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 情事の後、小夜丸は自分の様々な痕が残る体をタオルで拭きながら隣のマスカレーナのことを見る。彼女はピロートークも程々に、ベッドから両足を下ろしてペットボトルの水を飲んでいた。
 あの水を飲み終わったら帰っちゃんだな、と思えば小夜丸は途端に寂しくなってきてしまう。
「……私達ってどういう関係なんだろう?」
 そして、小夜丸はそうぽつりとつぶやいてしまう。恋人ではないだろう、自分達は追う者と追われる者だ。しかし、こうやって月のない夜には肌を重ねている。一体何でだろう。
「え?セフレじゃないの?」
 ところが、小夜丸のそんな葛藤をよそにマスカレーナはあっけからんと言い放ってしまう。
 それを聞いた小夜丸は、ポカンとし、やがて恥ずかしいようなムカつくような複雑な表情へと変わっていく。
「セフレ……セフレ……。セフレですか!?」
「……?」
 百面相をして悲鳴を上げる小夜丸の一方、マスカレーナは首を傾げながら帰り支度をする。小夜丸につけられた引っ掻き傷がスーツを着る時に少し痛み、その痛みでもしかしてと顔をあげる。
「恋人のつもりだったの〜?」
 心の底から意地悪な顔をしてマスカレーナがそう言うと、小夜丸は顔をみるみる赤くさせ、手元にあった枕を手に取り、それを本気で投擲する。
「違う!か、帰れ!このすけこまし!」
「むべッ!!」
 枕を顔面に受けたマスカレーナはカエルが潰れたような声をあげ、投げられた枕がずり落ちるとそこには青筋を立てた彼女がいた。
「うるせー!お前に言われなくても帰るわ!」
 そして、マスカレーナはそう怒鳴ると、踵を返して寝室の窓から飛んでいってしまうのだった。

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