・ブロークン.アロー：軍隊内に於ける緊急事態のコールサインの１つ、全軍支援要請若しくは核弾頭の紛失の意味を含まれている。
その信号が送信された宙域へとＶＦ−２４ エボリューションで構成された小隊が向かっていた。そこは進路上あのギャラクシー船団が通る予定の航路になっている……。
「隊長！」
隊長機のＶＦ−２４Ｓのレーダーにギャラクシー船団護衛軍所属の艦載機が見えた。機種はＶＦ−２２Ｓ ストゥルムボーゲル�供帖張螢潺奪拭鴫鮟�したのだろう、手足になる個所が無くなっている。
「よし、ホーク３、警戒して接近」
『了解』
後にバジュラ戦役と呼ばれる戦争が終結して三ヶ月後、ギャラクシー船団種の陣による地球本国政府に対する反乱容疑が実証された事により第７２７独立戦隊ＶＦ−Ｘレイヴンズは作戦行動を開始、目的はギャラクシー船団首脳陣の逮捕である。
第一次星間戦争後にスタートした銀河播種計画は半世紀を過ぎても実施されている……しかし様々な問題が起きており超長距離移民船団同士の“冷戦”は頭が痛い問題であった。しかし実際に片方の移民船団を潰すまでにはいかないだろうと思われていたがギャラクシー船団はそれを実行し、しかも地球本国政府さえも倒そうとした。それは第１１７調査船団を壊滅させた“バジュラ”を利用する……ギャラクシー船団はバジュラの解析を進めるにつれて制御する方法を見出していたのである。それは科学者でもあったグレイスの研究論文がヒントになったと言う……そしてグレイスは全ての力を手にしても、二人の歌姫と移民船団の切り札“ＳＭＳ”により倒されたのである。銀河標準時にして三カ月が過ぎた頃、ＶＦ−Ｘレイヴンズに所属するホーク小隊は索敵をしているとブロークン.アローを受信した。
「ひでぇ」
ホーク３のパイロットはＶＦ−２２Ｓの無残な状態を見て呟いた。主翼は欠け機体に走るバジュラの生体レーザー光線の焦げ跡、コクピットに直撃していれば死んでいただろう。直ぐに救出に向かうのがセオリーだが相手は過度な電脳社会により洗脳されている可能性もあり、いきなり襲いかかってくる事も想定していた。
「ホーク３より各機へ、これよりコクピットを確認する」
ＶＦ−２４から採用されたＥＸ−ギアシステムは操縦席になるだけではなく簡易パワードスーツにもなる。これによりパイロットは宇宙空間での機動性が格段に向上した。パイロットは装備されているマシンガンを片手にＶＦ−２２Ｓのコクピットを覗きこむ。キャノピーの形状から初期型と分かる。
「少女？」
すぐ横にあるコネクトにＰＤＡを接続すると簡易コールドスリープをしており、フォールドブースターをパージしている。
『ホークリーダーより、ホーク３へ……僚艦の阿賀野に運ぶぞ』
グァンタモナ級のロートル空母である阿賀野なら万が一大破する事態になってもいい訳だ……仮にウラガ級やマクロス.クォーター級なら絶対に収容しないだろう。
幸いか不幸か収容されたＶＦ−２２Ｓとそのパイロットには異常は見受けられてない。気が付いた少女は直ぐにギャラクシー船団内で起きている非常事態に付いて話し始めた。
「バジュラ準クィーンがメインランドを融合してます」
その言葉に軍医も居合わせた将校も驚く。バジュラの進化スピードは生物学的観点からも異常なほどに早い……バジュラ戦役でもその一例が報告されている。
「……この映像には加工形跡がありません、間違いなくバジュラはギャラクシー船団市民を融合を進めてます。少尉……」
ベテラン情報将校の風格を漂わせている男はベットの上で震えている少女パイロットに問いかけた。
「この映像をどうやって」
「メインランド内には各所にカメラに加えて、インプラントネットワークにより市民そのものが監視カメラやデータ収集プローグにもなります。私が駆けつけた時には既に大統領府は浸食、バトルギャラクシーもメインランドからの離脱を試みるもケーブルの多くが触手により不可能に」
彼女はたまたまメインランドの外にいたので難を逃れ、沈黙した大統領府に代わり“ウェストポイント級支援母艦”が臨時大統領府になった。フォールド通信を試みるも上手く行かずにＶＦにフォールドブースターを装着させ助けを求める事にしたのである。
「ＳＭＳに通達してくれ」
指揮官の男は静かにそう告げた。
ＳＭＳ……本業は同名の星間運輸業も手掛ける大手流通会社、広大な銀河には逸れゼントラーディ軍や星間犯罪組織による海賊行為のリスクがある、この会社は自前の護衛部隊を拡大させ“ＰＭＣ（民間軍事会社）”へと成長、正規軍の質の低下もあり各超長距離移民船団に支部を設けている。そして正規軍にとっては商売敵の様な存在でもあるが新型機動兵器の試験運用から兵站、時には正規軍がする特殊作戦まで下請け出来るなくてはならない存在になっている。
