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もし、世界で一番大切な人が消えてしまったら────。



「雪歩?」

私に名前を呼ばれて微かに体を震わせた。振り向く雪歩と視線が合う。
さっきからずっと小さな本を眺めていた雪歩は私を見て力なく笑った。
それを見て「何か」があった事を私はすぐに察する。
困ったコだなぁ、なんて思いながら雪歩のそばに行く。
手を伸ばして引き寄せて抱きしめると、小さく息を吐いてそのまま私の服の袖をぎゅうっと握った。
雪歩はいつも自分の辛い事は内緒にする。
嬉しい事、楽しい事はすぐに何でも話してくれるのに辛い事や悩み事はすぐに隠してしまう。
私はそれに気がついてからよく雪歩を見るようになった。
何かを隠してしまわない様に。
それを知る為には一番近くに居なきゃいけないから、私から告白して付き合う様になったんだけども。

「…何かあった?」

私は出来るだけ優しく、雪歩が萎縮してしまわない様に髪を撫でながら小さな声で呟く。
すると雪歩はふるふる、と首を振って私から少し体を離して本を見せた。

「これにね、世界で一番大切な人が消えたらって書いてあって、色々考えていたの」
「大切な人って?」

私の問いにぽかんとした後、ちょっと怒ったような顔をしてまたぎゅうっと私に抱きつく。
さらさらと流れる髪からシャンプーの良い香りがした。

「…春香ちゃんに、決まってるよ?」
「え、あぁ、そっか」

素で自分ではないと思っていたからなんだか恥ずかしくなってぎゅうっと抱きしめ返した。
だって、なんか、ねぇ?まさか、とか思う訳で。恋人として自信がない訳じゃないけど。
苦しいのかトントン、と腕を叩かれてそれに気がついて力を緩める。

「大切な、…春香ちゃんがもしいなくなったら私も消えちゃいたいなって思ったの。
 でも結局私も消えても春香ちゃんに会う事が出来ないんだよね、きっと」
「そうだね、…そうかもしれないね」
「でも春香ちゃんのいない世界なんて生きてても仕方がない気がするし…。
 結局そのまま私が存在していても消えても辛いのには変わりないなって思ったら
 なんだか悲しくなっちゃって…」

心の底から困ったような顔をして一生懸命何が正解なのか考えてる。
自分は凄く愛されてるんだな、なんて思ってなんだかくすぐったくて。
悩み続けている雪歩の隣で私は笑ってたりする。

「…私は、もし雪歩がこの世界からいなくなったらずっと空に歌い続けるよ!
 空は全ての世界に繋がるからきっと雪歩にも届くはずだよ!ね?
 …まぁ〜、歌はうまくないかもだけど…気持ちがあれば何とか…?」

雪歩は私の言葉に目を丸くした後、急に赤い顔になって両手で顔を覆った。
あれ、おかしな事言ったつもりなかったんだけどな。

「雪歩…?」

覆ってる手をはずすと雪歩は変わらず赤い顔で笑っていた。
「私の大事な人が春香ちゃんで良かったって思った」って私の耳元で囁くから
たまらずまたぎゅっと抱きしめた。そして二人で声を上げて笑う。

「そういえば、その本雪歩のなの?」
「ううん、小鳥さんの机の上に置いてあったからちょっと借りて読んでいたの」
「そうなんだー」

「………そろそろ着替えたいんだけどいいかしらね…」

振り向くとジャージ姿でげんなりした様子の伊織。
雪歩は驚いて私から離れたけど事務所のみんなは私たちの事知ってるから今更なのに。
手持ち無沙汰になった手が寂しい。

「いちゃいちゃするなら家でしなさいよ、邪魔でしょうが」
「もしかしてずっと待ってたの?」
「一回上に来たけど取り込み中だったからまた下に戻ったわよ!
 それでもういいかなと思って戻ればまだやってるし…もう待てないから入ったわ」
「ご、ごめんね…?」

雪歩はソファーから立ち上がって本を机の上に戻した。

「春香ちゃん、帰ろう?」

そして私に手を差し出した。私はその手を笑顔で握る。

「じゃあね!伊織!また明日」
「お疲れ様ぁ」
「ハイハイ、お疲れ様」

階段を降りてる時にふと思う。
大切な人が消えてしまわないようにこうやってずっと手を握ってるってのはどうかな?って言ったら
雪歩はどういう反応するのかな?



