最終更新:ID:X22XayQSew 2025年05月13日(火) 20:38:17履歴
(貴方って人は、貴方って人はっ!)
『人じゃないですぅ。神様ですぅ。いやでも今の私ってフゥリの中に寄生してるようなものですし、肉体も人間と変わりないですね。私ってなんなんでしょうか。知りませんかフゥリ』
(いや、私に聞かれても知るわけないじゃないですか。オオヒメ様って私が生まれるずっと前から存在してるんですし。それよりも何してくれてるんですか!)
私はオオヒメ様の両頬を思いっきり抓った。
餅のように柔らかくて弾力のある頬はぐにぃと伸びていく。
『あっ、痛い痛い痛いです。フゥリ痛いですよ、爪立てないでください』
(痛くしてるんだから当然でしょうが。このこのっ。自分だけ旦那様のかわいいところ堪能するなんてずるいじゃないですか!)
『ずるいと思うならフゥリもやればいいでしょう』
(できたら苦労しないんですよっ)
摘まんだままの頬を円を描くように動かす。
オオヒメ様も耐えかねたのか目を閉じて目尻に涙を浮かべながら、しきりに痛いと言っている。
(痛いですって。伸びる、伸びちゃいます。ほっぺただらんってなっちゃいますって)
その割にはなんだか余裕がありそうな雰囲気である。
調子に乗って動かしていると、オオヒメ様も私の頬を抓ってきた。
結構痛い。涙が出そう。出た。
『お返しですよ、痛いでしょう』
(いった! というか付け爪なんていつの間に⁉)
『んふふ。私にできないことはないんですよ』
(むっきー!)
意地になる私と飄々としているオオヒメ様。
いつまで続くんだろうこれ、と思っていると身体を揺さぶられた。
両手が塞がっているのでオオヒメ様ではない。たぶん。
「あのー、フゥリ? どうしたの、大丈夫?」
聞こえてきたのは旦那様の声。
姿は見えないが声はよく響く。
それが合図となって二人ほぼ同時に頬から手を離した。
頬を摩りながら涙目でオオヒメ様を見る。
オオヒメ様は余裕綽々といった様子のまま言った。
『そろそろ戻りますかフゥリ』
(そうしましょうオオヒメ様)
返事すると世界がぱっと切り替わった。
今目の前に広がるのは見慣れた私と旦那様の部屋である。
目の前で心配そうに見つめている旦那様に向き直る。
ここからが大事なのだと友人に聞いたからだ。
大きく深呼吸をしてから、口を開く。
「喧嘩完了っ。あなた、早速ですけどヤりましょう!」
高らかに宣言すると旦那様はぽかんと口を開けた。
「なにを?」
何一つわからないということを全身で表現するとこうなるのだな、と私は思った。
◇
「つまりフゥリが友達から喧嘩した後にセックスするのが味変になっていいって聞いたから、オオヒメ様と喧嘩して俺としようとしたってこと、でいいんですよね?」
「はい。少年は理解が早くて助かりますね」
えらいえらいとオオヒメ様が旦那様の頭を撫でる。
旦那様はそれを無視して溜息を吐いた。
「フゥリがなんて聞いたかは知らないけど、その喧嘩って付き合ってる相手とするものじゃないの?」
「そうなんですかオオヒメ様」
「そうらしいですねフゥリ」
「ということは?」
「お互い抓り損抓られ損ということです。痛かったんですけどねえ」
オオヒメ様が頬を摩った。
そんなぁ、と私は肩を落として項垂れる。
「まあこういうこともありますよ。元気出してくださいなフゥリ。まあ私はフゥリ相手というのもやぶさかではありませんが。むしろバッチコイですね」
突然のカミングアウトは聞かなかったことにした。
「それはそうと。フゥリは喧嘩しようとするつもりだったみたいですけど、そもそも二人が喧嘩したこと、一度もないでしょう。喧嘩の仕方わかるんですか」
私と旦那様は見合わせてそういえば、と同時に呟いた。
「ない、ですね」
「でしょう。妊娠中で不安定になってた時すら、フゥリは不平不満すら周りに出さなかったんですから。そんな状態で喧嘩なんてしてみなさい。仲直りどころかそのまま破局、なんてことになりかねませんよ」
家庭内別居からの離婚のコンボですよとオオヒメ様が言った。
「この場合は少年の御両親に気に入られてるのはフゥリのほうですから、追い出されるのは少年のほうかもしれませんが」
「それはちょっと」
「でしょう。この家に来たばかりの頃のフゥリを思い出してごらんなさい。あんなふうにそっけない態度をとるのが精一杯の子が、ようやく感情表現の仕方を覚えはじめてきたのですよ。子犬がじゃれながら力加減を覚えていくのと同じような情緒なんですよ、今のフゥリは」
「いや流石にそこまでは──」
「そこまでですよ。さっきの喧嘩だってすぐに手が出たじゃないですか。不安になると脆刃の剣を持ち出したりするし、そういうところが心配なんですよ私は」
