『魔砲少女まじかる☆りぷるん』


オープニング曲 『噂のマジカルキャノンガール』






第1話(仮) 少女が魔砲を使えたら






「おめでとう。これで君も、今日から正式なブリーダーだ」
「はい!ありがとうございます!」
ユタトラ諸島に流れ着いた多くの民。彼らの中には共通して、円盤石から生まれる『モンスター』と意思を交わすことのできる者が存在する。
そういった才ある人物が、専門的にモンスターを育成、使役する『ブリーダー』になる事が出来る。
今日はそのブリーダー認定式。数人の新人に混ざってヴァシアタ系の女の子、リプルもブリーダーになった。
「よーし、がんばるぞっ!」
海は静か、空は快晴。絶好の認定式日和。
最後の一人として儀礼を受け、リプルも初めに育成するモンスターを生み出すべく神殿へ向か

「君、魔砲少女にならないか?」

ふいに肩を叩かれ、そんな言葉を投げかけられた。リプルは振り向いて
「きゃあああ!」
蝶の仮面を被ったヘンタイが居たので、とりあえず手持ちの指示具で殴りかかる。
「ちょ!まっ、私だシェマだ!」
「え?シェマさん?」
「あ、いや違うシュマだ」
見慣れた姿で、聞きなれた声の主は何故か名前を言い直す。その声でようやくリプルは指示具の間違った使い方を止めた。
「もービックリしたじゃないですかー。シェマさん何やってるんですか、そんなヘンタイさんみたいな格好で」
「ヘンタイではない。そしてシェマでもない、シュマだ」
「は、はぁ…?」
よくわからないが、さきほど認定式で見たシェマではない事にして欲しい。
「あ、わかりました。ヘンタイさんみたいな格好してるのを黙ってて欲しいんですね。了解ですシェ…シュマさん」
「そんな納得のされ方は嫌なんだが…もういい、話が進まないのでな」
土埃を払いながらシュマは立ち上がり、リプルを仮面の裏から直視する。
「大事な話だ」
「大事な…きゃ、ひょっとしてシュマさん…!やだ、もうっ!こんな広場で言うなんて!でも私、ヘンタイさんはちょっと…」
「厄介な子だな君は…かなり不安になってきたが」
頭を押さえつつ、しかし改めてシュマは言った。
「君、魔砲少女にならないか?」






「『イダル』というのは君も知っているね?」
「あの売れなくてアイテム欄を圧迫する邪魔な石の事ですよね」
「その認識はおかしい」
長老達のみが入る事の出来る、貴重なアイテムを保管する倉庫。そこに2人は来ていた。
「と言っても、私も詳しくは説明出来ないのだが」
「驚いたりとか、何かと視聴者側の役回りですもんね。長老代行さんは」
「仕方ないだろう、聞かされてもないのだから。それにシェマではないシュマだ」
倉庫の鍵を持っている事への疑問はもう突っ込まないであげる事にした。
窓を開けて光を入れ、シュマは古い文献を漁りながら話している。
「イダルとは未知の力が篭った石、それは多くの不思議を引き起こす。その力を浴びた『イダルモンスター』等もいるな」
「あんまり可愛い系のモンスターが多くないのが残念です…」
「モンスター程度ならまだ良いが、何か過去の災厄と関係して…っとあったぞ」
ボロボロになった一冊の本、そこのとある1ページ。
「えと、なになに…」


違えたイダルが呼びし時、光を操る少女がそれらを逢わせる


「…なになに?」
挿絵に欠けながらも太陽のように輝く石と、口から光を放つ犬と、炎を形どった杖を振るう少女が描かれていた。
「この絵の少女を、私は魔砲少女と呼んでいる」
「いやいやそんな事ではなくてですね。違えたイダルがーから私全っ然わからないんですけど」
「違えたイダルとはこいつの事だ」
シュマはポケットから小さなイダルの欠片を取り出して見せる。
「普通のイダルじゃないですか」
「普段はな。だが」
それをリプルの胸元h
「きゃあああああ!何ナチュラルに触ろうとしてるんですかヘンタイ!長老会議ものですよもー!」
「ぐはっ!違う待てじゃあ自分で近くに寄せてげふぁっ!」
突然の危機に、身近にあった辞書のカドで『ディクショナリーアタック』をお見舞いしていたリプルだが、それを聞いて落ちたイダルを拾う。
「あ、きれいー」
それは淡く、しかしハッキリと黄色い光を放ち出した。
「その特殊なイダルは君にしか反応しない。だから魔砲少女になれるのは君だけというわけだ」
儀礼の時にこっそり一人ずつ調べていたのだろうか。
「え。じゃあ私なるんですか?そのマホー?少女ってのに」
「そうだ。そうして他に散った違えたイダルを集めて欲しいのだ」
「見返りは?」
「二言目がそれとは、君もいい性格をしてるな…これだ」
シュマはリプルに1本の杖を渡す。それは絵で見た炎の杖。
「そして神殿で、もう一つの贈り物が君を待ってるよ」






