……部屋へ入り、雪菜がゆっくりと下駄を脱いで床に上がる。
 その途端に春希は、彼女を強引に引っ張っていった。

「え?えぇ?」
「……」

 春希は無言のまま雪菜の肩を掴み、そのまま一気にベッドに押し倒す。
 そのまま春希もベッドに上がり、雪菜の上に組み敷くような体勢になる。

「ちょ、ちょっと、どうしたの春希くん?」
「……」

 雪菜が呼んでも、春希は無言を貫いている。
 口を横に真一文字に結び、ただ静かに雪菜を見下ろしている。

「春希くん、少し落ち着こう、……ね?」
「……」

 ちょっとおどけた感じで雪菜がたしなめる。
 それでも春希は言葉を発せず、微動だにしない。

「ね、ねえ、春希くん……怖いよ……」

 ……どれぐらい経ったか、ようやく春希が大きく一つ、息を吐いた。

「……はぁっ、情けないな、俺」

 表情も崩し、やりきれないといった感じで苦笑する。

「雪菜が他の男に注目されてるのを目の当たりにして勝手に嫌な思いして。
 今まで散々雪菜に嫌な思いさせてたくせに。本当、身勝手だよな、俺……」
「春希くん……ひょっとして、妬いてたの?」
「浴衣の雪菜が本当にすごく可愛かったからさ。独り占めしていたいなって思っちゃって。
 浴衣の雪菜をずっと見ていたいのに、誰にも見せたくないなんて、ワガママだよな」

 自己嫌悪に陥っているのか、唇を噛み締めながら肩を落とす。
 そんな春希がいじらしくなって、雪菜は両手で春希の頬をそっと包み込んだ。

「雪菜……?」
「春希くん……ありがとう」
「え?」
「嬉しいよ。わたし、本当に嬉しい。
 春希くんに、そんなにたくさん想ってもらえるなんて」
「せ、雪菜……」
「前にね、友近君を殴ったって聞いた時もそう。
 春希くんが、わたしのことであんなに怒ってくれたから」
「……あいつのことは言うな」
「あははっ、ごめん」
「今回もあいつがバイト頼むから、雪菜に会う時間が減っちゃったんだぞ」
「え?そうなの?」
「ああ。一週間ルールも守れなくなっちゃうんじゃないかってずっと心配でさ……」
「そうだったんだ……」
「ごめんな……」
「ううん、そんな風に困った人を放っておけない春希くんが、わたしは好きなんだよ」
「そうか……」
「だから……今までの分も……今日は……お願い」
「ああ、分かった……」

 春希はそのままゆっくりと後ろへ下がり、雪菜の足元に辿り着いた。
 そしておもむろに雪菜の右足を手に取り、爪先を口に含んで舐め始めた。

「ん、ちゅぱ、じゅ、るろ……」
「え?は、春希くん?」

 雪菜は訳が分からない様子で春希のなすがままになる。
 春希はそのまま足の裏に舌を這わせ、指先を口に入れて吸い続ける。

「ちょ、ちょっと春希くん。なに?どうしたの?そんな、足なんか舐めて……」
「ほら、今日の雪菜、下駄履いてたから素足だったろ?
 普段は靴下やストッキング履いてるから、こういった時こそ、な」

 春希はそのまま雪菜の右足を撫でながらふくらはぎ、脛、膝へと舌を這わせる。
 太腿に辿り着いた時に両手で抱き寄せるように頬擦りをする。

「ん、はっ、あっ、んんっ……」
「雪菜、すごく温かくて、柔らかくて、気持ちいいよ……。
 このまましゃぶって、食べちゃいたいくらいだ」
「やだもう、わたし、そんなに太ってないもぉん……」
「違うよ。そうじゃないって。雪菜の脚、本当に気持ちいいんだ……」

 腿を撫でまわす両手で、ゆっくりと揉みほぐしていく。
 唇を付けて、啄むように吸い上げる。

「んちゅ、ちゅっ、んん……」
「んっ、ふぁ、やん、んはぁ……」

 いつもとは違った形の春希の愛撫が、雪菜を少しずつ昂らせていく。
 春希が上下に腿をさする度に、着ている浴衣の裾が乱れる。

「あ……」
「やだ、やだぁ。春希、くぅん……」
「……どうしたの?」
「さっきから、そこばっかり、イジワルだよぉ……」
「ああ、そうだな」

 そう言って、春希は一度身体を離す。
 そして今度は、雪菜の左足を取り、爪先を口に含んだ。

「え?ええっ?あっ、あぁん……」

 思わぬ行為に雪菜が戸惑う間に、春希は再び腿を撫でながら舌を這わせ、何度も頬擦りを繰り返す。

「んん、はあぁ、れろ、んはぁ……」

 春希の愛撫に、雪菜も少しずつ感じていく。
 しかし、どちらかというと優しい感じの愛撫な上に望む箇所からずれた位置なので、どうしても雪菜の求める昂りに辿り着かない。

