展開案
【プロローグ〜山賊軍戦】
【小説版】
公式シナリオ詳細設定に取り込まれた為、削除。
【山賊軍戦】
【開戦直前 GOD案】
403 名前： AA職人(東京都) ：2007/04/10(火) 03:42:49.92 ID:rp//Kvyo0誰もいないうちに公式の異世界召還の辺りの試案を思案してみるぜ！ しあんをしあん……プフーッ！
↑の方にある叩き台の後から
金 「姫様、ご安心を。飛車殿たちが向かえば安心です。 」
玉「……儀式が失敗した……日を改めて、もう一度行う事は出来ないのですか？ 」
金 「それは……無理です。 」
そう言って、祭壇から「駒」を取り出す金。
玉 「それは……」
金 「そうです。我が桜国に伝承された「９種の駒」が一つ、「銀将」…… それに秘められし力は、この儀式によって消耗しています。
最悪、十年は降英の儀式を行う事は不可能です。」
玉 「そんな……」
金 「ですが……可能性はあります。失敗とはいえ、儀式は途中まで行われました。
この国に、既に英雄が召還されているという可能性は…… 」
場面転換。城下町。山賊達が集まっている。
山賊王 「野郎共！うまくいったか！？」
山金将 「上首尾ですぜ、大将。兵舎の入り口は爆発で崩れでやす。」
山銀将 「いましばらくは、やりたい放題って訳だね。」
山香車 「……おれはどうすればいいスか？」
山賊王 「適当に暴れてやりな！ いいか、「依頼」は済ませた！ここからは俺らの本業だ！
すき放題に壊して、 すき放題に奪うぞ！ 」
山賊角 「ケケケ……楽しくなってきた！」
山賊桂 「よし！犬共、こい！ 」
山賊歩 「ＢｏｗＢｏｗ！ 」
山賊飛 （……くだらん連中だ。）
山賊達は、町の人々が逃げ惑う中に踏み入り、暴れ始めた。そして……
鉄幹「……」
鉄幹が、陰で観察している事に気付いた物はいなかった。
404 名前： AA職人(東京都) ：2007/04/10(火) 04:01:27.95 ID:rp//Kvyo0
目が覚めたのは、爆発音がしたからだった。
鉄幹「ン……」
頬が冷たいのは、地面にうつ伏せになっているからだと気付いて、すぐに鉄幹が考えたのは、
「ここがどこか」ではなく、「どうやってここにきたか」であった。
鉄幹（……？おかしい、俺が覚えているのは……学校が終わって、いつも通りに帰る途中で……）
いつかのように、ＤＱＮな学生に絡まれたりした訳でもなく、突然車に撥ね飛ばされた訳でもない。自分の体を素早く確認。怪我はない、健康です。
鉄幹（変だ……周囲の風景に見覚えが無いし、体に怪我も無いから事故に遭って失神していたという線もなさそうだ。
記憶が少し消えている……学校帰りからここにぶっ倒れるまでにタイムラグがあるようだ……）
そして、鉄幹は無意識に物陰に隠れた。隠れてから、自分が爆発音について警戒している事に気付いた。
鉄幹（そうだ、今は「ここがどこか」よりも「今がどんな状況か」を確認した方がいいぜ）
そして、間もなく姿を現した山賊達の会話を盗み聞きする事にした。
鉄幹（……こいつは……）
山賊達の話を聞いて、自分の現状について仮定を立てた。
１・今の状況全てが自分の夢である。
２・これは時代劇か何かの撮影である。
３・ここは異世界である。
鉄幹（まず、考えられるのは１か２だが……）
２についてはあり得なさそうだ。犬の扱い方で分かる。
山賊歩「ワウワウ！」
町人「ぎゃややあー！」
鉄幹（誰も犬の挙動を気にしていない……つまり、「台本」なんかないって事だ。それに、思いっきり噛んでるもの……）
そうすると１か３だ。
鉄幹（って事は、１に○をつけたいところだ）
異世界なんてありませんよ、漫画やゲームじゃないんですから……
鉄幹（だが、このリアリティ、夢にしたら良く出来た夢だ。夢であっても痛い目や酷い目に遭うのはゴメンだからな、ここは慎重に行動しよう）
その時、状況に変化が起きた。
玉ちゃん軍が現場に到着したのだ。
405 名前： AA職人(東京都) ：2007/04/10(火) 04:21:04.85 ID:rp//Kvyo0
玉飛車「動くな！そこのろうぜき者どもめ！」
山賊銀「ふん。今頃のこのこやってきたね、マヌケ共が！」
玉歩兵「あうう、街があらされてますー！」
玉銀将「おのれ……よくも！」