「……以上がギャラクシー船団で起きている状況だ」
移民惑星フロンティアを母港にするマクロス.クォーターのブリーティングルームにてオズマが説明を終えた。
「バジュラ準クィーンが占拠、いや融合するなんて」
「“グローバル”の一件を考えるとあり得ない話ではない……現在、ギャラクシー船団近くを通る他の超長距離移民船団は航路を迂回し緊急フォールドしている、正規軍からは速やかに制圧、場合によってはメインランドに反応弾もしくはＭＤＥ（時空振動弾）の使用もあり得る」
オズマの言葉に全員が最悪の事態を覚悟した。
「シェリルの故郷を消す事になるのか……」
早乙女 アルトはその現実に迷うも同情は出来ない。
マクロスクォーターは出航し、他の支部から派遣される僚艦との会合宙域へとフォールド航行へと移る。
ギャラクシー移民船団の総旗艦“マクロス.ギャラクシー”は禍々しい生物的な外見へと変貌していた。同移民船団の軍事的要を担うウェストポイント級支援母艦はマクロス.ギャラクシーとの距離を取りつつも情報を収集する事しか出来なかった。大統領府もバトルギャラクシーも今やバジュラとの融合を果たしている。
「これは現実なのか」
ウェストポイント級支援母艦の防衛ステーションを担うウラガ級空母の艦長は送られてくる映像に顔が強張る。バジュラの幼生体が次々と市民に取り次ぎ融合を始めていたのだ。
メインランド近くにある研究区画に安置されていた準バジュラクィーンはバジュラ戦役が起きる前、ギャラクシー船団が偶然発見した個体であり、研究を進めていた。これによりこの船団は何所よりもバジュラの生体情報を得る事に成功し、銀河を支配できると思い描いた……しかし、それが失敗に終わりギャラクシー船団上層部は証拠隠滅を図ろうとした途端、擬死状態で欺いていた準バジュラクィーンが牙を向き、予め人間と融合できるバジュラ個体を用意し、一斉にメインランド内へと放ち、同時に研究区画との融合を進めていた。
瞬く間にバジュラの大群を閉じ込めた檻化したメインランド内は戦場になり、デストロイド隊やＶＦ隊の迎撃にも数に勝るバジュラの前に敵う訳も無かった。
ガンポットの弾丸サイズのＭＤＥ弾やＭＤＥビームを用いてもバジュラの大群は数で圧倒していた……更に人間と融合を前提にした新種個体は従来いる固体がメインランドの市民を捕らえ、専用のネストに連れて行き効率良く産み出して行く。船団内のフォールドネットワークによりシェルターの位置情報まで知られ、更に一部新種個体幼生体をメインランド内に放ち極少数の個体がペットして人間社会に溶け込んでいた。バジュラの幼生体は成体とは似ても似つかない可愛らしく、幼生体のサイズは小動物だ……発見が遅れたのもバジュラに関する情報を全部公開してなかった。やがて中間形態になると大型犬と同じサイズになり、体毛が生えたコブラと言う感じなる。普通なら脱皮して第二形態になるが新種個体はこの状態で人に襲いかかり、全てが少女であった。
その少女は数か月前、メインランドに僅かに残った自然保護エリアで緑色の可愛い生き物を拾った。大きな眼と身体の倍近く長い尻尾……彼女は育てる事にした。両親は仕事中毒、学校もバーチャルリアルティシステムにより在宅学習が当たり前になっており、特にこのギャラクシー船団は資本主義を聖典としていると言われるほどに合理化を追求していた。
その為に共働きが当たり前になっていた……しかし、子供にとってはさびしい事は変わりが無く、娯楽番組で心の隙間を埋められる程子供は単純ではない、その少女も寂しさを感じ、見慣れない小動物を拾ったのだろう。無論巨大な閉鎖空間である移民船団都市では無許可でこの様な小動物を飼うのは違法である……だが少女にそのような知識がある訳でもなかった。これも人の関わりを最低限に奨励したギャラクシー船団の弊害となり、最悪の事態へと転がる事になる。
「……ジョン」
幼生体の中間形態を目撃した少女は恐怖と言うよりは好奇心が勝っていた。と言うのもこの新種バジュラは人間にとっては麻薬の様な成分を分泌しており少女は酔っていた。両親の共働きと他人と極力接しない社会でなければ対処できたかもしれない。彼女は衣類を脱ぎ、まるで分かっている様に目の前に居る怪物に性器を曝した。
中間形態のバジュラは触手を出し、背後から少女に覆い被さる。少女は光悦し腰を動かしより深く結合を求め、妖艶な声を出す。
