作者:
名無し
灰流うららには大きな悩みが一つある。
時に人を化かして揶揄うように笑う彼女にもどうしても勝てない存在が一つあるのだ。
その存在が何かと言えば、少々意外に思われるかもしれないが――『手』なのである。
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「どうしてこんな手に勝てないのかなぁ……」
今日も今日とて、墓地の一角でその手と相対したうららは訝しむようにそれを見つめる。
彼女がじろじろと観察しているのは地中から生えた誰の物とも知れない緑色の手、通称『墓穴の指名者』と呼ばれる手だ。
うららはその手に指さされると、どこかに行かなきゃという気持ちになってしまうのだ。
「……そうだ!」
うららは名案を閃いて口元を楽しそうに緩める。
単純明快、逃げずに立ち向かって苦手意識を克服すればいいのだ。
いままでは何故だか逃げてしまっていたけれども、相手は所詮手だけの存在。さいきょーむてきの妖怪少女と呼ばれる自分が負ける道理なんてあるはずがない。
彼女がずんずんと歩み寄って来ると、指名者は驚いたようにその手をビクッと震わせた。
「ふふ〜ん、最初からこうすればよかったんだねぇ。何の手かは分からないけど、手だけなんだもん。うららに勝てるはずなんてないよね。やぁい、ざぁこ♥ ざぁこ♥」
うららは数え切れないほどの敗北をいま乗り越えたと確信し、ついにニヤニヤと笑いながら煽り始める。
そして一通り煽って満足し彼女が油断したその瞬間だった。
指名者の手がピカァと光りながらかつてないほど伸び、うららの浴衣の胸元をはだけさせた。
「ひゃん……な、なに……っっ、んっ……や……」
その勢いのまま、手は伸び切った爪でうららの柔らかな乳首をカリカリと弄り始める。
妖怪少女として日夜活躍する彼女も、その身体はあくまで少女でしかない。
経験したことがない痺れに瞬く呑まれ、堪えるようにその小さな身体を震わせることしかできなかった。
「なぁに、これ……ぁたまのなかがびりびりってぇ……ん、つつ……、ぁん♡ っあ、や……、もっと……もっとぉ……♡」
うららの口から漏れる声に熱が帯び始める頃には、弄られた乳首はぷっくりと膨らんで屹立していた。
彼女が無意識に反対側の胸を差し出すように突き出すと、手は何故か地中に戻って行く。
うららが予想もしなかった事態にポカンと呆けていると、指名者の手は指を立てて数度左右に振った。
「な、なぁっ……むぅ……」
意味を察したうららの頬はぷくっと膨らむが、屹立した乳首がジンジンと疼いて全身も燃えるように熱い。
己の矜持と初めて教え込まれた快楽のどちらを取るべきか、それはこれ以上ないくらいに明白だった。
「手さん、ごめんなさい。ざこざこなのはうららの方でした」
うららは胸元をはたげさせたまま、指名者に献上するように薄い胸元をツンと突き出す。
その頬は熱に酔いしれるかのように真っ赤に染まり、吐息にも溢れ出ているようだった。
「謝るからざこざこうららのおっぱいをもっとカリカリしてください♡」
それを聞いた指名者の手はまたバッと伸び、まだ弄られてないうららの乳首に襲いかかった。
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「うららちゃん、話って何かしら?」
「あの手のことだよ、わらしちゃん」
それからしばらく経って、うららが墓地に連れてきたのは同じ妖怪少女の屋敷わらしである。
ゴスロリ服を淑やかに着こなす彼女が溜め息を漏らすと、豊かなロングヘアが揺れた。
「墓穴の指名者ね。あの手がどうしたの?」
「へぇ、あの手さん。そういう名前なんだねぇ……」
「……?」
わらしが怪訝に思っていると、先導していたうららが不意に立ち止まる。
目的の場所に着いたのかしらとわらしが辺りを探るように見回していると、いつの間にか背後に回り込んでいたうららがわらしのスカートをまるで誰かに見せつけるようにグイっと持ち上げた。
下半身を露わにさせられ、わらしの頬は一気に真っ赤に染めあげられる。
「ひゃっ……う、うららちゃん……っ!?」
「つまりはこういうことなんだよ、わらしちゃん!」
うららの言葉が合図だったのか、地中から墓穴の指名者の手がバッと現れてわらしの下半身に伸びる。
レースのあしらわれた真っ黒な薄いパンティを横にずらし、そのまま彼女の秘裂をぐいっと押し広げながら中に押し入っていく。
「えっ……うそ……っ、や……、二本も……っっ、ふと……っ、あん♡」
「うららがおっぱいカリカリでおとなのれでぃにしてもらったから、みんなもそうしてあげようと思って連れてきたのに。わらしちゃんってばおっとなぁ♥♥」
うららがくふふと楽しそうに笑えば、わらしはイヤイヤと否定するように首を横に振る。
「や……っ、ち、違うの……、うららちゃん……これは……っっあん♡♡」
しかし、涙の溜まった瞳、熱を帯びた吐息、上気した頬、何よりも指名者の二本の指をグッと咥え込んだ彼女の秘裂がその昂りを雄弁に物語っていた。
大人の階段を上ったと思ったうららだったが、上には上がいるのだなぁと思いながらわらしちゃんの痴態を間近で見守り続ける。
「ひゃ……ゃ、あ……んっ、や……ダメ、ダメっ……、うららちゃんが見てるのにぃ……っぅ、つつ、んんううぅぅぅ〜〜〜♡♡」
わらしちゃんは一段高い嬌声を上げながら、華奢な身体をビクビクッと大きく震わせた。
その口からは熱を帯びた吐息が零れ、肩がゆっくりと上下する。
いつもは淑やかな眼差しをトロンと蕩けさせた彼女を見て、うららちゃんは思った。
(みんなのえっちなおかおが見てみたい……!)
