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故郷の行く末を憂うはぐれジャーナリスト。伊予の国の知られざる国盗りの深層を綴りおく。


2010年10月03日

「旧来型の市政」とは不透明な職員採用制度。。。


10月2日 熨斗出馬会見

Q:中村市長からの出馬の打診・決意はいつごろ?
A:8月下旬に「改革の継承の選択肢として考えてもらえないか?」
後継ではなくあくまでも選択肢。市民が選ぶ選択肢。
生まれ育った松山市、親族のいる北条・中島に愛着がある。どうしても働きたい。
中村市長が県知事に出馬すれば改革を後退させる勢力が出てくるので決意した。
公約がまとまったので出馬を決意。思い決断をした。わが社には退職制度もあるが中途半端な気持ちで松山市を担うことができない。
Q:水問題に具体性がないが?
A:水のこと調べました。前提を変えれば数字が変わる。4万8千トンは議会で
議決された数字。都市の安全には水は必要。(*小松案に対して)上水道が必要な人は3万人いる。約1万トン。この人を除外するのか。コスト計算もできていない。
松山の水源はダムと地下水の2つしかない。何かがあれば都市機能はマヒする。
4万8千トンは議会で議決したこと。初めて話し合いの場ができた。
松山市は水問題だけをやっているのではない。
Q:松山分水の実現方法は
A:交渉ごとなので誠意を持って対応するしかない。
Q:後継ではないのか?指摘されているが?
A:指摘されるのは仕方がない。
考え方が似ているので仕方がない。地域第一、地域主義を継承したい。
市民目線で飛び込んでいく市長を目指したい。
県・市で負担がぶつかる場合がある。市民を代表して県にも物を言わせてもらう。
中村さんのいいなりではない。私は市民を向いている。
Q:中村市制の直すところは?
A:あまりない。市民の評価は高い。せっかくいい流れなので変える必要はない。
水問題はできるだけ情報発信していくべきだとは思う。
Q:報道関係者が後継として知名度を活かして選挙するのに問題はないか?
A:選挙にでるためにこれまで仕事をしてきたわけではない。
会社には休職制度もあるがけじめをつけた。松山市のために働きたい。
Q:出馬の立ち位置は?
A:無所属。市民党といった感じですかね。
Q:政党への呼びかけは?維新の会は?
A:ようやく公約がまとまった所。
松山維新の会は元々、所属するとこがあって一歩踏み出された。敬意を持っている。
応援していただければありがたい。
Q:選挙はどう戦う?
A:応援してくださる方々と一緒に自分の考えを伝える。事務所は探している。
中村事務所に間借りすることはない。
Q:選挙資金は?
A:退職金と貯金
Q:中村事務所が当面の連絡先としていたが?
A:違います。
Q:きのう確認しましたよ。
A:*無言
Q:戻したくない旧来型の市制とは何を指すのか?
A:「しがらみ」や「利権」
Q:言葉を使うのは簡単だが具体的には?
A:職員採用制度。不透明だった。
Q:職員採用制度には「しがらみ」や「利権」が温床としてあったということか?
A:私はあったと思っている。
Q:政策は市のHPや広報紙をベースにしたと言っていたが?
A:ベースではない参考。いろんな人から話を聞いたうえで参考にした。
Q:いろんな人とは?
A:覚えていない。