「ジョン、もっとついてぇ！」
人間の生殖器に適合するように進化したバジュラの生殖器……だがそれは人類が想像だにしなかった種の保存への始まりへと過ぎなかった。ジョンと接していくうちに種を超えた愛へと目覚めるには時間がかからなかった……バジュラらは人間との対話の為に選んだのは人間を融合した個体の繁殖……それは別の女王バジュラが率いるグループらからの“情報”により不要な争いを避ける為の試みだったかもしれない。だが食物連鎖の頂点となった人類にはそれは脅威に過ぎなかったのだ。
彼女はジョンと名付けたバジュラとの性交に夢中になり、気がつけば必要無い時には服を着る概念すら無くなり、少女の秘所や菊門はバジュラとの“生体コネクト”へと変貌していた。外の情報は他のバジュラグループからの情報により得られ、ギャラクシー船団の情報統制は彼女には通じて無かったのである。
ある日、情報源になっていたバジュラグループは人間に自ら住んでいた星を明け渡して旅に出た。それはギャラクシー船団の陰謀が潰えた事を意味し、自体は急に変化した。少女はジョンと結合とするとジョンは飼い主の少女の生殖器や淫核を変化させて繭を造る器官へと改造した。淫核は男性器のＤＮＡをナノマシンで発現し糸を造る射出孔へと変化し糸を幾重にも自らの体に巻きついて繭を作っていく。他のカップルの中には本格的に融合を始めている所もある。時間差でこの様な作業をするのは全滅を防ぐためである。バジュラの情報ネットワークは最早人類が持つ通信システムよりも凌駕しているのだ。
少女が眼が覚めた時には足が六脚になり昆虫の様なフォルムになり上半身は人の形をしていたがバジュラと同じ皮膚へとなっていた。足音が聞えて来る……敵と本能的に察知した少女は背部にあるそれをドアの方へと向けると脳内でスイッチを押した。それは生体ビーム発射器官であり、バジュラ（大）と比較すれば威力こそ落ちるが人間相手なら十分過ぎる武器だ。彼女は飛翔する、周囲には船団護衛艦隊軍の陸戦隊の部隊やＶＦ小隊が待ち構えていたが他の個体らが兵隊バジュラを派遣してメインランドは戦場へと変貌した。
移民船団で最も怖いのはバイオハザートだ……その最悪な状況が起きてしまい、大統領らは大統領府を放棄し“予備”のバトルギャラクシーに本部を置いた。だがそこにも新型バジュラが回り込み、アドヴァンストバトル級の船体を侵食していく。気が付いた時にはメインランドはビショップ級をコアにした“バジュラ要塞”へとなっていたのだ。
ＳＭＳが主力にするマクロスクォーター級はバジュラ要塞へと変貌したメインランドからかなり離れた位置にいた。
「……彼女達は別の世界を目指すって」
マクロスクオーターのメイン艦橋に居るランカ.リーはそう呟く。彼女は胎児状態でバジュラが持つウィルスに感染、バジュラらはこのウィルスで“会話”し“歌を歌う”……ランカが歌うアイモもバジュラのラブソングなのだ。
「前方にフォールド反応……メインランドが消えて行きます」
その姿をジッと見ている別の少女は何も言わなかった、忌まわしい故郷が消えた事も……。
終
＜専門用語解説＞
・ＶＦ−２４ エボリューション
新星インダストリー社の試作機“ＹＦ−２４”の制式採用機。公式設定では制式化されてないが某模型雑誌にあるＶＦ−２５のスペシャルペイントにはＶＦ−２４と記載されているので移民船団の護衛軍や正規軍によっては制式採用している所もあるかもしれない。フロンティア船団のＶＦ−２５、ギャラクシー船団のＹＦ−２７はこの機体をベースに開発された。ＥＸ−ギアやＩＳＣ（通称イナーシャルバッファ）と呼ばれるＧ軽減システムを実用化した機種。
・第７２７独立戦隊 ＶＦ−Ｘレイヴンズ
ゲームソフト『マクロス ＶＦ−Ｘ�供戮能藹个靴神亀�軍の特殊部隊。隊長のエイジス.フォッカーはオズマ.リーの先輩であり小説版では最終決戦時にフロンティア軍を援護する形で登場。旗艦はウラガ級マザーレイヴン、艦載機も第一次星間戦争で使用されたＶＦ−１に設立当時最新鋭であったＶＦ−１９やＶＦ−２２Ｓと言った最新鋭機まで揃える。
・ＶＦ−２２Ｓ ストルゥム.ボーゲル��
ジェネラルギャラクシーが開発したＹＦ−２１の制式採用機。新星インダストリーのＹＦ−１９との制式採用機争いに敗れるも特殊部隊用の機体としては破格の性能を持ちＶＦ−１７の後継機として採用された。『マクロス７』ではマックスとミリアの専用機として登場。
・グァンタナモ級
第一次星間戦争時に配備されたアームド級空母の後継となる護衛宇宙空母。シンプルな構造で量産性に優れている。
