英米の暗躍 １
◆ここで、法幣改革をリース・ロスに指南した。というより黒幕のイングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンについて触れてみたい。
モンタギュー・ノーマンは、母方と父方の両祖父のがイングランド銀行の総裁となった名門中の名門のサラブレットとして生まれる。本人自身も、1922年〜1944年の２２年間の長きに渡りイングランド銀行総裁を努めている。
モンタギュー・ノーマンの特徴たる政策は『金本位制』と『意図的デフレ』の推進者である。これは、ケインズ派のノーマン評であるが、これ以上の政策が、あるかも知れないが、私自身は専門外でよく知らない。
ルーズベルトは、ケインズの学説に法り、公共事業を促進して、景気復興策を計るニューデール政策を取っていたことになっているが、あに計らんや、ケインズ学説と正反対のモンタギュー・ノーマンの追従政策を取っていたことが判る。
さらに、イギリスが金本位制に復帰した時、アメリカはイギリス経済を救おうとして、無謀にも、低金利と金融緩和の政策を取り続けた。これは、イギリスが第1次世界大戦後に自国の通貨を自国の経済とは無関係に吊り上げようとした手前勝手な政策である。行き場の無い通貨は株式市場に殺到する、これが、大恐慌前のニューヨーク市場の異常なる高騰である。
イギリスで金本位制法を可決した２年後の１９２７（昭和２）年７月、ヨーロッパで三大中央銀行総裁の会議が開かれいる。これは、イングランド銀行のモンタギュー・ノーマン、ニューヨーク連邦準備銀行のベンジャミン・ストロング、そしてドイツ帝国銀行のヤルマール・シャハト博士の会議は、当時の世界の最高級クラブの会議といわれた。
ここで、アメリカの銀行金利の引き下げによって７億２５００万ドル相当の金を輸出させ、合衆国が所有する金をヨーロッパに取り戻して、ヨーロッパ大陸の各国を金本位制に復帰させるための最良の方法を議論されている。思惑通り、翌年の６月、フランスのポアンカレー内閣は金本位へ復帰している。
こんな人工的な株価の高騰など長続きするはずは無いので、当然のように、ニューヨーク株式は破綻する。
※一番、厄介なのは価格が落ち着き、動かない状態で、最良なのは、インフレとデフレが短いスパンで波の様に押し寄せる状態だろう、庶民にとっては、誘惑的な新聞報道によって投機に走ったり、破産状態のなったりで息つく暇はないが、資産にとっては、経済を乱高下して、労働者や農民などの消費者から収奪することが目的であるため、『そんなコトは知ったことじゃない』のだろう。特に、モンタギュー・ノーマンクラスになると。
幸いなことに、何時の時代でも、御用学者はいるもんで、デフレでもインフレでも『グローバリズム』とか何とかで取ってつけたような説明をしてくれる。女子高校生のスカートの中身でも手鏡で覗いていれば、大した罪にはならないけど。
◆モンタギュー・ノーマンは、『資産家の資産家による資産家のための政策』に終始していることがわかる。ルーズベルトさえ情けない下僕のように思えてくる、表表紙には、庶民の味方のケインズ君が是非とも必要になってくる。
この悪魔のような経済政策の二番煎じをやったのが、中国における『銀吊り上げ政策』と『法幣改革』になる。庶民の反感を買わないように『中央銀行』という看板を誤魔化し、『ニューヨーク連邦準備銀行』など、うそ臭い看板を使わずに済む。クリスマスイブの日に４０の法案を通そうなど狡っからい議会工作などやらなくとも済む。（連邦準備銀行は民間の株主によって所有されているので「連邦」ではなく、通貨操作の目的で造ったので「準備」でもない。）
何せ、中国を熟知している大英帝国。長年の愚民政策で鍛え上げている上に、賭博好きでお金に眼がなく、アヘンが止められない怠惰な国民性。
条件も揃っている、通貨の元締めは、香港上海、麦加利などの自国の銀行がシッカリ抑えている。日本という悪役も居る、一番厄介なのも日本であるが。
◆しかし、とんでもない、横槍が入った。１９３４（昭和９）年３月、アメリカの上院のナイ議員が『軍需工業調査案及び、アメリカを戦争に巻き込まぬための立法設定案』の提案で、イギリスの軍事活動を牽制する審議を要請する。ホワイトハウスは直ちにこれを拒否。しかし、民主・共和の超党派有力議員が集まり、審議に入る。この頃のアメリカの世論は、先の大戦は、イギリスの宣伝により引きずり込まれた余り意味のない戦争であり、『同じに轍は踏まない。』との意識が強かった。
当然のように、英国政府と保守党系の新聞は嘲笑合戦を繰り広げる。特に激しく罵倒したのは、『ポーランドの武器売り込みの仲介者として、キング･ジョージ５世の名前が挙がったときであった。』
その年の秋、第1回の審議会が終え、『第1次世界大戦中に、アメリカ政府の代理人として、モルガン商会が英国政府のために動いた事実あり』との疑義をはさみ、翌年の１９３５（昭和10）年１月が査問委員会を設置して、調査費として、５万ドルの予算を計上する。
その頃、モルガン商会が厖大なイギリスの軍需品の購入を一手に引き受け、言ってみれば、英国陸海軍認定の資材部門のような役割を担っていることは周知の事実であった。
