411 :名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 19:04:20 ID:DsrE02St
タイツの誤射のせいで壁に衝突したミユキ。ギャグ漫画でよくあるガニマタ姿でうつ伏せに倒れている。
「KOか!TKOだな!さすが俺www」と自画自賛するタイツ。いちおう、目視で生死の確認をする。
――ピクリとも動かない。というかなんか地面に赤い染みが…一撃必殺とはこのことか。タイツはボケてみた。

「ここで衝撃の事実!ミユキの正式名称は"魅癒鬼(みゆき)"だったのです!すなわち鬼、いわゆるオウガ」

「…ッ!――んなわけないでしょ!」

ガバッと起き上がり即座に突っ込みを入れる魅癒鬼!…額からダラダラと血が流れているが元気はあるようだ。
「ちょっ…名前の表記を戻しなさいよ!――うっ…」
魅癒鬼は一瞬だけ抗議の意思を示したが、すぐに力尽きて後ろにぶっ倒れた。今度こそ気絶した…らしい。
「ふっく…くっははははは!面白い見世物だ!くははははは……」
キュンッ!と空を切る音と共に姿を現したのは"碧水"のクリスタトス。出てきた直後にはもう腹を抱えて笑っている。
「お前がウロチョロするせいで貴重な解説役&驚き役の女が伸びちまったじゃないか」
「ぷっくくくく……私ではなくそちらが勝手にぶつかりに行ったのだろう。くくくくく……」
「笑うな!www」
よほどツボだったのだろう。しつこく笑い続けるクリスタトス3号。
そして腹を抱えて内股になった姿勢のまま、ふたたび風を切って高速で移動した。即座に姿がタイツの視界から消える!
すぐさま追いかけたタイツの速さも尋常なものではない。双方とも加速してカマイタチのように場を斬り裂いていく。
彼方此方で地面が裂け、倒れている死体が割れ、何処からともなく闘う音が聴こえてくる。
"碧水"の攻撃は素手での"突き"に特化している。その繰り出される指たるや槍の如し。
「どうだ!どうだね!私は1秒間に20回も相手を突き刺すことができる。」
ボボボボボボボボボボ!!!間断なく飛んで来る肉弾の槍!時にナイフのようにも変じて見えるのは果たして錯覚か。
止まった時は即、死!それでもタイツはあえて、あえて回避の途中で止まった!
「――もらったぁ!」
ボッ!!止まったタイツの四方八方から矢のように乱れ飛んでくる突きの嵐ッ!
体中の秘孔・破孔を突かれそうな勢い。その生死の最中の時間でタイツが捕らえていたのは、やはり金属の刃。
「ヤラァッ!」
奇妙な掛け声と共に腕を一閃。無数の突きの、その一角を担う物を指先で掴み取った!
ギョッとするクリスタトス3号をよそに、タイツが盗み取ったのは…やはり細身のナイフだった。
安物のペーパーナイフのような貧相な外見。いや、それは紛れもなくペーパーナイフだ。刃には肉を裂く切れ味が感じられない。
「姑息だな。その性分って血筋か?」
「ぬ、ぬぅ。流石だぞボーヤ。だがぁ〜?」
少しだけ悔しそうにした彼女はすぐさま表情を明るくして両腕を軽く掲げた。その両手には先と同じ刃が何本も―――
「…へっ?」
何本も―――………無い。一本もないッ!?
「あれ!?」
差し出されたのはグーを握った手が2つ、だけ。クリスタトス3号が左右を交互に見比べて呆然とする。
わきわきと指を動かすがナイフは出ない。脂汗が彼女の頬を伝う。意味も無く笑みが浮かぶ…
「なんだ。E.G.マインの物真似か?」
ニヤニヤ笑うタイツ。その手にはジャラジャラとペーパーナイフが。間違いない、クリスタトス3号の武器…だった品だ。
「い…「いつの間に、ってか?ははは。」
両手いっぱいに持った刃を、飽きた玩具を捨てるように投げ捨てる。
もしブロフェルドが観戦していたとして、果たして見えただろうか。その、"一瞬"では受け止めきれぬ程の速さを。
「速さを最初に見せつけたのが運の尽きだ。足も早かったな、アンタ」
「むぐ…これは一本、いや、沢山取られましたな。ははははは」
引きつった笑みをこぼすクリスタトス3号。こんな時も姉妹達と同じ反応を起こしている。
「――は」
だが3度目の正直。姉妹とは違う。その意志が彼女を突き動かす。彼女は再び加速してタイツの前から消えた。
「待たんか!」と怒号を飛ばしつつタイツも消えた。ちなみになんでコイツがこんなに速いのかの説明は…無い!w


