391 :名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 09:47:36 ID:brrs14eg
第3話の弐「ブラッドプールはミジンコのかほり!」

「そんな馬鹿な!」
うづきはたじろいだ。確かに心臓を突き刺したはずだ。
その証拠に、うづきの刀は血でまみれているし、
おうま自身の胸の辺りは血で真っ赤だ。
「酷いですうづき様」
だがおうまは平然とした顔でこちらの話しかけてくる。
よく見ると口元に血を拭った後がある。
「酷いです…」
おうまは無表情から徐々に泣きそうな顔に変わっていく。
うづきは背筋が寒くなる思いがして刃先をふてん丸から変え、おうまに向けた。
その手元は震え、刀身がカチカチと鳴る。
「どうした?ふるえてい「黙れ!!!」
背後から茶化される気配がして即座に喚く。訳がわからなかった。
「おうま…何故生きている!確かに殺したはずだ!」
「はい。確かにうづき様に殺されました。殺されましたとも」
二度、殺されたと連呼する。その声に怨嗟は感じられないが根に持っているのは明らかだ。
「生き返ったとでも言うのか!」
「…違います」
「ならなんで生きている!おかしいだろ!」
「はい。おかしいですよね」
ぐす、と鼻水をすするおうま。うづきの背後でふてん丸が何か言いそうにしたがまた怒鳴らそうなので止めた。
うづきも相手を追いつめている事に気付いていたが、それ以上に「心臓を刺されて倒れたのに痛そうにもしていない」おうまが、
不思議で怖くてたまらなかった。逃げるより今はその事で頭が一杯だ。
「うりゅしゃいなぁ〜。静かにしてくだしゃい〜」

と、舌ったらずな声が傍の牢から聴こえてきた。
ふてん丸の記憶が確かなら、そこはお騒がせ忍者の牢だ…


392 :名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 09:48:12 ID:brrs14eg
「にゃんですかぁ〜」
「!…あしも!?」
うづきはあしもがその牢にいるのを知りながらも驚いてしまった。
先刻見た時は熟睡していたくせに、こんな時だけ起きてくるとはいい加減な、と苛立ちをつのらせる。
「あ、うづき様。あとふてん丸さんに………おうま様!?!?」
眠たそうな顔で順繰りに相手を確認していたあしもはおうまに目が止まった途端「ひっ」と唸った。
「あしも様。おはようございます…」
半ベソで牢の中のあしもにぺこりと頭を下げるおうま。あしもは戸惑ってあたふたしている。
『あしもがおうまに恐怖感を?…というか"様"付け?』とうづきは気になった。
「や、やややや、やばいですうづき様。おうま様がああああ、あたしたちを根絶やしににににに」
支離滅裂といった風で慌てるあしも。続いて、
「ここ殺される死なされる助けてお頭〜」
ギャース!と気炎を吐いてどこぞに救難信号を発信しまくっていた。
「その様子だとお主はおうま殿の術を知っているようだな」
ここでの"鬼"とは、あの獣化のことだろう。
『こちらも何故に"殿"?』などと思ったうづきだが先にあしもを問い詰めることにした。
「あしも!あなた、おうまの術を知ってるの?」
「忍法・微塵!にんぽう・みじんっ!に〜んぽ〜う・みっじぃぃぃんっっっ!!!」
混迷の極みを見せ自慢の自爆技を叫びまくるも肝心の爆薬が無くて無意味に終わる。辺りに石ころを投げるだけだ。
「相変わらず何も考えてなさそうで面白いです、あしも様」
泣き顔でくすくす笑うおうま。自分が混乱の元であることは気にも留めてない様子だ。
「ひいぃ!ごめんなさい許しておうま様〜。どうか鬼にならないで〜」
土下座どころか全てを地に投げ出して哀願するあしも。眼前の牢など防衛線にすらならないのを知っているのだ。
「あしも様もうづき様同様に私を困らせるのですか?」
「め、めめめ滅相もない〜」
「ならブチ殺されてください」
「い、いやですぅ」
「ブチ殺します」
「ひぃ〜(泣)」
ふてん丸はそのやり取りを見てついうっかり笑ってしまった。うづきは笑えぬ現状に歯噛みするしかなかった。

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