バタン、と閉まる扉。
やっと着替えられるわ。全くどれだけ待ったと思ってるのよ。
このスーパーアイドル伊織ちゃんが気を使って階段何往復したと思ってるの。
なんて怒った所で春香はきっと笑って「ごめんね〜」って言うだけだろうし、
雪歩はきっと泣き出すかもしれないので責められない。

ふぅ、と一息ついて更衣室へ向かう。
ロッカーを開けると目の前には白いウサギのキーホルダー。
少し前に好きな人から貰った宝物。
いつも肌身離さずつけていたいけど、無くしたら大変だし、こんなモノ買った事のない私が持ってたら
色々聞かれるだろうしからかわれるかもしれない。特に亜美真美辺りに。
ここなら誰も開けたりしないしほぼ毎日見る事が出来るから。
人差し指でウサギの耳を軽くつついて思う。
こんな所に一人にしてごめんね?そして頭を軽く撫でた。

着替えて事務所に戻るとさっきは気がつかなかったけど誰もいない。
社長はいつもいないようなもんだし、プロデューサーは感謝祭準備で忙しいと言っていた。
小鳥もいないなんて珍しいわね。
そう思いながら小鳥の席にいくとそこには置き手紙。

『備品など買ってきます。無人には出来ないので帰る時は誰かと入れ替わりで帰ってね☆』

はぁ?
誰かが次に来るまで帰れないって事?
何考えてるのよ、ここの事務員は…。
頭を抱えて重いため息をついたってその声が誰もいない事務所に響くだけ。
仕方がないので暇つぶしに目に付いた机の上の本を手にとってパラパラとめくった。

「世界で一番大切な人が消えてしまったら、ね…」

呟いてぼんやり思う。
私の大切な人はしょっちゅう姿を消してるような気がする。
それは俗に言う「迷子」と言うものだけど。
年上でしっかりして見えるのにいつもワケワカンナイとこさ迷ってて心配されて目が離せない。
そんな人の事好きになってしまった自分もよくわからないのだけど
好きになってしまったから仕方がない。
いつも言いすぎちゃったりして後悔してしまう私にいち早く気がついてくれて色々話を聞いてくれて。
妹にしか見られてないんだろうな、なんて思うけどいつか想いが届くように努力はしているつもり。
だけど。

「…何考えてるのかイマイチわからないのよね…」

次のページをめくろうとした所で携帯電話が鳴る。
迎えの車からかしら、と思ってディスプレイを見るとそれは想い人からで。
急に早くなる心臓の音を感じながら通話ボタンを押す。

「ど、どうしたのよ?」
「あ、伊織ちゃん?良かった〜繋がって。あのね、恥ずかしい話なんだけど…」
「…あずさ…、もしかしてまた迷子?」
「よくわかったわねぇ、そうなの。ここは一体どこなのかしら?」
「全く、な、何でいつも私に電話をかけてくるのよ!」
「そうねぇ、伊織ちゃん頼りになるし、何故かいつもこうなった時伊織ちゃんの顔が浮かぶのよね」

人間は単純で、自分はそんな事はないと思っててもそんな事を言われたら嬉しいもので。
好きな人に言われて嬉しくないわけ、ないじゃない。

「じ、じっとしてなさいよ!GPSで探してあげるから!」
「わかったわぁ、待ってるわね〜」

電話を切って鞄を手に取り、持ってた本を机の上に放り投げる。
ガサっと当たった紙を見て「しまった」と思った。
誰かが来ないと出られないんだった。
まったくもう、あの事務員今度あったらどうしてくれようか。

時計を見て、携帯のディスプレイを見て、そして焦る。
はやくはやく、誰かこないの?
そんな心の声が聞こえたのか事務所の扉が開く。
顔を上げるとそこにいたのはやよい。
その姿を見てすぐに私は駆け出していた。

「あ、伊織ちゃん、おはよー。もう帰りなの?」
「やよい!いい所に来たわ!私は帰るから後宜しくね!」

ポン、と肩を叩いて事務所から飛び出していく。
「おつかれさまー!」という後ろからのやよいの声に右手で手を振った。

大切な人が消えてしまったら、必ず探し出してあげるんだから!待ってなさいよね!



すごくすごく急いでいたけどどうしたんだろう?
首をかしげてその後姿を見送ったけど少しの疑問は残る。
いつもはあんなにどたばた走ったりしないのにちょっと意外な一面かも?

いなくなった階段の下を見ていると見慣れた姿が現れる。
私と目が合うと犬みたいに嬉しそうに駆け上がってきて、その姿を見た私も思わず笑ってしまう。
そしてさっきよりも自分胸の音が大きくなる。
だって会えるとすごくすごくうれしいから。

「おはよー!やよい!今来たばかりか?」
「おはようございます、響さん!私も今来たところです!」
「そっかー、やよいは今日も可愛いな!」

そう言われて頭を撫でられてそれが心地よくて目を閉じる。
すると頬に柔らかい感触がして目を開けるとすぐそばに響さんの顔があって。
そして、その、あの。

「き、きすはこういうところですると誰かにみられちゃいますよ…?」
「やよいが可愛いのがいけないさー。本当はココが良かったけどね」

そう言って人差し指で私の唇を撫でる。
そしてにぃ、っとまた笑う。
顔が熱くなって赤くなってるのがわかるけど響さんには勝てないのはわかってる。
初めてであったときから好き、って言われてて、最初は信じられなかったけど
ずっと言われ続けてわかった。私も響さんのことすきなこと。
響さんはきっとたくさん飼ってるペットと同じ感じで私のこと好きって言ってるのかと思ってた。
付き合ってから、そう言ったら「そんなわけないだろー…」ってがっくり崩れ落ちた響さんはちょっと可愛かった。

