267 :タイツ:2007/02/21(水) 16:45:13 ID:Flf/T4JN
桃色の光はしばらく名残惜しげに風もない部屋の中をゆっくり漂い続けたが、やがて地面に溶け込むように落ち。消滅した。
気づけば、あれだけ部屋に巻き散らかされたタイツの白濁色のエキスも今はスッカリ消えてしまっている。
全ては夢か幻だったのか。あのラタとスクという名の若い娘の存在すらも、今生きている者の記憶の一部に成り果てようとしている。
…しばらくの沈黙。その中でタイツはごそごそと露出したブツを収めにかかっている。クリスタトスはタバコを吸っている。
「可愛がってた子猫ちゃんにしては随分とあっさり切り捨てたな」とタイツが彼女に言う……返答はない。白い煙だけが漂う。
"その子猫ちゃんを葬った張本人が何を言うか"とミユキは思った。しかもやり方が最低で最悪。
スムーズにブツを仕舞い終えたタイツはクリスタトスに向き直った。いつでも相手になるぜ、と仁王立ちで構える。
「別に切り捨てたワケじゃないわ。それに、あのコたちは十分"役に立ってくれたわ"…」
そう言いながら頬を掻くクリスタトス。掻いた辺り――左の頬の傍には黒い眼帯がある。妙に意味ありげな動作だった。
「スカした姿勢もここまでだぜ。次はオマエをSATSUGAIしてくれるわ〜!…っと!?」
威勢良く飛びかかろうとしたタイツだが寸前で踏みとどまった!彼女の袖口がホンの少し蠢いたのだ。
直後、何かがそこから矢のように飛び出して一直線にタイツに向かう。が、タイツの腕も動く!……ぱしっ。
ミユキには一瞬、タイツの腕の動きが見えなかった。それほどまでに彼は速い。
その手には見覚えのある金属質の蛇が掴まれている。手からはみ出した銀色の尻尾が滑らかにくねる。
放った狩人を掴まれたを見たクリスタトスは「あら」と残念そうな声を上げたが表情は変わらない。
タイツは不適に微笑んで"ハンタースネイク"をぐしゃりと握り潰す。蛇はその瞬間ビクリと痙攣し、動かなくなった。
「こんな小細工は通用しないぜッ!」
残骸を投げ捨て、自信満々で胸を張るタイツ。クリスタトスはすぐさま次の手を打つ。
両腕を同時に前に突き出す"前ならえ"の姿勢。その2つの袖口から、今度は尺の長いナイフが飛び出た。
マグロ解体用の包丁を思わせる刀に似た暗器が振るわれる腕からから数本立て続けに投擲される。
当たれば串刺しは逃れられない。タイツの冒険はここで終わってしまう!死神が笑うビジュアルが登場する!
…だが、それらがタイツの身体を切り裂く前に、彼の手によって目にも留まらぬ速さで叩き落とされた。激しい衝撃音が響く!
刃を直に素手で打ったにもかかわらず、その手はまったく傷ついていない。速さだけでなく、硬さも相当なものだ。
「危ないな。どうやって隠し持ってたんだよ…」
叩き落した大型ナイフからクリスタトスに目線を戻すと、またナイフを持っている。左手に一本。普通の大きさだ。
「ふふ。女には秘密がたぁくさんあるものよ―――このナイフみたいに、ね」
不適に微笑むクリスタトスがそう言いながら手元を動かした。瞬間、小さい作動音とともにその刃が丸ごと飛んでくる!
タイツはその仕掛けに怯まずに拳で刃の横っ面を打撃。刃は煎餅のようにバキンと砕けた。だがタイツは一瞥もくれず、
そのまま彼女に猛然と突っ込む。握り締めた拳をそのままに、クリスタトスの胸めがけて一直線に突進する。
「どりゃー!一・撃・必・殺・ッ!漫画なら大ゴマの4隅にそうでっかいフォントで書かれるくらいのICHIGEKIをお見舞いしてくれる!」
怒号と共に腕を振るう!この一撃に全てをぶっかけ…じゃなくて、賭けるタイツ!
しかし、突っ込んできたのは彼女も同じ――飛び道具を追いかける格ゲーの基本スタイルをとってクリスタトスが迫る!