2010年10月07日
2枚の怪文書

伊予の国の選挙は総じて汚い。
誹謗中傷、騙し裏切り、買収恫喝はあたりまえ。
怪文書もいわば祭りを彩る風物詩。

しかし、荒ぶる選挙にもまれてきた松山市民にとっても
今回の市長選は新たな衝撃を与えている。

奇口と暴士それぞれにまつわる2枚の怪文書。
その中身を見た市民はあまりの下劣さにもれなく絶句するという。

ほぼ同じ体裁と様式でかかれた2枚の怪文書。
どこの陣営が作成元かは明らか。

配布には陣営幹部内でも深夜まで賛否が分かれた。
だが、最終的に決断を下したのはあの若き死長。

暴かれたくない過去12年の秘め事の数々。
後ろめたい焦りと恐怖が50歳の心を徐々に蝕み始めていた。


2010年10月09日

絶たれた夢


早まったか。。
維新の会を率いる井毛元は独り唇を噛んだ。

今年の春、突然死長から呼び出された。

「私の任期ももうすぐ終わる。だが、奇口さんだけには任せたくない。」
何かいい知恵はないかと尋ねる死長に引き込まれるように膝を詰めた。

「井毛元さん、松山市の今後を託せるのはあなたしかいません。」
自分の市長への野心を見透かすようなセリフ。
不安と期待が高鳴る。

気づけば気味悪いほどの段取りで維新の会を立ち上げていた。
奇口派の自民党市議がじたんだを踏んで悔しがっている様が小気味よかった。

しかし、その後いつまで待っても死長から後継の話はこない。
死長が後継探しに苦労しているという内情も伝わってきた。
それとなく直接感触をぶつけてみたが、そっけない。
あの話はなんだったのか。
奇口つぶしのために利用されただけだったのではないか。。
疑心暗鬼と怒りに眠れぬ夜が続いた。

熨斗を担げと言われたときの屈辱は忘れられない。
素人に市政が担えるはずがないことは、さすがに市議をやっていればわかる。
ならば、と恥を忍んで汐崎をバックに立候補を試みたがすげなく却下された。

早まったか。。
自民党に残っていれば、もしや今頃は。
自らが半生をかけて夢見てきた市長への道が目の前で閉ざされた瞬間だった。


ならばとことん利用してやれ。
何もわからない熨斗から、公共事業を一手に任せるという確約をとりつければいい。
西条分水の数百億の利権分配についてはすでに死長と話はつけた。
政治は現実だ。
悔しいが感傷にはとらわれない。
自分は実をとる。
何もわかっていない維新の会のメンバーにも少しおこぼれをわけてやろう。

屈辱と嫉妬とコンプレックス。
暗い欲望の炎に照らされ、井毛元は今日も戦場へ駆けだしていく。


2010年10月15日

堕ちた猿(1)


猿は木から落ちても猿。
しかし、政治家は落ちればただの人。
いや、栄光からどん底に突き落とされた人間の惨めさたるや
ただの人の比などではない。
暗澹たる悔惨が、いつしか敗者の正気を惑わせる。

建設大臣まで歴任までした名門・咳矢。
サッカー選手にまさかの敗北を喫してもう3年が経つ。
世間は薄情なもので、近頃は訪ねてくる人もめっきり減った。
街を歩けば憐れみの視線で見られている気がしてしょうがない。

このままで終わりたくない。
このまま忘れられたくない。
なぜこの俺がこんな惨めな屈辱に耐えなければならないんだ。

市長選に出てみようか、
最初はほんの冗談のつもりだった。

しかし、途端に議員や記者から電話がかかり始めた。
「建設大臣まで務めた方にはもったいない」
お世辞なのか、本気で止めようとしているのかわからない。
が、自分の一挙手一投足に周りが右往左往する感覚が懐かしく心弾む。
地元紙に「元国会議員が出馬を検討」という記事を読むたびに、
なぜか一日テンションがあがりっぱなしだ。

あの時雄だって国会議員から市長に転身した。
俺にだってできないわけがない。
元秘書の界農や井毛元が出たくてうずうずしているのは百も承知。
が、あんな奴には百年早いわ。

9月下旬。

グルメレポーター出馬の不穏な噂が流れ始めたころ、
近しい後援会幹部や地方議員ら15人以上に密かに集まってもらった。
「市長選にでることを考えている。みんなの本音が聞きたい。」
ごくり、皆が息をのむ音が今聞こえた。
さあ、どうだ。
グルメレポーターに任せるわけにはいくまい。
反対しなければそれでいい。

「恐れながら、やめた方がいいと思います。」

「今はタイミングじゃありません。」

「先生、さすがに今回は厳しいです。」

井毛元も、界農も、ひげの爺さんもその場の全員が反対しやがった。
それにしても一人残らず反対とは誤算だった。
国会議員の時から今まで散々甘い汁を吸わせてきてやったにもかかわらず、
よくも俺に面と向かってそんなことをいいやがって。