この家に来たばかりの時のことを思い出してみる。
ほんの数年前だというのにもう記憶が朧気だ。
出てくるのは旦那様や御両親に大切にしてもらったこと、初めて自分の子供を抱いた時のこと、友達ができたときのこと。温かくなる思い出ばかりだが、それらをあえて隅へと追いやり、もう少し深くまで探っていく。
思い出したのはここに来て数日経ったころの記憶。
その頃の私は──。
「うわああああっ。私、私ぃ!」
「ようやく思い出しましたか」
「なんで旦那様にあんなことを言ったんですかああああっ」
叫びながらベッドに飛び込んで顔を埋めた
両手でしっかりと掛布団を握りしめながら、身悶えする。
「俺は気にしてないよ? というかああいうフゥリも結構好きというか」
「私が気にするんです!」
旦那様の心遣いが逆につらい。
あんなことしておいてどの面下げて旦那様大好きと口走れるのだろうか。
全部旦那様と御両親が辛抱強く付き合ってくれたからではないだろうか。
かかった迷惑は計り知れない。
死んだ方がいいのではないか、こんな女。
「とまあ、フゥリが自己嫌悪に陥っていますがね。当時のこの子は少年のことを冷たく拒絶してましたね。一緒にいたからよくわかります。そこで少年っ」
「はい。なんでしょうかオオヒメ様」
「フゥリのこと慰めてやってください。どんな手を使っても構いませんので」
どうやら私を慰めることが決まったらしい。
顔を上げるとこのままだと時間かかりそうなんで任せましたよ少年、と言い残してオオヒメ様が消えていった。
私の中にも戻っていないし、どこへ行ったのやら。
ぼけっとしていると両脇に手を差し込まれて、そのまま抱きかかえられた。
連れていかれた先は旦那様の膝上だった。
背後から旦那様が腰のあたりをぎゅっと抱きしめてくる。
旦那様の手に私の手を重ねて、凭れ掛る。
それだけでもう気分が良くなるのだから、私は実に簡単な女である。
「それで、旦那様はどんなふうに私を慰めてくれるんですか」
「このまま抱きしめるってのじゃ、駄目ですか」
「んー、ちょっと足りないです」
ちょっと考えさせてください、と旦那様が黙り込んだ。
どんなことをしてくれるんだろうとワクワクしてきた。
我ながら少し意地が悪いとは思うけれども。
暫くすると考えが纏まったのか、旦那様は私の顎を掴むと顔を横へと向けさせた。
視界一杯に旦那様の顔が広がって、間髪入れずに唇を塞がれた。
顎をクイってされながらキスはいいものだ。
流石旦那様、私の事をよくわかっていらっしゃる。
侵入してきた舌がくちゅくちゅと口内を荒らしまわるので、私も舌を絡めてわざと水音を立てていく。
目を閉じて受け入れ音と感覚に集中しようとしたところで、唇が離れた。
「ぷはっ♡これが答えですか?」
「違ったの? 今のフゥリはこういうのしてほしい気分だと思ったんだけど」
「正解です。でももう少ししてほしかったですね」
そう言うと旦那様がまたキスをしてきた。
ただ今回は深いほうではなく触れるだけの軽いものだった。
啄むようなキスを無数に繰り返す。
それだけで気分はどんどん昂ぶっていく。
旦那様はキスしながらもしきりに腰やお腹、特にお臍の周りを重点的に撫でている。
触られるとほんのり気持ちよくて、まるで犬にでもなったような気分だ。
呼吸が荒くなり、目がとろんとして、視界がぼやけていく。
キスの嵐が終わるころにはすっかり出来上がってしまった。
お腹の奥が疼いて仕方がない。
「フゥリ、いいよね」
「はい♡」
旦那様の手がレギンスを下ろしてショーツの中へと潜り込んでくる。
割れ目のすぐ傍を軽く撫でながら、旦那様は私の首元に顔を埋めて唇を落とした。
口付けは少し痛いくらいで、きっと明日まで跡が残るんだろうなと、ぼんやり思った。
要求したものとは違うけどこれはこれで嬉しい。
「今日は最初から乗り気みたいだったからね、目一杯気持ちよくしてあげるよ」
「はいっお願いします♡」
どんなことをしてくれるんだろうとワクワクしていると、ショーツを太腿まで下ろされた。
外気がほんのりと濡れた秘所に触れて、若干の冷たさを覚える。
挿入しやすいように腰を浮かせようとしたところ、旦那様に片腕で腰を抱きかかえられてしまった。。
ショーツの中の手は陰毛をわさわさと弄ったり、内腿や割れ目の周りを撫でるのだが決して中に入れることはない。
焦らされているのだろうか、もどかしくてつい腰を動かしてしまう。
もう少しもう少し。
気が付けば快感を得ようと私は小刻みに全身を揺らしていた。
お尻の下では旦那様が硬くしているのがズボン越しでもはっきりわかる。
我慢せずに早く私の膣内に入れてくれればいいのに。
そんなことを考えていると、突然クリトリスを摘ままれた。
「んひぃっ♡」