412 :名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 19:05:20 ID:DsrE02St
その頃、ブロフェルドVSドラッグスも白熱してきていた。
「ぬぅおあ!椎根猛禽掌・跋舎羅(しいねもうきんしょう・ばっしゃら)!!」
ボッ!!開かれた手の平がブロフェルドに向けてまっすぐ突き出される。
靄(もや)の様な闘気がかかったその手は何倍にも膨れて見える!その手にかかれば彼女は絶命!だがブロフェルドはわざと引きつけた。
「剣山劉斬弾(けんざんりゅうざんだん)ッ!」
乾坤一擲。バッと身構えたと思ったら次の瞬間には右の空手チョップが神速で繰り出される!狙うは打って来たドラッグスの脳天!
岩をも切り裂くこの手にかかればドラッグスの頭はかち割れ、その命はここで尽きるだろう。だが彼女は一筋縄ではいかない。
そして平手と手刀が交わる寸前、ドラッグスが口から何かを発したのが見えた。細い、小さな……銀の糸!
シュシュシュッと3本の矢がブロフェルドの目の周囲を狙って放たれる。だが一瞬、空いていた彼女の左手が閃いたかと思った直後、
「げっ!」
ドラッグスは驚いて平手の勢いを殺してしまった。ブロフェルドの空いていた左手はいつの間にか彼女の顔を前方でガードし、
飛んできた卑劣な罠を完全に指の間で受け止めてしまっていたのだ。
「――あいも変わらず、汚い手を使うのですね……ドラッグス!」
ゴッ!とドラッグスの呆けた横っ面をブロフェルドの拳が襲う。瞬時に攻撃を切り替えたブロフェルドの、鮮やかな一撃だった。
頬を張られて「ぶっ!?」と鼻血を流したドラッグス。だが、次の手を連続して繰り出す妹を見て咄嗟に腕を交錯させ防御する。
追撃の、最初の一は防ぎきった。それでも腕にビリビリと痺れが走る!
立て続けに数発の拳!堪らず吹っ飛ぶドラッグス!「ぎゃあっは!」と無様に悲鳴を上げて宙を舞う。
「いつも私は貴女のその卑劣な手で破れてきました。だが私は以前の私ではありませ――くっ!?」
胸を張ってドラッグスに引導を渡す台詞を決めようとしたブロフェルドだが、突然腕を襲った痛みに顔を歪めた。
腕が、先ほど含み針を受け止めた左手から肘にかけて奇妙な疼きが湧いてくる。彼女はすぐに異変の正体を察知した。
「こ、これは……毒っ!?」
その言葉を受けてドラッグスは笑みを浮かべる。してやったりといった風な、実にいやらしい笑みだ。
「まだまだ読みが甘いわブロフェルドォ〜ッ!確かに針は喰らわなくなったが受け止めたのが拙かったなぁ!」
今こそ勝機を掴む時!今度はドラッグスがコンボを決める番だ!この時を何度夢見たことか!
バサバサと着物がはためく。特製ブーツが硬質な音を鳴り響かせる。ポニーテールが走る勢いで真横になびく。
が、ブロフェルドも一筋縄ではいかない。即座に毒を抜く秘孔を突く!これも、椎根聖拳だ!
その行動は同じ流派のドラッグスも承知の上。彼女の狙いはその行動に要する一瞬の隙!
ブロフェルドも負けじと相手を吹き飛ばす波動を放つ――が、全く効かない!仕方なく拳と拳でぶつかり合う!
かなり打ち込んだにもかかわらず彼女に目立ったダメージは見受けられない。なかなか頑丈だな、とブロフェルドは感じた。
「くっ!な、何故、どうして効かないの!?」
「ばかめ!耐性がついているのだよ!耐性がなぁ!」
ドラッグスはしたり顔でブロフェルドを見つめる。勝利は目前、そう確信して疑っていない目をしていた。



