差別・偏見やヘイトスピーチを助長する「嫌韓」デマ・中傷に対抗・反論するウィキです。

「嫌韓」の主張

在日が持っている「特別永住資格」は、一般の永住資格より優遇されている。これは不当な「特権」である。

反論


何が「特別」なのかを見極めなければならない。

特別永住資格については、在日コリアンFAQ特別永住資格とはどういうものですか?でも触れられています。また在特会の特別永住資格に関する主張に対しては同サイトの「在特会」への反論その2 どうして『特別永住資格』が特権なの?で反論されているので、ここではそれらを踏まえた上で、少し違う角度から論じることにします。


まず、終戦後に在日コリアン及び在日台湾人、すなわち現在特別永住を持つ人々が日本政府によってどのような扱いを受けたのか振り返ってみましょう。

終戦後日本政府は朝鮮人・台湾人について、講和条約を結ぶまでは「日本国籍を保持するもの」とする、と規定していました。しかし1945年12月に改正された選挙法には「戸籍法の適用を受けない者(朝鮮人・台湾人)の選挙権および被選挙権は当面の間停止する」という条項が加えられました。翌年の1946年には女性にも参政権が認められた戦後初の普通選挙が実施されましたが、この選挙から朝鮮人・台湾人は排除されました。

1947年には外国人登録令が施行され、朝鮮人は「日本国籍を保持しているが、当分の間、外国人とみなす」とされました。これにより外国人登録していない朝鮮人が日本に入国することは禁じられ(そのため一旦朝鮮半島に帰った朝鮮人―繰り返しになりますがこの時点では「日本国籍を保持」しています―が再び日本に入国するためには密航という手段を取らざるを得なかったのです)、違反者は退去強制処分も含めた刑罰が科されることになりました。

一方、朝鮮人の民族教育への熱意から生まれた民族学校に対しては容赦ない弾圧が加えられます。終戦直後、日本各地で500以上の民族学校が設立されました。日本政府は当初、民族学校による教育を認めていましたが、1948年に入ると態度を一転させ、「朝鮮人の子弟も日本の学校に就学させなければならない」とし、朝鮮人学校閉鎖命令が出されました。これに反対する朝鮮人は各地で大規模な抗議活動を展開しましたが、日本政府と占領軍はこれに対して弾圧で応じ、多数の検挙者を出しました。阪神教育闘争では警官の発砲により、当時16歳だった金太一<キム・テイル>少年が亡くなっています。

つまり講和条約締結までの日本は、朝鮮人を「外国人」として、本来持っていたはずの権利を奪い、取り締まりの対象としつつ、他方では「日本人」としての義務を科し、外国人としての権利を認めない、という二重基準(ダブルスタンダード)の態度を取っていたと言えるでしょう。

そして1952年にサンフランシスコ講和条約発効に伴い、在日朝鮮人は正式に日本国籍から「離脱」し(させられ)ました。これにより、在日朝鮮人は日本における法的地位がいっそう不安定になったばかりか、日本国籍保持者として保障されるべき権利も喪失します。たとえば日本人の戦没者遺族や戦傷病者に支給される給付金や恩給には「国籍条項」があり、旧植民地出身者には適用されませんでした。こうした例には枚挙に暇がありません(※注)

本来ならば植民地が独立した場合、旧植民地出身者には国籍選択権が与えられるのが通例です。ナチスドイツにより併合されたオーストリアがドイツ敗戦により分離した際、オーストリア人はドイツ国籍かオーストリア国籍を選択することができました。フランスの植民地だったアルジェリアが独立した際も在仏アルジェリア人に同様の選択権が与えられました。

日本はそうした措置を取らず、在日朝鮮人に対しては「帰国するか、さもなければ帰化(日本人に同化)するか」という態度で臨みます。在日朝鮮人が朝鮮人としてのアイデンティティを保持しつつ日本に存在するという事実に対しては「日本に少数民族が形成されることになる」と厭い、正面から向き合うことを避けてきました。そうした態度が在日朝鮮人の法的地位をはじめとする様々な問題を生じさせたと言っても過言ではないでしょう。



さて、こちらで紹介されているような法的地位の変遷を経て1991年に定められた特別永住資格は、こうした戦後日本の旧植民地出身者に対する不十分な措置の「ゆがみ」を是正するために定められたものです。「特別」というのは、国内に在住・在留する外国人が「外」から国「内」にやって来るというのが「普通」であるのに対して、特別永住資格の場合「国内」で生じた外国人(国の都合で外国人にされてしまった旧植民地出身者とその子孫)を対象にしているということです。

特別永住資格を「特権だ」という人は、たとえば一般の永住資格に比べ退去強制の基準が緩いことを問題にしますが、日本人はどんなに重大な犯罪を犯したとしても国外追放処分を受けることはありません。犯罪を犯したとしても、人権は保障されなくてはなりません。外国籍であっても日本で生まれ育ち、日本以外に生活基盤を持たない人を国外に追放するというのは、その人の生活権、生存権を侵すことになります。


そうした意味において、特別永住資格もまた完全とは言えず、他の外国人在留資格や永住資格も含め再検討する必要はあるでしょう。それは特別永住資格をなくすのではなく、たとえば一般永住者の資格を特別永住者並に引き上げる、一般永住者も特別永住者も強制退去事由を撤廃する、という考え方もあるはずです。あるいはもっと抜本的に、「外国人」や「国籍取得」の在り方を変えるための議論(たとえば、血統主義に代わって出生地主義を採用する、二重国籍を認める、など)もありえます。

こうした論は単なる絵空事や理想論ではなく、今後の少子高齢化社会の問題を鑑みても当然考えなくてはならない、きわめて現実的な問題です。特別永住資格についてもその中で論じられるべきであり、単に特別永住資格をなくせば外国人に関する問題が解決するかのような主張は、こうした現実から目をそらさせるだけです。


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在日コリアンKEYワード:戦後在日コリアン法的地位一覧


(※注)こうした事例については、『在日外国人 第三版―法の壁、心の溝―』(田中宏/岩波新書)で詳しく紹介されています。




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