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Popular Scienceが1961年12月号で、核シェルターについて解説している。
Popular Scienceが1961年12月号で、核シェルターについて解説している。
Martin Mann: "核シェルターについての明白な事実"
核シェルターを家族のために建設した人々は、狂っていると思われたくなくて、そのことを秘密にすることが多い。突如、彼らは街区の有名人になる。原爆戦争の脅威に対する安全対策は、口やかましい神経質なものではなく、賞賛に値する慎重さであることが明らかになった。
全米で、人々はコンクリートブロックを地下室に運び込み、裏庭に穴を掘り、当局に助言を強く求めている。シェルター事業は25メガトン爆発にように大ブームだ。
しかし、憂慮すべきは、多くのシェルター購入者も建設者も、自分が何をしているかわかっていないことだ。彼らは、起きそうにもない危険と、少しだけリアルな危険に集中している。多くの場合、不適切な防護措置にお金をかけている。購入者の中には、意味のないギミックを法外な価格で売る詐欺師に騙されている者もいる。
放射性降下物は、奇妙で、これまでにない危険である。誰も、そのすべてを知っているわけではない。しかし、この見えない災厄から自分と家族を守るために、できることがある。今日の不確実な世界で、やらねばならないかもしれないことだ。 ~^ ~ これは、米国政府民間防衛局の協力のもで得られた、知らなければならない、明白な事実である。
これらの努力の目的には何か? シェルターがあろうが、なかろうか、いずれにせよ、水爆攻撃で、みんな死んでしまうのではないか?
終末機械は未だ発明されていない。水爆による死者数は、おそるべきものだが、ちゃんと建設されたシェルターなら、重大破壊領域の外側では、ほぼ全員が生き残れる。シェルターがなければ、多くの人々、おそらく数百万・数千万人が放射性降下物で死亡する。
防空壕と核シェルターの違いは何か?
第2次世界大戦スタイルの防空壕は爆発の爆風と落下する破片から身を守ってくれる。核シェルターは致死性の放射線から身を守ってくれる。3フィート近いに埋められた波形鋼板のシェルターなら、そのどちらからも身を守れる。単純な地下室シェルターなら、爆風から少しだけ防護できるが、それだけのことだ。
重要な事実はこれだ。放射性降下物は重大な危険である、爆風から遠く離れ、爆発音を聞くことができなくても、数百万・数千万の人々が死亡する可能性があるからだ。爆風対策はあった方がいいが、放射性降下物対策は不可欠だ。爆風の範囲内にいたら、強力に放射線被曝する。手っ取り早い爆風対策シェルターで、放射線防護がなされていないなら、それは意味がない。
放射性降下物とは何か?
有毒な塵である。地上での核爆発の爆風は大量と塵や土や水や粉砕された建物や木々を空へ吹き飛ばす。これらの塵は、爆弾の放射性の灰と混じり合って、空高く、舞い上がっていく。この致死性の混合物は、風によって、数百マイル、ときには数千マイル彼方まで流される。
どの爆弾も放射性降下物を生成するのか? ~^
地上もしくは地上近くの爆発だけが、放射性降下物を作り出す。上空爆発では放射性降下物は生成されない(広島と長崎の原爆投下では、放射性降下物による死者はいない)。水爆に強大な力をもたらす核融合プロセスでは、放射性の灰は生成されず、放射性降下物は生じない。しかし、核融合は核分裂爆発によって起動される。それにより、放射性降下物が生成される。
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どこに放射性降下物が降るかは風と爆心地点に依存する。サンフランシスコ攻撃の場合、有毒な塵はこのように広がるかもしれない。しかし、攻撃目標が攻撃される前は確かな予測は立てられない。地図と図面はStanford Research Instituteの従業員向けブックレットからの引用。
放射性降下物の何が悪いのか?
放射性降下物によって死亡する可能性がある。5メガトンの地上爆発(TNT火薬500万トン相当)は、2億5000万トンのラジウムに相当する量の、放射性物質を生成する。100マイル彼方でも、18時間以内に放射線被曝量が1000レントゲン(r)を超える可能性がある。短時間でそれだけ被爆すれば、不幸にも3週間以内に、誰もが死亡する。これらの数字は、中規模の5メガトン爆弾についての数字である。ソ連は100メガトン爆弾を保有していると主張している。
どのように放射性降下物は人々を蝕むのか?