◆イギリスの駐米リンゼイ大使は、すぐに対処行動に出る。１９３５（昭和１０）年４月にハル長官を訪問している。この内容は、当時のスタンレー・ボールガン首相の口からは、『廃物になった論争を、再び繰り返すのは、国際情勢の上からして好ましくない。』というものだった。翌日、ＡＰ通信によると、ルーズヴェルト大統領はこの超党派の審議を拘束すると発表。当日は、ナイ議員他２名の査問委員にメンバーがホワイトハウスに呼ばれている。何を話されたのか、現生を渡されたのか、裏取引があったかは不明であるが、会談後、ナイ議員からは『外国政府との紛糾を起こすのを避けることに同意する。』とトーンが著しく落ちる結果となった。
その後の審議会である第2回査問委員会の会合は、硬直化したものになった。今後、どんな手段に打って出ても、ルーズヴェルトに妨害されるのは明らかである。
メンバーからは『大統領からの干渉し得ない委任立法が成立しない限り、戦争は避けられない。』ということで意見が一致する。
『アメリカの伝統的なモンロー主義もイギリスに不利益が及ぶなら修正するであろう。また、民主主義がイギリスの外務省に不利益を与えるならば、都合のいいような調和案を提示するであろう。』と面々は考えていた。
◆そして、何故かしら、当時（現在でもそうだが）海外や政治の米国内での最大の権威あるニュースソースであるニューヨークタイムズは、英国政府や英国保守党系の新聞以上にナイ議員率いる査問委員会は非難している。このモルガン商会に対する記事は、共産党と赤旗以上にお先棒を担いだ論評に終始している。
査問委員会硬直化すると、『この査問の結果、何ら傷を負わずに済んだことは、単にモルガン商会のみならず、国家のために喜ぶべきことである。』といったように大喜びする具合にである。当然、イギリス政府がこの問題を事前にもみ消したコトは、片言隻語もふれていない。
戦前のニューヨークのウォール街２３番（モルガン商会）とタイムズ・スクウェア（ニューヨークタイムズ社）は、イギリスのプロパガンダ・諜報・情報網が張り巡され、イングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンの走狗といっても過言ではなかった。イギリスの最大の問題は、世論を形成するマスコミと政界の取り込みだったかも知れない。
◆もう少し、ニューヨークタイムズ社について触れておこう。ニューヨークタイムズの外国通信を書くには、英国政府のパスポートが必要だと言われていた。戦争直前の各国の支局長の顔ぶれを見ると、欧州総局長はフレデリック・デュランティ。モスクワ支局長、ウォルク・デュランティ。東京支局長、ヒュー・バイヤス。その他、パリ支局長・ロンドン支局長等々、怱々たる生粋のイギリス人が顔を揃えている。
英国海軍とアメリカ国務省の橋渡しをしているのも、ニューヨークタイムズの社長だと言われており、マスコミの中立性というには、余りにも問題がある政策さえも堂々と発表したことさえある。
『私は、常に世界の平和と安寧には英語圏の国民、特に合衆国及び英国帝国の拠るものと信じている。私の力が及ぶ限りこれを発展させることが自分の愛国的義務と認識しており、ニューヨークタイムズではこの政策に奉仕してきた。』
『正義に観念が他の第３国と異なるため、これらの理想を維持し防衛し尊敬に値するためには、英米両国が手を携えて、益々強大になる必要があると確信している。』
これが、多分アングロサクソンの本音であろう。現在のグローバリズムと云われる根底には、このような思想が脈々と流れていることを忘れない方がよい。
その他、海外ニュースの社説には、アメリカの取り込む形で造ったとされる『イングリッシュ・スピーキング・ユニオン』のフェンレー博士の指導の元で凡庸な記者に原稿を書かせていたり、外交解説書は、イギリスのスポークスマンを１０年勤めた白系ロシア人に書かせたりと、ありとあらゆる外部に接する穴は英国プロパガンダで塞がれ、これでもかと洗脳攻撃にさらされることになる。
ニューヨークタイムズ社と並んでアメリカの世論に影響を与えるのは、ハーストである。イギリス嫌いで有名なハーストは、渡英するやいなや、一流紳士の晩餐会や園遊会に招かれる、果ては、皇室からの謁見も許され、至れるつくせりの持て成しを受けることとなる。
帰国後間もなく、ハーストは『二大英語国の協力こそ世界を救う所以である。』という記事を、系列の新聞トップに飾ることとなる。これにて、ハーストも沈没する。
モルガン商会など同様、生まれが卑しいアメリカの成り上がり連中は、由緒正しき皇室などにめっぽう弱く、『皇室から、上に下にと持ち上げれば、信念などコロッと変える。』とわかった上での接待攻撃が効が制した。これも、イギリスのアメリカ人の心理を読んだ戦略勝ちである。
◆ニューヨークタイムズ社と並んでイギリスのプロパガンダの窓口であるウォール街２３番のモルガン商会も、直接政治に影響を与えるだけではなく、民間の対英奉仕と思われる外交・文化の諸機関をしこたまこしらえている。
その１つに、ニューヨークタイムズの欄で少し触れたが『イングリッシュ・スピーキング・ユニオン』という文化運動の団体がある。これは、何の変哲もない団体のようであり、団体の設立要綱を見ても
�＼こΔ留儻豬�の国民同士の親睦
��大英帝国とアメリカ両国間の友好関係を一層強化するために以下の事項を実施するものとする。
・各自の知識の交換
・共通制度に対する尊敬心を尊重し、鼓舞すること。