「入ろっか?」
「…はい」

手を差し出されてそれを握ると優しく引っ張ってくれて。
響さんにはかなわないなって思う。

「なんだ?誰もいないじゃないか。…あ、なんかある。なになに?
 …ってなんだよこれー、誰かが来るまでここから出られないみたいだぞ?」
「困りましたー…、私もうすぐボーカルレッスンなのに…」
「自分もダンスレッスンがはじまっちゃうぞー…」

顔を見合わせてお互い困り顔。
でもふたりとも自分が残るから先に行っていいよ、とはならない。
きっとふたりとも同じ事考えてるからなのかなって思う。
できればもうちょっとふたりきりで、居たいなって。

「仕方ないなー。ん?これなんだろ?……」
「響さん?」

本を手にとって急に黙り込んでしまった。
どうしたのかな?
後ろに回りこんで背伸びをして覗き込む。

もし、世界で一番大切な人が消えてしまったら。

「そんなの…そんなのやです!」
「うわぁ!びっくりしたー。急に大きな声出すからびっくりしたよ」
「だって響さんが消えちゃうんですよ?そんなの…やです…。
 ずっと、ずっと一緒がいいです…」

響さんと会えなくなっちゃったら寂しい。
そんなこと考えたくもない。
悲しくて悲しくて想像しただけで泣けてきちゃう。

「はぁ…。やよい…、そんな可愛いこというの反則だとおもうぞ…。
 耐えてたのに我慢できなくなるだろ…」

手に持ってた本をポン、と投げて振り向いて響さんがぎゅっと私の背中に手を回した。
それに身を預けていたけれど握ってる響さんの手が少しだけ震えていた気がして。
顔を上げると目が合って響さんが困ったように笑った。

「自分もやよいがいなくなったら嫌だな。悲しいし苦しいし。
 だからこうやっていなくならないようにずっとしていたいな」
「はいぃ…」
「でもいなくなったら一生懸命探してやるぞ?」
「響さん、探すの得意じゃなさそうなので少し不安です…」

いつも響さんの大事なコたち逃げちゃってるし…それをいつも探してるし。
ちょっといじわるしてみたくてそう言ったら「参った」というような表情で、
「それは言わない約束だぞ…」と顔を隠しちゃった。

「大丈夫ですよ!私が響さんのことみつけますから!
 私、かくれんぼで探すのとか得意ですから!」
「じゃあ頼むよー。自分もやよいが見つけやすい場所にいるからな!」

目が合ってあはは、と笑いあって。二人揃って困り顔。
すごくすごく楽しい時間だけど、どうしようもうこれ以上は事務所にいられない。
時計を見るとお互いレッスンの時間まで後わずか。

「おはよーん!…どしたの?ふたりとも」

バン、と勢いよく扉が開いて元気よく亜美が入ってきた。
それを見て響さんと目が合って二人で胸を撫で下ろして。
理由を亜美に話すとグーをした右手で胸をポン、と叩いた。

「後は帰るだけだし今日は暇だからピヨちゃんが来るまで亜美が待ってるよ!
 だからやよいっちたちは早く行くといいよー」

そう言って鞄から飴を取り出して舐めながらソファーに寝転がった。

「んじゃ、行くか?やよい」
「はい!」

着替えて、支度をして事務所から出るときに私は響さんを呼び止める。
「ん?」と疑問そうな顔の響さんに向けて背伸びをして軽く頬にキスをしてみた。
もちろん、亜美には見えないように。

「行きましょー!響さん」
「お、おぉ…。やよい…、今日は反則ばかりだぞ…」

照れる響さんの手を引いて張り切ってレッスンに行ってきます!

お互いが探しあって結局会えない、って事にはならないようにしましょうね?