不安定な放射性原子は崩壊して、X線のような、強力なガンマ線を放出する。それは見ることも、臭いをかぐことも、触れることもできない。ガンマ線は原子核に到達するまで、突き進む。体内を通過したガンマ線は害をもたらさない。体内の原子で止まったガンマ線は、それらの原子を破壊する。
ガンマ線被曝すると誰もが死ぬのか?
あたたは、宇宙線や夜光時計からのガンマ線に被曝している。量が少なければ、大した問題は起きない。量が増えれば、病気になる。しかし、その境界線は明確なものではない。被曝が集中すれば、より危険になる。24時間以内に450r被曝した場合、半数が死亡し、半数が生存する。生涯で450r被曝しても影響はない。
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人によっては多く被爆する。200r被曝では病気になるか、ならないかは50-50である。450r被曝では死亡するか否かは50-50である。
最近の水爆実験はどうだろうか?その放射性降下物で人は死ぬか?
遠隔地での核実験でも放射性降下物は生成される。しかし、人口密集した地へ到達したときには、希薄化し、弱くなっているので、即時の直接的な影響はない。どれくらいの距離まで害が及ぶかは、今後数世紀の激論になるかもしれない。シベリアの核実験の放射性降下物と、ミネアポリスへの核攻撃の放射性降下物の違いは、少数の人々の寿命を短くするか、数百万に人々を殺すかの違いだ。
主要攻撃目標から遠く離れていれば安全か?
安全ではない。どこに放射性降下物が降るかは、爆心の位置と航空の風の方向による。攻撃は波状に行われると思われる。安全な場所があるとしても、あらかじめ、それがどこかは予測できない。ある種の攻撃パターンでは、米国全土が、重大な量の放射性降下物に襲われるかもしれない。
政府は全国民を収容できる公共シェルターを用意できるか?
現在の計画では、建物を調査し、使えるスペースを見つけ出し、食料や水や換気装置や発電機を用意している。連邦議員の中には、大規模シェルターを最初から建設すべきだと主張する者もいる。
公共シェルターは、個人所有のシェルターより良いか?
大人数でいた方がいいかもしれない。その中には、医師や少なくとも訓練された看護師がいるだろう。しかし、適切に物資が備蓄され、あなたを収容するスペースがあり、短時間で到達できる場所になければ意味はない。チャンスは自分で切り開くしかない。
シェルターを特に建設する必要はあるか?
何らかの遮蔽物は、それなりに効果がある。通常のプレハブ住宅では、放射性降下物からのガンマ線の半分を遮蔽する。窓のない地下室では95%の放射線を遮蔽する。集合住宅や工場やオフィスビルの、大規模で堅牢な構造の地下室では、ほぼ完全に放射性降下物からの放射線を遮蔽する。
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放射性降下物が降ってくるときは、どんな遮蔽物でもないよりはまし
排水渠でも80%の放射線を遮蔽する。しかし、窓のないコクリート強化建築物の地下室は本当に安全である(99%遮蔽される)。
自宅地下室の95%遮蔽で十分に安全か?
ないよりはいいが、適切ではない。地下室の隅を素晴らしいシェルターに作り変えることが容易にできる。しかし、シェルターを区切るには、重い壁と思い天井が必要である。
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放射性降下物が冷えて、放射線が減少すると、より長い時間、核シェルターを離れることができる。図は当初、毎時6000レントゲンを放射する放射性降下物の例。
遮蔽には鉛が必要か?
必要ない。何でも使える。泥でも、砂でも、石でも、おがくずでも、ビールやソーダのケースでも、水のタンクでもいい。それを十分な量、用意することだ。放射性降下物とあなたの間に、できるだけ多くの原子を置き、あなたの体ではなく、そられの原子でガンマ線が止まるようにする。少なくとも、3フィートの土相当の量が必要である。コンクリートなら2フィート、鋼鉄なら6インチ、水なら5フィート、木なら9フィートである。
地下室がない場合は、どうすればよいか?
シェルターを地上あるいは地下に、庭あるいは家の一部として、建設できる。庭の地下が最善だと思われる。従来のサイクロンシェルターのことを考えてはいけない。あれは十分な深さがなく、長期間滞在にも向いていない。 ~^
どれくらい長く滞在することになるのか?