これだけ読むと、一見、日本で云えば飯田橋とか後楽園辺りの地味であってもなくてもいい財団や社団法人のようである。当時、『イングリッシュ・スピーキング・ユニオン』の会長は、モルガン商会の筆頭顧問であるジョン・Ｗ・デェヴィスが努めていた。
◆ここで、モルガン商会の生い立ちにも、若干触れておこう。
モルガン商会（当時は、ジョージ・ピーボディ商会）とは、元はと言えばジョージタウンの奴隷市場で一旗あげた成り上がりの素性の怪しい会社である。
西海岸のボルチモアに移ったときに、ボルチモアの会社であるブラウン・ブラザーズを通じて、ロンドンのビジネスにうまく参入した業績を伸ばしている。
これは、金価格の操作を通して国際金融市場をコントロールして利益を上げる商売で、このようなアメリカの金融業者をロンドン･コネクションと称した。ブラウン・ブラザーズは、投機事業の資金をロンドン・シティーからウォール街へ送り込み、アメリカで行われた全ての事業が、ロンドンによって支配されていたからである。
このブラウン家の投資会社「ブラウン・シップレイ社」の最大のパートナーが、何あろうイングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンであり、長年、「ブラウン・シップレイ社」の役員は、イングランド銀行の理事を努めることが恒例となっていた。
イングランド銀行は、「ブラウン・シップレイ社」を通じて、モルガン商会を支配する構図が出来上がっていた。
なお、「ブラウン・シップレイ社」は１９７０年代、投資銀行メリル・リンチに買収される形を取っているが、、現在、なお、世界一のマーチャント・バンカーとして全米に君臨している。
◆フランクリン・Ｄ・ルーズヴェルトとモルガン商会との間も並々ならぬ関係にあった。ウィルソン大統領（第２８代）以来、ホワイトハウスに影響力も持ち続けている人物にハウス大佐という人物がいる。
（この男、大佐と名乗っているが、実際は、軍役に付いたことは無く、単なる名誉職と思ったほうがいい。）
彼の影響は、ルーズヴェルト大統領の義理の息子であったカーティス・ドール氏は著書『操られたルーズヴェルト』等の著書で詳しいが、歴史家によると、ウィルソン大統領などは、ハウス大佐に首輪を付けられてように従順だったという。
ハウス大佐は、モルガン商会、イギリス金融界とのパイプの役目を果たした。
これは、ハウス家の成り立ちを見れば、一目瞭然である。ハウス大佐の父親は、イギリス金融利権代表者であった。
ハウス家は、代々イギリスに定住していたが、父親の代になり、テキサスに移り住むことになる。そこで彼の父は南北戦争のあいだ密航船で財を成した。
アメリカ南部の綿などの密輸品をイギリスに輸送して、イギリスから商品を購入してテキサスの人間に売りつける。当時、テキサスは、南北戦争で北軍に包囲され、必要な物資が乏しいため飛ぶように売れた。テキサスの綿も、ロスチャイルド家を含む英国の有力なコネクションを相手に商売していたため、これも、おいしい商売であったのだろう。
そして、密貿易によって儲けた上がりを、アメリカの金融業を信頼せずに、中国阿片のマーチャント・バンクであるロンドンのベアリング商会に預け、南北戦争の終わる頃には、テキサス１の大金持ちになっていた。
これまた、モルガン商会同様に素性の怪しい家系で、南部で働く奴隷と中国の阿片貿易の恩恵（間接的にではあが）で成り上がったようなモノである。モルガン商会同様、イギリスには、足を向けて寝れない関係にある。
ハウス大佐自身が、モルガン商会の代理人を勤めたのは当然の流れかも知れない、アメリカの大統領などは、イングランド銀行の孫会社のような存在であったのだろう。
事実、ウィルソン大統領などは、大恐慌の時に、「わが国の出来事を手掛けてもらうために、Ｊ・Ｐ・モルガンのような６〜７人大衆的な精神をもった人々 からなる委員会を任命していたら、このような全ての混乱は回避できたであろう。」などと見え透いたお世辞を言っている。後世の歴史家は、『当時の真の大統領は、ハウス大佐である。』との見方で一致している。
ウィルソン大統領から４代後の１２年後に選出されたウィルソン同様民主党（途中の3人は共和党）の第32代大統領のフランクリン・Ｄ・ルーズヴェルトも、負けていなかった。
ハウス大佐は、ウィルソンが大統領になる前に、テキサスに引きこもり、、『統治者フィリップ・ドルー』という本を書いている。これは、マルクス主義生き写しと言って過言ではない書物である。
累進所得税・失業保険・社会保障等のこの本の中での予言は、ルーズヴェルト大統領時に、忠実に実行されたのである。
ハウス大佐同様に歴代に大統領を陰で操ったバーナード・バルークによってホワイトハウスに送り込まれたルーズベルト大統領の初期に財務長官を勤めたヘンリー・モーベンソー・ジュニアモルガンと関係があるグッゲン・ハイム一族の出身である。
また、大戦直前まで、１０年間駐日大使を務めたアメリカのグレー大使は、ハウス大佐の引きによりウィルソン大統領の顧問から、公使へと大抜擢している。近代史では親日家と称され、満州事変の翌年の昭和7年に、駐日大使の任に付いたジョセフ・グレーこそ、何あろうモルガン商会の一族であり、前年の昭和６年にイギリスから派遣された駐日大使フランシス・リンドレーでは、ロスチャイルド家の一族なのだ。
ついでに言えば、当時の外相で、戦後の総理大臣幣原喜重郎とハウス大佐も親密な関係にあったとされている。ただし、幣原外相がモルガン商会の手足となって動いたことの証明はされていないが、当時からフリーメーソンだという噂はあった。