山賊王「へっへ！センセイ、出番ですぜ！」
山賊飛「……」
ゆらりと前へ出る山賊飛。前にいる犬の尻を蹴飛ばした。
山賊歩「ギャン！」
蹴られた犬が一直線に前に出る。その後を追うように、山賊金が真っ直ぐ前に駈けて行った。
玉角行「向かってきます……！」
玉銀将「くっ！」
鉄幹「いやー、何か面白い事になってるなあ」
民家の屋上に上って座って観戦しているのは鉄幹である。
鉄幹「この布陣といい、まるで将棋だなあ」
もっとも、後から来た軍隊の方は、将棋に見立てると「金」と「王」に当たる部隊がないようだ。
鉄幹「あの山賊達は、棒金戦法ってとこかな……」
そして。
玉歩兵「えーい！」
山賊歩「ギャン！」
鉄幹「あ、バカ」
相手の「注文」に見事に乗る玉軍。そして、狙いが見え透いている山賊軍。見ていて少しイライラしてきた。
鉄幹（こいつら…… ヘ ボ だ ！）
イラついたのはそれだけではない。どう見ても悪役の山賊軍が勝勢なのが気に食わない。
さっきまで観察していた時も、俺の夢？ながら、あまりの残虐非道っぷりに自分の無意識はここまで病んでいるのかと鬱になっていたのだ。
鉄幹（たとえこれが「夢」の話だろうが、困った奴らを見殺しにするのは後味が悪いってもんだろ）
406 名前： AA職人(東京都) ：2007/04/10(火) 04:36:57.97 ID:rp//Kvyo0
そして、鉄幹は民家の屋上から飛び降りた！
鉄幹「トゥ！」
玉軍『！？』 山賊軍『何！？』
グシャッ！！！
鉄幹「……」 玉軍「……」 山賊軍「……」
鉄幹、玉軍の布陣の内に着地しようとして、失敗。地面に熱烈なキッスをする。
鉄幹「グオゴゴゴ……夢でも痛い……」
玉銀将「何だ貴様！奴らの仲間か！？」
山賊金「どうやら新手のようですぜ？」
玉角行「この見慣れない服装……まさか……」
玉飛車「この『感覚』……」
鉄幹「おいお前ら！この中に『軍師』はいないのか？」
玉桂馬「なんやこの不審者、偉そうやで？」
玉香車「こいつ！ひっとらえろ！」
玉歩兵「おにぎりー！」
鉄幹「わあちょっとタンマ！」
407 名前： AA職人(東京都) ：2007/04/10(火) 04:38:18.09 ID:rp//Kvyo0
玉角行「待ってください、皆さん！……あなた、質問します、今は何年ですか？」
鉄幹「は？２０××年だろ？」
玉香車「何言ってるんだ、こいつは？」
玉角行「……貴方が住んでいる場所を、国名から教えてください」
鉄幹「日本、埼玉県さいたま市（仮）」
玉銀将「一体何を……！まさか！？」
玉角行「ええ、どうやら彼が『駒』の戦士……！」
鉄幹（……おれ、恥ずかしい夢見てるなあ）
玉飛車「ふむ。おい、男。」
鉄幹「鉄幹だ。……なんだ、大女」
玉飛車「（グサッ←少し傷心）……わざわざ戦中に飛び込んで来たからには何か目的があるんだろうな？」
玉歩兵「敵、再び動き出しました！」
玉銀将「よし、私の部隊が打って出る！」
鉄幹「駄目だ！！！」
玉銀将「ビクッ！」
鉄幹「敵の狙いはあんたの部隊を「吊る」事なんだよ。あんたらが出て行ったら奥の敵が本陣に突っ込んでくるぜ？」
玉桂馬「あ、あんさん、いきなり何を……」
鉄幹「敵の布陣なら上で見てきた。大女、何しに来たかって言ってたな。……勝たせてやるよ」
→対局突入
【開戦直前 他案】
やっぱり、玉ちゃん軍がへぼいのは、面白くないと思います。周りをへぼくして主人公を持ち上げるやつは、面白くないのが多いからです。
そもそも、英雄として召還された飛車とか、多角的に物事を見れそうな角行がいるのに、易々と敵の罠にはまっているのもおかしいです。
展開を見ると、英雄のおかげで強くなっていく玉ちゃん隊を書くのが目的じゃなさそうなので、ここで弱いのは変だと思いました。
なので私は、玉ちゃん軍もそこそこ強いけど、敵が準備した布陣のせいで苦戦をしいられて、
そこを、離れたところから見ていた主人公の助言で乗り切る、とした方がいいと思いました。
たとえば、「助言に行く」を選べば、
「こことここに敵が挟み撃ちをしようと潜んでるやつがいるから、まずそこを潰してから本陣を攻めた方がいい」
「様子を見る」を選んでも、挟み撃ちをしようとしているやつらのところに、何かをほうり投げて玉ちゃん軍に気付かせ、