413 :名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 19:06:22 ID:DsrE02St
高速で打ち合うタイツ&"碧水"のクリスタトス。流水の如く動き、水撃の如く突きを放つ彼女だが、今や完全に圧倒されている。
タイツと彼女では完全に格が違う。実際、彼女自身の実力は長女("血風")に及ばないのだ。とんだ食わせ者である。
しばらく高速で流れる鬩ぎ合いを続けていたが数手で劣勢になって汗を流し始めていた。
突きという突きが阻まれ、ある時は激しく返されて手傷を追っている。このままでは勝てない、彼女は焦った。
「ぐっ!まだだ。まだ終わらんよぉ〜っ!?」
馴染み深い台詞だが芝居がかった彼女の口調だと奇妙に聴こえる。
必殺の突き!それまで異常に速いその突きは痛みを全く感じさせずに開いての心臓を抉り出せることだろう。
だが!それに合わせてタイツもパンチを繰り出す。なんの飾り気もない正拳突き!
通常技は必殺技と真正面からぶつかり合う!刺すのか、砕くのか。矛と槌との対決!

ベギン!と派手な炸裂音がして――悲鳴を上げたのはクリスタトス3号のほうだった!

「うげああああああぁぁぁぁ!??」
粉砕されて五指全てが悉く明後日の方を向く。もはや手として機能することはないだろう。
「綺麗に砕けたな。だがそれだけじゃないぜ…」
凄みを利かせるタイツ。
「ヤ〜ララララララララララ!!!」
どっかの伝承者みたいな声で突きを連打する!これはクリスタトス3号の"貫く"突きとは違い"打つ"突きだ!
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!
その洗礼を前に成す術のないクリスタトス3号!あっという間に全身が拳の衝撃で激しく歪む!
「ヤ〜ラララヤララ!イレヤラララライレレレ…ヤララララ、ララララララァァーーーッッ!!」
久しぶりに刻まれるヤラレ魂の原始的なビート!!力強く逞(たくま)しいその叫びに連動して拳も勢いを増す!
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ――――キュドドドドドドドドドドォォ!!
「ぐげああぁぁああッッ!?」
もう既に女の悲鳴を通り越した奇声となっているクリスタトス3号の絶叫。
振り上げられる拳は彼女の額をかち割り、トドメに打ち込まれた一撃で腹が破れる!血反吐がぶち撒けられる。
「ぶっ…は、ぶぅ〜〜……」
鬼のような拳の弾幕が終わった後、あまりの速さに彼女は倒れることすら出来ずにその場に立ち尽くしていた。
あちこちからピューとホースから放水される水のように血が飛ぶ。文字通りの満身創痍だった。
白かったスーツは彼女の血で赤く変色し、攻撃の集中した前はワイシャツごと吹き飛んで胸が黒い下着ごとポロンとこぼれている。
が、破れた腹からは致死量以上の命のエキスが流れ出ている。頭からも同様に生が地に吸われるように流れ出る。
「終わったな。姉妹の後を追いな」
タイツが決め台詞を吐く。珍しく真面目な台詞だ。疲れているので遊び心が引っ込んでしまっているのだ。
「ぶぷっ!こ、この拳…まさか椎根・寸那の源流となる耶羅隷(やられ)宗家の―――はばッ!」
何か呟こうとしたクリスタトス3号。だが途中で大きく血を吐いてその場に仰向けにぶっ倒れ……そのまま動かなくなった。

