国民党の苦悩
支那事変下の経済戦
● 「戦争とは紙でするもの」という言葉がある。紙とは、言うまでもなく紙幣のことであるが、軍事予算が枯渇してくると武器・火薬等の兵器物資の供給が途絶えるばかりではなく、兵員の食料まで行き渡らなくなる。これは、戦争継続が不可能になるばかりではなく、兵隊や民衆の心理面である戦闘意欲にも影響を与え、敗戦へと転がるように転落する。
戦闘による戦争は、敵側の戦闘要員を削ぎ落とす面もあるが、経済封鎖や物流ルートの遮断等の経済戦の要素も大きい。
遊撃戦という名の元で、西北地域に追い込まれた国民政府は上海・広東等の沿岸地域の経済的地盤を失うことを意味しており、物資の供給先である工業・農業地域からも切り離され、英仏から供給されるの援蒋ルートに依存することになる。
通貨戦争では、日本軍は下記のような戦略を取った。
【貨幣工作】
�々駝雲�府を財政悪化させ、極度のインフレを起こさせる。
��日系通貨圏を拡大して（国民政府系の銀行を取り込み等）、法幣の普遍化を縮小させる。
◆英国金融利権に餌食にされた中国
● 国民党にとって、最大の誤りはイギリス・ポンドとの固定為替（１元＝１シリング２．５ペンス３０セント）を採用したことにある。法幣制度を維持することは並大抵のことではなかった。貨幣の維持策としては無制限の外貨を売って対応するしかない、これも、昭和13年３月の『外貨割当制』までは、必死に買い支えていた。
蒋介石の弱いところは、『上海』の利益を無視する政策を取れなかったことにある、これで手持ちの外国為替を売って処理する。昭和13年7月武漢戦の前に公定相場で３億元、金融安定法が施行された後の同年１１月に相当の外国為替が売られたものといわれている。
統計的には正確な信憑性は欠けるが、孔財政部長は、昭和13年５月に『現有銀は、ロンドン・ニューヨークで８億３千３百万元ある。』と発表している。松本外務参与官によると、その後、香港を通じて国民政府が積み出した現銀は、上海戦までに、３億７千〜３億８千万と推定される。
合計すると、外国には約１２億元の現銀があったわけだが、上海戦前後までに７億元、武漢戦の前３億元、金融安定法に残りを処分する。
これによって、ロンドン・ニューヨークで現銀を売って、蓄積された在外資金の大半を売却することになる。これは、戦費の調達資金をはるかに上回ったとされている、その根本原因は、国民政府にある。
何よりも、上海に於ける中国資本と第３国（主にイギリス）資本の「貿易」上の利害が戦争の利害よりも優先したに他ならないのである。
これにより、法幣の価値は、右肩下がりに下落することになる。
●日中の戦争が泥沼化して一番喜んだのは、当然のように、ロンドンシティーである。中国の現銀を買い叩き、銀生産者の保護の名目で銀の買取額を一定の水準に保っているアメリカに売りつける。現銀を売って得た国民政府の現金も蒋介石の武器購入の資金に化け、これまた、イギリスが高く売りうける。どう転んでも、ボロ儲けである。
ノルウエーなどの欧州の追従国家などは、武器輸出の際に多少なりとも儲けさせ、『英国を中心とした国際秩序』を乱さぬように細心の注意を払うことも忘れてはならない。微々たるおこぼれをあり付かせ、『雑魚共、これでも食らっとけ。』と言わんばかりに。幕末の江戸幕府と薩長の戦い見られるように、何かあれば、どっちに着くかわからない衛星国家を抑えて置く必要もある。何せ相手は、勝ち馬に乗るだけの主体性のない国家がわんさか控えている。
アメリカは、モルガン商会を通して、歴代の大統領に金をばら撒いているので、後は世論をありもしないプロパガンダで煽動させ、落ち着くところに収まるまで待てばいい話である。
これは、中国を舞台にした日英の戦いである。というよりは、アヘン戦争以来の面々と続く中国民衆を餌食とした、国民政府を巻き込んだりっぱな営利行動である。
