1月は、主に冬馬のフォローに追われた。
練習で大変だろうと思われるところへ、雪菜と一緒に差し入れを持っていったところを、冬馬のお母さん、曜子さんに捕まったのが運の尽きだった。
曜子さんに気に入られた俺たちは、細かい雑用を頼まれている内に、気がついたら俺と雪菜は冬馬曜子オフィス日本支部のアルバイト扱いになっていた。
いや、何を言っているのか分からないが、事実だ。
あの冬馬曜子が如何にして一代で成功したのかの片鱗が分かった。
おそらく、この強引さで人脈を築き、のし上がったっていったのだろう。
だが、この展開は俺と雪菜にとっては、むしろ喜ばしいことだった。
なにせ、旅行中に約束した様に、冬馬をサポートできるのだから。
とはいえ、サポートと言っても俺が担当したのは雑用がほとんどだった。
一方、雪菜は冬馬の衣装選びにも立ち会ったと聞いて地味にショックを受けたが、ファッション関連のセンスは雪菜に任せればいいかとすぐに考えを切り替えた。
そんなこんなで、コンクールの日はやってきた。
落ち着いた様子でコンクールに臨む冬馬を、俺と雪菜はハラハラしながら見守っていた。

圧倒的だった
今までに冬馬の演奏は何度も聞いていたが、その中でも最高の演奏だったんじゃないのかと思えるほどに
演奏が終わり、雪菜の方を見ると、雪菜も同じ表情だった。
俺たちは惜しみない拍手を送った。
だが、結果は4位入賞だった。
他の人の演奏なんて特に心に残らなかったのに何故だ!と思ったが、曜子さんは満足だったみたいだ。
そして、冬馬はこの結果を切欠に如月音楽大学への推薦受験の資格を得た。

…………
……


2月14日がやってきた。
雪菜の18歳の誕生日だった。
そして、冬馬が如月音楽大学に合格した日でもあった。
当然、俺たちは祝いあった。
小木曽家で、雪菜の家族も交えながら、俺は二人のことを心の底から祝った。
本当に楽しかった。
俺たち三人は、本当に楽しい気持ちを共有していた。
それだけは本当だ。

でも…もういいだろ?

これで、冬馬はこれからも何とかやっていけるだろ?

雪菜も誕生日の日を最高の気分で過ごすことができたよな?

だから、もういいだろ?

…………
……



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