11.アプリコットを入れたのはだれ?

 やみなべは、ついたときには青い顔をして地面にすわっていました。そのまわりには、大群衆が集まっています――いろんな服装のブリーダーやモンスター、さらには神々しい仮面の集団。顔Tシャツが噴水の前に吊るされていて、その両側にレフィナド礼服を着た仮面がついています。そしてやみなべの近くには、リプルがいて、片手にスケジュール帳、片手に時計をもっています。広場のまん中にはテーブルがあって、さっき食べたカレーの入った、おっきなお鍋がありました。まだ残っていたのかと思ったので、いぶちは見ているだけ胸焼けがしてきました――「はやいとこ準備をすませて、放送を始めてくれないかな!」でもこれはありそうになかったので、ひまつぶしにいぶちはまわりのものをなにもかも見ていきました。そして、どこかで見たようだと思って、もう一度顔Tシャツをよく見ると、それは仮面の青年、サカキが着ていたものでした。

 そのうちに開始時刻を迎えました。群衆は一斉に口を閉じて、辺りは急にしーんとなり、時計を見ていたリプルが放送開始を宣言しました。

「Party作成」

 やみなべが大きな声で続きます。

「7chの皆様失礼します。今より30分ほど海岸を使わせていただきます」

 それからぼそりと

「・・・ぶっちゃけ、こんなことになるとは思わなかった・・・」

「そう言えば、顔色悪いですねー」

「まあ、やるからには最後までガンバりますけどね・・・」

「それでは、『闇鍋★Partyフェスティバル特別回』スタートです」

「Party開始」

「えー、お集まりの皆様。放送開始の前に一言・・・」とやみなべが言いました。それから姿勢を改めて、重々しくこう言い渡しました。

「全てを包み込むカレーにも、入れてはいけないものがある・・・やみなべですこんばんは」

「ゲストがまさかの回線落ちで、代理に顔T借りてきた。そんな開始のリプルです。・・・カレーがどうかしましたか、やみなべさん?」

「※この番組は、取り立ててどこも提供していません」

「いや、興味はありましたよ?だから只のカレー鍋じゃなくてもいいとは言いましたけど!」

「けど?」

「フルーツはないわ!特にシロップとか、柑橘系とか!!」

「え、フルーツ入れません?ふつうにリンゴとかありますよね」

「普通入れねぇだろフルーツ缶は・・・て言うかリプルさんは大丈夫だったんですかね?魚とか」

「・・・サカナナンテミエナカッタヨ?」

「黒はんぺん」

「ぎゃー」

「そんな愉快な具材が満載!ご飯のお供にカレー鍋!在庫はあと僅かですのでお早めにって、コレ宣伝する必要あるの?え、残飯処理?ほぼ産廃ダロここまできたら!」

「本日のテーマ」

「という訳でフェスティバルへのご参加、誠にありがとうございました。沢山の企画も頂きまして、大変賑やかにやらせて頂けました。この場を借りて御礼申し上げます。で、召し上がって頂いた賞品のカレーですが、まだそこにあります・・・どうしてこうなった」

 机の上の鍋を見つめて、やみなべは続けます。

「食べられるもので、且つ、面白いものを入れる。何が当たるか分からないっていうのが闇鍋の醍醐味だとは思いますがね」

 やみなべは、会場を睨みつけて言いました。

「はっきり言ってアレはないわ・・・誰だよドライフルーツもってきたの
 カレーの汁を吸って、でろんとしたアレを口に含んだ瞬間、正直体から魂がぬけました・・・」

「ほほぅ・・・つまり酢豚か大根おろしが良かったと」

「あのな・・・まあその前に約二名、お魚さんでギブアップしかけた訳ですが・・・ねぇ?
 その辺りはどうなんですかリプルさん?」

「私ですか?それならこちらの方に伺ってみてはどうでしょう」

 リプルは顔Tシャツにマイクを近づけました。

「え、ほんとに聞くの?てか答えられるのそれ」

「それなんて物みたいに・・・こちらは本日のゲスト、ナンパ師にして絵師というサカキさんです。サカキさん、こんにちは!」

 そう言うとリプルはフキダシを出したので、それからの会話は、こんな風に見えました。

「リプル:
 サカキ:ちぃーっす」

「リプル:今回は参加されて如何でしたか?」

「リプル:
  サカキ:そーだなー。結構楽しかったかな」

「リプル:鍋は如何でしたか。カレーなべ」

「リプル:
  サカキ:ん?あーアレ以外は良かったんじゃないかな!」

「リプル:アレとは?」

「リプル:
  サカキ:いや、アレって言ったらアレでしょ。リプルさんも人がワルイナー」

「リプル:いやいや、サカキさんこそ」

 ここまでの会話を見て、やみなべは言いました。

「いや、確かに言いそうだけども。丸分かりだろ、これ・・・」

「せっかく来て頂いたので、お答え頂こうかと」とリプル。

「持って来たんだろ・・・まあ、それはそれとして」

 気を取り直して、やみなべは言いました。

「唐揚げやらチーズケーキやら差し入れありがとうございました。はっきり言って、サイドメニューでお腹一杯でした・・・むしろ何故鍋をしたかと小一時間」

「Party解散」

「ってことで『闇鍋★Partyフェスティバル特別回』
 そろそろ終わりの時間です。ゲストにお越しのサカキさん、お疲れ様でした!割としょっちゅうな気もしますが、次回はぜひ中身ごとおいで下さい…
 あと、ミズキさん。良いレシピがあったらください。というか作って送ってくださいなケーキ。
 それから某タヌキさん。次もし鍋をするなら是非計画的にお願いします…てかきぐるみ暑くないんですか?
 ついでにリプルさん、あのバケツはどうにかなりませんかね」

「それではみなさん、ここまでお付き合いありがとうございました!」

「スルーかよ!ではいつ来るか分からない次回でお会いしましょう!」

「乙彼様でした!」

「乙彼様でした!」

 やみなべとリプルが丁寧にお辞儀をしました。それから一瞬の間があって、広場のみんなは、一斉に拍手をしました。

「いやー良かったよ!うんうん。また放送やってくんないかな」

 いつの間にか戻ってきたスィンパが、真っ先に感想を言いました。

「いや、今回はきつかった・・・まだ味が残ってる・・・」

 やみなべが言いました。

「そう言えば、何が当たったんですか・・・その、鍋で」

 ミズキが聞くとやみなべは

「何かこう、酸味のある果物・・・わたし酢豚とか食べられないのに・・・」

「・・・それは災難でしたねー」

 今度は笠屋が言いました。

「それにしても、何でしょうね?」

「ドライフルーツなら自分も入れたな。ここまで遠いから生ものは避けて」

 そう言ったのは鴉人でした。

「ああ、私もそうです。便利ですよね、ドライフルーツ」

 笠屋が相槌を打ちました。

「じゃー犯人はお二人のどちらか・・・?」

 ミズキがそう言うと

「それより黒はんぺん入れたのだれですか・・・」と、リプルが言いました。

「そう言えば、平気で食べてたのは・・・」

「ザワザワ、ザワザワ」

「ジー」

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