それを、『通貨改革には、それなりの準備と人材が必要。』などと正論を吐き、『大人しく黙ってりゃいいものを、憎きは日本』である。元々、中国民衆の民主主義のためなど露にも思っていない連中である。
●多少の中国への借款など痛くも痒くもない。大事なのは、日本の『人権侵害』と『野蛮な侵略行為』の看板を無理やり被らせ、英米の平和主義者達を煽動させる必要がある。英国の金融利権の連中にすれば『人権』などあってもなくてもいいのだが、りっぱな宗教の域まで達している『人権』を利用しない手はない。
第一、この『人権』がなくなったら、戦争の御題目が成り立たない。何としても、日本を悪者に祭り上げ『正義の戦い』にしないと、『中国の民衆の箪笥預金である現銀』を狙った浅ましいイギリスと称され、アヘン戦争以来の禿げ鷹ファンドと一緒にされてしまう。
あの時の戦争と違いアヘンに対し、世論もうるさくなっており、巧妙な手口が必要になってくる。
実際は、それ以上に悪質である、「けし」の栽培に要するように面倒な手間も掛からずに原価は０であり、一般大衆がやるようなチマチマした商業活動もやる必要はなく、黙っていても、中国人民が自らの行為で銀行に行き、兌換する。
後は、香港上海、麦加利などの英国系の銀行が現銀を吸い上げ、ロンドンに輸送させればいいだけの話である。
アヘン窟のような如何わしい場所を、租界の至る所で提供する必要もなくなる。既存の上海あたりの銀行や銭荘があれば、面白いように現銀が転がり込んでくる。どっちみち兌換する紙幣は、将来紙くず同様になる法幣である。
●中国を中国人以上に知り尽くしているイギリスのことである。日本人以上に『法幣制度』が成功するなどさらさら思っちゃいない。
どうせ、国民政府やら宋一族やらが目先の欲に目がくらみ、不正な先物やインサイダー取引やらで小金を得ることはわかっている。多少なりとも小金を持たせてやらないと、中国が自国の為替を維持する資金が底をつく。仮初めにも、２年ほどは、為替相場も安定し、貿易も順調に伸張するといった現象を人工的にも造りだす必要がある。
リース・ロスの恩恵に依り、法幣制度が大成功という御題目は、絶対に必要である。
中国人民の現銀を吸い尽くし終わった昭和１２年後半になると、そろそろ、上海の利用価値も低くなってきた。
どっちみち、その頃は、イギリスの上海に投資したインフラも、そろそろガタが来ており、そろそろ寿命も間近い。思ったほどの産業投資の効果も期待できそうにもない。貿易も、金解禁以降、日米に押されっぱなしで、年々シェアも落としている。
シコタマ儲けたアヘン貿易も、原産地のインドではネールなどによる民族運動が活発になり、将来は暗澹してきた。きな臭い情勢になってきている。
将来、阿片を購入するであろう現銀は、法幣制度で予めほとんどは、将来、紙くず同然になる法幣と交換してある。
すべての条件は揃っている、やり手の結婚詐欺師が騙した女の預金通帳の残高が少なくなった時に、ほくそ笑む心境だろう。『もう、別れ時か！？』と。
日本軍が攻撃しようと大して損害は少ない。正義感に駆られ真面目な日本が、スクラップ＆ビルドをやってくれれば、もっての他である。当然、『日本の侵略』と『平和に対する犯罪』を声高に叫び、国際世論が沸騰するコトを狙っている。
●考えれば、中国は、イングランド総裁モンタギュー・ノーマン１人に翻弄されてきた。金価格の操作のより、世界が大不況の時は銀本位制を取ったため1人蚊帳の外であった中国は、銀価格が暴落してインフレ（緩やかであるが）になり、アメリカに主導させたと思われる銀買い上げで極端なデフレに転換し、はたまた、法幣が暴落すると未曾有のインフレに陥る。
教科書に書いたようなモンタギュー・ノーマンの資本家支配の経済政策である。