そこから玉桂馬を偵察に行かせて挟み撃ちに気付かせる、などの感じで。
猪突猛進タイプの香車だけじゃなく、多種多様なタイプがいる軍隊なので、敵の布陣にたいして議論を交わす展開も面白いと思いました。
と、GOD氏に楯突くようで、おこがましいのですけど、思いついたので書きました。
文才はないので、シナリオ氏さんみたいに文章化はできませんが、参考にしてください。
【幕間 香車エピソード】
【� 々畆屬里い夢屬法帖帖�
最初のカラクリ戦の直後？108 ： イラストレーター(東京都)：2007/04/15(日) 05:11:35.96 ID:XoUz/uSx0
「ふう……」
鉄幹はため息を漏らした。
「まさかまた迷っちまうとは……」
この城の連中と何とか打ち解けて２日。鉄幹は城の庭を散歩しているうちに
自分の居場所を見失ってしまった。
「……居場所を見失う、か……」
ふと、自分の境遇を考え、ふたたびため息。
「なんだい、随分景気が悪いじゃないか」
「あんたは……桂馬だったっけか？」
「アイツと一緒にすんな！……うちは香車。あんたは鉄幹……だっけ？こんな所で何してんのサ」
「迷った」
「ああ、無理もないさ。城は広いからね」
その言葉には、微かに誇る響きがあった。
「ついてきな、ついでだから案内してやるよ」
「ああ」
素直についていく鉄幹。
「なあ、あんたの居た世界……ってのは、こことは全然違う世界なんだろ？」
「まあ、そうだなあ」
少なくとも、年頃の娘がさらし一丁で槍をしごいていたりはしない。
「さっき、『ついで』って言ってたが……」
「ああ、歩兵どもの訓練の様子を見に行こうと思ってね。あんたも見ていくかい？」
「まあ見るだけならな」
109 ： イラストレーター(東京都)：2007/04/15(日) 05:12:41.87 ID:XoUz/uSx0
一方、訓練場では……
「おにぎりおにぎりー」
「鬼のいぬ間に……」
「せんたくー！」
「何でせんたくなのかなー？」
「心のせんたくってことだよー！」
「わぁはくしきー！」
「きー！」
「見事にだらけてるな」
「……（プルプルと怒りに震えている）」
「まあいいんじゃないか？先の戦いもとりあえず終わった事だｓ」
「甘い！勝って兜の緒を締めろって言うだろうが！おあああああ！！！」
咆哮し、突進する香車。
「おどれらー！何さぼってやがるぅー！」
「ひゃー」
「わー」
「だいたい、誰が鬼だぁーっ！ぶっ喰らわすぞ！ごるぁああああ！！！」
「旧き良きヤンキーみたいだなあ」と鉄幹。
「お前ら！今日は足腰立たなくなるまで走りこみだあー！」
「うひゃー」
「（次から見張りをたてよー！）」
そして、香車と歩兵たちは一群、風のように走り去っていった。
「・・・・・・」
「俺は・・・・・・？」
相変わらず、迷ったままの鉄幹が一人取り残されたとさ。
【�◆＾賈楞筺�
香車エピソード�，慮紂�一回くらい対局があった後？110 ： イラストレーター(東京都)：2007/04/15(日) 05:44:13.61 ID:XoUz/uSx0
「ふん！せや！」
訓練場では、香車が一人、槍を突いていた。
「今日は一人なんだな」
「……おまえか」
振り返り、汗を拭う香車。
（……俺はさらしに注目なんてしていないぞ）
「何だ、変な顔して」
「うるせー、この顔は元からだ」
「はは、そんな意味で言ったんじゃないさ」
そして、ふと何かを思い出したような顔をして、香車は若干顔をしかめた。
「そうだ、聞いたぞ。おまえ、銀殿にちょっかいを出してるんだってな」
「誰に聞いたんだ、そんな事」
「誰って、もう城中の噂になってるぞ？
どうやったかは知らないが、その、服の上から銀殿の下着をくすねたとか」
「くすねてないぞ、外しただけだ」
「同じだバカ！」
軽く（しかし鉄幹にとってはクリティカルに）頭をはたく。
「ぐおおおおぉぉ…」
頭を抑え、悶絶。
「軟弱だなあ」
「うるせー、お前が馬鹿力なんだよ」
「まあ鍛えてるからな」
「今日は訓練日じゃないんだろ？たまには体を休めるのも大事だと思うぜ？」
「……」
「何だよ？」
「うちは、不器用だから……」
「不器用？」
素人目だが、鉄幹には香車の槍働きは実に巧みであるように見えていた。
111 ： イラストレーター(東京都)：2007/04/15(日) 05:44:49.73 ID:XoUz/uSx0