「どうでもいいだろ。そんなの」
タイツはその死を静かに見届けた。そしてミユキを見て、全然起きる気配がないのを感じて諦めて妹の方に視線を移した。
――目の前の2人はまだ闘い続けている。


414 :名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 19:07:46 ID:DsrE02St
ドラッグスには彼女の主力である波動による飛び道具が、全く効かない!
それは彼女らの操る拳法の技の、ホンの一角だ。それでも恐るべき殺傷能力と破壊力を秘めている。
だが、同じ流派に属するもの……その力から身を守る術があってもおかしくはない…
「フハハハハ〜…貴様の最大の力は封じられたわ!」
勝ち誇るドラッグス。歯噛みしつつ力をぶつけるブロフェルドだが、どれだけ撃ち込んでも彼女はびくともしなかった。
その動揺が動きを鈍らせた。ドラッグスの突きが彼女を消耗させる!調子に乗ったドラッグスは強かった。
たちまち身体に裂傷が刻み付けられる。エリート気質はショックに弱いのぉ、という冷ややかな批判が混じる。
その言葉どおり、ブロフェルドの動きは精彩を欠いてきていた。少しでも本調子から外れると拙い。
ドラッグスはそれほどの使い手なのだ。拳の切れが以前より格段に進歩した姉に、ブロフェルドは苦戦する。
「媚びろ、媚びろぉ〜。我は天ッ才だぁ〜」
増長する彼女は好き勝手ほざいている。波動も効かず、技も効かない。ちょっと危ない状況だ。
「この金の瞳は状況を見ていただけではない。貴様の動きも捉えていたのだ」
と、自身の目を指差してトントンと軽く叩く。
「タイツの分もしっかり見ておったわ。貴様を潰した後はあっちだな…」
そう言って金色の瞳をタイツの方に向ける。"碧水"のクリスタトスはとっくに死んでいたが、彼女にとってはどうでもいい事だった。
「…惰弱な。所詮は見た目だけか!」
カッと目を見開いて死者を侮辱する。弱者には死が似合う、そう豪語する。
「へっ。お前だってそんなに強くないじゃん。底が見えてきてるぜ」とタイツ。飛び切り嫌味を込めて言ってやった。
「ぬぅあにぃ〜ッ?」
聞き捨てならない暴言にドラッグスが殺意を込めてタイツを睨む。
「ならば見ているがいい!愚かな妹など今すぐこの場でジャンクにしてくれるわ!」
そう言いきった彼女の目には明らかな苛立ちが浮かんでいた。即座に行動!彼女は侮辱の類が大嫌いだ。
ブロフェルドに走りより手を突き出す。が、その接近にブロフェルドも感づいていた。
タイツがドラッグスを冷やかして激昂させてくれた、その間に彼女も調子を整えていたのだ。
だがドラッグスの優位に立っている気分は揺らがない。相手の秘孔を突いて、殺す。それだけだ!
「それだけが満足感よぉ!喰らえぃ!」
そのまま、高速で指先を走らせるドラッグス!それを迎撃せんがためにブロフェルドが手刀を一閃させる!
「獣魔剛掌(じゅうまごうしょう)ッ!」
シュカアッ!と澄んだ斬撃音が響く。ついで、ブシュッと鮮血が迸る。
袈裟懸けに斬られたドラッグスの肩口が裂けたのだ。だが皮一枚切らせて致命の一撃避けていた彼女はニヤリと微笑む。
同時に、ブロフェルドの様子が変わった。股間を押さえ、顔を赤らめ始めたのだ…
「こ、この拳は…」
そう言う声も弱弱しい。先の一撃を交わした時、技を受けたのはドラッグスだけではなかった、という事だ。
そしてこの、身体が疼き気分が高揚する作用にブロフェルドは心当たりがあった。それは―――
「そうだ。寸那神拳(すんなしんけん)よ。相手を殺さず動きを奪い、淫靡に狂わせ弄ぶ拳……」
ふふふ…と狡賢い笑みを浮かべる。ドラッグスは自慢げに指をクキクキと鳴らす。
「以前の我とは違うといったはずだ。俺の椎根聖拳は知っていても寸那神拳は知るまい。」
「今こそ目を奪われた時の借りを返す時。あの時に俺を殺せなかったのが貴様の甘さよ」