しかし、イングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンは、これで引き下がるほど甘くはなかった。
最後の仕上げは、リース･ロスを使って、蒋介石に『抗日戦線は長期戦で望まなくてはならない』と煽り、毛沢東に『遊撃戦略』の必要性を説かせる。
これにより、日本の戦力をそぎ落とし、ロンドンに残った外貨も武器・火薬等の兵器と交換させる。
戦争を長期化させ、法幣改革により僅かばかり溜め込んだ国民政府の外貨（といっても、宋一族が先物取引で得た私服、数千万元。法幣改革により中国民衆からかき集めた現銀２０億元だが、イギリスの金融界の得た利益比べれば可愛い物である）さえも、吐き出させる。
『骨の髄までシャブリとる徹底的な禿げ鷹のようなユダヤ商法』である。
●そして、肝心なことはアメリカを戦争に巻き込む動機付けである。
伝統的なモンロー主義で、戦前の「フォーチュン誌」に依れば、「アメリカを戦争に仕掛けたとしても、５０回に１回程度の成功確立しかない。」と発表される地政学的にこれほど安全な国はないとされているアメリカを、大した利権もなく、貿易額にしても、全体の２〜３％の中国に関心を持たせなくてはならない。
本来ならば無関心の極東のどうでもいい国に、戦争という名目でジャンジャンお金を使わせなくてはならない動機付けが必要になってくる。
◆国民政府の対応（前期）
●国民党が重慶に政府を移す
米英の接点がある上海に近い南京から、ソ連との接触が密になる西部中国に移ることとなると、必然的に左翼され、国共両党の力のバランスが変化が生じる。国民党の基盤は「浙江財閥」等のブルジョアを中心としたに民族資本や地主の政党であり、当然、自己矛盾が起こり、不満を持ち離反するモノも出てくる。
● 武漢・広東・南寧と日本軍の占領地域が広がると、国民政府は中国の大半の富を失うこととなる。
国民政府は全土の半分以上の面積を保有していたが、主要都市のほとんどを失い、近代的工業の労働者人国の９０％、生産額にして９４％は日本の占領地となった。
日本軍の占領は、戦闘による資産の破壊と同時に占領地後にインフラを整備による占領地の建設の意味もある。
そして、この占領地がうまく経営され、南京において昭和１３年に中華民国維新政府（後に、南京国民政府となる）という新政権が誕生すると、武力による抗戦は何の意義を見出せなくなる、残る手段は経済戦に訴えるしかなくなってくる。
これまでは、イギリスは国民政府を使って、法幣制度の確立せしめ、日本排除を狙ったが、もはや、通貨戦略では救い得ない事態に直面し、そもそも、法幣制度そのもの基礎が動揺し、これまでの政策は見直し得ざるえなくなってきた。
● 日本が広東を占領すると、重慶国民政府⇒広東⇒香港の金融・流通ルートが絶たれ、広東占領以前には、上海経済は重慶国民政府にとって戦時経済を支えていたが、広東を失ったことにより、上海経済は、国民政府の戦時経済には、何の寄与しなくなってきた。日本占領後、上海経済は繁栄を謳歌し、貿易も順調に推移しかが、上海経済は日本との関係を密にして、日本の外貨獲得の市場にも成り出すと、上海の地位は国民政府にとっては微妙なモノとなってくる。
中国金融の中心は依然として上海にあり、為替相場、法幣の価値は上海市場で決定される、当然、辺境にある重慶では金融市場を確立されるはずもなく、国民政府は、香港に中心を置き、英国資本の下で法幣操作を画策したが、経済的基盤では、上海市場に敵う筈もない、法幣の没落は決定的なものになる。
● 昭和１３年の広東占領以前の広東省には、３０万トンの陸揚げが行われ、重慶国民政府への輸送ルートになっていたが、ほとんどが入庫が日本に抑えられ、重慶国民政府への輸送ルートが遮断される。