「わあ!可愛いー!」
神殿で、円盤石からライガーが再生された。
「さっきの円盤石は炎の長杖と一緒に埋められ」
「この子もらっていいんですか?やった!よし君の名前はアーモンドだ!」
「少しは話を聞く姿勢をだな…しかしなぜアーモンドなのだ?」
「そんなの好きだからに決まってるじゃないですかー」
「…好きなのか、アーモンド」
「はい!倉庫にアーモンドを入れておくと幸せになれるっておばあちゃんも言ってましたし」
どういうおまじないなのかは理解できないが。
「だからと言って、思い付きで名前にしていい単語ではないんじゃ…」
いきなり逢ったハイテンション娘に変な名前をつけられても、アーモンドはその場でじっとしている。
リプルが抱きついても、撫でても全く反応がない。
「そっかー。奥手なんだねー」
「その解釈でいいのか」
「君は今日から私のパートナーだよ!よろしくね!」
それでも一応の挨拶なのか、アーモンドはわんとだけ鳴いた。
「さて相棒も決まった事だし、イダル集めについて話そうか」
「他のブリーダーさんと同じで、遠征すればいいんですよね?数集めればその中に混ざってるんじゃないですか?」
「それもそうなんだが。違えたイダルの力というのは、どうやらお互いに引き合うらしくてな…」


どごおおおおん!


「きゃっ!?」
「何だ!?」
突然起きた爆発音。聞こえた方角は
「町か!?」
「大変!はやく行かないと!」
外れにある神殿からでも見える煙の禍々しさは、これからのリプルの運命を暗示しているのか…。






「お姉…さま…?」
ついさっきまでリプル達が居た倉庫が燃えている。その激しい光に照らされた少女を見て、リプルは驚愕した。
数年前に遠征に出てから戻らなかった、リプルが姉と慕っていた少女だったのだ。
「お姉さま!生きてたんだね、良かった…でも何でこんなところに…」
「リプル…」
お姉さまと呼ばれた少女は小さな声で、リプルの名前を呼ぶ。
「帰ってきて早々大変な事になってるけど、ともかく危ないから逃げよう?ね?」
言ったリプルだって、本当はわかってはいた。
彼女は何か言葉を呟いた。少女の体が光り、服がヴァシアタのものからこの地域では見た事もない青色の衣装に黒いリボンへ。
「リプル。石を渡しなさい」
「石?イダルの事?でもそんな事より、その姿…」
「だめだリプル君!違えたイダルは悪用されると大変な事になる!渡すな!」
「黙れこのヘンタイ風情が!」
お姉さまが杖を一振りする。その先から灼熱の火が現れ、蛇のようにうねってシュマの体を直撃した。
「ヘンタイさん!?」
「だから、シェマよりその呼び方を止めろと…げふぅ」
シュマは気絶し倒れる。服が燃えて蝶の仮面だけが残り、その姿はヘンタイ以外の何物でもない。
「リプル。いい子だから、ね?」
「お姉さま。顔は前と同じで優しいのに、何か違う」
差し出した手を落とされ、辛そうな表情をされる。それでもリプルは言い放つ。
「今のお姉さまにこれは渡せない。なんか、渡しちゃいけない気がする」
「残念よ…とても残念。なら…」
リプルが見た事のない表情で、お姉さまは杖を振るった。
「力ずくで奪うしかないわねええぇぇッ!!」
燃える4匹の蛇。それらが不規則にのたうちまわってリプルに襲いかかる。
その時リプルはそっと、あの本に書かれていた呪文を唱えた。
炎はリプルを直撃する。爆炎、そして過ぎた煙の中から現れたのは、
「魔砲少女まじかる☆りぷるん、只今登場よ!」
ピンク色、お姉さまよりフリル多目の衣装に身を包んだ魔砲少女だった。
指示具の練習をしていただけあって、杖の扱いには慣れたもの。炎の長杖を振り回して、りぷるんはアーモンドに指示を出す。
「行けるねアーモンド!雷気弾!」
シュマを物影に運んでいたアーモンドは、その場で口から雷を放射する。生まれたばかりにしては激しい電撃だった。
「当たらないわ!」
お姉さまは華麗なステップを踏み軽々と避ける。
「!?」
が、急に力が抜けたのかその後へたり込んだ。
「使い魔の分際で側を離れるから…!」
そんな事を言いつつ立ちあがり大きく跳躍。燃やした倉庫の上からりぷるんを見下ろし、
「その石は私のものよ!他の奴に取られないよう大事に持っておくのよリプル!」
そう言い捨ててどこかへ飛んで行ってしまった。






「お姉さま…」
変身を解いたリプルは、しばらくその燃え尽きた倉庫の前で呆けていた。
あの優しかったお姉さまが何故。どうしてこの石が必要なのか。この石を集めるとどうなるのか。
「わん」
「…そうだねアーモンド。ともかく、お姉さまに話を聞かなきゃね…」
リプルがりぷるんになる限り、またそのチャンスも巡ってくるだろう。
「私。魔砲少女ガンバるよ!」
こうしてりぷるんの物語は幕を開けたのである。






ちなみにシュマは大した怪我もなく、残念そうな顔をした長老二人に引き取られていった。






エンディング曲 『恋は☆りぷるん』

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