268 :名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 16:47:49 ID:Flf/T4JN
タイツとクリスタトス、両者が真正面からぶつかり合う!
体格的には前者の方が遥かに有利。クリスタトスは大柄だが鍛えてあるようには見えない。筋肉隆々のタイツには所詮及ばない。
だが彼女は肩からタイツに当たりに行く。一瞬、また暗器を隠し持ってるのでは、と思ったタイツだが、彼女は普通に攻めてきた。
初手はタックルの姿勢から腕を大きく振り上げる手刀。弧を描くその"太刀"は切れ味が良さそうだ…タイツは回避を選んだ!
「接近戦を挑んでくるとは予想GUYだぜ…っと、アンタはおにゃのこだったな」
「女は奥が深いものよ。浅ましいヒーローさん――今こそ"血風"の2つ名の意味を教えて上げましょう…」
ぞっとするような声音で告げるクリスタトス。羽織ったトレンチコートが大きく翻り、裾がタイツに向かってくる。
先の手刀と同様、まるで刃のように襲い来る。目くらましでないと察したタイツは身に降りかかるコートを大きく避けた。

…追撃は続く。勢いよく身体を回転させるクリスタトスの足元で「カチン!」という硬い金属質の音が鳴る。
次の瞬間、回し蹴りがタイツの首〜顔めがけて繰り出される。その靴の踵の辺りに銀色に光る尖った何か…仕込みナイフだ!
今度は避けずに腕で(刃の付いた部分を避けつつ)足の一撃を受けて流す。大した衝撃はなく、割と非力だ。

……更に連続攻撃。タイツの喉を水平に切り裂かんとする手刀。さすがに喉で手を受けるわけにはいかない。
正確に見切って軽く上体を引き、先端を避ける。立て続けにもう一方の手が襲い来るが、今度は振るわれる途中で突きに変じた。
真っ直ぐタイツの心の臓を抉らんとする槍の如き一撃を更に身を捻って回避するタイツ。
刹那、彼女の手が突きから更に変わって薙ぎ払うように振り切られたが、タイツの回避の前に虚しく空を切った。

――どうやら彼女の攻撃は"斬る"ことを目的としたものらしい。それなりに速度はあるが力がない。
だが速度だけは、ある。攻め方を分析する間にもコートの裾が馬鹿でかい刃となって振るわれる。
よく見ると、裾の縁一面に複数の刃がずらりと並んでいるのが見える…スカートカッターだ!当たれば当然、身を裂かれる!
それも何なく避けるタイツ!だが、反撃する暇も与えず次の蹴りがローリング・ソバットとなって放たれる。勿論、刃付きだ。
前例に倣ってそのスネの辺りに腕を当てて対応するタイツ。力強く来た方向へ押し返す!

足を返された反動でよろめくクリスタトス。だが、反動で動くのかは彼女だけではない、コートも派手に翻る。
その軌道は内部に刃がびっしり刃のように並んでいる重みでぶれることなく綺麗な半円を描いて翻る。非常に性質(たち)が悪い。
危うく顔を真っ二つにされそうになったタイツはここで初めて慌てて回避した…だが、完全に避けきれず、肩を裂かれる。
浅く切られただけだが、傷口からは見る見るうちに血が滲み、確かにダメージとなってタイツの脳に刺激が伝達する!
「げっ!わりと痛ぇっ!」
「ふふ、このまま…血祭りにあげてあげようかしらぁ…」
タイツの肩口を見て僅かに興奮した様子でクリスタトスが不気味な笑みを浮かべた。