ピヨちゃんもぶようじんだよね。
事務所をからっぽにするなんてさ。姉ちゃんもいないみたいだし。
一人きりの事務所っていたことないからなんか新鮮かも?
…でも誰もいないのはつまんない。

テレビをつけてみたけど難しそうなニュースしかしていない。
あとはお料理番組。食べるのは興味あるけど作るのはあんまり。
テレビを消して少しその辺をうろうろしてみる。
ミキミキが漫画本でも置いていってないかなぁ。
きょろきょろと辺りを見回すとピヨちゃんの机の上にある小さな本。
どこからどうみても漫画じゃなさそう。
でも暇はつぶれるかなぁ、なんて思いながらそれを手に取る。

う、やっぱりなんだか難しい。
細かい字がいっぱい。難しい漢字もめいっぱい。
こんなのピヨちゃん読まないだろうからもしかしたら姉ちゃんのものなのかも。
目次からして難しそうで閉じようとした時に目に入る一文。

大切な人が消えてしまったら。

ぽん、と頭に浮かぶのはお姫ちんの事で。
いつも一人でいる事が多くて、目を離したら急にいなくなりそう。
765プロに来てみんなとも仲良くしてるけどどことなく壁を作ってるようなきがする。
まるで自分はいなくなるからあえて仲良くしないのかな、なんて、考えすぎなのかな。
すごく仲良くなったと思ってるのは亜美の方だけなのかな。

なんだかちょっと悲しくなって本を閉じて置いた。
それと同時に事務所に鳴り響く電話の音。
どうしよう、誰もいないから亜美が出なきゃだよね…。
少し緊張しながら受話器を手に取るとそこから聞こえるのはお姫ちんの声。
さらに緊張で手に力が入る。

『その声は…双海亜美ですね?おかしいですね、事務所にかけたと思っていたのですが…』
「事務所であってるよ!実はね…」

事情を説明すると「そうですか…」と一言だけお姫ちんは呟いた。
姉ちゃんに用事があった、と言う。
もしかして、もしかして、辞めたいとか出て行くとかそういう話なのかな。
さっきまで考えてた事が頭をよぎる。

「お姫ちん…765プロから出て行っちゃったりしない、よね?」
『…えぇ?…はい。私にはまだやるべき事が残っているので今はまだ出て行く気はありません』

よかったぁ、と思ってほっとする。
だってまだ亜美はお姫ちんと一緒にいたいもん。
もっともっと楽しい事や嬉しい事を一緒に感じていきたいんだもん。
たまにむちゃな事をして律っちゃんに怒られたりとかしても後ろを向くとお姫ちんが笑っててくれるんだ。
それが嬉しくてまたいろいろな事して笑わせる。
お姫ちんが笑ってくれるなら亜美はなんでもしちゃうから。
ずっと一緒に笑っていたいもん。

『しかし…』

受話器の向こうからは言いにくそうな、歯切れの悪い言葉。

『私には帰る所がありますから、いつかは皆さんの前からいなくなることにはなるでしょうね…』
「…そっかぁ…、そうだよね…いつまでも、一緒にはいれないよね」

亜美だってこの先どうなるかわからない。
765プロを辞めてみんなの前からいなくなって、二度とみんなに会う事はなくなるかもしれないし。
ずっと亜美のそばにいて、なんて約束もできないし無理だよね。
がっくりとその場でうなだれる。
でもよかった。
電話だからこの姿はお姫ちんには見えないから。
こんな姿みたらきっとすごく心配するもんね。

『…もし私が帰るときに双海亜美が一緒に来てくれたら、とても嬉しく思います』
「…え?」
『でもそうするとあなたは困るでしょうね…』

受話器の向こうからは言いにくそうな、困ったような言葉。

「行く!亜美はお姫ちんとずっと一緒にいたいから行くよ!どこでもついてく!」
『ふふ、ではその時は宜しくお願いしますね?』
「うん!」
『では…、今日はこの辺で…プロデューサーもいないようですし』
「うん!またね!お姫ちん!」

電話を切ってにひひ、と一人で笑う。
あれ、なんだかお姫ちんとここから消える事が楽しみになってきてるかも?
いつまでもここにいれば毎日みんながいて楽しいけど、ここからでてもお姫ちんと一緒なんて。
どちらにしても楽しそうだよね。
できればみんな一緒に楽しい方が好きだけどお姫ちんがいなきゃ意味ないし。

「えへへ、お姫ちんと約束しちゃったぁ!」

一人ではしゃぎながらソファーへダイブ。
こんな事すると律っちゃんに怒られるけど今はそんなの関係ない。
嬉しくってごろごろと転がって、勢い余ってソファーから落ちて。
いてて、と腕を押さえて立ち上がる。

「…なにやってんの?一人ではしゃいじゃってさ?」

声の主は鞄を机の上に置いて椅子に座ってこちらを眺めてる。
ぴょこんとはねた寝癖を手で直しながら。

「まこちん!おはよー!」
「げ、元気だなぁ。何かいい事でもあったの?」
「ふっふ〜ん!まだまだおこさまなまこちんには秘密にしちゃおうかなぁ?
 あ、まこちん来たから留守番担当の亜美は帰るね!帰ってアニメのさいほうそーを見なければいけないのだ!」
「なんだよそれー、って留守番担当?プロデューサーや小鳥さんは?」
「じゃーん!こういうことなのだ!」