「淫らな貴様を目で楽しみながら屠る。ふはははは!なかなか楽しい。楽しいぞ、妹よ!」


415 :名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 19:08:24 ID:DsrE02St
自身の身体の変調に耐え切れず、遂に膝を着くブロフェルド。
それを見下ろしながらいい気になってペラペラと喋るドラッグス。
「おうタイツ。どうだ。これでも俺を侮るかぁ〜?」
絶好調の気分をそのままにタイツに改めて視線を向ける。だがタイツは動かない。それをドラッグスは勘違いした。
「おうおう。見ろよ妹よ。お前のよく出来た兄貴は不出来な妹の窮地を救っては下さらないとよ〜」
「やはり姉より優れた妹なぞいなかった。椎根聖拳は俺が継いでやる!お前は無様に乱れたまま狂い死ぬがいいさ!」
一気にそこまで喋り終えるとドラッグスは中指でファックの形を作った。そのまま手をブロフェルドに向ける。
「これが精神に異常を来たす秘孔…恥姦白濁(ちかんはくだく)だぁ〜ッ!狂いに狂って俺に奉仕しろッ!とどめッ!」
狂えと言いながらもその実、狂っているのは彼女自身だ。愉悦に歪んだ形相を隠しもせずにブロフェルドに指を突き出す!
そしてうずくまったブロフェルドにその細い指が届く直前―――彼女の顔が上がった!
ドラッグスがあっと思った次の瞬間には彼女は吹っ飛ばされていた。ブロフェルドの波動は彼女の身体には効かない。が……
爆風で吹き上げることは出来る!
「なんとッ!」
驚愕しつつもすぐさま反撃に出るドラッグス!空中で自身の身体を一つの大きな矛に変えて降下する!

「ぎえぇ〜ッ!滅覇王牙(めっぱおうが)ッ!」

「くああああああっ!!椎根蛇賦拳奥義!破魔掠指(はまりゃくし)ッ!」

それに対しブロフェルドが取ったのは――ただ人差し指を突き出すだけ!
だがただの指ではない!ドラッグスは確信したが、知らぬ技だった!それもそのはず、継承者のみに伝わる奥義なのだ。
いつもなら「指ごと砕いてくれるッ!」と打って出る彼女が……一瞬だけ弱気に囚われた!
それでも矛は揺らがず!岩をも通すその一撃を――ブロフェルドの腕がすり抜ける。
ドラッグスは見たその時の、彼女の腕の動きがまるで蛇のようにうねって見えたのを――錯覚と誤認しかけた直後、
その着物から露出したむき出しの胸板にブロフェルドの指が深々と突き刺さったのだ!
ドラッグスの矛は彼女の頬と肩を僅かに切り裂いたに過ぎない。この瞬間で、勝負は呆気なく決まってしまった――――……

