山風名言録

―僕は小説を書くためにうまれたようなものだ

―身体虚弱の為か、天性の冷淡児の為か、全く所謂青春の青春たる所以に興味がない。その癖夢はある。若者らしい夢はある。どんな夢かと云うと、人に夢を見せる夢である。美と壮の融合せる一大伝奇(ロマン)を空想して、人々をして手に汗を握らせようと云う夢である

―文学を以て生きるというには、自分は余りにも頭が悪く、無学で、鈍感である。このことはよく自分でも承知している。過去いかに無数の青年がこの幻を夢みつつ、朝の蛍のように薄れ消えていったことか。「常識」は自分を深い疑惑と恐怖に誘う。けれども人間が一生をかけて黙々と必死に一つのことに精進したら? と思う。何とかものになるのではあるまいかと思う。笑う者は笑え。この確信が弱々しく崩壊しないことを祈る

―昭和31年「宝石」の創刊号の懸賞小説の募集を見て、賞金で医学書を買おうと思い応募した。この頃には将来作家になろうとは全然考えていなかったが当選後、ぼつぼつ書いているうちに医者になるより楽だという気になり、作家になってしまった

―谷崎潤一郎くらいの作品なら、すぐ書けるサ

―僕は書いてしまったら後は知らない。どう評価されるか全く気にしない

―(作家になるよりも医者になって)無抵抗の有害無益な人類をイビっていた方が痛快であったかもしれない

―本というのは「面白くてためになる」が、昔の講談社の宣伝文句だったけど、僕のはためにならない

―私は敗戦翌年の暑い夏、進駐軍配給の少々蛆のわいたコンビーフの缶詰を、蛆だって蛋白質だ、とムシャムシャ食いながらこの作品(『達磨峠の事件』)を書いたことを思い出す

―(性とは)滑稽なもんだという意識、それだけですね。組んずほぐれつだから

―ぼくは(明治時代を)恐ろしい時代だと思うけれどねえ。日本はほぼ十年おきに戦争していったんだもの、太平洋戦争までね 

―ぼくは子供の頃から列外だった。青年になっても列外。いまも列外

―結局男は女が好きである

―いまわの際にいうべき一言もなし

―無駄な抵抗はやめよ

―風船乗ったまま、とうとう一生終わっちゃうよ

―人生とは余録である

―人生(老い)とは幻想が醒めていく課程である

―戦争で死んだ連中は、靖国神社じゃない、 ここ(デパート地下食品売り場)にいる

―早く死になさい
2006年06月07日(水) 23:29:28 Modified by kizurizm




スマートフォン版で見る