許せん。
俺を馬鹿にしやがって。

俺は絶対諦めん。
俺は絶対このままじゃ終わらない。
貴様ら今に見てろ。

(続く)


2010年10月16日

堕ちた猿(2)


二人で会いませんか、と珍しく死長の方から声をかけてきた。
おそらく市長選がらみで熨斗をやれという話だろう。
嫌な奴だが、むげにも断りづらい。

参議院選に落ちて収入がゼロになっていたころ、
松山市から財団法人松山コンベンション観光協会の会長に、と話が来た。
間違いなく死長の差し金。
人の足元をみるのが本当にうまい。
ロープウェイ街2階の小さなオフィスには一応個室もある。
仕事なんてほとんどないが、給料はたっぷり出る。
その時から既に知事選・市長選への布石だったのかもしれない。
奴ならそれぐらいのことはやりかねない。

自民党の市長候補の一本化に話が及んだとき、奴が身を乗り出してきた。

「先生、最後まで手を降ろさない方がいいと思いますよ。」

冷たい能面でささやいてくる。
やはりこれが今日の本題か。

こいつは、本当に筋金入りに腹黒い。
そして、悪知恵は恐ろしいほどよく働く。
確かにこいつのいうとおりかもしれん。
俺が手を降ろすまでは、界農や咳矢系県議らは絶対に身動きがとれない。
県連・市連もその間指をくわえてまってるしかない。
一本化調整が遅れれば、得をするのは熨斗。

しかし、そんなことをして俺になんのメリットがある。

「そういえば息子のたいらさん、お元気ですか。
来年春の県議選に出られるなら私も応援しますよ。」

こいつはこの12年で本当に人相が悪くなった。
昔はそれでも多少は可愛げがあった。
最近は腹の底が見えない能面に、目が笑っているのを久しく見たことがない。
ある種、哀れではある。
国政に戻りたくても戻れない屈辱。
この12年、一日も休まず復讐を考え続けてきた結果の人相か。

熨斗支援とタイラのバーターとは。
嫌らしい手を考えつくものだ。
キミ子は息子を政治家にしたくないとまた反対するだろうが、
県議ぐらいならまず落ちないだろうし、案外飲むかもしれない。

それにしても。
後継市長へのただならぬ執念。
やはり、こいつは相当やばいものを抱えているに違いない。
例の坂の上の雲ミュージアムの件か、それとも噂がではじめたもう一つの話か。
いずれにしてもこいつは好き放題やりすぎた。
最近は右翼関係者から揺さぶられているとも聞く。

まあ、いい。
次の市長が熨斗になろうが、暴士になろうが、知ったことではない。
どちらが勝ってもいいように保険をかけておけばいいのだ。
政治の極意は二枚腰、三枚腰。
これが咳矢流。
汐崎みたいな青二才には到底まねできまい。

俺の出馬に反対しやがった連中に、一泡吹かしてやるか。
ようやく面白くなってきた。


嫉妬、復讐、隠蔽、憎悪、強欲、保身。
人のあらゆる暗い業を呑み込んで、
伊予の秋の嵐はさらに激しさを増していく。


2010-10-19

深夜の恫喝


10月9日の自民党県連代表者会議。
県連による死長の知事選推薦を決めるだけの簡単なセレモニーで終わるはずだった。
しかし、地域や団体の代表者ら270名から推薦決定への苦言や注文が相次ぐ。

うつむき加減に苦々しげに聞いていた死長。
今発言しているやつら、知事になったら一人残らず徹底的に締め上げてやる。
だが、挨拶にたった汐崎の次の一言で表情が一変した。