「うげぇッ!」
「付け焼刃の寸那神拳で私を封じれると思いましたか!―――"邪梵"堕ちるべし!」


416 :名無しさん@ピンキー:2007/03/24(土) 19:08:54 ID:DsrE02St
ドサリ。勢いを無くしたドラッグスはそのまま床に落ちた。
ドラッグスの和服が衝撃で肌蹴て、彼女の上半身が露になる。そこにはそれまでの威勢の良さからはかけ離れた姿があった。
華奢で鍛え上げられていたようには見えない細い身体、その白い肌と綺麗に丸く膨らんだ乳房が露になる。
バサリとポニーテールが解(ほど)けてただの長髪となって垂れ下がる。
金の瞳は信じられない、といった様子で己が妹を見つめる……ブロフェルドは静かに宣告した。
「確実に死の破孔を突きました。終わりです。ドラッグス」
その台詞を裏付けるかの如く、ドラッグスの身体に変化が現れた。変形する肢体。途轍もない苦痛が彼女を襲う!
「げ、げはぁ!?」
その痛みに耐え切れず気炎を吐くドラッグス。その息には赤いものが混じっている。既に内部から崩壊が始まっているのだ。
「ぐえっ!――な…何故だ。お、俺の何が、何処が妹に劣るというのだ……」
ベコベコッ!段ボール箱が鳴らすような悲鳴を彼女の肉体が上げている。肉が陥没し、骨が露出する。
「"妹"属性に縛られクズどもの傍で"偽りの肉親"として惰眠を貪る………こんな愚妹にッ………へべっ!?」
変容は遂に彼女を崩壊へと導く。頭蓋が凹んで人相が跡形も無く歪む。
「お、お、お前はそれでいいのか!? こ、後悔せんのか!…ッ……か……かかか、か………ッッ」
悔し紛れに怨嗟の声を上げる。妹の主力の波動では傷付かぬ体を身に付けたのに、結局は元の椎根聖拳で滅ぶとは―――
「あぃぎッ………ぶわらぼッ!?」
ドォン!限界を超えた崩壊が彼女の背から突き抜けて爆裂した。爆散する血肉!飛散する魂……

「……………………お姉さん」
ブロフェルドはドラッグスの最期の問いには答えなかった。ただ一言、最後に彼女を"姉"と呼んだ。それだけだった。
今の自分には兄と姉がいる。少々変わった連中だが、今の生活は心安らぐものがある。自分はそれを守りたい。それだけなのだ。

ドシャア…ぐちゃぐちゃになったドラッグスを、ブロフェルドはいつに無く冷ややかな目で見つめていた。
身体が疼く。付け焼刃だったがドラッグスの寸那神拳は彼女の思惑通りの結果を叩き出していた。
淫らな怖気が彼女を襲う。立って、いられない。
ガクリと膝を着いた彼女の傍にタイツが寄る。いけない。このままでは彼に欲情してしまう。
「やったな、おい―――うわっ!?」
近寄るタイツの腕をすり抜けて壁際まで飛ぶブロフェルド。彼との接触は危険だ。今の自分は触れられただけでも危ういだろう。
ダン!と壁に派手にぶつかる。受け身を取ろうとしたが…一瞬、体の自由が利かなかった。
声を聞くだけで身体の何処かが痒くなる。このままでは彼を、その精気を欲してしまいそう。
「うぐ…に、兄さん。悪いけど少し眠らせてもらいます〜」
彼女は"もう堪えきれない"といった顔をしている。タイツから見ても休息が必要なのが一目で分かった。
「ん?あ、ああ。もう刺客も全部倒したようだし、そっち(ミユキ)も寝てるし、寝とけよ」
タイツは仁王立ちになって言った。周りに敵の気配もないし、あとは出るだけだ…そう思ったのだ。
「起きるまで待っててやるからよ」とヒラヒラと手を振って"さっさと寝ちまえ"と促す。
すると、ブロフェルドはニコリと微笑むとその場で横になり、本当に寝てしまった。
自身の中に渦巻く衝動に耐えようと身体を腕で抱きしめる。やがて、すぐにスゥスゥという寝息を聞こえ始めた。
その傍ではミユキがゴロリと寝返りを打った。未だ寝続けるこちらもグゥ〜とイビキをかいている。

「……。しょうがないなぁ」
タイツはその平和な光景に頭を掻いて呆れる。とりあえず、待つしかないと思った。が、時は彼に平穏を与えはしなかった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……静かな、だが恐ろしげな地鳴りが彼の耳に飛び込んできたのだ………

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