269 :名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 16:49:58 ID:Flf/T4JN
クリスタトスの連続攻撃は傍目からすれば独楽の様に見える。
手刀・足・マントが代わる代(が)わるタイツへ突きつけられる。それを全て捌くタイツ。その2人を壁際で見るミユキたち。
「あれを相手にするのはゴメンだわ。あの女の刃にかかれば血を纏った風が舞い、相手は死ぬ…ってわけ?」
目の前でギュンギュン勢いを増して展開される攻めを見てミユキが身震いする。
さほど広くない室内でも2人は巧く立ち回り、決して壁際に追い詰められることはない。2人して器用に動き、螺旋を描く。
ブロフェルドは黙って2人の様子を見つめている。指先で長く垂らした灰色の髪を弄りながら真剣な表情で見入っている。
もし彼女がクリスタトスの相手なら、接近戦に付き合わず飛び道具で攻めるだろうか、とミユキは思った。
そんな見物人を他所に、タイツとクリスタトスの攻防戦は続く――…

「ちっ!意外と…やるなッ!」
そう苦しげに言いながら全く呼吸が乱れてないタイツ。彼は一撃必殺の時を待っている。
迂闊に手を出しては腕を落とされ足を裂かれ首を切られる。常に前方は刃の嵐だ。手数は多くは踏めない。一発で決めねば…
「まだまだこれからよ。まだまだ…まだまだまだまだ……ふふふふふ…」
タイツの狙いに気付いているのかいないのか、判然としないクリスタトスの顔にも汗一つ浮かんでいない。
激しい動きを絶え間なく続けているにもかかわらず、平気の平左だ。タイツが倒れるまで、何度でも試みを繰り返す…

だが、同じことを繰り返すばかりが能ではない。彼女のスタイルはあくまで…暗器だ。
「フュッ!」…攻めの合間に細かい何かがクリスタトスの口元から放たれる!銀色に光る、数本の短い線?―――毒針ッ!
「うおっ!?」気付いたタイツは慌てて顔を背け、手の平で小さな針を受ける。次々に刺さる針。だがあまり痛くはない。
眼を潰しにかかったそれらは手で受け止められることで大した被害はならなかった。安心と焦りがタイツの心に生じる。
だがその安心を破り焦りを助長するクリスタトスのナイフ攻撃!タイツは再び刃を粉砕せんと拳を横から振るう。
豪腕が鞭のようにしなって黒い刃を打ち砕く寸前で、その刃が小さな作動音とともに"飛んだ"!スペツナズナイフだ!
しれでもタイツは冷静に対応する。筋肉の鞭は再び波打ち、飛んできたナイフの先端を地面に叩き落した。
クリスタトスは柄を脇に捨てて回し蹴り・スカートカッターを連続して繰り出してけん制してくる。
彼女の靴には前後(爪先と踵)に刃が備わっていたがタイツの身体を切るには至らない。大きく振り回されるカッターも大外れだ。
回転するクリスタトスの体。その際にがら空きになった茶色いコートの背中…そこに、タイツは勝機を見出した!

「今だ砕ッ!」奇襲でないので叫んでもOK牧場な台詞を張り上げてタイツが今、必殺の『ギャラクティカなんとか』を放つ!
肉の腕は大筒と化し、鋼の拳が唸りを上げる!その前には、クリスタトスの細い背中などベニヤ板の如く砕かれることだろう…
そして数瞬後に、狙い通りタイツの拳がコートの背を打ち…服越しに彼女の肉の壁と骨を砕――かなかった!
"ボフッ"という柔らかく曖昧な衝撃。それが彼女"抜き"のコートを撃ってしまったということだと…タイツは即座に察知した。

はっとなった時には、コートの背を越え、レディースーツ姿のクリスタトスが高々と跳び上がっていた!