軽く触れるだけのような摘まみ方だが、焦らされた身体は快感を何倍にも増幅して伝えてくる。
耐え切れずに軽く達してしまい、思いっきりお腹を突き出して仰け反る。
ぷしっと音を立てて潮が噴き出た。
すごく気持ちよかった。
だが旦那様はそれだけで許してくれず、膣内に指を差し込み、そのままガシガシと勢いよく動かしはじめる。
「んっ♡ぁあっ♡あな、たぁっ♡」
絞り出すように快感を乗せて息を吐く。
膣内では指がバラバラにお臍のほうの気持ちいいところを執拗に攻め立てている。
何本入っているのかなんてわかりはしない。
とにかく気持ちいいものが押し寄せてきている。
秘所は噴水のように断続的に潮を旦那様の手に吹きかけ続けている。
「ひっ♡ひゃっ♡これっ、すご♡だめっだめっ♡おかしくなるぅ♡」
「どうフゥリ。きもちいい?」
「わかん、にゃ♡いれすっ♡あたままっしろ♡きもちいっ♡」
頭の芯まで膣から送られてくる刺激で塗り潰されている。
ぼんやりとして、目の奥がチカチカして、口から意味のない言葉とも喘ぎ声ともわからないものが漏れ続ける。
ごりっと、一際強い刺激で私の中のものが全部溢れ出そうとしている。
耐えるだけの余力もない私はなされるがままにそれを受け入れた。
「やあっ♡イっ〜〜〜ッ♡♡♡」
思いっきり仰け反り、足先までピンと伸ばして快感に酔いしれる。
傍目から見ても絶頂を迎えているのは明らかなのだが、旦那様は指を止めてくれず、ずっと絶頂のまま更なる快感に晒されていく。
「んひゃぁぁっっ♡なんっ♡なんれぇっ♡イってるっ、イってるのにぃ♡」
「もっとイっていいよ」
「やらやらやらぁっ♡こわれちゃう、こわれるからぁっ♡」
膀胱の裏あたりを強く押されて、私は完全に決壊した。
「やぁあああ〜〜〜〜っっっ♡♡♡♡♡♡」
◇
「ごめんちょっとやりすぎた」
「むぅ、次からはちゃんと言ってくださいね」
「はい、善処します」
「やらないやつじゃないですかそれ」
旦那様は小さく舌を見せてウインクした。
まるで反省していない。
私の後始末を任せているわけだし、何よりも私に気持ちよくなってほしいという気持ちからきたものなのもわかっているので責める気は毛頭ないが、それでも頬を膨らませずにはいられなかった。
覚醒した私は旦那様の膝上で、その逞しい腕に抱きしめられながらぐったりとしていた。
気絶していたのはほんの数秒程度だったらしく、身体はまだ快感に震えていたし、床には噴いた潮が水溜まりとなっていた。
旦那様は私をベッドに寝かせると、水溜まりをタオルで拭き取り始めた。
それを眺めながらお股が濡れて冷たい、どれだけ出したんだ私、としょうもないことを考えるくらいの余裕はあった。
流石に拭いてもらうのは恥ずかしいので、自分で処理しようとベッドサイドにあるティッシュへと寝返りをうってうつ伏せになり手を伸ばすと、ギリギリだが届いた。
指先がティッシュに触れたと同時にお腹とベッドの間に手が滑り込んできて、そのまま抱きかかえられ、旦那様の膝上に後ろから抱っこされるような姿勢で座らされた。
「はいばんざーい」
言われるがままに腕を上げると、服を脱がされた。
下半身はすっぽんぽんだったので今更だが、上半身、特に胸が丸見えになると一気に恥ずかしさが増した。
「あ、あの、あなた?」
肩越しに旦那様に問いかけると、返事代わりに唇を奪われる。
口の中に集中したいがお尻の下にある硬くなっているモノがそれを邪魔してくる。
あれよあれよという間に口中を蹂躙されて、唇が離れた。
頭がぼーっとしている。
こんなのその気になるに決まってるではないか。
「あなた、そろそろください」
私が腰を浮かせると、旦那様はもぞもぞと動いてズボンと下着を膝まで下ろした。
視線を下に向けると私の両脚の間にグロテスクな肉の槍が見えて、思わず生唾を飲み込んでしまった。
週に何日かのペースで挿れられているし、少ないとはいえ舐めたことすらあるが慣れるものではない。
大きくなっていなければ小っちゃくてかわいいと思うのだが。
そんなモノが私の秘所に触れる。
「んっ♡」
反射的に声が出た。
期待で胸が早鐘を打つ。
「挿れるよ」
「はい来てください」
ぐちゅりと音がして、私を押し広げながら旦那様が突き進んできた。
半分くらい入ってきたところで耐えられずに浮かしていた腰を下ろしてしまい、奥まで一気に埋め尽くされた。
「あああっ♡」
自分の体重が丸ごと乗った挿入は肺の空気を追い出し、痛みと苦しさと快楽の混ざり合った刺激を与えてきた。
旦那様は私のお腹に腕を回して抱きしめながら、小刻みに腰を動かして浅く細かいピストンを繰り返してくる。
きつく抱きしめられているおかげで挿入されているお腹の中だけでなく背中全体で旦那様を感じられてとても心地いい。
