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日露戦争をめぐる神話伝説
都市伝説系 「マカロフ提督は自らの死を知っていた」
ステパン・マカロフ (1849-1904)は、ロシア帝国海軍の中将、司令官、海洋学者、ロシア科学アカデミー会員で、大尉として露土戦争（1877年 - 1878年）に従軍し、日露戦争では再び中将として従軍し、旅順防衛に任命され、1904年4月13日、日本軍に待ち伏せされていた駆逐艦の救援に小艦隊を率いた。続く戦闘で、旗艦ペトロパブロフスクが機雷に触れ、弾薬庫が爆発し、マカロフは戦死した。
この戦死について、都市伝説的に語られることが3点ある。まずは予言から...
次は予言的な講演であって、予言そのものではないエピソード：
そして、なんとなく「遺書」っぽくも読める家族への最後の手紙...
以上のうち、カード予言だけがそれっぽいというところ。あまり神秘や呪術っぽいものでもない。一方...
民話系
エヴェンキ(Эвенки, Evenki）は、Evenkとも呼ばれ、かつてはツングース人と呼ばれていた北アジアのツングース系民族である。ロシアでは、エヴェンキはロシア北部の先住民族の一つとされており、人口は38,396人（2010年国勢調査）である。中国では、エヴェンキは中華人民共和国が公式に認める56民族の一つであり、人口は34,617人（2020年国勢調査）である(2)。モンゴルには537人のエヴェンキがおり（2015年国勢調査）、モンゴル語ではハムニガンと呼ばれている(5)。
このエヴェンキの神話に登場する神のひとりが「セヴェキ」：
齋藤(2009)によれば、このセヴェキが関与する戦争民話として、日露戦争時に「セヴェキが老人を日本軍から救う」というのがある：
日露戦争をめぐる神話伝説 
都市伝説系 「マカロフ提督は自らの死を知っていた」
ステパン・マカロフ (1849-1904)は、ロシア帝国海軍の中将、司令官、海洋学者、ロシア科学アカデミー会員で、大尉として露土戦争（1877年 - 1878年）に従軍し、日露戦争では再び中将として従軍し、旅順防衛に任命され、1904年4月13日、日本軍に待ち伏せされていた駆逐艦の救援に小艦隊を率いた。続く戦闘で、旗艦ペトロパブロフスクが機雷に触れ、弾薬庫が爆発し、マカロフは戦死した。
この戦死について、都市伝説的に語られることが3点ある。まずは予言から...
ケイト・セルフリッジ嬢のサンフランシスコにおける予言
ずんぐりとした体格で、やや寡黙で、実年齢より老けて見えたマカロフは、沿海地方総督V.P.カザケヴィチ少将の寵愛を受け、シベリア艦隊に乗せられ、数々の刺激的な航海に派遣された。カザケヴィチ少将の命令により、ステパン・マカロフは旗艦士官候補生に任命され、ロシア、アメリカ、そして日本の太平洋沿岸の多くの主要港を訪問した。
1863年から1864年にかけてのアメリカ南北戦争の真っ只中、アンドレイ・アレクサンドロヴィチ・ポポフ少将率いるロシア太平洋艦隊がサンフランシスコに駐留していたことは知られている。北軍を支援し、旗印を示すためにカリフォルニアに到着したロシア水兵の中には、若き海軍士官候補生ステパン・マカロフがいた。マカロフは、クリッパー「ボガティル」の乗組員と共にサンフランシスコで数ヶ月を過ごし、船はメア島の埠頭で修理を受けた。
14歳の士官候補生は、自身にとっても思いがけず、20歳のケイト・セルフリッジ嬢に恋をし、日記に次のように記した。「サンフランシスコでセルフリッジ一家に出会い、探し求めていたすべてを見つけた。彼らはとても優しい家族で、素晴らしい規則と子供のような慎み深さを持っていた。そして、この家族では皆が私を家族のように愛し、私が訪ねると喜んでくれ、私が帰る時には寂しがってくれた。言うまでもなく、14歳にして、私が切望していたこのような素晴らしい社会に身を置き、私は心から恋し、それは永遠に私の記憶に残るだろう。」
クリッパー船上で、若い士官候補生の恋心は見過ごされず、士官たちは彼をからかい始めたが、ステパンは黙っていた。実年齢以上に大人びた彼は、からかい文句など気にも留めず、自由時間はすべて慣れ親しんだ家で過ごした。こうした訪問の表向きの理由は、マカロフの英語への情熱だった。ケイトは縫い物や編み物をするために座り、ステパンは彼女が選んだ本を傍らに置き、声に出して読んで聞かせた。それらは主に恋愛小説で、ステパンが微笑みながら、わざと恋愛場面から選んだ難しい文章の解釈を尋ねると、彼は顔を赤らめた。ケイトはステパンの知り合いの将校の運勢を占うこともあれば、一度はステパン自身の運命を占ってあげることもあった。カードを放り投げると、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「ああ、あなたはネルソン提督のように有名な海軍司令官になる運命なのね。これから素晴らしいキャリアが待っていて、たくさんの勲章や賞を受けるわ。王族からも尊敬されるわよ！」