「市長選については、近くみんなの党が暴士候補を応援してくれることになりそうです」

目を大きく見開き動揺を隠せない。
代表者会議が終わると、直ちに死長は動いた。
渡辺喜美の連絡先を調べ電話。

「みんなの党が暴士支援をすると聞きましたが、本当でしょうか?」
「党としてはしない。支部の問題だ」
のらりとかわす渡辺。

ほっと胸を撫で下ろす死長。
桜内みたいな青二才はどうとでもなる。
県議の余故他が親戚だからその筋で脅しあげれば一発だろう。

しかし、翌朝の地元紙を開くとみんなの党が近く帽子支援を決める、との記事。
もしや、だまされているのではないか。
幼少時の複雑な家庭事情がはぐくんだ根深い人間不信が、再び頭をもたげる。

渡辺にしつこく電話を入れ、撤回を迫るも取り合ってもらえない。
逆に渡辺の逆鱗に触れ、渡辺は桜内に電話する。

「あんたのとこの死長は尖閣問題での中国のようなやつだな。
脅せば引っ込むと思っている。
こうなったら徹底的に闘え、ガハハ!」

分が悪いと見た死長は深夜にもかかわらず、桜内の携帯を鳴らす。

「渡辺代表か桜内さん、あんたのいずれかが嘘をついている!嘘つきだ。」
「嘘つき呼ばわりは、あんまりではないですか」

静まり返った部屋に死長の恫喝する声が響き渡る。

「みんなの党が帽子を支援するなら、私が知事になったら、みんなの党も自民党も敵と見なしてやる。何もできなくなるぞ!」
「知事選は知事選。市長選は市長選ではないですか」
「もしも支援を止めるなら、みんなの党の県議、市議を作ってやる。だから支援は止めろ」

選挙地盤の弱い桜内を標的に定め、執拗に揺さぶりと恫喝を続ける死長。
そこには郷土愛や街づくりへの理想は何もない。
あるのは隠蔽と保身への飽くなき執念のみ。
そのあまりに冷酷な素顔に、「もう無理」と妻でさえ最近は周囲に限界を漏らす。

夜通しの恫喝にも関わらず、結局、暴士支援の方針は動かず。
みんなの党が知事選では死長を支援するという形でお茶を濁して終わった。

「県議・市議をつくってやる」の発言に死長の奢りを見て取った関係者。
中でも、県連版「維新の会」の結成を仕掛けてくることを警戒する自民党県連。
今回の一連の恫喝劇が県内の政界関係者に残した禍根は深い。

それでも、なりふりなど構っていられない事情。
死長を悩ます一枚の怪文書。
氷山の一角に過ぎないが、次期市長が調査をすれば全てが明るみになってしまう。
どんな手を使ってでも、何もわからない熨斗を後継にしなければならない。

隠し続けてきた12年間の闇の重しが、今宵も死長を狂的な焦りに駆り立てる。


2010年10月25日

黒い雲(1)


「伝説の英雄のような人類の指導者となるべき選ばれし者は、より大局的な正義を為すためならば、既存の法や規範をも超越する資格を持つ」(ラスコーリニコフ青年・『罪と罰』)

*********************

「司馬遼太郎記念館をお手本に、必ず尊敬する司馬先生のご遺志にかなう立派な記念館に致します。」

身を乗り出してさわやかに口説く青年市長。
しかし、司馬財団理事長・福田みどりの表情は固い。
遺言で映像化、テレビ化を禁じた国民的人気小説への亡夫司馬の複雑な思い。
しかし、4時間にわたる執拗な説得に気丈な未亡人もついに折れた。

「ご遺族の希望ですから。」

3000万円を超す記念館の基本設計は、
死長の鶴の一声で世界的建築家・安藤忠雄事務所に決まった。
この金額にしては異例の随意契約。
しかし、有無を言わさぬ死長の物言いに口を差し挟む者はいなかった。

東大阪に建つ司馬遼太郎記念館。
設計は安藤忠雄。
そして、施工は竹中工務店。
「お手本に」という何気ない一言に込められた邪心が、
嵐の前の雷雲のように、静かに広く膨らんでいく。

基本設計の3000万などは単なる伏線に過ぎない。
30億を超す巨額の事業費を狙って蠢く多くの関係者。

老女は、知るよしもない。
青年の微笑の裏に隠された恐るべき黒い陰謀を。


2010年10月29日

黒い雲(2)