なにより優しいピストンであまくあまーく高めていくのが、私好みですっごくいい。
ごちゅごちゅと激しい性欲に任せたピストンも嫌いではないのだが、受け入れる側としては結構疲れるし、何より腰にくるのだ。
「あっ、あっ♡あなた、これすきです。もっとぎゅっとしてください」
「わかったよ」
お腹に回されていた腕が胸の下くらいのところまで上がってきた。
私の思い違いでなければ、動きのどさくさに紛れて下から胸を触ってきている。
そんなことしなくても遠慮せずに触ればいいのに。
「あなた、おっぱい触りたいなら触っていいですよ?」
「バレてた?」
「バレバレですよ♡んっ♡」
こつんと最奥を叩かれる。
まったく悪戯好きな男の子である。
旦那様の手をとって乳房へと誘導する。
「揉みながら動かしていいですよ。流石にこの体勢だと吸いながらというのは無理ですけど」
「なら遠慮なく」
胸を下から覆い隠すように手が添えられてる。
手に力が籠って乳房が形を変えて、じんわりと快感が広がる。
「あん♡やっぱりおっぱい好きですね」
「好きな人のだよ。そりゃあ大好きに決まってるでしょ」
好きな人、と言われて顔が火がついたようにかっと熱くなる。
きっと真っ赤だろう。こんな顔旦那様に見せられない。背面座位で良かった。
「あっ♡んぅ♡あなた、あなたぁ」
「フゥリ、きもちいい?」
ぐりぐりと奥に先っぽを擦りつけられる。
「はふぅ♡いいです、これすっごくいいです。もっと♡もっと♡」
「わかったよ」
とんとん。
ぐりぐり。
ふにふに。
まったりとしつつも、確実に絶頂に向かっていくのが自分でもわかる。
クリトリスなどの刺激の強いところどころか、硬くなった乳首すらは全く触ってこないあたり旦那様もゆっくりと気持ちよくなってほしいと思っているのだろうか。
「はっはっはぁ♡あなた、あなたっ。私そろそろイきそう、です」
「んっ、フゥリ、我慢せずにイっていいからね」
「わかりました♡」
私も少しだけ腰を動かす。
すると一気に快感が溢れてきて、全身に染みわたっていった。
「ひっ、ひゃぁ♡くる、くるっ♡きちゃう♡」
大きく息を吸い込んで、お腹に手を当てる。
たぶんこのあたりだろうかと目安をつけてお腹を強く押すと、きゅんと気持ちいいもので頭が溢れて、達した。
「〜〜〜〜〜っっっ♡♡♡」
声を噛み殺して、身体を丸めて、絶頂を味わう。
無限にも思えるほど引き延ばされた時間が続いて、ゆっくりゆっくりと快感が引いていく。
波が引いて、脱力しながら寄りかかると旦那様はぎゅっと抱きしめてくれた。
「よかった?」
その問いに私は小さく頷いた。
◇
「それでですね、旦那様ったら朝までじーっくりたーっぷりやさしくきもちよくしてくれたんですよ。いっぱいおっぱいも吸ってくれましたしね」
きゃー、と甲高い声が上がる。
話している内容はこの間の一晩のことである。
家に友人が遊びに来て色々と話をしているうちに、そういえばということで話すことになったのだ。
結局あの日は寝ずに丸々一晩イチャイチャとしていた。
おっぱいを吸わせたり、無限なでなでしてもらったり、頑張ってるねと褒めて貰ったり。
朝になってシャワーを浴びる段階になって、ようやく部屋の前で体育座りで待っていたオオヒメ様に気が付くくらい夢中だった。
オオヒメ様からは随分と夢中だったようですね、と感想なのか嫌味なのかわからない一言を貰っただけだった。
旦那様は更に何か言われたようだが内容まではわからなかった。
胸を撫で下ろしていたあたり悪い内容ではないと思う。
「よかった? ねえよかった?」
「ええ、至福の一晩でしたよ」
「いいなー、いいなー。私も先輩にシてもらおうかな」
ずず、と目の前の少女が飲み物をストローで吸い上げる。
ぷくっと膨らませた頬を見て、私は思い出した。
「そういえば、喧嘩はしませんでしたね」
すっかり忘れていたが、それが発端だったことをようやく思い出した。
なんでオオヒメ様と喧嘩ごっこしようなんて思ったのだろうか、当時の私は。
自分のことなのにさっぱりわからない。
「まあ喧嘩なんてしないに越したことはないですよ。時々は必要だと思うけど」
「そういうものですか」
「そういうものだよフゥリちゃん」
何時になるかわからないけど、喧嘩したときには楽しみにしておこうと心の奥底にしまい込みながら私はティーカップに口をつけた。
『人じゃないですぅ。神様ですぅ。いやでも今の私ってフゥリの中に寄生してるようなものですし、肉体も人間と変わりないですね。私ってなんなんでしょうか。知りませんかフゥリ』
(いや、私に聞かれても知るわけないじゃないですか。オオヒメ様って私が生まれるずっと前から存在してるんですし。それよりも何してくれてるんですか!)