さらに数枚のカードをめくった後、ケイトは眉をひそめた。
「なんてこと、これは違う！」そして、カードを混ぜてしまった。
ステパンは懇願した。
「それで、この後どうなるんだ？ 教えてください…」
何度も説得された末、ケイトは折れた。
「わかったわ。あなたは世界最大の艦隊を指揮し、その旗艦に乗って深淵へと旅立つのよ。」
彼女の顔に再び笑みが浮かんだ。
「分かってるでしょ、これはただのカードよ！ 真に受けちゃダメよ。」
ステパンは彼女の言葉を遮り、異議を唱えた。
「船乗りにとって、船と共に滅びるなんて、最善の結末だ。」
驚くべきことに、40年後、危険な長旅、軍事遠征、そして研究を経て、この予言はまさに現実のものとなった。
[ "К 120-летию Русско-японской войны: тайна гибели адмирала Макарова" (2024/10/04) on Русская Жизнь ]
次は予言的な講演であって、予言そのものではないエピソード：
ステパン・マカロフの予言的な講演海軍艦艇に関して根本的な対策がワールドワイドにできていなかったということの結果としての戦死でもあり、あくまもで「予言みたいになってしまったレクチャー」でしかない。
1904年3月31日の悲劇は、ステパン・オーシポヴィチ・マカロフが10年前にサンクトペテルブルクで行った公開講演で述べた悲劇と酷似していた。戦艦の生存率の低さを示す例として、マカロフはイギリス地中海艦隊の旗艦である戦艦ヴィクトリアの沈没を挙げた。この事故も海岸近くで、艦隊全体が見守る中で、多数の死傷者を出した。この事故もイギリス最高の提督、ジョージ・トライオンが指揮していた。
1904年の新聞には、この講演に関する記事が掲載されていた。「トライオンのようなベテラン提督が、なぜ自身とこれほど多くの部下を、これほど悲惨で致命的な死に追いやったのか」と、サンクトペテルブルクの新聞「ヴェドモスチ」は問いかけた。これほど巨大な船が、どうしてこれほど急速に沈没してしまったのか？ 講師はプールに浮かべた船の模型を使い、ビクトリア号が突然船首から急降下し、転覆して海底に沈んでいく様子を実演した。死は一瞬だった。
[ Наталья Островская: "Адмирал Макаров. Лекция о своей смерти", Родина - Федеральный выпуск: ��7, 2019 ]
そして、なんとなく「遺書」っぽくも読める家族への最後の手紙...
最後の手紙戦死してなければ、それまでのことという文面である。
その時、「運命、宿命論、不吉な兆候…」という言葉が初めて聞こえた。まるでペトロパブロフスク号の悲劇、そして日露戦争全体の結末が、誰かによって予め定められていたかのようだった。
…旅順港。戦艦の上。司令官室。3月31日の早朝。マカロフは息子に宛てた手紙の中でこう書いている。「ヴァディム、ここでは残酷な戦争が繰り広げられている。祖国にとって、国境を越えても、非常に危険な状況だ。いや、敵の一時的な優勢…が心配なわけではない。ロシア艦隊は、ご存知の通り、さらに大きな奇跡を起こしてきた。だが、私は…私たち、そして私自身も、妨害されていると感じている。東郷提督（東郷平八郎、連合艦隊司令官 - 作者）のせいではない。いや、誰かが横から、背後から忍び寄ってくるような感じだ。誰なのか？分からない。私の心はかつて経験したことのないほど激しく揺れ動いている…そんな気持ちだ…」
最後に、まるで別れを告げるようにこう書いている。「息子よ、抱きしめよ。一生懸命勉強し、母と妹を助けなさい。神を畏れ、皇帝に仕えなさい。敬具、マカロフ・シニア」
[ Наталья Островская: "Адмирал Макаров. Лекция о своей смерти", Родина - Федеральный выпуск: ��7, 2019 ]
以上のうち、カード予言だけがそれっぽいというところ。あまり神秘や呪術っぽいものでもない。一方...