置き手紙を広げて見せると「あぁ、最近よくあるよね…」とまこちんは呟いた。
すぐにまたカチャリ、とドアを開ける音がして次は千早お姉ちゃん。

「あ、おはよーん!千早お姉ちゃん」
「おはよう、亜美はいつも元気ね」

へへへ、と笑いあった後、ちらりと視線を移す。
まこちんと千早お姉ちゃんは少し挨拶をした後目も合わさず別々の所へ。
あれ、なんかへんな雰囲気。
でもこれはきっと亜美はおじゃまむしだよね。

「じゃあ帰るね!おつかれさまー!」

二人に手を振ると笑って振り返してくれた。
階段を降りながら携帯のメール作成。

お姫ちんが消えたくても消えれないようにずっとずっとついていくからカクゴしててね?
そう打ち込んで送信した。
はてさてどんな返事が返ってくるんだろう?



気まずい。
ボクらは別に喧嘩した訳じゃないし仲が悪いわけでもない。
むしろ意外に思えるかもしれないが仲は良い方で話も結構あったりするのだ。
ボクは千早に歌を教わって、ボクは千早にダンスを教えたり。
でも昨日の今日で顔を合わせるのが気まずいのだ。

昨日ボクは千早に告白された。

嬉しくないわけではないその逆で本当はとても嬉しかった。
けれど動揺したボクは何を思ったのか「返事はもうちょっと後に」と言って
その場から逃げるように駆け出してしまった。
自分の心に問いかけたって答えはYESしかないのになんでわざわざ先延ばししたんだろ。
理由なんてわかってる。ただ「好き」という言葉を出すのが恥ずかしかっただけ。
親友だと思ってたのにまさか告白されるとは思っていなかったし、
その時気がついた自分の気持ちにも正直戸惑っていた。

静まり返る室内。
まるで一人でいるような感覚だけど視線の先には本を読んでいる千早の姿がある訳で。
千早もきっとボクに何か言いたい事はあったりするのだろうけど話す事ができないような、そんな感じだ。
つい、ため息が出てしまって、はっとすると千早はページをめくる手を止めてこちらを見ていた。
しまった、と思ったのは言うまでもない。

「…ごめんね、昨日の事で悩んでいるのなら私のせいだわ。
 真にその気がないのなら断ってくれて、いいのだから」
「そ、そんなことはないんだけど…!」

その先の言葉が出てくれなくてまた二人の間に流れる沈黙。
千早はその空気に耐えれなかったのか先に視線を逸らしてまた本に目を落とした。
あぁ、なんて自分はヘタレなんだろう。
さすがにこれはまずいよね…。

「…ねぇ?真」
「な、なに?」
「もし…真の大切な人がこの世から消えてしまったらどうする?」
「え…?」

急な千早からの問いかけは凄く答えるのが難しい内容で。
そもそも今全然頭が回ってないボクにとっては超難問だ。
でも、頭で考えるよりも先に何故か口が動いていて。

「…ボクはずっとその人の事想い続けるよ。心の中からは消えないと思うし…。
 ボクが消えてなくなるまでずっと想い続けていたい」
「…そう」

千早は本を閉じて座っていた椅子から立ち上がり、ボクの座る椅子の前でしゃがむ。

「私も、そう。ずっと想い続ける。そうすれば消えないし自分の中ではいつでも会えているでしょう?
 想い続ければ消える事なんてないと思うわ」
「うん…」
「…真はきっとそう言うと思った。…そして真にそう想われたいって思う」

震える千早の手。俯いてるから顔は見えない。
千早はきっと泣かない。今もずっと一生懸命耐えてるんだと思う。
ボクは今凄く偉そうな事を言ったのに結局千早に言う事は言えなくて。
なんてだめなんだろう。
一つ深呼吸をしてひとつひとつ頭の中で言葉を紡ぎだす。

「ボクも…」
「え…?」
「千早にそう想われたいな。もちろん、消えてほしくはないけど。 
 ずっと一緒にいて想い想われたい、かな」
「うん…」

ボクも千早の事好きだよ、って言えれば簡単なのに。
そう言えれば千早にだってわかりやすいのに。
でもボクの言葉で千早に通じたのか俯く千早の顔を覗き込むと嬉しそうに少し笑っていた。
それが嬉しくてボクもちょっとだけ笑った。

「それが、真の答えとして受け取ってもいいの…?」
「う、うん。ボクも、千早と同じ気持ちだから」

千早は「ありがとう」と言って笑い「これからもよろしく」と手を差し出した。
ボクはその手を握り「こちらこそ」と言う。
なんだか告白の流れじゃないよね、と思うけどボクらはこんな感じでいいのかもしれない。