「あれだけ槍が上手けりゃ十分かと思うがねえ」
「ありがと、お世辞でも嬉しいよ」
香車は笑った。だが、その表情には微かな自嘲が入り混じっていた。
「実はな……うちが憧れてるのは金殿なんだ」
「……」
金に対しての複雑な気持ちが一瞬胸の内を駆け巡った。
「金殿は、うちらの軍の中でも１，２を争う強さだ」
「……まあ、そうだな」
「複数の敵相手にも、冷静に対処する。それでいて、動きも優雅で、華麗で……」
話す内にどんどん顔が笑み崩れていく香車。
（……百合っ気？）
だが、急に表情を曇らせてため息をつく。
「それに比べて、うちは……なんかこう、戦っているうちに頭に血が上っちゃうっていうか、
どんどん突っ込んでいるうちにいつの間にか抜き差しならない状況になっちゃってたりして……」
（……確かに前の戦いでも猪突猛進というか、いつの間にか敵に囲まれていたような……）
「だから！」
「わ、急に大声出すなよ」
「うちは他の連中の二倍三倍練習して！いつか金殿のように強くなるんだ！」
「ふーんそーかー頑張れよー」
「ああ！よし、休憩終わり！」
そして、再び槍を握って駆け出していく。
（……単純そうに見えて、それなりに悩みもあるんだねえ……）
【�� 香車の霍乱】
香車エピソード�△慮紂�金や銀と仲良くなる時期に被せて113 ： イラストレーター(東京都)：2007/04/15(日) 07:21:22.61 ID:XoUz/uSx0
おはほっす。第三弾
「ふん！せい！」
「おにぎりー！」
「ぎりー！」
「おーおー、毎度毎度よくやるなあコイツ等」
何だかんだで、俺もよく顔を出すなあと思いつつ、今日も訓練場にやってきた鉄幹。
「……ん？」
「……せい！……ふりゃ！」
（何か……香車の奴、いつもと動きが違うようだが……）
と、次の瞬間！香車は前のめりに倒れてしまった。これには異世界に慣れてきた鉄幹もびっくりだ。
「とにかく助けようと思って駆け出したんだ」
「うう……」
「おう、酷い熱だ」
「ひゃー！」
「鬼のかくらんだー！」
「かくらんって何ー？」
「霍乱というのは古くに消化器系の異常で嘔吐、下痢などの症状を指す言葉で、転じて鬼、つまり普段体が丈夫な人が
思いがけなく体調を崩してしまう時に使う言葉だよー！」
「ひゃーはくしきー！」
「本当に博識だな……おいお前等、とにかく医者ん所に運ぶから案内してくれ」
（お姫様だっこー！きゃー！）
（おにぎりー！）
「ギギギ……ここは？」
「目が覚めたか、ここは医務室だ」
「うーん、くらくらする……」
「当たり前だ、熱があるんだからよ」
鉄幹が見るに、大体38〜９度程の熱があるようだ。
（体温計ってのも、よく考えたら凄く便利なもんだなあ）
114 ： イラストレーター(東京都)：2007/04/15(日) 07:21:48.83 ID:XoUz/uSx0
「そうか……迷惑をかけたね、すまない。どっこいしょ」
「何そのおばさんくさい掛け声。っていうか槍もってどうするんだよ」
「何、これくらいの熱、大丈夫だ。あと１０回だけ素振りが残ってるんだ」
「……お前、バカか？」
「何？」
「前に自分の事を不器用といったな、お前は不器用じゃなくてバカなんだよ」
「……おまえ、喧嘩売ってるのか？」
思いっきりガンつけしてくる香車。こわい。
「今体を動かしたらまたぶっ倒れちまうぞ」
「もう平気だ！普段の練習が出来ない方が気持ち悪いよ！」
「それがバカだって言ってるんだ。自身の体調管理も出来ない者が戦場で役に立つと思うか？
普段の練習とか言っているが、状況に応じて臨機応変に動ける柔軟さがないから手傷を負うんじゃあないのか？」
「う……」
「今は体を休める事がお前の仕事だ……俺は何か間違った事を言ってるか？」
「……」
むすっと膨れた顔をしつつも、反論できない香車。
（こいつは不器用じゃない……きっと芯から真面目なんだろうな）
心中呟く鉄幹。
「俺はもう行くが、布団に戻って休んでろよ」
そう言って、すれ違い様。
神 技 炸 裂
鉄幹が立ち去った後。
「……やっぱり十回だけなら大丈夫だよね…」
あれだけ言われたので少し後ろめたいが、香車は普段の習慣を遵守する事を選んだ。
