブに進入したとしても不思議ではない結果だった。しかも、運転席の速度計は実際の速度より三キロ低く表示される誤差があった。

 事故の最大の謎は、脱線時に男性運転士が非常ブレーキを使わなかった点だ。

 手前の伊丹駅で七十二メートルオーバーランした時も、運転士は通常の運行に用いる常用ブレーキと、予備ブレーキを併用して減速。車掌が車掌用の非常ブレーキを使った後になって、運転士も非常ブレーキを使った。

 予備ブレーキは、常用と非常の両ブレーキが故障した時に使う最後のブレーキで、減速目的の使用は禁止されている。当時、常用、非常ともに正常に作動していた。

 事故調の調べで、脱線した電車の最も強い制動力は、最も強い常用ブレーキと、非常ブレーキがそれぞれ同等で、常用と予備ブレーキの併用はそれよりも劣ることが判明した。だが、調査の正答者は四割の二十人。「最も強い常用と予備の両ブレーキ併用が最強」と誤解している運転士も同数いた。

■禁止の予備ブレーキ使用

 ある運転士は、取材に「雨などで常用ブレーキの利きが悪い時に予備ブレーキを使った。会社に報告義務がある非常ブレーキより使い勝手がいい」と証言。事故列車の運転士も予備ブレーキの制動力を過信し、非常ブレーキの使用を避けたい心理があったのかもしれない。

 また調査では、運転士が最も負担を感じ、運転ミスにつながりやすいと考える遅れの時間を聞いた。「一−三分」の回答が約六割の三十一人で、次いで「一分未満」が十二人だった。

 遅れの回復は、カーブの手前でブレーキを遅らせる方法が一般的。三分以上の遅れを負担と感じる運転士が少ないのは、最初から遅れの回復をあきらめるためといい、三分未満の遅れの方が運転士を緊張させる実態が判明。脱線現場手前の伊丹駅出発時、事故列車の運転士の遅れは一分二十秒で、焦りの時間帯に当たる。

 調査結果によると、この運転士はスノーボードや食べ歩きが趣味の普通の青年。運転士の学科試験成績は上位で、技能試験も平均点だった。ミスをした運転士を再教育する日勤教育を事故の十カ月前に受けていたが、「社訓みたいなものを丸写しするだけで意味が分からない」「給料がカットされ本当に嫌だ。降ろされたらどうしよう」と友人に話していたという。

 運転室内の遺品は、ズボンのポケットにあった私用携帯電話のほかは、会社から貸与されたカバンの中にあったバナナ一本とペットボトルのお茶程度だった。
2006年12月21日(木) 04:54:58 Modified by umedango




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