「ね、ねえ、春希くん。まだ?まだなの?」
「まだって、なに?」
「だから、さっきから脚までで止まってるし、その……」
「その……なに?」
「だからぁ、その……う、上の、方も……」
「ああ、確かに浴衣の裾が乱れてて、艶めかしいな。
 今の雪菜、すごい際どくて色っぽいよ」
「……っ、もうっ、本当に今日の春希くん、イジワルだよぅ。
 あなただって、その……欲しいくせに」
「欲しいって……なにをかな?」
「……わたしのことが、欲しい、くせにぃ……」
「ああ、そうだよ。俺、雪菜が欲しいな」
「だったら、我慢しないで、してよぉ……」
「……分かった。じゃあ、もらうよ」

 春希は浴衣の裾をさらに広げ、雪菜を露わにする。
 泉からは既に蜜が溢れ、充分に潤っている。

「雪菜……付けてないの?」
「うん。下着を浴衣の下に着けてると、下着のラインが浮き出て見た目が悪いから」
「そうなんだ……」
「浴衣用の肌着もあるらしいんだけど、持ってなかったから……」

 春希は内腿に手を掛け、雪菜を開放する。
 そのまま秘所に手を当てて、入り口を擦り始める。

「ひゃあ、あん、ふあぁ、んあぁ……」

 春希が愛撫する度に、雪菜が喘ぎながら腰を動かす。
 次々に蜜が零れ、春希の手を汚していく。

「んうん、あん、あは、ひっ……」

 春希の指が入り込み、雪菜の中を掻き回す。
 雪菜の腰が浮き、春希の指を悦んで受け入れる。
 春希はもう片方の手で脚の付け根を抑え、指の動きを激しくしながら何度も中を行き来させる。雪菜の中はそんな春希の指を逃がさぬかのようにきつく締め付ける。

「雪菜の中、熱い……」
「や、やだぁ、言わないでよぉ……」
「でも、どんどん溢れてくるよ。止まらない」
「いやぁ……」

 そして春希は蜜で濡れた指で包皮を剥き、剥き出しにした宝石を軽く擦り上げる。
 途端、雪菜が大きく背中を仰け反らせながら叫び声をあげた。

「ひゃああっ」

 雪菜の反応に気をよくした春希は、顔を近づけて宝石に舌を這わせ、さらに唇を当てて吸い上げる。

「んんっ、雪菜、美味しいよ……」
「ひいぃっ、は、春希くんっ、そんなに、食べたら、わたし、もうっ」
「いいよ。雪菜の好きな時に、いつでも……」

 宝石を口に含みながら、再び指を中に差し入れて激しく掻き回す。
 汗を滴らせながら、雪菜は何度も声を上げながら仰け反り続ける。

「あっ、ああっ、ああああああぁぁぁぁぁっ」

 春希が宝石に軽く歯を立てて噛んだ瞬間、雪菜は絶頂を迎えた。
 背中を大きく反らしながら、幾度も痙攣させる。

「はあっ、はあっ、はあぁ……」

 グッタリとベッドに沈み込んで、雪菜は呼吸を整える。
 春希もベッドに座り込み、大きく一息吐いた。

「雪菜……いいか?」
「うん……っ、うん、大丈夫。もう、いいよ……」
「じゃあ、今日は雪菜が上に……」
「わたし、が……?……うん、分かった」

 春希の希望を受けて、雪菜は春希のベルトを外して下着ごと一気にズボンを下ろす。
 そして勢いよくそそり立つ欲棒を手で包み込んで軽く擦る。

「春希くんの、すごく硬くて、熱くて、大きい……」
「せ、雪菜。いいから、早く……」
「ふふっ、早く、なあに?」
「早く、雪菜に、入りたい……」
「ふふっ、よく言えましたね〜」
「せ、雪菜?」
「は〜い。それじゃあ、あなたのこれとわたしのあそこで、仲良くなりましょうね〜♪」