・ウラガ級
二段式水宙両用空母。水上航行を可能にしており小規模の艦隊旗艦機能を有する。
・マクロスクォーター級
多目的ステルス宇宙戦闘機動空母でありマクロスの名を持つのはこの戦艦も“可変攻撃宇宙空母”。サイズこそマクロス級の四分の一だが機動性は高く戦闘力も然る事ながら分離合体機構を採用した事によりある程度の拡張性を持たせている。劇場版では幾多の同型艦があるが細部は異なる。
・マクロス.ギャラクシー
第五十一次超長距離移民船団。ジェネラルギャラクシーがスポンサーになりサイバスティック、インプラント（＝サイボーク化）を積極的に取り入れている電脳船団。逆に言えばインプラントしてない者にとっては居住性は劣悪その物といえる。第五十五次超長距離移民船団マクロスフロンティアとは航路が近く“冷戦”状態になっておりギャラクシー船団側がバジュラを利用して戦争を仕掛ける事になる。シェリル.ノームはこの船団の出身でマネージャーをしていたグレイス.オコナーは船団とバジュラクィーンを乗っ取り世界征服を企むもＳＭＳが中心になり射殺されている。
・Ｓ.Ｍ.Ｓ
星間運輸業Ｓ.Ｍ.Ｓの自前の護衛部隊を発展させ、正規軍の下請けとして各移民船団や移民惑星に支部を置くＰＭＣ。“社員”も正規軍士官の退職組やスカウト、志願者で構成されておりその腕前は正規軍よりも高い。だが戦死しても“事故死扱い”となるが社員は気にしてない節もある、これは正規軍では到底雇えない事情を持つ社員も多い。主に次期主力機の試験運用からアイドルの護衛までと幅広い。なお創業者はブリタイ艦隊に所属していたリチャード.ビルダー氏。
・ウェストポイント級支援母艦
新マクロス級移民船を旗艦にする移民船団（一例にマクロス７船団、マクロス１１船団）は中核大型艦七隻を中心に構成され、ウェストポイント級支援母艦は訓練施設に前線司令部、各軍艦の補給機能、小型艦修理施設、兵器の開発工廠を持つ巨大訓練艦。先端部にはウラガ級空母がドッキングしている。これは中核大型艦の特徴であり旗艦のシティ７にはバトル７がドッキングしている。
・バジュラ
２０４０年に人類と初遭遇し、第１１７調査船団を壊滅させた宇宙生命体。腸内細菌バジュラウィルスにより発せられるフォールド波により別個体とネットワークを構成する生物。バジュラクイーンを頂点に命令を発し、複数の準女王らがそれを実行し、無数のバジュラ（大）やバジュラ（小）らが兵隊を役目する。しかし生物としては異常な学習能力を持ちフォールド波を阻害する電子戦仕様機“ＲＶＦ−２５”や“ＲＶＦ−１７１ＥＸ”を伴って倒さないと進化する恐れがある。ランカ.リーは母親がバジュラ研究をしておりウィルスが胎児感染しているが健康面では問題は無くバジュラとのコミュニケーションを取る事が可能になっている。
・オズマ.リー
ＳＭＳフロンティア支部に所属するＶＦパイロット、ＳＭＳスカル小隊の隊長で歴戦の猛者。義理の妹であるランカの事になると時には暴走、なおＴＶ版では数々の死亡フラグを立てつつも生還しており、恋人が作ったパインケーキはフラグクラッシャーとして名が知れている。
（マクロスシリーズではパインサラダが死亡フラグとされている）
・早乙女 アルト
マクロスＦの主人公、シリーズ屈指の美少年であり家は名門歌舞伎一門で自身も女形として舞台を重ねているも自分自身の現状に納得して無かった。バジュラ戦役の一年前に所属していた三星学園航宙科ミシェルと出会い、高等部進学と同時に芸能科から航宙科に転科、舞台で鍛えられた勝負強さとアドリフには定評もあって次席まで上り詰めている。シェリルとランカと出会った直後にバジュラが襲来し咄嗟にＶＦ−２５を操縦、これが縁でＳＭＳに入社する。なお劇場版ではＶＦ−２５からＹＦ−２９に乗り換えており最終決戦時にクィーンバジュラと共に消えている。
・シェリル.ノーム
銀河の妖精と呼ばれるトップシンガー、彼女の歌が各船団や移民惑星で途切れる日は無いと言われる程の実力を持つ。フロンティアにてアルトやランカと出会い、徐々に心情が変化していく。人為的にＶ型ウィルスを感染させられていて生命の危機であったがランカが脳に移動したシェリル体内に居たウィルスに呼び掛けて腸内に戻している。最終決戦時にはバトルフロンティアのメイン艦橋で歌っている。
（リン.ミンメイをリスペストしている様に思えるが実は劇場版マクロスはマクロス世界の“映画”と設定があるので実際にミンメイがマクロスの艦橋で歌ってない）
『マクロス.ゼロ』に登場するヒロインの一人マオ.ノームの孫。