私はオオヒメ様の両頬を思いっきり抓った。
餅のように柔らかくて弾力のある頬はぐにぃと伸びていく。
『あっ、痛い痛い痛いです。フゥリ痛いですよ、爪立てないでください』
(痛くしてるんだから当然でしょうが。このこのっ。自分だけ旦那様のかわいいところ堪能するなんてずるいじゃないですか!)
『ずるいと思うならフゥリもやればいいでしょう』
(できたら苦労しないんですよっ)
摘まんだままの頬を円を描くように動かす。
オオヒメ様も耐えかねたのか目を閉じて目尻に涙を浮かべながら、しきりに痛いと言っている。
(痛いですって。伸びる、伸びちゃいます。ほっぺただらんってなっちゃいますって)
その割にはなんだか余裕がありそうな雰囲気である。
調子に乗って動かしていると、オオヒメ様も私の頬を抓ってきた。
結構痛い。涙が出そう。出た。
『お返しですよ、痛いでしょう』
(いった! というか付け爪なんていつの間に⁉)
『んふふ。私にできないことはないんですよ』
(むっきー!)
意地になる私と飄々としているオオヒメ様。
いつまで続くんだろうこれ、と思っていると身体を揺さぶられた。
両手が塞がっているのでオオヒメ様ではない。たぶん。
「あのー、フゥリ? どうしたの、大丈夫?」
聞こえてきたのは旦那様の声。
姿は見えないが声はよく響く。
それが合図となって二人ほぼ同時に頬から手を離した。
頬を摩りながら涙目でオオヒメ様を見る。
オオヒメ様は余裕綽々といった様子のまま言った。
『そろそろ戻りますかフゥリ』
(そうしましょうオオヒメ様)
返事すると世界がぱっと切り替わった。
今目の前に広がるのは見慣れた私と旦那様の部屋である。
目の前で心配そうに見つめている旦那様に向き直る。
ここからが大事なのだと友人に聞いたからだ。
大きく深呼吸をしてから、口を開く。
「喧嘩完了っ。あなた、早速ですけどヤりましょう!」
高らかに宣言すると旦那様はぽかんと口を開けた。
「なにを?」
何一つわからないということを全身で表現するとこうなるのだな、と私は思った。
◇
「つまりフゥリが友達から喧嘩した後にセックスするのが味変になっていいって聞いたから、オオヒメ様と喧嘩して俺としようとしたってこと、でいいんですよね?」
「はい。少年は理解が早くて助かりますね」
えらいえらいとオオヒメ様が旦那様の頭を撫でる。
旦那様はそれを無視して溜息を吐いた。
「フゥリがなんて聞いたかは知らないけど、その喧嘩って付き合ってる相手とするものじゃないの?」
「そうなんですかオオヒメ様」
「そうらしいですねフゥリ」
「ということは?」
「お互い抓り損抓られ損ということです。痛かったんですけどねえ」
オオヒメ様が頬を摩った。
そんなぁ、と私は肩を落として項垂れる。
「まあこういうこともありますよ。元気出してくださいなフゥリ。まあ私はフゥリ相手というのもやぶさかではありませんが。むしろバッチコイですね」
突然のカミングアウトは聞かなかったことにした。
「それはそうと。フゥリは喧嘩しようとするつもりだったみたいですけど、そもそも二人が喧嘩したこと、一度もないでしょう。喧嘩の仕方わかるんですか」
私と旦那様は見合わせてそういえば、と同時に呟いた。
「ない、ですね」
「でしょう。妊娠中で不安定になってた時すら、フゥリは不平不満すら周りに出さなかったんですから。そんな状態で喧嘩なんてしてみなさい。仲直りどころかそのまま破局、なんてことになりかねませんよ」
家庭内別居からの離婚のコンボですよとオオヒメ様が言った。
「この場合は少年の御両親に気に入られてるのはフゥリのほうですから、追い出されるのは少年のほうかもしれませんが」
「それはちょっと」
「でしょう。この家に来たばかりの頃のフゥリを思い出してごらんなさい。あんなふうにそっけない態度をとるのが精一杯の子が、ようやく感情表現の仕方を覚えはじめてきたのですよ。子犬がじゃれながら力加減を覚えていくのと同じような情緒なんですよ、今のフゥリは」
「いや流石にそこまでは──」
「そこまでですよ。さっきの喧嘩だってすぐに手が出たじゃないですか。不安になると脆刃の剣を持ち出したりするし、そういうところが心配なんですよ私は」
この家に来たばかりの時のことを思い出してみる。
ほんの数年前だというのにもう記憶が朧気だ。
出てくるのは旦那様や御両親に大切にしてもらったこと、初めて自分の子供を抱いた時のこと、友達ができたときのこと。温かくなる思い出ばかりだが、それらをあえて隅へと追いやり、もう少し深くまで探っていく。