どれくらい放射性降下物が降ったかによる。ロンドン市民が夜に地下鉄で寝て、昼間働きに出たような、第2次世界大戦の空襲とは異なる。放射性降下物は冷えるまで危険である。冷えるまでには少し時間がかかる。7時間ごとに、放射線強度は1/10になる。爆発から7時間で、そのレベルは最初の1/10になる。49時間後には、最初の1/100になり、343時間後(2週間後)には1/1000になる。今言えることは、2週間はシェルターに留まれるようにすること。これは推測である。
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まる2週間に地下に籠るのか?
そうではない。1日経過すれば、地下室内を歩き回ることは可能だ。翌日には、ごみ箱のゴミを捨てに、短時間、外に出ることは可能だ。日がたつにつれ、より長時間、シェルターの外にとどまれるようになる。しかし、外出した時は必ず、靴や服や体についた放射性降下物を慎重に洗い落とさないといけない。除染に使った水は、シェルターの外に置かないといけない。
2週間経過したら、完全に安全か?
あらかじめ、それは言えない。公式広報がラジオで放射線レベルを広報する。しかし、自宅近辺については十分な精度はないかもしれない。広報を疑うに十分な理由がある。ダブルチェックするために、25ドルで自分用の計測装置を購入できる。Bendix CorpやHealth coのような企業から購入できる。
ファールアウトスーツは役立つか?
そのようなものはない。使い捨てか、簡単に洗える覆いがあれば、放射性降下物が、あなたの体や服に付着して、危険なことになるのを防げる。しかし、ガンマ線を防護できる衣服は存在しない。
どのような装備が必要か?
最低限、調理せずに食べられる食料(乾燥あるいは缶詰)と水(一人当たり最低7ガロン)を2週間分と、トイレ用バケツとゴミ箱と救急箱と暖かい衣服と毛布と工具とロウソクと懐中電灯とトランジスタラジオ(屋外アンテナと接続した)を用意すること。 呼吸する空気はどうだろうか?
通常の地下室はシールドされた戸口はあるが、扉はない。家の空気は循環する。地下シェルターには換気パイプ(直径3インチ)と手回しブロアーが必要である。換気口はキャップがあり、虫が入らないようにしないといけないが、フィルタは必要ない。放射性降下物はすぐに地上に降り積もるので、外気はクリーンであり、ガンマ線被曝することはない。
車で安全場場所へ移動する方がいいか?
そうかもしれず、そうでないかもしれず。避難が有効なのは次の場合。(1) 目的地が放射性降下物から安全であること。(2) そこで食べる食料と、寝る場所があること。(3) 迅速にたどり着けること(攻撃中及び攻撃後は、幹線道路は大渋滞する。あなたは、民間防衛責任者や警察署長や市長などの当局者の判断を信頼しなければならない。あなたが答えを知ることはできなくとも、彼らは答えを知っているかもしれない。 ~^
それは意味があるか?シェルターから出てきたときには、誰もが飢えることにならないか?
事態は深刻だと思われるが、生存不可能というわけではない。雨は放射性降下物を洗い流すだろう。備蓄食料は使えるだろう。文明は再建できるだろう。
水爆戦争では、核シェルターは最善の防護手段だろうか?
~^ 最善の防護は抑止、すなわち戦争が起きないようにすることだ。しかし、核シェルターは攻撃に耐えるときに少しは役立つ。生存可能性が高まるほど、それを使う確率は低下する。
さらなる情報は、どこで入手できるか?
本気でシェルターを建設するつもりなら、米国政府民間防衛局に、公式計画と指示を問い合わせよう。民間防衛局は、レディメイドの核シェルターや備品(放射線計測器やブロワーや換気口など)を販売している企業リストを持っている。建設の前に、地域の建築基準を確認すること。特別の規制があるかもしれない。業者が専門家(建設計画が公的基準を順守しているか)であり、責任能力があるか(銀行取引など)確認できるまで、契約に署名しないこと。地域の建築基準についての詳細は、地域の民間防衛責任者に問い合わせること。
[ Martin Mann: "Plain Facts About FALLOUT SHLETERS (1961/12) on Popular Science ]


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