その信号が送信された宙域へとＶＦ−２４ エボリューションで構成された小隊が向かっていた。そこは進路上あのギャラクシー船団が通る予定の航路になっている……。
「隊長！」
隊長機のＶＦ−２４Ｓのレーダーにギャラクシー船団護衛軍所属の艦載機が見えた。機種はＶＦ−２２Ｓ ストゥルムボーゲル�供帖張螢潺奪拭鴫鮟�したのだろう、手足になる個所が無くなっている。
「よし、ホーク３、警戒して接近」
『了解』
後にバジュラ戦役と呼ばれる戦争が終結して三ヶ月後、ギャラクシー船団種の陣による地球本国政府に対する反乱容疑が実証された事により第７２７独立戦隊ＶＦ−Ｘレイヴンズは作戦行動を開始、目的はギャラクシー船団首脳陣の逮捕である。
第一次星間戦争後にスタートした銀河播種計画は半世紀を過ぎても実施されている……しかし様々な問題が起きており超長距離移民船団同士の“冷戦”は頭が痛い問題であった。しかし実際に片方の移民船団を潰すまでにはいかないだろうと思われていたがギャラクシー船団はそれを実行し、しかも地球本国政府さえも倒そうとした。それは第１１７調査船団を壊滅させた“バジュラ”を利用する……ギャラクシー船団はバジュラの解析を進めるにつれて制御する方法を見出していたのである。それは科学者でもあったグレイスの研究論文がヒントになったと言う……そしてグレイスは全ての力を手にしても、二人の歌姫と移民船団の切り札“ＳＭＳ”により倒されたのである。銀河標準時にして三カ月が過ぎた頃、ＶＦ−Ｘレイヴンズに所属するホーク小隊は索敵をしているとブロークン.アローを受信した。
「ひでぇ」
ホーク３のパイロットはＶＦ−２２Ｓの無残な状態を見て呟いた。主翼は欠け機体に走るバジュラの生体レーザー光線の焦げ跡、コクピットに直撃していれば死んでいただろう。直ぐに救出に向かうのがセオリーだが相手は過度な電脳社会により洗脳されている可能性もあり、いきなり襲いかかってくる事も想定していた。
「ホーク３より各機へ、これよりコクピットを確認する」
ＶＦ−２４から採用されたＥＸ−ギアシステムは操縦席になるだけではなく簡易パワードスーツにもなる。これによりパイロットは宇宙空間での機動性が格段に向上した。パイロットは装備されているマシンガンを片手にＶＦ−２２Ｓのコクピットを覗きこむ。キャノピーの形状から初期型と分かる。
「少女？」
すぐ横にあるコネクトにＰＤＡを接続すると簡易コールドスリープをしており、フォールドブースターをパージしている。
『ホークリーダーより、ホーク３へ……僚艦の阿賀野に運ぶぞ』
グァンタモナ級のロートル空母である阿賀野なら万が一大破する事態になってもいい訳だ……仮にウラガ級やマクロス.クォーター級なら絶対に収容しないだろう。
幸いか不幸か収容されたＶＦ−２２Ｓとそのパイロットには異常は見受けられてない。気が付いた少女は直ぐにギャラクシー船団内で起きている非常事態に付いて話し始めた。
「バジュラ準クィーンがメインランドを融合してます」
その言葉に軍医も居合わせた将校も驚く。バジュラの進化スピードは生物学的観点からも異常なほどに早い……バジュラ戦役でもその一例が報告されている。
「……この映像には加工形跡がありません、間違いなくバジュラはギャラクシー船団市民を融合を進めてます。少尉……」
ベテラン情報将校の風格を漂わせている男はベットの上で震えている少女パイロットに問いかけた。
「この映像をどうやって」
「メインランド内には各所にカメラに加えて、インプラントネットワークにより市民そのものが監視カメラやデータ収集プローグにもなります。私が駆けつけた時には既に大統領府は浸食、バトルギャラクシーもメインランドからの離脱を試みるもケーブルの多くが触手により不可能に」
彼女はたまたまメインランドの外にいたので難を逃れ、沈黙した大統領府に代わり“ウェストポイント級支援母艦”が臨時大統領府になった。フォールド通信を試みるも上手く行かずにＶＦにフォールドブースターを装着させ助けを求める事にしたのである。
「ＳＭＳに通達してくれ」
指揮官の男は静かにそう告げた。
ＳＭＳ……本業は同名の星間運輸業も手掛ける大手流通会社、広大な銀河には逸れゼントラーディ軍や星間犯罪組織による海賊行為のリスクがある、この会社は自前の護衛部隊を拡大させ“ＰＭＣ（民間軍事会社）”へと成長、正規軍の質の低下もあり各超長距離移民船団に支部を設けている。そして正規軍にとっては商売敵の様な存在でもあるが新型機動兵器の試験運用から兵站、時には正規軍がする特殊作戦まで下請け出来るなくてはならない存在になっている。