彼のどういう状況にあっても、国益とは無関係に『不干渉』を貫く姿は、意識的か無意識はわからないが、英米の傀儡であったのだろう。
昭和の初期には、英米の諜報組織が出来上がり、日本国内で網の目のように張り巡らされていた。
『統治者フィリップ・ドルー』の中で概観されている機関の一つは、連邦準備制度である。
【当時のアメリカ米中の経済状況】
昭和１０年に交付された銀行法は、「有害な信用の膨張・収縮を防止するため」、前述の準備金要件を倍加する権限を連邦準備制度理事会に与え、通貨の引き揚げを敢行。信用の収縮はデフレを引き起こす。
一時、大幅な公共投資と赤字財政によって「繁栄」が戻ったかに見えた始めた昭和１２年初めに、ルーズヴェルトは財政支出を大幅に削減し、連邦準備銀行はマネーサプライの増加を引き締めた。
こうして、一旦回復に向かったかに見えたアメリカ経済は、昭和１２／１３年には再び厳しい不況に見舞われ、新聞は「ルーズヴェルト不況」という言葉を使い始める。
世界史では、ほとんど触れないが、この時期のアメリカの経済は、昭和４年に起きたニューヨーク株式の大暴落があった当時より、より深刻であった。
注）昭和４年度の失業者は、昭和5年度の数値当てはめる。
昭和８年に底を打った世界恐慌も、その後、緩慢ながら好景気の局面に移行し、昭和１２年前半には、多くの国に於いて、株式暴落前の水準に達した。しかし、昭和１２年９月に再び暴落に襲われ、アメリカがより打撃を受ける。
昭和１２年度の世界工業指数（昭和４年度を100とする）
しかし、昭和13年度を底に回復を見せる、これは、欧州での大戦勃発で、需要が急拡大したからで、これを如実に現す、工作機械の輸出高を見てみる。英国の輸出は、昭和14年度は、前年度の倍以上、フランスに於いては、３倍以上に急進する。
昭和１４／１５年度の工作機械輸出国別（対象；昭和14/6年度〜昭和15/5）
【中央公論 昭和１３年１０月号より】
←支那事変と毛沢東 【通貨戦争の一覧に戻る】 ⇒--．英米の暗躍 ２
bgcolor(skyblue):
(20-199)
大阪時事新報 1933.10.25(昭和8)
米国産金買上げ欧洲市場に動揺を呼ぶ!
ルーズヴェルト氏の演説財界ではかく観察
ルーズヴェルト大統領の放送演説は財界に只ならぬ波紡を与えているが、演説そのものは甚しく難解であったことは事実だ、併し要は米国々内景気の煽揚が目的であったことだけは間違いなく、そのためには最近米国々内に漸次拡大しつつあったドル貨安定説を明かに否定している、即ち戦前の物価水準にまで物価が昂騰してからドル貨を安定せしむると説いているのは夫れだ、言い換れば物価が戦前の水準に釣上げられるまではドル貨の安定は計らないということだ、茲においてドル貨の急落を招来したが、金買上げその他の具体的方策については未だ正確に知るを得ない、されど米国々内景気の煽揚を目的とする以上欧洲市場に金を買付けるということはせず、国内産金の買上げのみではないかと思われないでもない、とまれル大統領の演説を各方面ではどう見ているか、一顧してみることにする
対米為替は当然昂騰か 機�鼎鯑世申菽屬� 山室三菱銀行常務
右に関し三菱銀行常務山室宗文氏の意見を聴くに左の如くである
アメリカ今回の新政策は米国の物価証券相場の反落を阻止するには効果的であろう、国内の各種インフレ政策を効果あらしむるためには金の買上げ値段を諸外国以上に引上げることは機宣の措置だと思う、今回の弗貨統制策は例の補制弗案とは異っているが政治的には同案の主旨を実現せんとするもので、即ち実質的効果には見るべきものがあろう、斯かる方策を持続する以上弗の対外為替相場が低落を免れず、我対米為替は当然昂騰を見ることは明かである、然し元元アメリカのインフレ政策を、効果あらしめんがために出た弗貨の価値は、我財界に取って悪くはない、なおアメリカの産金買上げ値段がロンドン市場に比し引上げられるとロンドン側は更にそれ以上に引上げる結果を出しはしないだろうかかくて我政府の産金買上値段引上げも当然且つ必至的である
モンタギュー・ノーマンは、母方と父方の両祖父のがイングランド銀行の総裁となった名門中の名門のサラブレットとして生まれる。本人自身も、1922年〜1944年の２２年間の長きに渡りイングランド銀行総裁を努めている。
モンタギュー・ノーマンの特徴たる政策は『金本位制』と『意図的デフレ』の推進者である。これは、ケインズ派のノーマン評であるが、これ以上の政策が、あるかも知れないが、私自身は専門外でよく知らない。
ルーズベルトは、ケインズの学説に法り、公共事業を促進して、景気復興策を計るニューデール政策を取っていたことになっているが、あに計らんや、ケインズ学説と正反対のモンタギュー・ノーマンの追従政策を取っていたことが判る。
- 『金本位制』による政策
１９２５（大正１４）年５月、イギリス議会は、一度は停止した、金本位制法を可決し、大英帝国は金本位制に復帰させる、すると、オランダ等の欧州各国か金解禁に踏み切る。今度は、ニューヨーク連邦準備銀行は、イギリスの金本位制復帰を支援するため、大英帝国に対して２億ドルの金の貸付を行うことを取り決めている。これは、ニューヨーク連邦準備銀行総裁のベンジャミン・ストロングとイングランド銀行総裁のモンタギュー・ノーマンとの間で行われたとされている。