270 :名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 16:52:16 ID:Flf/T4JN
まるでスローモーションのような光景。いつの間にか刃が仕舞われていたクリスタトスの革靴がタイツの膝を踏む。
その反動でより高く跳ぶ。タイツが見上げた彼女の顔は喜びに満ち満ちている。
彼女の両腕の先には大きな銀色の鉤爪が飛び出ている。スーツの袖を突き破って生えた獰猛な刃を備えた腕を広げた姿は
猛禽類のような恐ろしさと美しさを内包している。だが、見惚れている暇はない―――
鋭い爪、いや…凶器の宿った羽無き翼が閉じられる瞬間、僅かに歪んだクリスタトスの笑顔には…途方もない狂気が宿っている。
「死ね」とも言わず、笑い声も上げず、静かに、だが神速で左右からタイツを分断せんと迫り来る銀の翼。

その脅威を前にタイツは…その場を動かない。戦慄や恐怖で臆しているのではない。時は、満ちたのだ。
クリスタトスは笑っている。ホンの少し…先の歪みとは別の変化があった。跳んだ反動で広がる灰色の髪の裏で、
隠された左の黒い眼帯がずれた。だがそれだけだ。別段、気にすることもない変化だった。
タイツはその場で力を僅かに溜めると…

「覇ッ!」――自らも両腕を振り上げた。その姿は翼というよりは戦斧を勇ましく振るう姿に近い。

バギィン!……ひどく険しい破砕音。少なくとも、肉の腕が砕ける音では、ない。
「ぎっ!?」
ここで、初めてクリスタトスが悲鳴らしい悲鳴を上げた。笑顔は笑ったまま苦痛に歪み、滑稽な表情を成す。
その両腕は、脆くも粉砕されていた。銀の翼はキラキラと淡い反射光を輝かせながら舞い散り、それに朱が混じる。
彼女の白い手もまた、斧でかち割られて細い指があらぬ方向へ曲がっている。爪が割れて血が流れて飛ぶ。
…それほどのダメージを与えてもなお、タイツの迎撃は収まらない。左右双方の鉤爪を討った豪腕はそのまま静かに身体の中心へと
収束して、2つの斧は一つになる。唯一つの"一撃"と、化す。手の表面がタイツ越しに赤くなるほど強く握られる拳!
その両の拳が超必を表す眩い閃光を"キラーン"と放つ!狙いは一点。クリスタトスの右胸。すなわちオッパイ!
腕が砕かれた痛みと衝撃で動けないクリスタトス…狂える瞳はなお狂喜している。その異相を、タイツは真正面から睨みつける!

『風殺―――金剛拳ッッ!!!』
…嗚呼、なんというデビルリバース。触れただけで即死もの。これは間違いなく最終判決懲役200年。
実は『神・砂・嵐ッ!』とどっちか迷ったんだがサイレント・マジョリティを考慮した。意味は各自辞書を引いて確かめてくれ。

…轟!と放たれた拳が風を呼び、スクリュー気味に回転しながらクリスタトスに向かう。
その風は局地的な死の竜巻と化して場を荒らす。その勢いでコートや血が舞い上がった!
避ける術も防ぐ手段も無く、全くの無防備でその制裁を一身に受け止めるクリスタトス!
ドン!とタイツの拳がクリスタトスの胸に狙い通りぶつかる激しい衝突音が辺りに響いた!

一撃をまともに浴びた彼女の右胸は蹴られたサッカーボールのように大きく内部に向けて凹む。その中をも巻き込んで…
「――がはっ!」派手に血を吐くクリスタトス。砕かれたのは胸だけではない。彼女の身体は、たった一撃で貫かれたのだ。
そしてしばらく、彼女の身体はタイツの突き出された両腕で刺し貫かれたかのように中空に留まっていた。