「……以上がギャラクシー船団で起きている状況だ」
移民惑星フロンティアを母港にするマクロス.クォーターのブリーティングルームにてオズマが説明を終えた。
「バジュラ準クィーンが占拠、いや融合するなんて」
「“グローバル”の一件を考えるとあり得ない話ではない……現在、ギャラクシー船団近くを通る他の超長距離移民船団は航路を迂回し緊急フォールドしている、正規軍からは速やかに制圧、場合によってはメインランドに反応弾もしくはＭＤＥ（時空振動弾）の使用もあり得る」
オズマの言葉に全員が最悪の事態を覚悟した。
「シェリルの故郷を消す事になるのか……」
早乙女 アルトはその現実に迷うも同情は出来ない。
マクロスクォーターは出航し、他の支部から派遣される僚艦との会合宙域へとフォールド航行へと移る。
ギャラクシー移民船団の総旗艦“マクロス.ギャラクシー”は禍々しい生物的な外見へと変貌していた。同移民船団の軍事的要を担うウェストポイント級支援母艦はマクロス.ギャラクシーとの距離を取りつつも情報を収集する事しか出来なかった。大統領府もバトルギャラクシーも今やバジュラとの融合を果たしている。
「これは現実なのか」
ウェストポイント級支援母艦の防衛ステーションを担うウラガ級空母の艦長は送られてくる映像に顔が強張る。バジュラの幼生体が次々と市民に取り次ぎ融合を始めていたのだ。
メインランド近くにある研究区画に安置されていた準バジュラクィーンはバジュラ戦役が起きる前、ギャラクシー船団が偶然発見した個体であり、研究を進めていた。これによりこの船団は何所よりもバジュラの生体情報を得る事に成功し、銀河を支配できると思い描いた……しかし、それが失敗に終わりギャラクシー船団上層部は証拠隠滅を図ろうとした途端、擬死状態で欺いていた準バジュラクィーンが牙を向き、予め人間と融合できるバジュラ個体を用意し、一斉にメインランド内へと放ち、同時に研究区画との融合を進めていた。
瞬く間にバジュラの大群を閉じ込めた檻化したメインランド内は戦場になり、デストロイド隊やＶＦ隊の迎撃にも数に勝るバジュラの前に敵う訳も無かった。
ガンポットの弾丸サイズのＭＤＥ弾やＭＤＥビームを用いてもバジュラの大群は数で圧倒していた……更に人間と融合を前提にした新種個体は従来いる固体がメインランドの市民を捕らえ、専用のネストに連れて行き効率良く産み出して行く。船団内のフォールドネットワークによりシェルターの位置情報まで知られ、更に一部新種個体幼生体をメインランド内に放ち極少数の個体がペットして人間社会に溶け込んでいた。バジュラの幼生体は成体とは似ても似つかない可愛らしく、幼生体のサイズは小動物だ……発見が遅れたのもバジュラに関する情報を全部公開してなかった。やがて中間形態になると大型犬と同じサイズになり、体毛が生えたコブラと言う感じなる。普通なら脱皮して第二形態になるが新種個体はこの状態で人に襲いかかり、全てが少女であった。
その少女は数か月前、メインランドに僅かに残った自然保護エリアで緑色の可愛い生き物を拾った。大きな眼と身体の倍近く長い尻尾……彼女は育てる事にした。両親は仕事中毒、学校もバーチャルリアルティシステムにより在宅学習が当たり前になっており、特にこのギャラクシー船団は資本主義を聖典としていると言われるほどに合理化を追求していた。
その為に共働きが当たり前になっていた……しかし、子供にとってはさびしい事は変わりが無く、娯楽番組で心の隙間を埋められる程子供は単純ではない、その少女も寂しさを感じ、見慣れない小動物を拾ったのだろう。無論巨大な閉鎖空間である移民船団都市では無許可でこの様な小動物を飼うのは違法である……だが少女にそのような知識がある訳でもなかった。これも人の関わりを最低限に奨励したギャラクシー船団の弊害となり、最悪の事態へと転がる事になる。
「……ジョン」
幼生体の中間形態を目撃した少女は恐怖と言うよりは好奇心が勝っていた。と言うのもこの新種バジュラは人間にとっては麻薬の様な成分を分泌しており少女は酔っていた。両親の共働きと他人と極力接しない社会でなければ対処できたかもしれない。彼女は衣類を脱ぎ、まるで分かっている様に目の前に居る怪物に性器を曝した。
中間形態のバジュラは触手を出し、背後から少女に覆い被さる。少女は光悦し腰を動かしより深く結合を求め、妖艶な声を出す。
「ジョン、もっとついてぇ！」