これは、華北・華中が以前より実質日本占領下にあい、広東を押さえたことにより、全ての中国沿岸地域から奥地にある物資の輸送ルートが日本に抑えられたことになる、仮に、日本軍の眼を掠めて輸送を行ったとしても、インフラが進んでおらず、道路が未整備のため輸送コストが莫大となる、資金調達のための輸出も減退せざるを得ない。
● 上海経済が、国民の統制化から離れることになり、経済の核が失われ、中央主権的な経済から地方経済の独立色が強くなってきた。
香港上海銀行、法幣の市価公示を停止して、闇相場による為替供給の防止に努める
◆国民政府の対応(後期)
● かかる状況の変化に伴い、重慶国民政府は、法幣価値維持から貿易中心政策へと切り替えることとなる、物資の貧窮は切実なものとなる、国民政府は下記の政策を取らざるを得なくなり、いままで密接な関係にあった上海商人を排除することになる。いままで、中国の経済機構が上海に集中しており、上海の商人が絶対であったために、経済を政府統制化に於くとどうしても、「浙江財閥」中心とした上海と敵対することとなる。政策を以下の2点が中心で進められる。
※このバーター制で、主に飛行機などの軍需品と交換され、当時、底なしに下落している法幣で取引するより、現物での取引の方がリスクが少ないと判断した先進諸国の思惑もあるものと思われる。
しかし、同時にバーター制は国民政府は自らが造った法幣制度を崩壊するものでもあり、資本家の政党である国民政府にとっては、毛沢東共産党に近い政策を取ることになり、自己矛盾を生じる、また、日本占領下にあった上海を常に意識することになる、
←．日本の通貨戦略戻る【通貨戦争の一覧に戻る】 法幣改革後の華中の経済⇒
● 「戦争とは紙でするもの」という言葉がある。紙とは、言うまでもなく紙幣のことであるが、軍事予算が枯渇してくると武器・火薬等の兵器物資の供給が途絶えるばかりではなく、兵員の食料まで行き渡らなくなる。これは、戦争継続が不可能になるばかりではなく、兵隊や民衆の心理面である戦闘意欲にも影響を与え、敗戦へと転がるように転落する。
戦闘による戦争は、敵側の戦闘要員を削ぎ落とす面もあるが、経済封鎖や物流ルートの遮断等の経済戦の要素も大きい。
遊撃戦という名の元で、西北地域に追い込まれた国民政府は上海・広東等の沿岸地域の経済的地盤を失うことを意味しており、物資の供給先である工業・農業地域からも切り離され、英仏から供給されるの援蒋ルートに依存することになる。
通貨戦争では、日本軍は下記のような戦略を取った。
【貨幣工作】
�々駝雲�府を財政悪化させ、極度のインフレを起こさせる。
・
��日系通貨圏を拡大して（国民政府系の銀行を取り込み等）、法幣の普遍化を縮小させる。
◆英国金融利権に餌食にされた中国
● 国民党にとって、最大の誤りはイギリス・ポンドとの固定為替（１元＝１シリング２．５ペンス３０セント）を採用したことにある。法幣制度を維持することは並大抵のことではなかった。貨幣の維持策としては無制限の外貨を売って対応するしかない、これも、昭和13年３月の『外貨割当制』までは、必死に買い支えていた。
蒋介石の弱いところは、『上海』の利益を無視する政策を取れなかったことにある、これで手持ちの外国為替を売って処理する。昭和13年7月武漢戦の前に公定相場で３億元、金融安定法が施行された後の同年１１月に相当の外国為替が売られたものといわれている。
統計的には正確な信憑性は欠けるが、孔財政部長は、昭和13年５月に『現有銀は、ロンドン・ニューヨークで８億３千３百万元ある。』と発表している。松本外務参与官によると、その後、香港を通じて国民政府が積み出した現銀は、上海戦までに、３億７千〜３億８千万と推定される。