「それにしても小鳥さんはこういう本を読むのね。
 もっとこう、偏ったジャンルのものしか読まないのかと思ったけれど…」
「その本、小鳥さんのなんだ。てっきり千早のものなのかと」
「そこに置いてあったから…。事務所に入ってなんだか気まずくて気を紛らわすしかなくて…」
「はは…、なんかごめん」
「ううん、こちらこそ」

えへへ、と笑うと千早も一緒に笑ってくれた。
ふいに頭を触るとぴょこんとはねた寝癖。
…あぁ、なんだかほんとにボクってこんな時にもしまらない。
みんながボクを王子様と言うけどこんなんじゃ王子様にも、ボクが憧れるお姫様にもなれそうにないなぁ。
そう言ったら千早が「そのままの真がいいから」と言うもんだから
またボクは照れてしまって言葉が出なくなるんだ。

「そういえば、真は今日はこれで終わりなの?」
「うん、あとは帰るだけだよ。でもこれがあるからまだ帰れないけど」

そう言って置き手紙を千早に見せる。
呆れた様に息をついて千早はボクの隣の椅子に座った。

「…誰かが来るまでこうしてるのも、いいかもしれないわね」
「うん…、そうだね」

二人で何をするわけでもなく、ただ静かな部屋で他愛もない話。

もし大切な人が消えてしまってもずっとずっと想い続けるよ。
年をとってしわくちゃなおばあちゃんになってもずっと想っているよ。
でもできれば消えないで欲しいけどね。
なんて言って顔を見合わせて笑った。



「…うーむ、これは入れないね、ミキミキ」
「うーん、困ったの。財布と携帯の他は事務所の中だから帰れないの」

二時間ほど空いた休憩中にたまたま事務所にいた真美を引っ張ってお買い物を楽しんできた帰り、
事務所に戻るとそこは中に入れないような空間になっていて。
そっと隙間から中の様子を伺うけど、ここに入ってったら思い切りKYなの。
昔の美希なら気にせず入ったけど色々わかるようになってからは気をつけてるから。
千早さんが真くんの事好きなのは知ってたけどもしかしたらうまくいったのかな?

「どうしよっか、真美も携帯が中だから持って帰らないといけないし…」
「んー…」
「あ、まこちんが立ち上がった!」

真美に言われてまた隙間から覗き込むと真くんが立ち上がって右手には携帯。
どこかに電話をするようでその様子を眺めてると鳴ったのは美希の携帯。
慌ててそれに出ると扉の近くには既に千早さんが立っていた。
いるなら入ってくればいいじゃない、と赤い顔で怒られても説得力がないの。

真くんと千早さんは美希たちに小鳥からの置き手紙を渡して帰る支度を始めてる。
手にある置き手紙を眺めていると千早さんが目の前に本を差し出してきた。

「ごめん美希、これ小鳥さんの机に返しておいてくれないかしら?」
「わかったの」
「じゃあ、帰るから。お疲れ様」
「お疲れさまなのー」

二人を見送って今度は本を眺める。
見るからにおもしろくはなさそうな本。
きょろきょろと辺りを見るとソファーに座って携帯ゲームで遊んでる真美。
あ、勝手にこの時間を満喫してる。
トコトコ、と傍に行って画面を隠すように本を差し出した。

「わぁ、もう!見えないよ!やられちゃうー」
「一人でゲームされるとミキがつまんない」

派手な音がゲームからした後、本をどかすと画面にはゲームオーバーの文字が出ていて
真美は不服そうに唇を尖らせてゲームの電源を落とした。
「…なーに」と不満そうにミキの手にある本を見た。

「その本なんなの?」
「わかんない。小鳥の本みたいだけど」

表紙をめくると出てきた一文。それを読んでちらりと横を見る。
ふうん、を呟いてぼうっと窓の外を見てる真美。
あくびまでして、なんか凄く暇そう。
たいして本にも興味がわかなかったみたい。

「真美はこういう時どうする?」

本を開いて見せるとじぃっとそれを見た。
そして首を傾げてみせる。

「大切な人、って例えば?真美はみんな一番と同じくらい大切だから、そうするとみんな消えちゃうんだけど…」
「その中でも一番の人って事じゃない?例えば好きな人とか?」
「好きな人…。…いないから誰が一番になるのかわかんないよ」

「うーん」と言いながら真美は大きく背伸びをする。
真美は好きな人いないんだ。ふーん、そうなんだ。

「じゃあさ、ミキの事好きになれば?」

ミキの言葉に顔を上げて眉を寄せて見つめてくる。
あれ、なんか思った反応じゃない。
ミキミキの事は大好きだよー、って笑って流されると思ったんだけど。
真美は真面目にそれを受け取った様子。

