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呼吸の生理学 by check it out
呼吸の生理学 by rqmgzuzcude

呼吸の生理学

ベッドサイドで呼吸を観察するときに気づくポイントは速さ、深さ、リズム、呼吸の音である。

 以上のような記載がWillis NoteのCHESTの項のPATTERNS OF RESPIRATION
Physiologyの冒頭には書かれている。したがって、「速さ(頻呼吸・徐呼吸)」「深さ」「リズム」「呼吸音(呼吸音・複雑音)」をみることが、肺の診察の中心となる。あとは、これらに関連して、胸郭の左右差も、胸部・肺の疾患を診断する上で助けとなる。

所見の定義とそのテクニック

(1)「速さ(頻呼吸・徐呼吸)」
 正常値:8-20回/分。頻呼吸はHyperventilation may be a primary disturbance initiated by a an overactive respiratory centre.(過呼吸は、過剰に働いた呼吸中枢によって始められた一次障害かもしれない) This induces respiratory alkalosis.(これは呼吸性アルカローシスをうむ。) On the other hand, hyperventilation may be compensatory for metabolic acidosis.(他方、過呼吸は、代謝性アシドーシスの代償かもしれない。)
(2)「深さ」
大呼吸 代謝性アシドーシスの代償
浅い呼吸 
(3)「リズム」
規則的 通常の呼吸や、種々の呼吸障害で見られる。
規則性のない呼吸(ataxic breathing;失調呼吸) 脳幹障害。また呼吸停止が差し迫っている。
群発呼吸(cluster breathing)  脳幹障害。また呼吸停止が差し迫っている。
無呼吸呼吸(apneustic breathing) 長い無呼吸が吸気のあとにあるもの。脳幹障害。また呼吸停止が差し迫っている。
チェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes)徐々に呼吸が浅くなり、ついには無呼吸となるが、再び浅い呼吸が始まり呼吸が深くなっていく呼吸が繰り返される呼吸。脳の酸素欠乏状態で呼吸中枢の働きが不十分なときやアシドーシスに起きる。これは、血中の二酸化炭素分圧の変化の感知が遅れてしまっているためと考えられる。高齢者でもよくみられる。
ビオー呼吸(Biot)呼吸が突然中断され無呼吸となる呼吸。中枢神経の障害で呼吸中枢の興奮性が異常に低下したときに現れる。
(4)「呼吸音(呼吸音・副雑音)」
 正常な呼吸音は、末梢では肺胞呼吸音が聴取される。同じ肺胞呼吸音でも、左右差があると、病的である。すなわち、気胸・胸水・無気肺があると、患側では減弱する。広範な肺胞や気管支の浸出液があると患側で肺胞呼吸音が増強されるのではなく、気管支呼吸音が聴取される。正常な肺胞呼吸音は吸気で聴取される。気管支呼吸音は呼気で聴取される。気管支呼吸音が聴取される別の肺の疾患はCOPDである。
 ヤギ音(egophony)というものがあるが、これは「アー」と患者に発声させているのに「エー」と聞こえる現象で、肺炎などで肺胞・気管支内が浸出液などで満たされると聴取される。

 副雑音は、crackle、storidor、wheeze、rattlingなどがある。健常者には認められない音である。Crackleは、気管支の浸出液や間質の肥厚でおこる。StoridorとWheezeは、詳しくは後述するが、気道の狭窄音である。もちろん、これらの音がなくても気道狭窄は否定できない。これについても後述する。

 実際の臨床の現場では、Willis先生の指摘された4つのことに注意することに加え、いくつかの付加項目がある。
(a)胸郭の動きの左右差
(b)陰圧換気と、陽圧換気
(a)胸郭の動きの左右差
 呼吸を観察するときには左右差にも留意する。これは、以下の状態を診断するのに有用である。
 気胸、広範な無気肺、大量胸水、フレイルチェスト、広範な肺炎
 外傷であれば、気胸・フレイルチェストの可能性があり、時として致死的な傷害のサインである。内因性でも、肺の疾患の重篤な状態を教えている可能性がある。
(b)陰圧換気と、陽圧換気
 肺の生理学としては、空気の肺への出入りの生理学がある。すなわち、陰圧換気と陽圧換気のことである。
通常は、横隔膜や肋間筋、場合によっては前斜角筋・胸鎖乳突筋などの補助呼吸筋を使うことにより、胸腔を拡大させることにより陰圧をつくり、唯一の空気の通り道である気管を通って肺に空気は流入する。
吸気時喘鳴・呼気時喘鳴や吸気延長・呼気延長は、この換気方法を熟知していると理解が簡単である。
上気道狭窄があると、これは胸郭外の狭窄で、吸気はなかなかできず、呼気は比較的容易である。吸気の際は、気管がさらに狭窄し吸気は延長し、さらに音を発する。この音がstoridorである。
下気道狭窄があると、これは胸腔内狭窄で、吸気は比較的簡単であるが、呼気がむつかしくなる。呼気の際はなかなかできず呼気が延長する。さらには音を発し、これがwheezeである。
Storidorであれ、wheezeであれ、狭窄の重症度ではあまり重要でないときがある。つまり、吸気延長や呼気延長など、音でなく呼吸の長さがより重要なのである。重症喘息発作の“silent asthma”はこのことで納得がいく。
しかし、いつ聞いてもwheezeが同じ場所で聴取されるときは、そこに“持続的な狭窄”があると考えられ、肺癌などがあることを疑う。
気管挿管し、人工呼吸器管理となった患者では陽圧換気となるが、陽圧換気でも肺への空気の出入りは当然可能であるが、陰圧と陽圧では生理学的に、また臨床的に異なった展開となりうる。
たとえば、気管や気管支に痰などの浸出液など狭窄物があれば、陰圧では笛のように音を発することになるが、陽圧では、健常な肺胞に空気は入りやすいため、音を発しない可能性がある。
また、上記にも少し述べたように、陽圧換気では、健常な肺胞に空気が入る傾向にあり、病的は肺胞は全く膨らまないという状況となる。さらに陽圧換気は、静脈還流を低下させるので、低血圧や、末梢の浮腫の原因となる。人工呼吸器管理をしている患者で浮腫が多いのはこれがひとつの理由である。また、人工吸気患者で血圧が低いときは、緊張性気胸や心筋梗塞発症によるものを考えなければならないが、結構陽圧換気による(≒auto PEEP)静脈還流低下による心拍出量低下が存在している。

References: 参考文献


The Washington Manual of Medical Therapics 31 th Ed
Harrison's Principles Of Internal Medicine
THE ICU BOOK
標準生理学
2007年08月17日(金) 22:24:25 Modified by willisnote




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