 何故か赤子をあやすような口調になり、雪菜が春希の上に跨る。
 腰を浮かせてから春希の一物を入り口に宛がい、腰をくねらせて周囲を擦る。

「すごい。俺のが雪菜に入ってくのが丸見えだよ……」
「や、やだぁ、見ないで、言わないで。恥ずかしいよぉ……」

 さっきまでの口調はすっかり鳴りを潜め、いつもの雪菜の反応に戻る。

「でも、跨って裾が捲れてそれだけでも普段よりすごいのに。
 そこに俺が入ってくのがとってもエロいよ」
「だ、だからぁ、見ないでってばぁ……」
「……そんなに入ってくのが見られたくないなら……それっ」
「え……うああああぁぁっ」

 春希が両手で雪菜の外腿を掴み、グイッと引き寄せた。
 雪菜の膣が春希の肉棒を勢いよく飲み込み、一気に春希で満たされる。

「ほら、入ったよ……」
「うっああ、あっはぁ、はっ、くぅん……」

 じわじわと小さな波のように押し寄せていた快感が一気に全身を襲い、雪菜は身体を支えることも儘ならずに前のめりになる。雪菜の髪が顔の左右からこぼれ、春希の胸板をくすぐる。
 春希は両手を雪菜の腰に移し、ほんの少しだけ雪菜の腰を浮かせる。そして手の力を抜いて、同時に少しだけ自らの腰を突き上げた。

「ああぁんっ」

 度重なる刺激に耐え切れず、雪菜は春希の胸に手を突いて辛うじて身体を支えるしかない。春希は雪菜の浴衣の襟元に手を掛けて左右に開き、そのまま下に下ろして肩を露出させた。
 浴衣の下は、先ほどの雪菜の言葉通りに何も身に纏っていない。それに気をよくした春希は雪菜を下から支えるかのように剥き出しの胸に手を伸ばして鷲掴みにした。

「んああぁっ」

 雪菜の腰の動きが徐々に複雑になっていく。回転するようにくねらせ、前後に揺すって密着箇所を擦り、上下に振って激しく打ち付ける。

「うあぁ、はあぁ、ふぁっ、やあぁ……」
「雪菜……いくぞっ」
「ふぇ……?……あああんっ」

 春希が雪菜の動きに合わせて、腰を突き上げ始める。その間にも、胸への愛撫は忘れない。密かに待ち望んでいた快感に雪菜が背中を仰け反らせ、その反動で春希がさらに深く雪菜の奥へ入り込んでいく。
 帯の上下ではだけた浴衣から覗かせる素肌が汗に塗れ、口の端から涎が垂れ、焦点の合わない目尻から涙を流している。そんなお互いがもたらす快感に酔っているあられもない雪菜の姿が、春希の興奮をさらに煽る。

「あぁん、は、春希くん、わたしの中で、また、大きく……」
「雪菜、すごい、締め付けてくる……」

 ベッドがギシギシと音を立て、二人の動きの激しさを物語る。
 雪菜は両手を春希の膝に突いて背中を仰け反らせ。
 春希は雪菜の両脚を掴んで腰を打ち付け続ける。

「雪菜、俺、もう、ヤバい……」
「ふあぁ、春希くん、わたしも、あくっ、イきそう……」
「雪菜、いいか?打ち上げて、いいか?」
「うっ、打ち上げる、って?」
「俺の、花火。雪菜に、打ち上げたい……」
「ああっ、いいの?打ち上げて、くれる?」
「ああ、いいか?」
「うぅん、いいよ。わたしに、任せて」
「雪菜……に?」
「イきたく、なったら、あなたの、花火に、わたしが、火を付けて、あげるから」
「ああ、頼む、よ」

 春希の動きがいよいよ激しくなり、雪菜を遠慮なく突き上げる。
 雪菜の中が激しく掻き回され、春希をきつく締め付ける。
 二人とも呼吸も絶え絶えになりながら、それでも止めようとしない。
 そして、ついに望んでいた瞬間を迎えることとなった。

「せ、雪菜。俺、もう、駄目だ……」
「う、うん。付ける。わたし、火を付ける、ね」
「ああ、早く、頼む……」
「あなたも、わたしにぃ、思い切り、打ち上げてぇ……」

 春希が雪菜の一番奥に突き入れ、雪菜も春希を今までとは比べ物にならない強さで締め付ける。
 そしてそれが引き金となり、ついに春希の花火に点火することとなった。

「んああっ、ああぁっ、あああああああああああああああぁぁぁぁぁっ」
「うくぅ、うああ、つぁぁ……」

 雪菜の奥で春希の花火が打ち上げられ、雪菜は背中を大きく仰け反らせながら絶頂を迎える。
 春希の先端から断続的に何度も花火が打ち上げられ、雪菜の中を満たしていった。