思い出したのはここに来て数日経ったころの記憶。
その頃の私は──。
「うわああああっ。私、私ぃ!」
「ようやく思い出しましたか」
「なんで旦那様にあんなことを言ったんですかああああっ」
叫びながらベッドに飛び込んで顔を埋めた
両手でしっかりと掛布団を握りしめながら、身悶えする。
「俺は気にしてないよ? というかああいうフゥリも結構好きというか」
「私が気にするんです!」
旦那様の心遣いが逆につらい。
あんなことしておいてどの面下げて旦那様大好きと口走れるのだろうか。
全部旦那様と御両親が辛抱強く付き合ってくれたからではないだろうか。
かかった迷惑は計り知れない。
死んだ方がいいのではないか、こんな女。
「とまあ、フゥリが自己嫌悪に陥っていますがね。当時のこの子は少年のことを冷たく拒絶してましたね。一緒にいたからよくわかります。そこで少年っ」
「はい。なんでしょうかオオヒメ様」
「フゥリのこと慰めてやってください。どんな手を使っても構いませんので」
どうやら私を慰めることが決まったらしい。
顔を上げるとこのままだと時間かかりそうなんで任せましたよ少年、と言い残してオオヒメ様が消えていった。
私の中にも戻っていないし、どこへ行ったのやら。
ぼけっとしていると両脇に手を差し込まれて、そのまま抱きかかえられた。
連れていかれた先は旦那様の膝上だった。
背後から旦那様が腰のあたりをぎゅっと抱きしめてくる。
旦那様の手に私の手を重ねて、凭れ掛る。
それだけでもう気分が良くなるのだから、私は実に簡単な女である。
「それで、旦那様はどんなふうに私を慰めてくれるんですか」
「このまま抱きしめるってのじゃ、駄目ですか」
「んー、ちょっと足りないです」
ちょっと考えさせてください、と旦那様が黙り込んだ。
どんなことをしてくれるんだろうとワクワクしてきた。
我ながら少し意地が悪いとは思うけれども。
暫くすると考えが纏まったのか、旦那様は私の顎を掴むと顔を横へと向けさせた。
視界一杯に旦那様の顔が広がって、間髪入れずに唇を塞がれた。
顎をクイってされながらキスはいいものだ。
流石旦那様、私の事をよくわかっていらっしゃる。
侵入してきた舌がくちゅくちゅと口内を荒らしまわるので、私も舌を絡めてわざと水音を立てていく。
目を閉じて受け入れ音と感覚に集中しようとしたところで、唇が離れた。
「ぷはっ♡これが答えですか?」
「違ったの? 今のフゥリはこういうのしてほしい気分だと思ったんだけど」
「正解です。でももう少ししてほしかったですね」
そう言うと旦那様がまたキスをしてきた。
ただ今回は深いほうではなく触れるだけの軽いものだった。
啄むようなキスを無数に繰り返す。
それだけで気分はどんどん昂ぶっていく。
旦那様はキスしながらもしきりに腰やお腹、特にお臍の周りを重点的に撫でている。
触られるとほんのり気持ちよくて、まるで犬にでもなったような気分だ。
呼吸が荒くなり、目がとろんとして、視界がぼやけていく。
キスの嵐が終わるころにはすっかり出来上がってしまった。
お腹の奥が疼いて仕方がない。
「フゥリ、いいよね」
「はい♡」
旦那様の手がレギンスを下ろしてショーツの中へと潜り込んでくる。
割れ目のすぐ傍を軽く撫でながら、旦那様は私の首元に顔を埋めて唇を落とした。
口付けは少し痛いくらいで、きっと明日まで跡が残るんだろうなと、ぼんやり思った。
要求したものとは違うけどこれはこれで嬉しい。
「今日は最初から乗り気みたいだったからね、目一杯気持ちよくしてあげるよ」
「はいっお願いします♡」
どんなことをしてくれるんだろうとワクワクしていると、ショーツを太腿まで下ろされた。
外気がほんのりと濡れた秘所に触れて、若干の冷たさを覚える。
挿入しやすいように腰を浮かせようとしたところ、旦那様に片腕で腰を抱きかかえられてしまった。。
ショーツの中の手は陰毛をわさわさと弄ったり、内腿や割れ目の周りを撫でるのだが決して中に入れることはない。
焦らされているのだろうか、もどかしくてつい腰を動かしてしまう。
もう少しもう少し。
気が付けば快感を得ようと私は小刻みに全身を揺らしていた。
お尻の下では旦那様が硬くしているのがズボン越しでもはっきりわかる。
我慢せずに早く私の膣内に入れてくれればいいのに。
そんなことを考えていると、突然クリトリスを摘ままれた。
「んひぃっ♡」
軽く触れるだけのような摘まみ方だが、焦らされた身体は快感を何倍にも増幅して伝えてくる。