民話系
エヴェンキ(Эвенки, Evenki）は、Evenkとも呼ばれ、かつてはツングース人と呼ばれていた北アジアのツングース系民族である。ロシアでは、エヴェンキはロシア北部の先住民族の一つとされており、人口は38,396人（2010年国勢調査）である。中国では、エヴェンキは中華人民共和国が公式に認める56民族の一つであり、人口は34,617人（2020年国勢調査）である(2)。モンゴルには537人のエヴェンキがおり（2015年国勢調査）、モンゴル語ではハムニガンと呼ばれている(5)。
このエヴェンキの神話に登場する神のひとりが「セヴェキ」：
According to traditional Evenk ideas, the Universe consists of three worlds: the upper (Ugu Buga), the middle (Doolin Buga), the lower (Hergu Buga). The upper world was located at sunrise, the lower at sunset. The upper and lower worlds are inaccessible to ordinary people and are inhabited by spirit gods. One of the main deities is Seveki spirit, whose function is the creator of all living things. The spirit of Enekan Buga monitors the life of people and animals, periodically visiting the earth. His assistant, Enekan Togo, is a spirit of fire living in a home. Through fire, the Evenki address spirits. In traditional Evenk beliefs, there is a prototype of the “devil”, the evil spirit of Kharga or Avakha (Avai), the owner of the lower earth, or dungeons. The Evenki animate not only all living things, but also all natural phenomena, for example, thunder and lightning are called “agdy” (Vasilevich, 1969). Another important deity of the Evenki is the spirit of the hunt. Each family has its own protective charms and amulets to save the livestock of deer and hunting luck, which are called “Sevekichan” and “Barelak”. One significant feature of the Evenki is that the supreme deities can be both male gods and female goddesses
伝統的なエヴェンキの思想によれば、宇宙は三つの世界、すなわち上界（ウグ・ブガ）、中界（ドゥーリン・ブガ）、下界（ヘルグ・ブガ）から成り立っている。上界は日の出の時間帯、下界は日没の時間帯に位置していた。上界と下界は一般人には近づくことができず、精霊神たちが棲みついている。主要神の一つはセヴェキ精霊 (Seveki spirit)で、その役割はすべての生物の創造である。エネカン・ブガの精霊は人間や動物の生活を見守り、定期的に地上を訪れる。彼の助手であるエネカン・トーゴは、家の中に住む火の精霊である。エヴェンキは火を通して精霊と対話する。伝統的なエヴェンキの信仰には、「悪魔」の原型となる、下界、つまり地下牢の主であるカルガまたはアヴァハ（アヴァイ）の悪霊がいる。エヴェンキはすべての生物だけでなく、すべての自然現象にも生命を与える。例えば、雷は「アグディ」と呼ばれる（Vasilevich, 1969）。エヴェンキ族にとってもう一つの重要な神は、狩猟の精霊である。各家庭には、家畜の鹿狩りや狩猟の幸運を守るための「セヴェキチャン」と「バレラク」と呼ばれる独自のお守りがある。エヴェンキ族の重要な特徴の一つは、最高神が男神と女神の両方であることである。
[ Zamaraev (2025) ]
齋藤(2009)によれば、このセヴェキが関与する戦争民話として、日露戦争時に「セヴェキが老人を日本軍から救う」というのがある：
日露戦争 1904-1905年日露戦争に絡む民話系の俗信等はこれ以外、目立ったものはないようである。
セヴェキ〔タイガの主〕が老人を日本軍から救った話
百年ほど前のこと、ポロナイスクにひとりの老人が住んでいた。この老人は背が低くて、毛がちぢれていた。ツングースにはちぢれ毛の人はめったにいないかイが、彼はちぢれ毛だった。〈ちぢれっ毛〉というあた名までついていた。
この老人はロシア人将校たちとつきあいがあって、ロシア語がよくできた。老人が将校たちにトナカイの肉を届けてやると、将校たちの方は老人に小麦粉や缶詰をくれた。ロシア人将校たちと老人はまあまあ、いい関係にあった。
そんなあるとき、将校たちが老人にこう告げた。
「おしまいだ、爺さん。日本人が勝った。すぐにやつらがここへやって来る。だから、おまえさんも自分の身内を連れて、ここを立ち去るんだ」
ちょうど1905年のことだった。ところが、日本と戦争していることをこの老人が知るよしもない。だけど、ロシア人将校たちは彼とずっといい関係にあったので、老人は彼らの言葉を信じた。自分の家族のところへとんでいって、
「ロシア人将校がわしらに北へ行けと言っている。間もなくここへ日本人どもがやって来る」と言った。
ところがだれ一人老人の言うことをきかす、笑っているばかりだった。みんなは、「日本人がここでなにをするっていうんだ」と思っていた。結局、老人はだれも説き伏せることができなかった。
老人が焚き火のかたわらに座ってタ食を食べていたとき、ふいにトナカイの群が近くを通っていった。おばあさんもそれに気づき、トナカイに向かって、
「あっちへ行け、あっちへ行け!」
と叫んで追い払いにかかった。そのあとおばあさんは自分の息子たちに、
「みんな、はやくこのトナカイどもをここから追い払っておくれ。これはサタンが送ってきたんだよ」
と言った。老人は考えたあげく、こう言った。
「いいや、ばあさん、トナカイを送ってきたのはサタンではない。セヴェキ[タイガの主]が自分のトナカイを日本人たちのところから追ってきたのだ」
老人はすばやく自分の身内を集め、自分のトナカイの群を率いて速やかに北へ移動した。(中略)こうして老人はセヴェキの助けで、身内を日本人から救ったのだ。だから、彼らは現在でも他の人たちとは違っている。だって、日本の兵隊たちは日本人の女を連れてきていなかったから、ツングースの女を相手に遊んだから・・・。
Березницкий С. В. Этнические компоненты верований и ритуалов коренных народов амура-сахатТслсоro региона. Владивосток. 2003 (ベレズニツキー、S.V.、「アムール・サハト地方先住民の信仰と儀礼の民族的構成要素」ウラジオストク、2003)
[斎藤君子: "悪魔には２本の蠟燭を立てよ", 三弥井書店, 2009, pp.240-241]
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