271 :名無しさん@ピンキー:2007/02/21(水) 16:54:15 ID:Flf/T4JN
…先ほどまでの戦いから一転。静寂が灰色の室内を支配する。ミユキもブロフェルドも思わず息を呑む。
その眼前で、タイツがクリスタトスを宙吊りにしていた腕を収めた。力なく落下するクリスタトスの肢体。
タイツの起こした風で"バサッ"と舞い上がったコートも、そのまま地面に落ちてカッターの仕込まれた部分が耳障りな衝撃音を立てる。
それと同時に、両翼をへし折られたクリスタトスの惨めな身体が床に落ちて弾力のある音を上げた。
「がはっ…はっ……はがぁッ……」
叩きつけられた彼女はその場で転がって傷みに身をよじらせた…タイツの勝利が確定した瞬間だった。
クリスタトスはそれまでの姿勢が嘘のように身を丸くし、直撃を受けた胸に手をやる。だが、そこに元の膨らみは存在しない。
大きく穿たれた穴。あまりの威力に変形して戻らなくなった右胸からは血液が止め処なく漏れ出て灰色の床を朱に染める。
「は…はっ……はははははははッ……ッ」
それでも、この女は不適に笑う。時折、笑うとともに身体が痙攣してその弾みで口の端から血が流れ出る。
ミユキはその様にゾッとなって隣にいるブロフェルドの袖を掴んだ。彼女はそのミユキの手に己が手を添える。
タイツも不気味に思ってクリスタトスを見つめる。必殺の一撃をぶつけて、これ以上の攻撃が必要とは思えないが油断はしない。
「なにが可笑しい。思いっきり迎撃されて壊れたか?」
「は…はばッ……あははははは……痛い。いたぁい。あははははは………」
寝返りを打って大の字で仰向けになり笑い続けるクリスタトスはどう見ても狂っている。
灰色の髪は大きく乱れ、元あった美しさはすっかり失われている。その傍で、眼帯が静かに外れて落ちた…
「!」タイツは初めて露わになった彼女の左眼を見てギョッとした。その左眼は、右の黒とはまるで違う"金色"だった。
「あはははは…痛い……ほんとぉに……あは……はははぁ……」
じょじょに勢いを失う彼女には、負けたことに対する感慨などまるで感じられない。淡々と笑い、自身の苦痛を嘆き続ける。
その眼に涙が浮かぶ。が、涙は彼女の右目からしか流れなかった。左の金色の眼は無感情に上――天上を見つめている。
「…おい」
奇妙に思いつつ恐る恐る声をかけるタイツ。もしこのままずっと笑い続けてるのならトドメでもさしてやろうか、と思っている。
が、その必要はないようだ。勢いを失くしたクリスタトスの笑みは、傍にいるタイツの耳にも届かなくなるほど小さく萎んでいく。
(そろそろ逝くか?…結局コイツ抱いてないなぁ)
そんなことを考える。流石の変態タイツでも血塗れで瀕死の女幹部に方天戟をブチ込む趣味はない。
女戦闘員を自慢のエクスカリ棒(バー)で逝かせるのは望むところだが、犯ってる内に素で死ぬとかは引く。微妙なラインだった。
その耳に密やかな声が届く。弱弱しいが確かに、眼下の女の声だ。彼女は無事な方の乳房を左手で掴みながら呟く。
「……ふふふ……死ぬの……私。……でも………楽しみは―――……………っ……」
台詞を最後まで言い切ることなく、クリスタトスの唇の動きが停止する。流れていた涙も止まる。
左胸を揉んでいた手に力が無くなり、その場にパサッと落ちた。

…それっきりクリスタトスは動かなくなった。

遂に生命活動を止めたかとタイツが思った直後、彼女の見開かれたままの瞳の、その左眼が突如"蠢いて"露出した。
「―――なんだぁ?」
不気味な光景に思わず後退するタイツ。クリスタトスはどう見ても死んでいる。金の瞳の眼球だけが独りでに動いているのだ。
その眼は彼女の目蓋を抜けて顔から降りると、3本の足を生やして逃げていく…よく見ると、それは金細工の施された金属の足だ。
「ひゃあっ!」 目玉が"キャリアー"に運び去られる姿を前にしたミユキは短い悲鳴を上げて飛び上がった。
足付き目玉はそのまま、ブロフェルド乱入時に扉が消し飛んだ出入り口へゴキブリのような動きで向かい、廊下の闇に消えていった…

メンバーのみ編集できます