選挙で掲げた「坂の上の雲」フィールドミュージアム構想。
何も知らない市民をあざ笑うかのように
恐るべき野心が、静かに街を蝕み始めていた。

2002年に小泉政権が発表した「全国都市再生のための緊急措置」
全国から選ばれたいくつかのモデル都市に対して、
国庫からの手厚い支援が得られることとなった。

死長の私設秘書の名刺を持つタナカ。
その中年の男が重い足取りで向かったのは永田町の一角にある相互永田町ビル。
古びた狭いエレベーターの扉が開くと、
趣味の悪い真っ赤なじゅうたんの廊下。
そしてガラス戸越しに目に飛び込むのは屈強な体型をしたSPの姿。

ここは「洗濯屋」こと、蜃気楼元首相の個人事務所。
全国のあらゆる公共事業に関わる闇の金が、
ここで洗浄され、全国に再び還流していく。

時は清和会全盛時代。
非願の国政復帰に向けて、政界のドンにはずいぶんこれまでも尽くしてきた。
そこにうまい具合に転がり込んできたこのモデル都市の企画。
関連する公共事業には街づくり交付金として国庫から40%もの補助がでるという。
これはカネになる。
蜃気楼の覚えもめでたくなる。
一石二鳥のこの機を逃してなるものか。
俺は総理になる器の人間だ。
いつまでも松山市長などでくすぶっているわけにはいかないのだから。

永田町のビルの一室で繰り拡げられた密談と謀議。
巨体のキングメーカーは動いた。
かけられた一本の電話。
そして、松山はモデル都市に選定された。

総額70億のフィールドミュージアム構想。
国庫から支出された30億。
市民の血税40億円。
架空発注と談合。
ドンへの上納金と死長へのキックバック。
さあ、祭りの始まりだ。
醜い欲望をむき出しに、みなこの闇夜に踊り狂うがいい。

こうして空前の巨大利権プロジェクトは誕生した。


2010年11月09日

天網恢々


千丈の堤も蟻の一穴から崩壊するという。
完璧を期したつもりが、
思いがけない小さな綻びから脆くも破綻を招く。
世の中に、完全犯罪などというものはない。

市民を食い物に我が世を謳歌した死長と副死長。
春の夜の夢は終わりに近づきつつある。

竹原二丁目に住む網本トウ一という男。
「社長」のうかつな行動が起こした小さな波紋が、
市政、県政を揺るがす津波となって迫りくる。

関係者に撒かれた差出人不明の告発文書。
電話を鳴らしてくる素性不明の不気味な男。
包囲網は確実に狭まってきている。

「知事選はもうかたがついた。」
鬼相の死長は今日も必死に熨斗の応援に声を枯らす。
誹謗、恫喝はあたりまえ。
結果のためなら手段は選んでいられない。
この市長選、何があっても負けるわけにはいかない。
一番町事務所の明かりは夜更けまで煌々と点り続ける。

後継という名の大義なき隠蔽。
伊予の闇夜に邪悪な巨網が覆い被さる。






2010年11月14日

偽心の会(1)


11月のある夕暮れ。
50名近い地域住民が集められた公民館では
熨斗の鉱区集会が開かれていた。

しかし雑然とした会場の雰囲気は
冒頭に登壇した死長の一声で一変した

この12年間、私は暴力団まがいの黒い勢力と闘い続けてきました。
しかし、実は今度の市長選の候補者の中に
暴力団とつながる利権屋の集団の代表がいます。
彼はとにかく嘘がうまい。
さわやかな顔をして平気で市民受けするような約束をします。
皆さんにはぜひこうした事実を知って頂き、
こういう人が松山市政のトップに立つことを絶対に阻止しなければいけません。

凍りつく会場の空気。
パイプいすに座ったまま引きつった笑顔を浮かべる熨斗。
気まずそうに床に視線を落とす維新の会の市議ら。
多くの選挙を経験してきた地元の世話人たちも
公の場でのここまで直接的な人格批判は聞いたことがない。