115 ： イラストレーター(東京都)：2007/04/15(日) 07:22:36.99 ID:XoUz/uSx0
一方、鉄幹。手に何か布を持っている。
「……まあ、これが無かったら訓練しようとは思わないだろうな」
手に持っていたのは、香車のさらしであった。
「おや、香車やんか、ぶっ倒れたって聞い……た…」
「桂馬か。あと少しだけ訓練しておこうと思ってね」
「く……訓練？……その状態で……？」
「これでも体には自信があるんだ」
そう笑って、香車は歩き去った。無論自分のさらしが外された事には気付いていない。
「……」
「……」
周囲の者は皆、絶句。
（皆、そんなに心配してくれていたのかな……）
全く気付かない香車は、そのまま訓練を再開した。
一刻後。
「うわああああああああああん！」
どどどど、と土煙が出そうな勢いで、香車は泣きながら真っ赤な顔で鉄幹を追い回している。
「いや、ちょっと待て。俺も悪かったが、気付かないお前もどうかしてるぞ」
全力で走りながら会話。
「おまえを殺してうちも死ぬー！」
「やっぱりバカだ。お前は不器用ってレベルじゃあないぞ」
「仲がいいですね」
二人が走り去るのを見て銀が呟いた。
「なに？……ひょっとして羨ましいんじゃないの？」
金が意地悪げに言った。
「な、何で私が羨ましがらなきゃいけないんですか！」
銀が怒鳴ると、金はくすくすと笑みを零すのだった。
【�ぁ〕鬚悗良枩弌�
香車エピソード��の至近18 ： タコ(東京都)：2007/04/22(日) 22:03:07.92 ID:03ZHgMe00
思いの他手こずっているが、段々香車が愛しくなってきた
とりあえず投下
「うーん」
「あらあらまあまあ、沈んだ顔をしてどうなさったんですか？」
「ああ、角行さんかい」
城の渡り廊下。鉄観は悩んでいた。
「何か最近、香車の奴と上手くいかなくて……」
さらし事件以来、無視されている。
「話しかけると、殺気を放つんだ」
「あらまあ、気立てのいい娘なのにねー。何かしたんですか？」
「イヤ、ナニモシテナイゾ」
「声がカタカナですよー？」
「まあ実際、居心地が悪くて困ってる」
「それはよくありませんねー。じゃあ、これを使いなさいませ！」
「酒……か」
「あの娘もきっと、心の底では今の状況を快く思ってませんー。
でも、馬鹿だから意固地になっちゃってるのねー。
そこで、お酒を飲ませてなし崩しに仲直りしちゃえばいいですわ！」
「単純だな。だが効果がありそうだ。この酒も旨そうだし……」
「この物語の登場人物は全員18歳以上です」
「？」
「何でもありませんわー。」
果たして、角行の策は上手くいくのだろうか？
香車の、そして鉄観の運命や如何に！？
続きはＷＥＢ……じゃなかった、さらに２，３０分後なﾉｼ
【�ァ々畆屬陵陝�
香車エピソード�い猟掌紂▲�ラクリ王＝静子に気付く前25 ： タコ(東京都)：2007/04/22(日) 22:24:56.34 ID:03ZHgMe00
「……酒？」
香車が睨んでくる。怖い。ヤンキーってレベルじゃあない。
「ああ、その……い、いい酒が入ったからさぁ」
「ふん、ビクつきやがって……」
グレてる。前はこんな口を聞くような奴じゃあなかったのに。
誰のせいでこんな風に……俺なのか、やっぱり？
「……？こ、この酒は！！」「？」
「これは古酒！それも６、70年物！おまえ、これを何処で！？」「いや、ちょっとね」
「へ、味なモンを持ってくるじゃないか！おい歩兵ども！酒盛りの準備しな！」
「ひゃー！」「わー！」「ぎゃー！」
（何だ……？歩兵たちが『怯えている』……？）
「何してんだ、お前は酌をしな！」「やれやれ」
十分後。
「げはははははは！おら、次の奴！さっさと芸をひろー！」
（何という酒乱）
「何か言ったか！ァ〜〜〜〜〜〜ぷ（げっぷ音）」「酒臭ッ！」
「酒呑んれんらから臭いのァたりめーらのがよ！」「痛い！殴るなよ！」
「きゃばばばばばば！」
「うう、三番ふひょー、歌を歌いますー……」
「歌なんれつまらんらよーりょー！」「ひゃー！」
「じゃー、おにぎり食べますー……」
「ぎゃはははははは！」「酷い絡み上戸だ」
（甘い……香車さんのほんとーの恐ろしさはこんなもんじゃないんですー！）
果たして鉄観は生き残れるのだろうか？続く！