「あはあぁ、うああぁ、ふああぁ、ああぁん……」

 幾度にも続いた射精に満たされ、ようやく収まった頃、雪菜は勢いよくバタリと春希の上に倒れ込む。絶頂の余韻に浸りながら、少しずつ息を整える。

「雪菜……」
「……」
「……雪菜?」
「……」

 春希が呼び掛けても、雪菜からの返事がない。すぅすぅと、静かに息を吐くだけである。
 春希はピタピタと雪菜の頬を軽く叩き、返事を促した。

「雪菜、雪菜」
「……ぅん?」
「あ……」
「んむぅ?ふぇえ?」
「雪菜、大丈夫か?」

 春希の安堵した笑顔に、雪菜は少しキョトンとした表情をし、そして慌てた表情に変わった。

「あ、あれ?わたし、ひょっとして、気失っちゃってた?」
「みたいだな。雪菜、どうだった……?」
「うん、すごかった。春希くんの花火が今日の中で一番綺麗だった」
「……そうか」
「うん。あなたの花火で、わたし、頭が真っ白になっちゃって。とっても綺麗だったんだよ」
「……嬉しいな。雪菜に喜んでもらえて」

 雪菜はゆっくりと春希の身体の上を這い、両手で頬を包み込んで唇を重ねる。

「んぅ、ちゅつ、くちゅっ、じゅる……」
「んむ、れる、んろぉ……」

 舌を絡めて唾液をたっぷりと交換し、渇いた喉をゆっくりと潤す。

「雪菜……」
「ぷあっ……今日は、まだしてなかったでしょう、キス?」
「ああ、そういえば」
「今日は、すごかったね」
「それは、花火大会?それとも……」
「う〜ん、やっぱり両方かな?」
「俺も楽しかった。それに、なんといっても雪菜の浴衣が拝めたから」
「あははっ。良かった、あなたに喜んでもらえて」

 春希は改めて、自分の上で身体を重ねている雪菜を凝視する。
 浴衣の襟元はとっくにはだけていて、露わになった胸が自分の胸板で柔らかく押し潰れ。
 捲れた裾から伸びた脚が、腰を挟んでしなやかな感触を伝え。
 そして、未だ繋がっている場所は己の欲棒を柔らかく、温かく包み込んだまま……。

「……春希くん」
「あ……」
「……これって」
「……ごめん。雪菜の今の恰好が、すごく色っぽくて、その……」
「春希くん、そんなに気に入っちゃったの?」
「ああ、浴衣の雪菜、本当に可愛くて……」
「だね。だって春希くん、わたしの中でもう元気になっちゃってる」
「……なあ、雪菜」
「なぁに?」
「……まだ、花火大会、続けたい」
「……続けたい、の?」
「……駄目、かな?」

 春希が懇願するが、雪菜は眉を顰め、唇を尖らせる。

「むう〜」
「あ……やっぱり、駄目か?」
「……んもうっ」

 雪菜は頬を膨らませ、春希の頬を包んでいた両手で頬をつねり、少し強く左右に引っ張った。

「い、いへへへへっ」
「どうしてそんな聞き方するのよ?なんで『いいのか?』って聞かないのよ?」
「せ、雪菜?」
「あなたがわたしを求めてくれるのに、駄目な訳ないのに」
「あ……」
「わたしがあなたに求められて、嫌だなんて思ったことなんかないのに」
「じゃあ……雪菜に、打ち上げて、いいか?」
「うん。わたしの中に、あなたがしたいだけ打ち上げて」
「……さすがに二万発は無理だけどな」
「あははっ、そうだね。わたしも壊れちゃうよ、きっと」
「じゃあ、俺もお願いしていいか?」
「分かった。あなたの準備が整ったら、わたしがあなたの花火に火を付けてあげるから」

 雪菜が春希の頭を胸に抱き締める。春希も浴衣の裾から差し入れた手で雪菜のお尻を掴んで腰を動かし始めた。
 ……こうして、二人の花火大会は夜通しで続き、春希は雪菜の中に幾度も花火を打ち上げた……。



あとがき

 いやぁ、先日あった花火大会見てて、書いてしまいました。
 浴衣の雪菜を書きたいってのは以前から温めてあったんですけどね

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