「一人でも多くの人を笑顔に」
窒息しそうな重苦しい会場の空気に
滑稽なまでにミスマッチのポスターのコピーが虚しく色褪せる。

かつて兄弟のように蜜月といわれた市長と奇口。
一時は後継の本命とのうわさもあったほど。
しかし二人の関係は数年前ある利権を巡り決定的に決裂した。

不気味なほど手ごたえのない選挙に
日に日に苛立ちを深める死長。
疑心暗鬼は近親憎悪にも似た青白い怨念の炎となり
立ちはだかろうとする者を焼き尽くす。

不安を打ち消すためか。
維新の会の市議らを子分のように引き連れての選挙戦。
しかし死長はまだ知らない。
頼みとする足元を侵食する裏切りと欺瞞の実態を。



2010年11月18日

偽心の会(2)


市議会議長の多詐家。
汐崎の秘書から市議へ出馬し、連続7回当選。
かつて明るく公言していた松山市長への野心。
複雑な思いを飲み込み、今は偽心の会の副会長に収まっている。

選挙戦も中盤を過ぎたある月曜日の午後。
業界団体の代表は、多詐家主催の昼食会に招かれた。

「今度の市長選に立候補している熨斗さんです」
さわやかな笑顔で市長候補・熨斗を紹介する多詐家。
突然の展開に来客はよそよそしい作り笑いを浮かべて握手に応じた。

夕方、来客のところに多詐家から謝礼の電話。
来客が口を開きかけると、多詐家から思いもよらぬ一言が発せられた。

今日は来てくれてありがとう。
市長選については何もお願いしないので、
どうぞ暴士先生をやってあげてください。

交錯する本音と建て前。
裏切りと猜疑。
複雑怪奇な多詐家の発言に来客はただ唖然とした。

**************

偽心の会・会長の井毛元。
新田の陸上部で鍛えたフットワークは今も軽い。

「熨斗候補以外に松山市政の流れを継承できる候補はいません」
動きの鈍い若い市議らにはっぱをかけ、死長へ自らの貢献を連日アピールする。

しかしお膝元の興居島では全く異なる様相が展開する。
密命を帯びた井毛元後援会幹部ら。
軒から軒へ密かに渡り歩き、熨斗以外の陣営へ票を慣れた様子で割り振っていく。

鍛え上げた政治家の嗅覚で潮の流れを冷静に見極め、常に保険をかけることを忘れない。

**************

市民を馬鹿にしているのか。
熨斗擁立の報道が流れた際の後援会からの厳しい反応に、
偽心の会メンバーらは衝撃を受けた。

こうなったら、自分の選挙第一でやろう。

これがメンバーが話し合った暗黙の合意となった。
狂気の死長の手前、形の上では熨斗をやるとしても、
自らの選挙のリスクを背負ってまでやることはお互い求めないことにしよう。
そう決めたはずだった。
だからこそ、結論がどちらに転んでも大丈夫なように
それぞれ大人のバランス感覚を働かせてきたのだ。

自民党からの突然の八名除名処分は晴天の霹靂だった。
除名は主導的な二人だけと事前に聞いていた市議は、
記者からの除名の報に「まさか」と叫んで絶句した。
元は同じ釜のメシを食ったはずの仲。
しかし分裂を契機に一度燃え上がった近親憎悪は、
もはや理性ではコントロール不能な情炎となって燃えさかっていた。

広がりがでない熨斗の支持を目の当たりに、
暗い厭戦気分がメンバーの心に静かに広がり始めていた。
こんな選挙早く終わればいい。
もともとは死長の尻ぬぐいじゃないか。

後援会幹部はほとんどが今でも自民党員。
一時の裏切りの興奮が冷めてみれば、残るのは保証のない将来への底知れない不安ばかり。
根無し草の悲哀と心細さ。
怯える裏切り集団は肩を寄せ合いつつ、抜け駆けがないよう日々お互いを監視する。

噂される偽心の会の三人のユダ。
次期市議選までの復党の密約を得たのは誰か。
底知れぬ疑心と偽心が不義の脱藩浪人らの心を苛んでいく。

この禍々しき選挙戦も、ようやくフィナーレを迎えようとしている。


2010年11月23日

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