27 ： タコ(東京都)：2007/04/22(日) 22:54:54.07 ID:03ZHgMe00
さらに十分後。
「うううううううう」「お、おい、泣くなって」
（香車さんは！『泣き上戸』とか『笑い上戸』とかいう分かりやすい酒乱じゃない！）
（いうなれば『喜怒哀楽上戸』！その酒量に応じて目まぐるしく変化する感情はまさに歯車的小宇宙！）
「ろーせみんな、あらしのころを筋肉ダルマとかおもってんだわーーーっ！（号泣）」
「落ち着け、水でも飲もう、なっ！」
「分かってんのよーーーーーッあれらるはえいるりらるうるららあわーーーーーーっ！（号泣）」
「何言ってるかわかんねーよ」「馬鹿ァ！（殴）」「タコス」
「ろもろもれめーのせーで誰にも見せた事のねーあたひのは、羽じゃなくて、ほ、骨でもなくて」
「……胸？」
「ひってんだよぉー！（蹴）」「あべし」
「てめーのせいで、大恥かいたんだよォー！許せネエダロー！ああ！？許せネエダロー！ああ！？」
「す、すまん、悪かった」
「……ふ」
「ふ？」
「ふえぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン！」
「また泣き出しやがった」
「ほんろに……恥ずかしかった……ろーせあんたなんか、アタヒの事、女と思っれないんれしょー……」
28 ： タコ(東京都)：2007/04/22(日) 22:55:54.48 ID:03ZHgMe00
「そ、そんなことない！普通に女の子と思ってるよ（多分……）」
「……ほんろ（本当）……？」
「ああ、だからあの時……無茶して体を壊すと思って心配で……あんな事しちまった。ちょっとやり過ぎだった、すまん」
「……ひんぱい？あたひをひんぱい(心配)してくれるの？」
「ああ、心配だ……戦場でも、お前はいつも最前線にいるからな。無理ばかりしてるお前は、まあ一番心配してるかなあ」
（……あたひを……ひんぱいしてくれてる……）
「む」
向き合って話している内、いつのまにか香車の顔が近い。
目が潤み、顔が赤らんでいるのは酒のせいばかりだろうか？
「鉄……」
（……！！）
ドクン、と胸が高鳴った。静子の顔が一瞬浮かび、そして目の前の香車が、今までになく可愛らしく見えた。顔が近づいてくる……
「こ、香……」
「ン……」
香車が眉を切なげにひそめ、目を閉じる。周囲の歩兵がきゃーきゃーと大騒ぎをしている。俺は思わずその顔に……
「お」「お？」
「お”え”え”え”え”え”え”え”え”」
「ぎゃー」
「ひゃー！」
嘔吐直撃。
29 ： タコ(東京都)：2007/04/22(日) 23:11:14.35 ID:03ZHgMe00
「むー、むふん、ンー♪」
「うううううう」
状況。何とかゲロの始末をした後、未だ酔いが覚めない香車が抱きついて離れない。正直、またゲロリとやられるんじゃないかとヒヤヒヤだ。
歩兵たちは俺たちの方を見てニヤニヤしてたりヒューヒューと囃し立てたりケタケタと笑っていたり、あー、こいつらもすっかり酔ってやがる。
「なあ、そろそろ離せよ」
「ドラア！（殴）」「ればあ！」肝臓を殴られ、一瞬息が止まる。
「もっろー♪もっろぎゅーするおー♪」「うへえ……（ため息）」
これは、こいつが寝るまでこのままか。
「んー」
香車が頭を突き出してくる。
「頭突き？」「ウラァ！（殴り）」「てんぷる！」
香車は再び頭を突き出す。
「……やれやれくそったれ」
わしわしと、頭を撫でてやる。
「むー♪」
幼児化しとる。
「……二度とコイツに酒は飲ませまい」
「……」
やがて、うつらうつらと舟を漕ぎ出し、いつしか香車は寝息を立てた。
「……っと、しまった。今動いたら起こしちまうか」
仕方なく、その場に座り込む鉄観。歩兵たちもいつしかグースカと
鼻ちょうちんを出して眠っている。
「……んじゅう……」
「ん？」
香車が何か、寝言を言い出した。
32 ： タコ(東京都)：2007/04/22(日) 23:23:56.19 ID:03ZHgMe00
「まんじゅう……おせんべい……」
「好きなものでも並べてるのか？」
「シャケ……おさしみ……天麩羅……」
「よく続くなあ」
「リス……うさぎ……ねこー……」
「食うのか？……なわけないか。そういえばこいつ、動物好きだったか」
軍馬の世話にしても、やたら可愛がっているような。