「…姉ちゃんの事毎日ハニー!って言いながら追いかけてる人の事どうやって好きになるの?」

う、言葉に棘がある。
真美は亜美と違ってちょっと大人びてて冷静だったりするから最近ちょっと扱いにくい。
それだけ大人になったと言う事かもしれないのだけどなんだかつまんない。
一緒にバカみたいなことしてるの楽しかったのに、と思う反面、
不意に出る大人びた言動や行動に少しドキリとするのも事実。
だからさっき冗談の振りして言った言葉は結構本気だったりしたんだけど。

「ハニーはハニーだけど、何だろう?恋人って感じじゃないの」
「…ふーん。じゃあミキミキの大切な人は?」
「え」

そう返されると言葉に詰まる。
確かにこれと言って自分にも一番大切な人ってのが明確にはいない。
ハニーはなんとなく違うんだよねぇ。

「うーん、ミキもいないかも…」
「…ふーん。じゃあさ」

真美が立ち上がってミキの手にある本を右手で取って両手で開いてミキに見せる。

「…ミキミキの大切な人は真美にすれば?」
「え?」
「まぁ、大切な人になって消えたくはないけど…」

思わぬ言葉にぽかんとすると真面目な顔だった真美の顔はなんだか少し悲しそうな笑顔になった。
そして何かをごまかす様に手を振った。

「…なんてのは、冗談だよ?」

そこで気がつく。
真美もミキと一緒の気持ちでいるんじゃないかってこと。
自惚れかも知れないけど、…自信はある。

「じゃあミキの大切な人は真美にする。だから真美もミキにしてよね?」
「う、うん。…仕方がないから一人で寂しいミキミキの傍にいてあげるよ」
「むー、ミキは別に寂しくないの!」

ミキが頬を膨らませると「風船みたい」と真美がはしゃいで頬をつつく。
なんだ、やっぱり真美はまだ子供なの。
でもそんな事されて喜んでるミキもまだまだ子供なのかも。

「もう外が暗いよね。そろそろ真美、帰らないと怒られちゃうかも…」

外はもう薄暗くなっている。
いつになったら小鳥は帰ってくるのだろう。
このまま二人きりならずっとここにいてもいいけど真美が怒られるのは嫌だなぁ。

「…もう帰っちゃお」
「え、いいのかなぁ?」
「いいの、きっともうすぐ帰ってくると思うし、帰りの道はミキが送ってあげるの。
 真美はミキの大切な人だから!」

張り切ってそう言うとくすくす、と真美は笑った。
その顔がいつもの無邪気な笑顔じゃなくて、やっぱり大人びて見えて。
なんだろう。さっきまでそんな事はなかったのに妙にドキドキしてしまうのは。
なんか真美が違う。そしてミキもなんか変。
もっともっと色んな真美が見てみたいって思った。

「じゃあ帰ろー」

真美が本を机に置いてミキに抱きつく。
その顔がとても嬉しそうで、とても愛しい。
何てことはないいつもの事のはずなのに心臓が早く動く。
あぁ、なんだろ、なんなんだろ。

これから頑張って早く真美にとってのぶっちぎりの一番大切な人にならなくちゃ。
そう思いながら事務所の電気を消して扉を閉めた。



目の前には大量の荷物を抱える後姿。
一生懸命事務所のドアノブを掴もうとしているけど荷物のせいで前が見えてない様子。
全く、荷物を下に置いて開ければいいのに。
その姿に苦笑しながら近づいてそのドアを開ける。

「はい、どうぞ」
「あ、律子さん!ありがとう、いけるかなと思ったけど開けられなくて…」

そう言って照れくさそうに笑う姿はどう見ても年上には見えなくて
逆に自分の方が年上に思えてくるからなんだか複雑な気持ち。
気になっていた事があったから来てみれば…やっぱり来て良かったのかも。

「あれ…誰もいない…。書き置きしたの見てもらえなかったのかしら…」
「なんて書いたんですか?」

その紙を手に取って読む。
…こんな書き置き見て待つ人が果たしているのだろうか。
私なら破って捨てそうだけど。

小鳥さんは事務所に変わった事がないか色々見て回ってるみたいで、
でも何事もなかったのか普通に戻ってきた。
心配ならこんな人のいない時に出かけなきゃいいのに。
もしくは頼んでくれたら留守番くらいするし、買い物も私が行ったのに。

「あら?プロデューサーさんから借りた本がなんでこっちにあるのかしら?」

首を傾げてる小鳥さんの手には小さな本。
ちょっと古い感じだけど大切なものなのか、綺麗に保存されている。

「プロデューサーの?何の本ですか?ちょっと見せてください」

手を伸ばすと「はい」と差し出してくれてそれを受け取る。
開いて目に付く一行の文字。

もし、世界で一番大切な人が消えてしまったら────。

「昨日、あの、ほら、律子さんと喧嘩したじゃない?」
「え?…はい」

そう、私達は昨日喧嘩をした。
きっかけはほんの些細な事だったと思う。もう何が理由で喧嘩したのかさえ覚えていない。
今こうして話しているのは、少し前に電話で仲直りをしたから。
それでも少し気になったから私は小鳥さんに会いにここに来た訳で。