人間の生殖器に適合するように進化したバジュラの生殖器……だがそれは人類が想像だにしなかった種の保存への始まりへと過ぎなかった。ジョンと接していくうちに種を超えた愛へと目覚めるには時間がかからなかった……バジュラらは人間との対話の為に選んだのは人間を融合した個体の繁殖……それは別の女王バジュラが率いるグループらからの“情報”により不要な争いを避ける為の試みだったかもしれない。だが食物連鎖の頂点となった人類にはそれは脅威に過ぎなかったのだ。
彼女はジョンと名付けたバジュラとの性交に夢中になり、気がつけば必要無い時には服を着る概念すら無くなり、少女の秘所や菊門はバジュラとの“生体コネクト”へと変貌していた。外の情報は他のバジュラグループからの情報により得られ、ギャラクシー船団の情報統制は彼女には通じて無かったのである。
ある日、情報源になっていたバジュラグループは人間に自ら住んでいた星を明け渡して旅に出た。それはギャラクシー船団の陰謀が潰えた事を意味し、自体は急に変化した。少女はジョンと結合とするとジョンは飼い主の少女の生殖器や淫核を変化させて繭を造る器官へと改造した。淫核は男性器のＤＮＡをナノマシンで発現し糸を造る射出孔へと変化し糸を幾重にも自らの体に巻きついて繭を作っていく。他のカップルの中には本格的に融合を始めている所もある。時間差でこの様な作業をするのは全滅を防ぐためである。バジュラの情報ネットワークは最早人類が持つ通信システムよりも凌駕しているのだ。
少女が眼が覚めた時には足が六脚になり昆虫の様なフォルムになり上半身は人の形をしていたがバジュラと同じ皮膚へとなっていた。足音が聞えて来る……敵と本能的に察知した少女は背部にあるそれをドアの方へと向けると脳内でスイッチを押した。それは生体ビーム発射器官であり、バジュラ（大）と比較すれば威力こそ落ちるが人間相手なら十分過ぎる武器だ。彼女は飛翔する、周囲には船団護衛艦隊軍の陸戦隊の部隊やＶＦ小隊が待ち構えていたが他の個体らが兵隊バジュラを派遣してメインランドは戦場へと変貌した。
移民船団で最も怖いのはバイオハザートだ……その最悪な状況が起きてしまい、大統領らは大統領府を放棄し“予備”のバトルギャラクシーに本部を置いた。だがそこにも新型バジュラが回り込み、アドヴァンストバトル級の船体を侵食していく。気が付いた時にはメインランドはビショップ級をコアにした“バジュラ要塞”へとなっていたのだ。
ＳＭＳが主力にするマクロスクォーター級はバジュラ要塞へと変貌したメインランドからかなり離れた位置にいた。
「……彼女達は別の世界を目指すって」
マクロスクオーターのメイン艦橋に居るランカ.リーはそう呟く。彼女は胎児状態でバジュラが持つウィルスに感染、バジュラらはこのウィルスで“会話”し“歌を歌う”……ランカが歌うアイモもバジュラのラブソングなのだ。
「前方にフォールド反応……メインランドが消えて行きます」
その姿をジッと見ている別の少女は何も言わなかった、忌まわしい故郷が消えた事も……。
終
＜専門用語解説＞
・ＶＦ−２４ エボリューション
新星インダストリー社の試作機“ＹＦ−２４”の制式採用機。公式設定では制式化されてないが某模型雑誌にあるＶＦ−２５のスペシャルペイントにはＶＦ−２４と記載されているので移民船団の護衛軍や正規軍によっては制式採用している所もあるかもしれない。フロンティア船団のＶＦ−２５、ギャラクシー船団のＹＦ−２７はこの機体をベースに開発された。ＥＸ−ギアやＩＳＣ（通称イナーシャルバッファ）と呼ばれるＧ軽減システムを実用化した機種。
・第７２７独立戦隊 ＶＦ−Ｘレイヴンズ
ゲームソフト『マクロス ＶＦ−Ｘ�供戮能藹个靴神亀�軍の特殊部隊。隊長のエイジス.フォッカーはオズマ.リーの先輩であり小説版では最終決戦時にフロンティア軍を援護する形で登場。旗艦はウラガ級マザーレイヴン、艦載機も第一次星間戦争で使用されたＶＦ−１に設立当時最新鋭であったＶＦ−１９やＶＦ−２２Ｓと言った最新鋭機まで揃える。
・ＶＦ−２２Ｓ ストルゥム.ボーゲル��
ジェネラルギャラクシーが開発したＹＦ−２１の制式採用機。新星インダストリーのＹＦ−１９との制式採用機争いに敗れるも特殊部隊用の機体としては破格の性能を持ちＶＦ−１７の後継機として採用された。『マクロス７』ではマックスとミリアの専用機として登場。
・グァンタナモ級
第一次星間戦争時に配備されたアームド級空母の後継となる護衛宇宙空母。シンプルな構造で量産性に優れている。
・ウラガ級
二段式水宙両用空母。水上航行を可能にしており小規模の艦隊旗艦機能を有する。