「金殿ー」
「そういえば、憧れてるとか言っていたな。何で憧れてるようになったんだっけ？」
「金殿ー……」
「ふわああああ……俺もそろそろ眠くなってきたぜ」
「……」
「ふう、このまま寝ちまうか……しょうがねえなあ」
「……ん」
「･･････ＺＺＺ」
「……かん」
「ＺＺＺ」
「……鉄観……」
翌朝。
「何だこの部屋の惨状は！あたしが寝てる間に何があったぁ！？」
「お前のせいだ、お前の」
「な、何抱きついてるんだ！（///）殴」
「りふじん！」
【幕間 桂馬エピソード】
【� 〃貿呂留魁�
106 名前： 二十四の瞳(東京都) ：2007/04/22(日) 06:41:37.67 ID:g+j+TR+U0とりあえず需要はあるかわからんが桂馬ＳＳ歩取代わりにおいておきますね
前スレ落ちたので始めから。性格設定は>>39で。
一．
香車が嫌いだ。
「嫌い」といっても、性格が嫌い、とか、
恐らく普通の奴が言う意味合いとは違う意味になると思う。
うちは誰に対しても「合わせて」いける。
誰に対しても親しみやすく、誰に対しても親しみ過ぎず。
人間関係を図にした時、恐らくうちを中心とした円が出来るだろう。
誰からも等距離の位置に居る。それがうちや。
だけど、たった一人、うちの立ち位置を崩そうとしとる奴がおる。
それが香車だ。
107 名前： 二十四の瞳(東京都) ：2007/04/22(日) 06:52:47.58 ID:g+j+TR+U0
二．
夏、健康を害した事がある。
一瞬、毒を盛られたか、とも思うたが、すぐに打ち消した。
うちは城中で出された食事は全て食べたふりでごまかしている。
自分で作ったりした、信頼したもの以外は一度も食った事がない。
最初の内は疫病の類かと思い、一人になると震えていたが、
ただの夏風邪だという事が分かった。
次に不安だったのは、城主から解雇される事だった。
なので、重い足取りを無理やりに軽やかに、
自分でも分からないくらいに白粉を薄く延ばして顔色の悪さを誤魔化した。
その日は、何事もなく過ぎていった。否、過ぎていく筈だった。
そいつの前を通り過ぎた時、何気ない調子でそいつは言い放った。
「ん？お前、体調悪いのか？」
そう香車が言った時、自分は一瞬演技を忘れてしまった。
呆然としたまま、「……なんで」そう思うのか、と最後の句を
告げる事すら出来なかった。
「いや、何となくだよ。いつも隣に居るからかな」
その言葉を聴いて、うちの底の方で、何かがザワリと蠢いた。
急に、うちの中の何かがうつろになる気がした。
以来、うちは香車が嫌いだ。
108 名前： DCアドバイザー(東京都) ：2007/04/22(日) 07:12:43.30 ID:9OgjM1sP0
三．
また、香車の部隊が突貫した。
最初は本当にただの野蛮人かと思っていたが、
あいつが無茶をするのは必ず仲間を助ける為だったり、
援護をする為だったりなのだ。つまり、ただの馬鹿って事や。
今、無謀な攻めをしたのも、目の前の歩兵隊が壊滅して、頭に
血が上ったんやろな。自分は位置的に近い。何もせんと、
指をくわえとったら何か言われるかもしれん、止めるふりでも
してみよう、と軽く走り出した時。あの、何かがざわりと蠢く感覚がした。
敵兵の群れの中に、飲み込まれていく香車。
ドクン。
深いところで、うちの中の何かが脈打った時。うちの走りは、
いつしか無心の全力疾走に変わっていた。それに気付いたのは、
うちが香車を突き飛ばし、敵のカラクリ人形に胸を貫かれた時だった。
109 名前： DCアドバイザー(東京都) ：2007/04/22(日) 07:23:39.71 ID:9OgjM1sP0
四．
「け……桂馬〜〜ッ！」
香車が叫んどる。その声で、飛びかけていた意識を、しがみつくように
集中させた。胸から、血が流れてる。何で……うちはこいつをかばったんやろ？
香車とはしょっちゅう馬鹿話していたけど、それは全部嘘ごとや。
皆、いつも騙されるくらい、完璧に演じてたはず。
なのに……何でこんなんなっとるん？
「桂馬！しっかりしろ、桂馬！」
「落ち着け。血が流れてるって事は心臓は動いてるって事だ。
すぐに血を止めなきゃまずい。静かに、早く運んでやる必要がある」
鉄観と香車が話してるのが聞こえる。いつも馬鹿をやってるこの二人も、