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「……何かおかしい」
妖怪少女たちの切り札とも囁かれる浮幽さくらが気が付いたときには、灰流うらら、屋敷わらし、幽鬼うさぎ、朔夜しぐれ、儚無みずき――仲間たち全員が墓地に出向いて帰って来なくなっていた。
それはある意味でいつも通りと言えばそうなのだが、今日は何かが違うと彼女の直感が囁いている。
「わたしも行くべきか……」
ボロボロの浴衣姿の少女はトレードマークの大きな鎌を手に取る。
調子を確かめるようにブンっと振り回せば、二つに結った髪もそれに合わせて大きく空を切った。
さくらは満足そうに一度頷くと、仲間たちが消えた墓地へと向かう。
彼女自身も時折訪れる墓地はいつもと同じようにシンと刺すような冷気を漂わせていたが、今日は風に乗って楽しそうな声が遠くの方から微かに聞こえてきた。
さくらが誘われるように声のする方に向かえば、彼女の仲間たち五人が何かを囲うようにしながら話している。
しかし、彼女たちは何故だか各々衣装をはだけさせたままだった。
「皆、一体何があったの……?」
さくらが呆然と立ち尽くしていると、彼女がやって来たことに気づいたうさぎ、しぐれ、みずきの三人が歩み寄って来てさくらの身体を掴むようにして押さえた。
そして鎌はさりげなく没収しながら、『それ』に対して背を向けさせる。
「……さくら」
「さくらさん」
「さくらちゃん♡」
三人各々の熱を帯びた囁きに乗るように、地中から指名者の手がバッと現れてさくらの着物の内に入り込む。
「っっ……これって指名者の……、どうしてヌルっと……っぅう、ひゃぅ」
妖怪少女たちの愛液に塗れた手がさくらの小ぶりな尻をさわさわと撫で回す。
その拍子に浴衣の裾がめくれ、撫でられた軌跡がさくらの病的なまでに白い肌を汚している様が露わになる。
続いて指名者の指が彼女の尻の割れ目をなぞれば、さくらの喉から引き攣ったような声が漏れる。
「だめ……っ、そこは指が入る場所じゃぁ……っっっ、っア♡」
さくらの後ろの穴が指名者の指を受け入れたのと同時に、彼女の口からは嬌声が漏れてか細い身体が折れんばかりに弓なり状に反る。
未知なる異物感と快楽が爆発するように溢れ、さくらはもう何がなんだか分からなかった。
少女の身体が快楽の波に屈してしまえば、さくらの口からはいままで聞いたことがないような激しい嬌声が漏れ始める。
「あ゛あっ♡ あっ♡ 指、ふと……っ♡ っあ、あぁっ、あ゛っ♡♡」
さくらを押さえる三人の少女たちは彼女の乱れる姿に目を奪われ、思わず息を呑む。
残るうららとわらしも熱に酔った眼差しを浮かべながら、その様を見守っていた。
「さくらちゃんも完敗かぁ。これにて手さんによる妖怪少女はーれむの完成だ♥」
「うららちゃん、あんなにも気持ちよくしてくれたのよ? この際、勝ち負けなんてどうでもよくないかしら?」
「……それもそっか。わらしちゃんの言う通りだねっ♥」
うららは得心したようにあっけらかんと答え、満足そうに笑った。
その日から妖怪少女たちが墓穴の指名者に慰めてもらうのを求めて墓地に足しげく通うようになったとか。