さらに、イギリスが金本位制に復帰した時、アメリカはイギリス経済を救おうとして、無謀にも、低金利と金融緩和の政策を取り続けた。これは、イギリスが第1次世界大戦後に自国の通貨を自国の経済とは無関係に吊り上げようとした手前勝手な政策である。行き場の無い通貨は株式市場に殺到する、これが、大恐慌前のニューヨーク市場の異常なる高騰である。
イギリスで金本位制法を可決した２年後の１９２７（昭和２）年７月、ヨーロッパで三大中央銀行総裁の会議が開かれいる。これは、イングランド銀行のモンタギュー・ノーマン、ニューヨーク連邦準備銀行のベンジャミン・ストロング、そしてドイツ帝国銀行のヤルマール・シャハト博士の会議は、当時の世界の最高級クラブの会議といわれた。
ここで、アメリカの銀行金利の引き下げによって７億２５００万ドル相当の金を輸出させ、合衆国が所有する金をヨーロッパに取り戻して、ヨーロッパ大陸の各国を金本位制に復帰させるための最良の方法を議論されている。思惑通り、翌年の６月、フランスのポアンカレー内閣は金本位へ復帰している。
こんな人工的な株価の高騰など長続きするはずは無いので、当然のように、ニューヨーク株式は破綻する。
- 『意図的デフレ』政策
※一番、厄介なのは価格が落ち着き、動かない状態で、最良なのは、インフレとデフレが短いスパンで波の様に押し寄せる状態だろう、庶民にとっては、誘惑的な新聞報道によって投機に走ったり、破産状態のなったりで息つく暇はないが、資産にとっては、経済を乱高下して、労働者や農民などの消費者から収奪することが目的であるため、『そんなコトは知ったことじゃない』のだろう。特に、モンタギュー・ノーマンクラスになると。
幸いなことに、何時の時代でも、御用学者はいるもんで、デフレでもインフレでも『グローバリズム』とか何とかで取ってつけたような説明をしてくれる。女子高校生のスカートの中身でも手鏡で覗いていれば、大した罪にはならないけど。
◆モンタギュー・ノーマンは、『資産家の資産家による資産家のための政策』に終始していることがわかる。ルーズベルトさえ情けない下僕のように思えてくる、表表紙には、庶民の味方のケインズ君が是非とも必要になってくる。
この悪魔のような経済政策の二番煎じをやったのが、中国における『銀吊り上げ政策』と『法幣改革』になる。庶民の反感を買わないように『中央銀行』という看板を誤魔化し、『ニューヨーク連邦準備銀行』など、うそ臭い看板を使わずに済む。クリスマスイブの日に４０の法案を通そうなど狡っからい議会工作などやらなくとも済む。（連邦準備銀行は民間の株主によって所有されているので「連邦」ではなく、通貨操作の目的で造ったので「準備」でもない。）
何せ、中国を熟知している大英帝国。長年の愚民政策で鍛え上げている上に、賭博好きでお金に眼がなく、アヘンが止められない怠惰な国民性。
条件も揃っている、通貨の元締めは、香港上海、麦加利などの自国の銀行がシッカリ抑えている。日本という悪役も居る、一番厄介なのも日本であるが。
◆しかし、とんでもない、横槍が入った。１９３４（昭和９）年３月、アメリカの上院のナイ議員が『軍需工業調査案及び、アメリカを戦争に巻き込まぬための立法設定案』の提案で、イギリスの軍事活動を牽制する審議を要請する。ホワイトハウスは直ちにこれを拒否。しかし、民主・共和の超党派有力議員が集まり、審議に入る。この頃のアメリカの世論は、先の大戦は、イギリスの宣伝により引きずり込まれた余り意味のない戦争であり、『同じに轍は踏まない。』との意識が強かった。
当然のように、英国政府と保守党系の新聞は嘲笑合戦を繰り広げる。特に激しく罵倒したのは、『ポーランドの武器売り込みの仲介者として、キング･ジョージ５世の名前が挙がったときであった。』
その年の秋、第1回の審議会が終え、『第1次世界大戦中に、アメリカ政府の代理人として、モルガン商会が英国政府のために動いた事実あり』との疑義をはさみ、翌年の１９３５（昭和10）年１月が査問委員会を設置して、調査費として、５万ドルの予算を計上する。
その頃、モルガン商会が厖大なイギリスの軍需品の購入を一手に引き受け、言ってみれば、英国陸海軍認定の資材部門のような役割を担っていることは周知の事実であった。
◆イギリスの駐米リンゼイ大使は、すぐに対処行動に出る。１９３５（昭和１０）年４月にハル長官を訪問している。この内容は、当時のスタンレー・ボールガン首相の口からは、『廃物になった論争を、再び繰り返すのは、国際情勢の上からして好ましくない。』というものだった。翌日、ＡＰ通信によると、ルーズヴェルト大統領はこの超党派の審議を拘束すると発表。当日は、ナイ議員他２名の査問委員にメンバーがホワイトハウスに呼ばれている。何を話されたのか、現生を渡されたのか、裏取引があったかは不明であるが、会談後、ナイ議員からは『外国政府との紛糾を起こすのを避けることに同意する。』とトーンが著しく落ちる結果となった。
その後の審議会である第2回査問委員会の会合は、硬直化したものになった。今後、どんな手段に打って出ても、ルーズヴェルトに妨害されるのは明らかである。
メンバーからは『大統領からの干渉し得ない委任立法が成立しない限り、戦争は避けられない。』ということで意見が一致する。