耐え切れずに軽く達してしまい、思いっきりお腹を突き出して仰け反る。
ぷしっと音を立てて潮が噴き出た。
すごく気持ちよかった。
だが旦那様はそれだけで許してくれず、膣内に指を差し込み、そのままガシガシと勢いよく動かしはじめる。
「んっ♡ぁあっ♡あな、たぁっ♡」
絞り出すように快感を乗せて息を吐く。
膣内では指がバラバラにお臍のほうの気持ちいいところを執拗に攻め立てている。
何本入っているのかなんてわかりはしない。
とにかく気持ちいいものが押し寄せてきている。
秘所は噴水のように断続的に潮を旦那様の手に吹きかけ続けている。
「ひっ♡ひゃっ♡これっ、すご♡だめっだめっ♡おかしくなるぅ♡」
「どうフゥリ。きもちいい?」
「わかん、にゃ♡いれすっ♡あたままっしろ♡きもちいっ♡」
頭の芯まで膣から送られてくる刺激で塗り潰されている。
ぼんやりとして、目の奥がチカチカして、口から意味のない言葉とも喘ぎ声ともわからないものが漏れ続ける。
ごりっと、一際強い刺激で私の中のものが全部溢れ出そうとしている。
耐えるだけの余力もない私はなされるがままにそれを受け入れた。
「やあっ♡イっ〜〜〜ッ♡♡♡」
思いっきり仰け反り、足先までピンと伸ばして快感に酔いしれる。
傍目から見ても絶頂を迎えているのは明らかなのだが、旦那様は指を止めてくれず、ずっと絶頂のまま更なる快感に晒されていく。
「んひゃぁぁっっ♡なんっ♡なんれぇっ♡イってるっ、イってるのにぃ♡」
「もっとイっていいよ」
「やらやらやらぁっ♡こわれちゃう、こわれるからぁっ♡」
膀胱の裏あたりを強く押されて、私は完全に決壊した。
「やぁあああ〜〜〜〜っっっ♡♡♡♡♡♡」
◇
「ごめんちょっとやりすぎた」
「むぅ、次からはちゃんと言ってくださいね」
「はい、善処します」
「やらないやつじゃないですかそれ」
旦那様は小さく舌を見せてウインクした。
まるで反省していない。
私の後始末を任せているわけだし、何よりも私に気持ちよくなってほしいという気持ちからきたものなのもわかっているので責める気は毛頭ないが、それでも頬を膨らませずにはいられなかった。
覚醒した私は旦那様の膝上で、その逞しい腕に抱きしめられながらぐったりとしていた。
気絶していたのはほんの数秒程度だったらしく、身体はまだ快感に震えていたし、床には噴いた潮が水溜まりとなっていた。
旦那様は私をベッドに寝かせると、水溜まりをタオルで拭き取り始めた。
それを眺めながらお股が濡れて冷たい、どれだけ出したんだ私、としょうもないことを考えるくらいの余裕はあった。
流石に拭いてもらうのは恥ずかしいので、自分で処理しようとベッドサイドにあるティッシュへと寝返りをうってうつ伏せになり手を伸ばすと、ギリギリだが届いた。
指先がティッシュに触れたと同時にお腹とベッドの間に手が滑り込んできて、そのまま抱きかかえられ、旦那様の膝上に後ろから抱っこされるような姿勢で座らされた。
「はいばんざーい」
言われるがままに腕を上げると、服を脱がされた。
下半身はすっぽんぽんだったので今更だが、上半身、特に胸が丸見えになると一気に恥ずかしさが増した。
「あ、あの、あなた?」
肩越しに旦那様に問いかけると、返事代わりに唇を奪われる。
口の中に集中したいがお尻の下にある硬くなっているモノがそれを邪魔してくる。
あれよあれよという間に口中を蹂躙されて、唇が離れた。
頭がぼーっとしている。
こんなのその気になるに決まってるではないか。
「あなた、そろそろください」
私が腰を浮かせると、旦那様はもぞもぞと動いてズボンと下着を膝まで下ろした。
視線を下に向けると私の両脚の間にグロテスクな肉の槍が見えて、思わず生唾を飲み込んでしまった。
週に何日かのペースで挿れられているし、少ないとはいえ舐めたことすらあるが慣れるものではない。
大きくなっていなければ小っちゃくてかわいいと思うのだが。
そんなモノが私の秘所に触れる。
「んっ♡」
反射的に声が出た。
期待で胸が早鐘を打つ。
「挿れるよ」
「はい来てください」
ぐちゅりと音がして、私を押し広げながら旦那様が突き進んできた。
半分くらい入ってきたところで耐えられずに浮かしていた腰を下ろしてしまい、奥まで一気に埋め尽くされた。
「あああっ♡」
自分の体重が丸ごと乗った挿入は肺の空気を追い出し、痛みと苦しさと快楽の混ざり合った刺激を与えてきた。
旦那様は私のお腹に腕を回して抱きしめながら、小刻みに腰を動かして浅く細かいピストンを繰り返してくる。