合計すると、外国には約１２億元の現銀があったわけだが、上海戦前後までに７億元、武漢戦の前３億元、金融安定法に残りを処分する。
これによって、ロンドン・ニューヨークで現銀を売って、蓄積された在外資金の大半を売却することになる。これは、戦費の調達資金をはるかに上回ったとされている、その根本原因は、国民政府にある。
何よりも、上海に於ける中国資本と第３国（主にイギリス）資本の「貿易」上の利害が戦争の利害よりも優先したに他ならないのである。
これにより、法幣の価値は、右肩下がりに下落することになる。
●日中の戦争が泥沼化して一番喜んだのは、当然のように、ロンドンシティーである。中国の現銀を買い叩き、銀生産者の保護の名目で銀の買取額を一定の水準に保っているアメリカに売りつける。現銀を売って得た国民政府の現金も蒋介石の武器購入の資金に化け、これまた、イギリスが高く売りうける。どう転んでも、ボロ儲けである。
ノルウエーなどの欧州の追従国家などは、武器輸出の際に多少なりとも儲けさせ、『英国を中心とした国際秩序』を乱さぬように細心の注意を払うことも忘れてはならない。微々たるおこぼれをあり付かせ、『雑魚共、これでも食らっとけ。』と言わんばかりに。幕末の江戸幕府と薩長の戦い見られるように、何かあれば、どっちに着くかわからない衛星国家を抑えて置く必要もある。何せ相手は、勝ち馬に乗るだけの主体性のない国家がわんさか控えている。
アメリカは、モルガン商会を通して、歴代の大統領に金をばら撒いているので、後は世論をありもしないプロパガンダで煽動させ、落ち着くところに収まるまで待てばいい話である。
これは、中国を舞台にした日英の戦いである。というよりは、アヘン戦争以来の面々と続く中国民衆を餌食とした、国民政府を巻き込んだりっぱな営利行動である。
それを、『通貨改革には、それなりの準備と人材が必要。』などと正論を吐き、『大人しく黙ってりゃいいものを、憎きは日本』である。元々、中国民衆の民主主義のためなど露にも思っていない連中である。
●多少の中国への借款など痛くも痒くもない。大事なのは、日本の『人権侵害』と『野蛮な侵略行為』の看板を無理やり被らせ、英米の平和主義者達を煽動させる必要がある。英国の金融利権の連中にすれば『人権』などあってもなくてもいいのだが、りっぱな宗教の域まで達している『人権』を利用しない手はない。
第一、この『人権』がなくなったら、戦争の御題目が成り立たない。何としても、日本を悪者に祭り上げ『正義の戦い』にしないと、『中国の民衆の箪笥預金である現銀』を狙った浅ましいイギリスと称され、アヘン戦争以来の禿げ鷹ファンドと一緒にされてしまう。
あの時の戦争と違いアヘンに対し、世論もうるさくなっており、巧妙な手口が必要になってくる。
実際は、それ以上に悪質である、「けし」の栽培に要するように面倒な手間も掛からずに原価は０であり、一般大衆がやるようなチマチマした商業活動もやる必要はなく、黙っていても、中国人民が自らの行為で銀行に行き、兌換する。
後は、香港上海、麦加利などの英国系の銀行が現銀を吸い上げ、ロンドンに輸送させればいいだけの話である。
アヘン窟のような如何わしい場所を、租界の至る所で提供する必要もなくなる。既存の上海あたりの銀行や銭荘があれば、面白いように現銀が転がり込んでくる。どっちみち兌換する紙幣は、将来紙くず同様になる法幣である。
●中国を中国人以上に知り尽くしているイギリスのことである。日本人以上に『法幣制度』が成功するなどさらさら思っちゃいない。
どうせ、国民政府やら宋一族やらが目先の欲に目がくらみ、不正な先物やインサイダー取引やらで小金を得ることはわかっている。多少なりとも小金を持たせてやらないと、中国が自国の為替を維持する資金が底をつく。仮初めにも、２年ほどは、為替相場も安定し、貿易も順調に伸張するといった現象を人工的にも造りだす必要がある。