さすがに慌ててるみたいや。
鉄観。こいつが来てから城の様子は変わった。張り詰めた中にも、
どこか気負いが抜けたというか、いつも笑い声がするようになった。
うちも空気を読んで、笑ってばかりいたような気がする。
香車も、いつもうちの挑発にすぐに乗るようなやつで、
うちはいつも嘘の笑いをうかべてからかっていた。
「……嘘？……」
本当に……自分は演技で笑っていたのだろうか？
香車たちをからかっている時も、計算でしていたのか？
「ああ、そうか……」
騙していたのは、自分自身だった。
110 名前： DCアドバイザー(東京都) ：2007/04/22(日) 07:33:38.29 ID:9OgjM1sP0
五．
いつもこいつらに合わせて笑ったり、怒ったりしていた。
それらは確かに演技だった。演技だったけれど……
「……楽しかった」
この城に来て、初めて楽しかった。ふひょーのおにぎりを
かっさらうのも、香車をいじるのも、ほんのささいなおしゃべりも。
出仕する前には一度もした事がなかった、全て新たな体験だった。
そして、目の前には香車がいた。
いつも自分の挑発に乗る、底の浅い奴。
仲間の為に、後先考えず突撃する頭の悪い奴。
うちの不調にただ一人気付いた奴。
そして、今、目を潤ませて自分に声をかける奴……
「……嫌いや」
ぼそりと呟いた。いかん、自制が効かないと思ったが、どうしょうもなかった。
「……香車はんのせいで、うちまで頭悪うなってもうた……
あんさんなんか、大っ嫌いや……」
笑顔で、ボロボロと、涙を零している自分。自分の感情が抑えられない、演技が出来ない。
いや、そもそもどこからが演技だったのか？もう、分からない。唯一つ、分かっているのは。
「……死にとうない……」
その、切なる願いだけだった。
もっと、皆と話をしたい。今度は、腹の底から笑ってみたい。
何でもないような日々が、自分の幸福だったとようやく気付いた。
その呟きに、
「ああ、絶対に死なせやしないぞ」
そう、鉄観は宣言した。
111 名前： DCアドバイザー(東京都) ：2007/04/22(日) 07:51:45.53 ID:9OgjM1sP0
六．
「……ン」
最初に感じたのは、柔らかな朝の光。
「ここは……ッ！あででででで！」
次に、体中あちこちの、刺す様な痛みだった。
「おお、気付いたか」
傍で銀が座っていた。
「……うち、助かったんか……」
嬉しさよりも、ぼうっとした気分。
「お前のお陰で香車の部隊が崩れずに済んだ。ひいては我が軍全体が崩れるところを、お前が助けてくれたんだ」
「……」
そんな事は考えていなかった。が、普段あまり話さない銀から言われると、少しばかり面映い。
「腹が減っただろう、食事を用意しているぞ」
「……」
今まで、誰も信用しなかった。そんな生き方でいいと思っていたが、
少しばかり考えが変わっている自分に気付いた。
「……じゃあ、遠慮なくいただくで……」
少し、怖い。人から貰った食べ物を口にするという、今までにない習慣に頭はともかく体が拒否反応を示すのか、
「……ン！」
手に取ったおにぎりを、一気に口に入れた。
「どうだ、旨いだろう」
「……」
ぼた。ぼたり。
「！？ど、どうした、桂馬！」
うちは、涙を零していた。初めて口にした、手作りの味。
「……旨いで……うち、こんなん美味しいもの食べたの……初めてや……」
「お、大袈裟だな、吃驚したぞ。……まぁ悪い気はしないが」
そして、桂馬はかすかに微笑んだ。今までの「演技」の笑いと比べると、本当に僅かな笑み。
だがそれは、桂馬の生まれてはじめての、心からの笑顔だった。
112 名前： DCアドバイザー(東京都) ：2007/04/22(日) 07:56:09.30 ID:9OgjM1sP0
七．
しかし10秒後。
「グゲッ！」
目が見えなくなった。
「こっこのおにぎり、誰が……」
「ああ、私が作ったんだ」
それきり、耳が聞こえなくなった。
口が利けなくなった。
鼻が効かなくなった。
手足の感覚が無くなった。
意識が遠のいていった。
（こんなオチったら……ないで……）
それが、最後の思考だった。
2007年05月02日(水) 13:55:39 Modified by ID:+kYem+t4DA