冷戦時代の核実験や民間防衛をめぐるカルチャー

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BBC 1984年 "Threads"


Threads (1984)
監督Mick Jackson
制作Mick Jackson, Graham Massey, John Purdie, Peter Wolfes
脚本Barry Hines
出演Karen Meagher, Reece Dinsdale 他
配信BBC
放送日1984/09/23
放送時間112分27秒
予算推定25〜35万ポンド

Threadsの企画・制作は、BBC総局長Alasdair Milneが1965年のBBC作品"The War Game"を見たことから始まった。このWar Gameは制作当時、Wilson政権の圧力により、BBCでは放映されず、一部の映画館で公開された。監督に選ばれたMick Jacksonは、核戦争の影響を扱った1982年のBBC QED A Guide to Armageddonを監督していた。

A Guide to Armageddonが核攻撃そのものと2週間後までの生存可能性を扱ったのに対して、このThreadsは、核戦争に間近に迫ったときの民間防衛体制や、核戦争2週間後以降の食料不足や、農業再建の困難さなど幅広く取り扱っている。そのため、War Gameと同様に、核の飽和攻撃を受けそうなロンドンを舞台としていない。

舞台となったのは、非核宣言をしていたSheffield市で、一番近い軍事拠点 RAF Finningley(現在は廃止され、民間空港として再出発)から約30km離れている。
基礎として参照された文献


Kevin Hall 2013によれば、Threadsは、以下の3つの本を設定の基礎としている。
  • Stan Openshaw, Philip Steadman and Owen Greene: "Doomsday. Britain after a nuclear attack", Oxford. Blackwell. 1983
    英国への核攻撃規模の想定(213Mt)とその国民への影響推定をした研究。
  • Duncan Campbell:"War Plan UK. The truth about civil defence in Britain", London. Burnett. 1982
    冷戦時代の英国の民間防衛体制について最も権威ある本で、民間防衛についての政府の混乱・誤管理・ムダと、国民への欺瞞について記述している。ThreadsのSheffield市対策本部は、これに基づいて設定された。
  • Magnus Clarke:"The nuclear destruction of Britain", London. Croom Helm. 1982
    想定187Mtの核攻撃を受けた英国への社会的・物理的・心理的影響を研究したもの。Threads後半の、攻撃後の状況は、この本に基づく。
また、核の冬及び紫外線の夏の推移はCarl Saganらによる論文に基づいている。
なお、1982年に英国内務省は、地方対策本部の机上演習を秘密裡に実施しており、ThreadsのプロデューサーMick Jacksonは見学を申請したが、却下されている。また、1980年に英国内務省及び国防省が実施した核攻撃机上及び野外演習Square Legの想定も参考としている。
核の応酬までの推移

核の応酬までの推移は、基本的にはBBCの報道という形で提示される
----米国の支援を受けたと称するイランでのクーデターに対応し、ソ連は、シャー支持体制の復活を阻止すべく、イラン北部を占領
5/08ソ連が南部油田地帯へ到達するのを阻止すべく、米国はイランへ部隊派遣を示唆。
5/11ペルシャ湾で原子力潜水艦ロサンジェルス行方不明の噂の広まりから、インド洋の米国海軍が警戒態勢に。
5/12オマーン湾で、ソ連巡洋戦艦キーロフと米国ミサイル駆逐艦キャラハンが衝突し、キーロフにおおきな損害。米国とイスラエルの調査と救助から、行方不明のロサンジェルスの破片とオイルを発見。これに関して、米国大統領はソ連に、人類に計算外の帰結をもたらす武力対決の可能性を警告。
5/17米国は、緊急展開部隊をイラン西部イスファハンに派遣し、ソ連がさらに南下するに対する抑止力とした。これを支援すべく、米国はB52爆撃機隊とAWACS早期警戒機をトルコの米軍基地に派遣。これに対抗して、ソ連はマシュハドに核弾頭を輸送。
5/20米国は5/22正午にイランからの同時撤退を提案。英国は、東ドイツでのワルシャワ条約機構軍の部隊増強に対応して、ヨーロッパに部隊派遣。
5/22ソ連は米国の最後通告を無視。期限の1時間後に、米国は通常兵器で、ソ連軍マシュハド基地をB52爆撃機で攻撃。ソ連は基地防衛に、核弾頭を搭載した地対空ミサイルを使用。米国のB52が多数撃墜された。米国が戦域核兵器で、ソ連軍基地を破壊して、戦闘は終了。
5/23米国海軍とソ連海軍の間で戦闘開始。
5/24東ドイツで暴動が発生。ソ連は西ベルリンとの交通を遮断し、ベルリン回廊を占領するNATO軍にその放棄を要求。米国空母キティホークがペルシャ湾で撃沈。米国はキューバを封鎖。米国主要都市での反ソ暴動で、ソ連領事館に甚大な被害。
5/25マシュハドで、50〜100キロトン級の核の応酬が起き、パキスタン西部で、放射性降下物からの避難開始。
5/2608:35GMTに、ソ連は北海上空で核爆発を起こし、電磁パルスで、英国及び北西ヨーロッパの通信網にダメージを与える。08:37GTに最初の核攻撃がNATOの標的を命中。最終的に、東西は3000メガトンの核の応酬を行い、英国には210メガトンが落ちた。

また、危機迫ることを示すために、72時間以内に核攻撃を受ける可能性がある場合に放送されることになっていたProtect and Survive(テレビ版及びラジオ版)が、挿入されている

Threads ロケーション

核攻撃の設定

まずは、第一撃の爆心。これについて、Sheffieldの対策本部のホワイトボードに、核攻撃の爆心と規模を記入するシーンがある。

[Threads (0:48:57)]

「NAT. GRID = SK6698, Yield=150KT」とあるのが位置と規模。この"NAT. GRID"は英国の位置座標National Gridのことで、地図で見ると...


ここは、2005年4月28日に民間空港Robin Hood Airport Doncaster Sheffieldとして再スタートしているが、それ以前は英国空軍基地(RAF Finningley)だった。当時の姿は"Threads"の冒頭にも登場している。

舞台であるSheffieldとRAF Finningleyの距離は約30kmある。Sheffieldでは火災・火傷・建物への損害などはほとんどない。また、キノコ雲は高さ13km程度まで立ち昇るので、それなりに大きく見える。

[Threads (0:49:53)]


第2撃は地図上に「? 1Mt」と書かれている。位置はSheffield市役所から北東4kmあたり:

[Threads (0:59:00)]


市庁舎地上部はほぼ全壊状態となる距離であり、地下の描写から地上部が崩壊しているらしいことが示されている。

もう少し詳細にみると...
被害

'Threads' 1984 - Location Guideによれば...
Jimmy Kempの一家はこのあたりで、丘の影になっているものの、爆心からの距離は市庁舎と同程度。

[Google Street View]

[Threads (0:31:30)]

[Treads (0:50:25)]
Ruth Beckettの一家はこのあたりで、市庁舎から、さらに2kmほど離れている。

[Google Street View]

[Threads (0:33:08)]

[Threads (1:00:35)]

これらの位置関係からすると、対策本部の知りえた情報という形で提示される規模「? 1Mt」だと、Jimmy Kemp一家はもとより、Ruth Beckett一家の被害も小さすぎるかもしれない。

その他

同じく、 'Threads' 1984 - Location Guideによれば.Jimmy Kempと友人が飲んでいたパブはNottingham Houseであるらしい


その他のロケーションは、Kevin Hall氏によるThreads ロケーションマップ参照。








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