リース・ロスの恩恵に依り、法幣制度が大成功という御題目は、絶対に必要である。
中国人民の現銀を吸い尽くし終わった昭和１２年後半になると、そろそろ、上海の利用価値も低くなってきた。
どっちみち、その頃は、イギリスの上海に投資したインフラも、そろそろガタが来ており、そろそろ寿命も間近い。思ったほどの産業投資の効果も期待できそうにもない。貿易も、金解禁以降、日米に押されっぱなしで、年々シェアも落としている。
シコタマ儲けたアヘン貿易も、原産地のインドではネールなどによる民族運動が活発になり、将来は暗澹してきた。きな臭い情勢になってきている。
将来、阿片を購入するであろう現銀は、法幣制度で予めほとんどは、将来、紙くず同然になる法幣と交換してある。
すべての条件は揃っている、やり手の結婚詐欺師が騙した女の預金通帳の残高が少なくなった時に、ほくそ笑む心境だろう。『もう、別れ時か！？』と。
日本軍が攻撃しようと大して損害は少ない。正義感に駆られ真面目な日本が、スクラップ＆ビルドをやってくれれば、もっての他である。当然、『日本の侵略』と『平和に対する犯罪』を声高に叫び、国際世論が沸騰するコトを狙っている。
●考えれば、中国は、イングランド総裁モンタギュー・ノーマン１人に翻弄されてきた。金価格の操作のより、世界が大不況の時は銀本位制を取ったため1人蚊帳の外であった中国は、銀価格が暴落してインフレ（緩やかであるが）になり、アメリカに主導させたと思われる銀買い上げで極端なデフレに転換し、はたまた、法幣が暴落すると未曾有のインフレに陥る。
教科書に書いたようなモンタギュー・ノーマンの資本家支配の経済政策である。
しかし、イングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンは、これで引き下がるほど甘くはなかった。
最後の仕上げは、リース･ロスを使って、蒋介石に『抗日戦線は長期戦で望まなくてはならない』と煽り、毛沢東に『遊撃戦略』の必要性を説かせる。
これにより、日本の戦力をそぎ落とし、ロンドンに残った外貨も武器・火薬等の兵器と交換させる。
戦争を長期化させ、法幣改革により僅かばかり溜め込んだ国民政府の外貨（といっても、宋一族が先物取引で得た私服、数千万元。法幣改革により中国民衆からかき集めた現銀２０億元だが、イギリスの金融界の得た利益比べれば可愛い物である）さえも、吐き出させる。
『骨の髄までシャブリとる徹底的な禿げ鷹のようなユダヤ商法』である。
●そして、肝心なことはアメリカを戦争に巻き込む動機付けである。
伝統的なモンロー主義で、戦前の「フォーチュン誌」に依れば、「アメリカを戦争に仕掛けたとしても、５０回に１回程度の成功確立しかない。」と発表される地政学的にこれほど安全な国はないとされているアメリカを、大した利権もなく、貿易額にしても、全体の２〜３％の中国に関心を持たせなくてはならない。
本来ならば無関心の極東のどうでもいい国に、戦争という名目でジャンジャンお金を使わせなくてはならない動機付けが必要になってくる。
◆国民政府の対応（前期）
●国民党が重慶に政府を移す
米英の接点がある上海に近い南京から、ソ連との接触が密になる西部中国に移ることとなると、必然的に左翼され、国共両党の力のバランスが変化が生じる。国民党の基盤は「浙江財閥」等のブルジョアを中心としたに民族資本や地主の政党であり、当然、自己矛盾が起こり、不満を持ち離反するモノも出てくる。
● 武漢・広東・南寧と日本軍の占領地域が広がると、国民政府は中国の大半の富を失うこととなる。
国民政府は全土の半分以上の面積を保有していたが、主要都市のほとんどを失い、近代的工業の労働者人国の９０％、生産額にして９４％は日本の占領地となった。