『アメリカの伝統的なモンロー主義もイギリスに不利益が及ぶなら修正するであろう。また、民主主義がイギリスの外務省に不利益を与えるならば、都合のいいような調和案を提示するであろう。』と面々は考えていた。
◆そして、何故かしら、当時（現在でもそうだが）海外や政治の米国内での最大の権威あるニュースソースであるニューヨークタイムズは、英国政府や英国保守党系の新聞以上にナイ議員率いる査問委員会は非難している。このモルガン商会に対する記事は、共産党と赤旗以上にお先棒を担いだ論評に終始している。
査問委員会硬直化すると、『この査問の結果、何ら傷を負わずに済んだことは、単にモルガン商会のみならず、国家のために喜ぶべきことである。』といったように大喜びする具合にである。当然、イギリス政府がこの問題を事前にもみ消したコトは、片言隻語もふれていない。
戦前のニューヨークのウォール街２３番（モルガン商会）とタイムズ・スクウェア（ニューヨークタイムズ社）は、イギリスのプロパガンダ・諜報・情報網が張り巡され、イングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンの走狗といっても過言ではなかった。イギリスの最大の問題は、世論を形成するマスコミと政界の取り込みだったかも知れない。
◆もう少し、ニューヨークタイムズ社について触れておこう。ニューヨークタイムズの外国通信を書くには、英国政府のパスポートが必要だと言われていた。戦争直前の各国の支局長の顔ぶれを見ると、欧州総局長はフレデリック・デュランティ。モスクワ支局長、ウォルク・デュランティ。東京支局長、ヒュー・バイヤス。その他、パリ支局長・ロンドン支局長等々、怱々たる生粋のイギリス人が顔を揃えている。
英国海軍とアメリカ国務省の橋渡しをしているのも、ニューヨークタイムズの社長だと言われており、マスコミの中立性というには、余りにも問題がある政策さえも堂々と発表したことさえある。
『私は、常に世界の平和と安寧には英語圏の国民、特に合衆国及び英国帝国の拠るものと信じている。私の力が及ぶ限りこれを発展させることが自分の愛国的義務と認識しており、ニューヨークタイムズではこの政策に奉仕してきた。』
『正義に観念が他の第３国と異なるため、これらの理想を維持し防衛し尊敬に値するためには、英米両国が手を携えて、益々強大になる必要があると確信している。』
これが、多分アングロサクソンの本音であろう。現在のグローバリズムと云われる根底には、このような思想が脈々と流れていることを忘れない方がよい。
その他、海外ニュースの社説には、アメリカの取り込む形で造ったとされる『イングリッシュ・スピーキング・ユニオン』のフェンレー博士の指導の元で凡庸な記者に原稿を書かせていたり、外交解説書は、イギリスのスポークスマンを１０年勤めた白系ロシア人に書かせたりと、ありとあらゆる外部に接する穴は英国プロパガンダで塞がれ、これでもかと洗脳攻撃にさらされることになる。
ニューヨークタイムズ社と並んでアメリカの世論に影響を与えるのは、ハーストである。イギリス嫌いで有名なハーストは、渡英するやいなや、一流紳士の晩餐会や園遊会に招かれる、果ては、皇室からの謁見も許され、至れるつくせりの持て成しを受けることとなる。
帰国後間もなく、ハーストは『二大英語国の協力こそ世界を救う所以である。』という記事を、系列の新聞トップに飾ることとなる。これにて、ハーストも沈没する。
モルガン商会など同様、生まれが卑しいアメリカの成り上がり連中は、由緒正しき皇室などにめっぽう弱く、『皇室から、上に下にと持ち上げれば、信念などコロッと変える。』とわかった上での接待攻撃が効が制した。これも、イギリスのアメリカ人の心理を読んだ戦略勝ちである。
◆ニューヨークタイムズ社と並んでイギリスのプロパガンダの窓口であるウォール街２３番のモルガン商会も、直接政治に影響を与えるだけではなく、民間の対英奉仕と思われる外交・文化の諸機関をしこたまこしらえている。
その１つに、ニューヨークタイムズの欄で少し触れたが『イングリッシュ・スピーキング・ユニオン』という文化運動の団体がある。これは、何の変哲もない団体のようであり、団体の設立要綱を見ても
�＼こΔ留儻豬�の国民同士の親睦
��大英帝国とアメリカ両国間の友好関係を一層強化するために以下の事項を実施するものとする。
・各自の知識の交換
・共通制度に対する尊敬心を尊重し、鼓舞すること。
これだけ読むと、一見、日本で云えば飯田橋とか後楽園辺りの地味であってもなくてもいい財団や社団法人のようである。当時、『イングリッシュ・スピーキング・ユニオン』の会長は、モルガン商会の筆頭顧問であるジョン・Ｗ・デェヴィスが努めていた。
◆ここで、モルガン商会の生い立ちにも、若干触れておこう。
モルガン商会（当時は、ジョージ・ピーボディ商会）とは、元はと言えばジョージタウンの奴隷市場で一旗あげた成り上がりの素性の怪しい会社である。
西海岸のボルチモアに移ったときに、ボルチモアの会社であるブラウン・ブラザーズを通じて、ロンドンのビジネスにうまく参入した業績を伸ばしている。
これは、金価格の操作を通して国際金融市場をコントロールして利益を上げる商売で、このようなアメリカの金融業者をロンドン･コネクションと称した。ブラウン・ブラザーズは、投機事業の資金をロンドン・シティーからウォール街へ送り込み、アメリカで行われた全ての事業が、ロンドンによって支配されていたからである。