「私は悪くないのに!って少しここで怒ってたの。
 ほんのちょっとだけどプロデューサーさんにも愚痴ったりなんかしてみたり…」
「ふぅん…」

なんかちょっと面白くない。
そんな私の思った事が顔に出ていたのか慌てて小鳥さんは話を続ける。

「そうしたら、この本を貸してくれたの。そして読んでみて…喧嘩してる場合じゃないな、って。
 折角大好きな人と一緒居れるのに時間を無駄にしちゃいけないって。
 あとは、その、プロデューサーさんの話を聞いて…なおさら」
「だから電話してきてくれたんですね」
「うん…」

単純という言い方は悪いのかもしれないけど、影響しやすいと言うか何と言うか。
自分で言うのもなんだけど周りから見たらただの痴話喧嘩程度にしか過ぎないのに。

「小鳥さん」
「うん?」
「ずっと一緒にいましょうね?…ていうか、小鳥さんの相手ができるのは私しかいないと
 思っていますから」

こんな変な人誰も相手にしません。
こんなに変で、愛しい人。

「じゃあ律子さんに捨てられないように頑張ります…」

しゅん、としてうなだれる姿を見て苦笑してその頭を撫でた。
まったくほんとにどっちが年上なんだか。

「そういえば、プロデューサーの話って言うのは?」

私が問うと小鳥さんは言い辛そうに、言葉を選んで話す。

「あのね、その本プロデューサーさんの亡くなった恋人の本なんですって…。
 自分でこの本を買って読んでたくせにいなくなるなんて酷い話ですよ、って笑ってたけど…。
 その後やっぱりどこか寂しそうで…。」
「そう、ですか…」

私はその話を聞いて思いつく事があった。
小鳥さんと付き合い始めた頃、アイドルとしても忙しく、事務の仕事でも忙しかったりして、
なんとなく二人の時間というものが作れなくて。
こんな感じならもうだめなのかも、と思った時もあった。
そんな時事務所に弔いの花束を持ったプロデューサーが入ってきた。
最初は仕事関係の人が亡くなったりしたのかと思っていた。

────大切な人の命日なんだよね。

そう言って「ごめん、早く帰るね」と足早に出ていこうとして、立ち止まった。
不思議に思ってその姿を見ているとプロデューサーは私を見て笑顔で言った。

────律子、大切な人をなくすのはとても辛いから、間違っても自分から手放してはいけないよ。

それだけ言って出て行った。
思えばあの時のプロデューサーの「相手」がこの本の持ち主だったのだろう。
私はあの時の言葉があったから頑張ろうと思った。
絶対手放してはいけない人が見つかったのだから。
そんな私の決意をよそに小鳥さんは相変わらずマイペースだったけどそれでもいいと思った。
むしろその方が私が合わせられると思った。決して無理はしないように。

「小鳥さん」
「うん?」
「…ずっと、一緒に居ましょうね。でも、もし私がいなくなったら小鳥さんは、
 できれば次の幸せを見つけてほしい、です」
「律子さん…」

プロデューサーの行動を否定する訳ではないけど、残された者だっていつか幸せにならなければ。
そう思って、でも頭の隅に浮かぶ。
いなくなってしまった人をずっと思い続ける事がもしかしたらプロデューサーの幸せなのかもしれない。
ぐるぐると頭の中で考えてるとふわっと柔らかいものに包まれた。
小鳥さんの匂い。

「それは、私も同じです。いつだって律子さんの幸せを願ってるんですから」
「…はい」

その柔らかい感触に目を閉じる。
何故か鼻がツーンとして涙が出た。

「こんな時間だし、そろそろ帰りましょう?」
「…そうですね。…あの」
「うん?」
「今日、泊まってもいいですか?」
「うん、もちろん」

そう言って無邪気な子供のように笑う。

事務所の電気を消して、鍵を閉める。

大切な人との大切な時間をもっとちゃんと過ごさなくては。
帰り道、隣で歩く姿を横目で見てそう思った。



もし、世界で一番大切な人が消えてしまったら────。



突然の事故なんて、笑えない話だよ。

暗い事務所の鍵を開けて電気をつけた。
席に座って、引き出しから取り出したのは君の写真。
君がこの事務所で新人のアイドルとして輝いてた頃の写真だね。
私も初めてのプロデューサー業で大変だったよ。
あれから何年か経って私だけが歳をとった。
やだな、そっちに行ったら君は若いままなんでしょう?
会ったら驚かないで欲しいな。
色んなお土産話持って行くからもうちょっとだけ待っててね。
写真と本を引き出しの中に入れて、事務所の電気を消す。

私がこの世界から消えるまで、どうかそっちで元気に暮らしていて。



END

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