日本軍の占領は、戦闘による資産の破壊と同時に占領地後にインフラを整備による占領地の建設の意味もある。
そして、この占領地がうまく経営され、南京において昭和１３年に中華民国維新政府（後に、南京国民政府となる）という新政権が誕生すると、武力による抗戦は何の意義を見出せなくなる、残る手段は経済戦に訴えるしかなくなってくる。
これまでは、イギリスは国民政府を使って、法幣制度の確立せしめ、日本排除を狙ったが、もはや、通貨戦略では救い得ない事態に直面し、そもそも、法幣制度そのもの基礎が動揺し、これまでの政策は見直し得ざるえなくなってきた。
● 日本が広東を占領すると、重慶国民政府⇒広東⇒香港の金融・流通ルートが絶たれ、広東占領以前には、上海経済は重慶国民政府にとって戦時経済を支えていたが、広東を失ったことにより、上海経済は、国民政府の戦時経済には、何の寄与しなくなってきた。日本占領後、上海経済は繁栄を謳歌し、貿易も順調に推移しかが、上海経済は日本との関係を密にして、日本の外貨獲得の市場にも成り出すと、上海の地位は国民政府にとっては微妙なモノとなってくる。
中国金融の中心は依然として上海にあり、為替相場、法幣の価値は上海市場で決定される、当然、辺境にある重慶では金融市場を確立されるはずもなく、国民政府は、香港に中心を置き、英国資本の下で法幣操作を画策したが、経済的基盤では、上海市場に敵う筈もない、法幣の没落は決定的なものになる。
● 昭和１３年の広東占領以前の広東省には、３０万トンの陸揚げが行われ、重慶国民政府への輸送ルートになっていたが、ほとんどが入庫が日本に抑えられ、重慶国民政府への輸送ルートが遮断される。
これは、華北・華中が以前より実質日本占領下にあい、広東を押さえたことにより、全ての中国沿岸地域から奥地にある物資の輸送ルートが日本に抑えられたことになる、仮に、日本軍の眼を掠めて輸送を行ったとしても、インフラが進んでおらず、道路が未整備のため輸送コストが莫大となる、資金調達のための輸出も減退せざるを得ない。
● 上海経済が、国民の統制化から離れることになり、経済の核が失われ、中央主権的な経済から地方経済の独立色が強くなってきた。
香港上海銀行、法幣の市価公示を停止して、闇相場による為替供給の防止に努める
◆国民政府の対応(後期)
● かかる状況の変化に伴い、重慶国民政府は、法幣価値維持から貿易中心政策へと切り替えることとなる、物資の貧窮は切実なものとなる、国民政府は下記の政策を取らざるを得なくなり、いままで密接な関係にあった上海商人を排除することになる。いままで、中国の経済機構が上海に集中しており、上海の商人が絶対であったために、経済を政府統制化に於くとどうしても、「浙江財閥」中心とした上海と敵対することとなる。政策を以下の2点が中心で進められる。
- 貿易中心政策とは、流通を政府が管理し国営化することになる。
- 物々交換に近いバーター制を採用して、ソ連・米・ドイツ間では、重要輸出４品目（桐油、豚毛、茶、鉄などの鉱物品目）が採用された。
※このバーター制で、主に飛行機などの軍需品と交換され、当時、底なしに下落している法幣で取引するより、現物での取引の方がリスクが少ないと判断した先進諸国の思惑もあるものと思われる。
しかし、同時にバーター制は国民政府は自らが造った法幣制度を崩壊するものでもあり、資本家の政党である国民政府にとっては、毛沢東共産党に近い政策を取ることになり、自己矛盾を生じる、また、日本占領下にあった上海を常に意識することになる、
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2007年05月16日(水) 18:02:11 Modified by yuyu122222