このブラウン家の投資会社「ブラウン・シップレイ社」の最大のパートナーが、何あろうイングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンであり、長年、「ブラウン・シップレイ社」の役員は、イングランド銀行の理事を努めることが恒例となっていた。
イングランド銀行は、「ブラウン・シップレイ社」を通じて、モルガン商会を支配する構図が出来上がっていた。
なお、「ブラウン・シップレイ社」は１９７０年代、投資銀行メリル・リンチに買収される形を取っているが、、現在、なお、世界一のマーチャント・バンカーとして全米に君臨している。
◆フランクリン・Ｄ・ルーズヴェルトとモルガン商会との間も並々ならぬ関係にあった。ウィルソン大統領（第２８代）以来、ホワイトハウスに影響力も持ち続けている人物にハウス大佐という人物がいる。
（この男、大佐と名乗っているが、実際は、軍役に付いたことは無く、単なる名誉職と思ったほうがいい。）
彼の影響は、ルーズヴェルト大統領の義理の息子であったカーティス・ドール氏は著書『操られたルーズヴェルト』等の著書で詳しいが、歴史家によると、ウィルソン大統領などは、ハウス大佐に首輪を付けられてように従順だったという。
ハウス大佐は、モルガン商会、イギリス金融界とのパイプの役目を果たした。
これは、ハウス家の成り立ちを見れば、一目瞭然である。ハウス大佐の父親は、イギリス金融利権代表者であった。
ハウス家は、代々イギリスに定住していたが、父親の代になり、テキサスに移り住むことになる。そこで彼の父は南北戦争のあいだ密航船で財を成した。
アメリカ南部の綿などの密輸品をイギリスに輸送して、イギリスから商品を購入してテキサスの人間に売りつける。当時、テキサスは、南北戦争で北軍に包囲され、必要な物資が乏しいため飛ぶように売れた。テキサスの綿も、ロスチャイルド家を含む英国の有力なコネクションを相手に商売していたため、これも、おいしい商売であったのだろう。
そして、密貿易によって儲けた上がりを、アメリカの金融業を信頼せずに、中国阿片のマーチャント・バンクであるロンドンのベアリング商会に預け、南北戦争の終わる頃には、テキサス１の大金持ちになっていた。
これまた、モルガン商会同様に素性の怪しい家系で、南部で働く奴隷と中国の阿片貿易の恩恵（間接的にではあが）で成り上がったようなモノである。モルガン商会同様、イギリスには、足を向けて寝れない関係にある。
ハウス大佐自身が、モルガン商会の代理人を勤めたのは当然の流れかも知れない、アメリカの大統領などは、イングランド銀行の孫会社のような存在であったのだろう。
事実、ウィルソン大統領などは、大恐慌の時に、「わが国の出来事を手掛けてもらうために、Ｊ・Ｐ・モルガンのような６〜７人大衆的な精神をもった人々 からなる委員会を任命していたら、このような全ての混乱は回避できたであろう。」などと見え透いたお世辞を言っている。後世の歴史家は、『当時の真の大統領は、ハウス大佐である。』との見方で一致している。
ウィルソン大統領から４代後の１２年後に選出されたウィルソン同様民主党（途中の3人は共和党）の第32代大統領のフランクリン・Ｄ・ルーズヴェルトも、負けていなかった。
ハウス大佐は、ウィルソンが大統領になる前に、テキサスに引きこもり、、『統治者フィリップ・ドルー』という本を書いている。これは、マルクス主義生き写しと言って過言ではない書物である。
累進所得税・失業保険・社会保障等のこの本の中での予言は、ルーズヴェルト大統領時に、忠実に実行されたのである。
ハウス大佐同様に歴代に大統領を陰で操ったバーナード・バルークによってホワイトハウスに送り込まれたルーズベルト大統領の初期に財務長官を勤めたヘンリー・モーベンソー・ジュニアモルガンと関係があるグッゲン・ハイム一族の出身である。
また、大戦直前まで、１０年間駐日大使を務めたアメリカのグレー大使は、ハウス大佐の引きによりウィルソン大統領の顧問から、公使へと大抜擢している。近代史では親日家と称され、満州事変の翌年の昭和7年に、駐日大使の任に付いたジョセフ・グレーこそ、何あろうモルガン商会の一族であり、前年の昭和６年にイギリスから派遣された駐日大使フランシス・リンドレーでは、ロスチャイルド家の一族なのだ。
ついでに言えば、当時の外相で、戦後の総理大臣幣原喜重郎とハウス大佐も親密な関係にあったとされている。ただし、幣原外相がモルガン商会の手足となって動いたことの証明はされていないが、当時からフリーメーソンだという噂はあった。
彼のどういう状況にあっても、国益とは無関係に『不干渉』を貫く姿は、意識的か無意識はわからないが、英米の傀儡であったのだろう。
昭和の初期には、英米の諜報組織が出来上がり、日本国内で網の目のように張り巡らされていた。
『統治者フィリップ・ドルー』の中で概観されている機関の一つは、連邦準備制度である。
【当時のアメリカ米中の経済状況】
昭和１０年に交付された銀行法は、「有害な信用の膨張・収縮を防止するため」、前述の準備金要件を倍加する権限を連邦準備制度理事会に与え、通貨の引き揚げを敢行。信用の収縮はデフレを引き起こす。
一時、大幅な公共投資と赤字財政によって「繁栄」が戻ったかに見えた始めた昭和１２年初めに、ルーズヴェルトは財政支出を大幅に削減し、連邦準備銀行はマネーサプライの増加を引き締めた。