・マクロスクォーター級
多目的ステルス宇宙戦闘機動空母でありマクロスの名を持つのはこの戦艦も“可変攻撃宇宙空母”。サイズこそマクロス級の四分の一だが機動性は高く戦闘力も然る事ながら分離合体機構を採用した事によりある程度の拡張性を持たせている。劇場版では幾多の同型艦があるが細部は異なる。
・マクロス.ギャラクシー
第五十一次超長距離移民船団。ジェネラルギャラクシーがスポンサーになりサイバスティック、インプラント（＝サイボーク化）を積極的に取り入れている電脳船団。逆に言えばインプラントしてない者にとっては居住性は劣悪その物といえる。第五十五次超長距離移民船団マクロスフロンティアとは航路が近く“冷戦”状態になっておりギャラクシー船団側がバジュラを利用して戦争を仕掛ける事になる。シェリル.ノームはこの船団の出身でマネージャーをしていたグレイス.オコナーは船団とバジュラクィーンを乗っ取り世界征服を企むもＳＭＳが中心になり射殺されている。
・Ｓ.Ｍ.Ｓ
星間運輸業Ｓ.Ｍ.Ｓの自前の護衛部隊を発展させ、正規軍の下請けとして各移民船団や移民惑星に支部を置くＰＭＣ。“社員”も正規軍士官の退職組やスカウト、志願者で構成されておりその腕前は正規軍よりも高い。だが戦死しても“事故死扱い”となるが社員は気にしてない節もある、これは正規軍では到底雇えない事情を持つ社員も多い。主に次期主力機の試験運用からアイドルの護衛までと幅広い。なお創業者はブリタイ艦隊に所属していたリチャード.ビルダー氏。
・ウェストポイント級支援母艦
新マクロス級移民船を旗艦にする移民船団（一例にマクロス７船団、マクロス１１船団）は中核大型艦七隻を中心に構成され、ウェストポイント級支援母艦は訓練施設に前線司令部、各軍艦の補給機能、小型艦修理施設、兵器の開発工廠を持つ巨大訓練艦。先端部にはウラガ級空母がドッキングしている。これは中核大型艦の特徴であり旗艦のシティ７にはバトル７がドッキングしている。
・バジュラ
２０４０年に人類と初遭遇し、第１１７調査船団を壊滅させた宇宙生命体。腸内細菌バジュラウィルスにより発せられるフォールド波により別個体とネットワークを構成する生物。バジュラクイーンを頂点に命令を発し、複数の準女王らがそれを実行し、無数のバジュラ（大）やバジュラ（小）らが兵隊を役目する。しかし生物としては異常な学習能力を持ちフォールド波を阻害する電子戦仕様機“ＲＶＦ−２５”や“ＲＶＦ−１７１ＥＸ”を伴って倒さないと進化する恐れがある。ランカ.リーは母親がバジュラ研究をしておりウィルスが胎児感染しているが健康面では問題は無くバジュラとのコミュニケーションを取る事が可能になっている。
・オズマ.リー
ＳＭＳフロンティア支部に所属するＶＦパイロット、ＳＭＳスカル小隊の隊長で歴戦の猛者。義理の妹であるランカの事になると時には暴走、なおＴＶ版では数々の死亡フラグを立てつつも生還しており、恋人が作ったパインケーキはフラグクラッシャーとして名が知れている。
（マクロスシリーズではパインサラダが死亡フラグとされている）
・早乙女 アルト
マクロスＦの主人公、シリーズ屈指の美少年であり家は名門歌舞伎一門で自身も女形として舞台を重ねているも自分自身の現状に納得して無かった。バジュラ戦役の一年前に所属していた三星学園航宙科ミシェルと出会い、高等部進学と同時に芸能科から航宙科に転科、舞台で鍛えられた勝負強さとアドリフには定評もあって次席まで上り詰めている。シェリルとランカと出会った直後にバジュラが襲来し咄嗟にＶＦ−２５を操縦、これが縁でＳＭＳに入社する。なお劇場版ではＶＦ−２５からＹＦ−２９に乗り換えており最終決戦時にクィーンバジュラと共に消えている。
・シェリル.ノーム
銀河の妖精と呼ばれるトップシンガー、彼女の歌が各船団や移民惑星で途切れる日は無いと言われる程の実力を持つ。フロンティアにてアルトやランカと出会い、徐々に心情が変化していく。人為的にＶ型ウィルスを感染させられていて生命の危機であったがランカが脳に移動したシェリル体内に居たウィルスに呼び掛けて腸内に戻している。最終決戦時にはバトルフロンティアのメイン艦橋で歌っている。
（リン.ミンメイをリスペストしている様に思えるが実は劇場版マクロスはマクロス世界の“映画”と設定があるので実際にミンメイがマクロスの艦橋で歌ってない）
『マクロス.ゼロ』に登場するヒロインの一人マオ.ノームの孫。
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