きつく抱きしめられているおかげで挿入されているお腹の中だけでなく背中全体で旦那様を感じられてとても心地いい。
なにより優しいピストンであまくあまーく高めていくのが、私好みですっごくいい。
ごちゅごちゅと激しい性欲に任せたピストンも嫌いではないのだが、受け入れる側としては結構疲れるし、何より腰にくるのだ。
「あっ、あっ♡あなた、これすきです。もっとぎゅっとしてください」
「わかったよ」
お腹に回されていた腕が胸の下くらいのところまで上がってきた。
私の思い違いでなければ、動きのどさくさに紛れて下から胸を触ってきている。
そんなことしなくても遠慮せずに触ればいいのに。
「あなた、おっぱい触りたいなら触っていいですよ?」
「バレてた?」
「バレバレですよ♡んっ♡」
こつんと最奥を叩かれる。
まったく悪戯好きな男の子である。
旦那様の手をとって乳房へと誘導する。
「揉みながら動かしていいですよ。流石にこの体勢だと吸いながらというのは無理ですけど」
「なら遠慮なく」
胸を下から覆い隠すように手が添えられてる。
手に力が籠って乳房が形を変えて、じんわりと快感が広がる。
「あん♡やっぱりおっぱい好きですね」
「好きな人のだよ。そりゃあ大好きに決まってるでしょ」
好きな人、と言われて顔が火がついたようにかっと熱くなる。
きっと真っ赤だろう。こんな顔旦那様に見せられない。背面座位で良かった。
「あっ♡んぅ♡あなた、あなたぁ」
「フゥリ、きもちいい?」
ぐりぐりと奥に先っぽを擦りつけられる。
「はふぅ♡いいです、これすっごくいいです。もっと♡もっと♡」
「わかったよ」
とんとん。
ぐりぐり。
ふにふに。
まったりとしつつも、確実に絶頂に向かっていくのが自分でもわかる。
クリトリスなどの刺激の強いところどころか、硬くなった乳首すらは全く触ってこないあたり旦那様もゆっくりと気持ちよくなってほしいと思っているのだろうか。
「はっはっはぁ♡あなた、あなたっ。私そろそろイきそう、です」
「んっ、フゥリ、我慢せずにイっていいからね」
「わかりました♡」
私も少しだけ腰を動かす。
すると一気に快感が溢れてきて、全身に染みわたっていった。
「ひっ、ひゃぁ♡くる、くるっ♡きちゃう♡」
大きく息を吸い込んで、お腹に手を当てる。
たぶんこのあたりだろうかと目安をつけてお腹を強く押すと、きゅんと気持ちいいもので頭が溢れて、達した。
「〜〜〜〜〜っっっ♡♡♡」
声を噛み殺して、身体を丸めて、絶頂を味わう。
無限にも思えるほど引き延ばされた時間が続いて、ゆっくりゆっくりと快感が引いていく。
波が引いて、脱力しながら寄りかかると旦那様はぎゅっと抱きしめてくれた。
「よかった?」
その問いに私は小さく頷いた。
◇
「それでですね、旦那様ったら朝までじーっくりたーっぷりやさしくきもちよくしてくれたんですよ。いっぱいおっぱいも吸ってくれましたしね」
きゃー、と甲高い声が上がる。
話している内容はこの間の一晩のことである。
家に友人が遊びに来て色々と話をしているうちに、そういえばということで話すことになったのだ。
結局あの日は寝ずに丸々一晩イチャイチャとしていた。
おっぱいを吸わせたり、無限なでなでしてもらったり、頑張ってるねと褒めて貰ったり。
朝になってシャワーを浴びる段階になって、ようやく部屋の前で体育座りで待っていたオオヒメ様に気が付くくらい夢中だった。
オオヒメ様からは随分と夢中だったようですね、と感想なのか嫌味なのかわからない一言を貰っただけだった。
旦那様は更に何か言われたようだが内容まではわからなかった。
胸を撫で下ろしていたあたり悪い内容ではないと思う。
「よかった? ねえよかった?」
「ええ、至福の一晩でしたよ」
「いいなー、いいなー。私も先輩にシてもらおうかな」
ずず、と目の前の少女が飲み物をストローで吸い上げる。
ぷくっと膨らませた頬を見て、私は思い出した。
「そういえば、喧嘩はしませんでしたね」
すっかり忘れていたが、それが発端だったことをようやく思い出した。
なんでオオヒメ様と喧嘩ごっこしようなんて思ったのだろうか、当時の私は。
自分のことなのにさっぱりわからない。
「まあ喧嘩なんてしないに越したことはないですよ。時々は必要だと思うけど」
「そういうものですか」
「そういうものだよフゥリちゃん」
何時になるかわからないけど、喧嘩したときには楽しみにしておこうと心の奥底にしまい込みながら私はティーカップに口をつけた。
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