こうして、一旦回復に向かったかに見えたアメリカ経済は、昭和１２／１３年には再び厳しい不況に見舞われ、新聞は「ルーズヴェルト不況」という言葉を使い始める。
世界史では、ほとんど触れないが、この時期のアメリカの経済は、昭和４年に起きたニューヨーク株式の大暴落があった当時より、より深刻であった。
| 昭和４年 | 昭和１２年 | 昭和１３年 | |
| 工業生産高 | ▲２２ | ▲３２ | ▲８ |
| 株の下落率(スチール株） | ▲４２ | ▲６０ | − |
| 就業率 | ▲１０％ | ▲１３％ | − |
| 失業者数 | ４３０万人 | ６００万人 | １，２００万人 |
昭和８年に底を打った世界恐慌も、その後、緩慢ながら好景気の局面に移行し、昭和１２年前半には、多くの国に於いて、株式暴落前の水準に達した。しかし、昭和１２年９月に再び暴落に襲われ、アメリカがより打撃を受ける。
昭和１２年度の世界工業指数（昭和４年度を100とする）
| １月 | ２月 | ３月 | ４月 | ５月 | ６月 | ７月 | ８月 | ９月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
| 世界 | 100.8 | 102.8 | 104.9 | 106.7 | 106.8 | 104.6 | 104.5 | 105.1 | 104.1 | 101.1 | 96.2 | 92.2 |
| 欧州 | 102.5 | 104.6 | 107.0 | 110.6 | 110.7 | 109.4 | 108.9 | 108.2 | 111.0 | 110.6 | 112.5 | 110.1 |
| アメリカ | 96.4 | 97.9 | 99.4 | 99.7 | 99.8 | 96.8 | 96.9 | 99.1 | 94.6 | 88.3 | 77.2 | 72.6 |
しかし、昭和13年度を底に回復を見せる、これは、欧州での大戦勃発で、需要が急拡大したからで、これを如実に現す、工作機械の輸出高を見てみる。英国の輸出は、昭和14年度は、前年度の倍以上、フランスに於いては、３倍以上に急進する。
昭和１４／１５年度の工作機械輸出国別（対象；昭和14/6年度〜昭和15/5）
| ６月 | ７月 | ８月 | ９月 | １０月 | １１月 | １２月 | １月 | ２月 | ３月 | ４月 | ５月 | |
| 英国 | 1989 | 2651 | 2678 | 3387 | 3712 | 2984 | 4885 | 4967 | 5321 | 5584 | 3520 | 6276 |
| フランス | 1464 | 1083 | 1981 | 2029 | 11663 | 904 | 2150 | 1968 | 3129 | 4790 | 7230 | 7201 |
| 合計 | 6953 | 9608 | 10164 | 9843 | 9465 | 8943 | 13172 | 14313 | 14149 | 18704 | 21745 | 19616 |
【中央公論 昭和１３年１０月号より】
←支那事変と毛沢東 【通貨戦争の一覧に戻る】 ⇒--．英米の暗躍 ２
bgcolor(skyblue):
(20-199)
大阪時事新報 1933.10.25(昭和8)
米国産金買上げ欧洲市場に動揺を呼ぶ!
ルーズヴェルト氏の演説財界ではかく観察
ルーズヴェルト大統領の放送演説は財界に只ならぬ波紡を与えているが、演説そのものは甚しく難解であったことは事実だ、併し要は米国々内景気の煽揚が目的であったことだけは間違いなく、そのためには最近米国々内に漸次拡大しつつあったドル貨安定説を明かに否定している、即ち戦前の物価水準にまで物価が昂騰してからドル貨を安定せしむると説いているのは夫れだ、言い換れば物価が戦前の水準に釣上げられるまではドル貨の安定は計らないということだ、茲においてドル貨の急落を招来したが、金買上げその他の具体的方策については未だ正確に知るを得ない、されど米国々内景気の煽揚を目的とする以上欧洲市場に金を買付けるということはせず、国内産金の買上げのみではないかと思われないでもない、とまれル大統領の演説を各方面ではどう見ているか、一顧してみることにする
対米為替は当然昂騰か 機�鼎鯑世申菽屬� 山室三菱銀行常務
右に関し三菱銀行常務山室宗文氏の意見を聴くに左の如くである
アメリカ今回の新政策は米国の物価証券相場の反落を阻止するには効果的であろう、国内の各種インフレ政策を効果あらしむるためには金の買上げ値段を諸外国以上に引上げることは機宣の措置だと思う、今回の弗貨統制策は例の補制弗案とは異っているが政治的には同案の主旨を実現せんとするもので、即ち実質的効果には見るべきものがあろう、斯かる方策を持続する以上弗の対外為替相場が低落を免れず、我対米為替は当然昂騰を見ることは明かである、然し元元アメリカのインフレ政策を、効果あらしめんがために出た弗貨の価値は、我財界に取って悪くはない、なおアメリカの産金買上げ値段がロンドン市場に比し引上げられるとロンドン側は更にそれ以上に引上げる結果を出しはしないだろうかかくて我政府の産金買上値段引上げも当然且つ必至的である
2007年05月10日(木) 23:14:15 Modified by yuyu122222