最終更新:ID:siKjTSQZwA 2022年07月21日(木) 00:00:12履歴
<あらすじ>
小さな一部屋、白い柵に囲われた庭先でただ一杯。
穏やかな世界の裏側を呑み込んで。
どれだけ美味しくても、どれほど価値あるものだとしても。
一人で淹れて、一人で飲む、この一杯は味気なさすぎて。
『時折やってくる働き蜂に期待をしていました。』
以下、GM情報
<舞台>
時代:現代
座標:指定なし
シーン表:使用しない(シーン固定)
世界法則:魔素希薄
どこか、こだわりを持った人が丁寧に整えた、「小さな一部屋のような庭先」。
ただその空間を表現するなら、そう言葉にするべき場所だ。
お気に入りの場所にチェアとテーブルを置いたここの主が、貴方を手招きしている。
貴方へ一杯の珈琲を勧めている。貴方に―――。
<シナリオアンカー>
淦涅ノ花(あかねのはな) / アンカーとしての扱い:「物品」
運命利用時の願いの傾向:「終わる」時を願っている。
RP傾向:ただ静かに庭の穏やかな陽気の中で、香り豊かな珈琲を味わっている。言葉を発することは「ない」。
ほんのりと頬と唇に紅を引いた女性だ。ただ、その存在はどうにも「薄く」、「儚く」、「夢のよう」で、
それなのにあまりにもこの眼を離すことがない。美しい「花」だ。
このシナリオアンカー(NPC)は、シーン表固定により、常時近くにいる(強制的にシーンに登場する)ことになるが、
PCの行動に口を挟むことはしないし、立ち合いもしない。ただ赤い目で見ている。
話しかけたりしても彼女は「微笑み」を咲かせるだけだ。
<禁書>
『一匙の蜂蜜を独り占め』
気がつけば私は一人。おはよう、と一人で一杯傾ける。時折やってくる迷い子の蜂を揺すって蜜を分けてもらう。
それがどれだけ美味しくても、どれほど価値あるものだとしても。一人で淹れて、一人で飲む、この一杯は味気なさすぎた。
ああこんにちは、蜂さん。ごめんなさい。
せっかく来てくださったけれど、私は生憎と「言葉を知りません」ので……御構いもできず、そう。
『お前は―――のタメに咲き続ケル。そノタめのチカらは、ワタシが与えルヨ』
たすけてください、も、いえないのです。
災厄:因果災厄
攻撃 4 防御 4 根源 4 魔力 24
領域:闇 特技:花、自由、想い、歪み、絶望
魔法:悪夢召喚<想い>、悪夢召喚<絶望>、妖花、捕食<絶望>、痛飲<自由>、収穫、霊喰
<断章>
主題
『独り占め』 ランク4
憑依対象:「小さな一部屋のような庭先」(封土認定・HO1)
そノ部屋は、その花のタめニある。その美しさハ、―――のためにアル。
根を張リ続ケヨ、咲き誇り、ソノ姿を永遠トシ、ずっと、きっと、傍らに寄り添って。
攻撃 4 防御 4 根源 4 魔力 8(禁書魔法習得により-1含む)
領域:闇 特技:花、絶望
魔法:悪夢召喚<絶望>、妖花、捕食<絶望>
封土の効果による元型召喚は任意。
※封土のため、ランダム選択の断章戦には選出されない。
副題
『人作餌』(ひとさじ) ランク3
憑依対象:ガーデンチェア(HO2)
"どうぞお座りください。貴方とこの一杯を共にしましょう"。座ッタな?座っタ!座ってシマったネ!
ならばオマエは餌とナレ、ナリ給えヨ、精イッ杯のハチ蜜になれ、"収穫"しヨう!"収穫"だ、我ラの花よ、甘イ蜜をどうぞメシ上がれ!
攻撃 3 防御 2 根源 3 魔力 9(禁書魔法習得により-1含む)
領域:歌 特技:歪み、想い
魔法:悪夢召喚<想い>、収穫、霊喰
『鉢満つ』 ランク2
憑依対象:コーヒーカップ(HO3)
満ちた、満ちて、満ち足りて。垂らす、垂らして、キミの口へ。飲むがいい、飲むといいよ。
こっそり混ざって、苦いのをバイバイ。シってるカナ、"自由"の味。
攻撃 2 防御 2 根源 2 魔力 4(禁書魔法習得により-1含む)
領域:力 特技:自由
魔法:痛飲<自由>
<シナリオチャート>
「導入」→HO回収→禁書戦(クライマックス)へ
※断章の回収でクライマックスへ移行可能。
※HO4のみ特殊条件化で【秘密】内容が一部変化するため、注意。
<導入>
穏やかな陽気と、その日差しに眼を覚ます。
睡眠を求めた記憶などなかったが、深く長く眠っていたらしく、どうにもふわふわとした心地で頭についていた木の葉を振り払う。
……木の葉?
首をかしげる。いくらなんでも、とおかしさに顔を上げれば、白い木製のフェンスに囲まれた一部屋―――
小さな、小さな、それでもしっかりと成立している、
「庭」が出迎えてくれていた。
決して広くはないけれども、中央にガーデンテーブルとチェアが置いてあって、
木の葉の影に隠れているけれど、誰かが座っている。
ここは何処だと問うにしろ、何にせよ恐らくは、この小さな部屋の主と対面しなければならないらしい。
(踏み出すたびに。じわり、どろりと何かが持っていかれるような、気もしているけれど。)
夢の後の心地と、主らしき影の方から漂う香りにどうにも、何もはっきりしなかった。
以上を導入マスターシーンとして完了後、HOを全て公開し、サイクルを開始する。
<シナリオ内HO>
HO1 「一部屋の庭」
穏やかに時がゆっくりと流れるような、小さくも、整えられた庭は貴方を出迎えている。
中央部にガーデンテーブルとチェアが二脚設置されていて、奥には人影がある。
どこからともなく吹いてくる風が、嗜好品―――珈琲の香りを乗せてくる。
そして、何処か縋るように覚えのある花の香りを置いて消えていく。はたして本当に……庭、なのだろうか?
【秘密】
穏やかな見た目とは裏腹に、自分の中のエネルギーを浸食しようと手を伸ばしてくる感覚に、確かに貴方はここを「封土」と判断できる。
そこに巣食う断章の姿も、勿論そこにはある。光景―――見たままに騙されてはならない。断章「独り占め」の憑依を確認した。
HO2 「座る」
突っ立っていても埒など開かぬ、と木陰に隠れているせいか光に霞んで、色のはっきりしないガーデンチェアに手をかける。
対面に座っている者の圧倒的な印象に気圧されながらも、座ることはできた。
白い指先が摘まむコーヒーカップの模様すら見えないのは、もはや確実に何者かの介入があると予見させるには十分であった。
【秘密】
"座ったな"と、嘲笑うような声がささやきかけてくる。
高くも低くもあり、誰か個人を思わせる「声」ではなかったが、確かに言葉を発して貴方へささやきかけてくる。
"座ったな"。確認するように繰り返された言葉から、ぶわりと隆起する魔素を感じる。
断章が、貴方に手を伸ばす。いうなれば魔素の塊とも言えるだろう魔法使いに牙を剥く。
餌を作ろう。―――"人"を材料に。
断章「人作餌」である。
HO3 「花の君」
近づいてきた貴方に反応してか、その影は穏やかに笑った。確かにそういう気配があった。
彼女というべきか、そういう存在に生気は感じられないし、魔法生物の類というのにも違和感がある。
ただ、白い手が差しだしてきたカップの中には黒い珈琲と、
【秘密】
黒いどろりとした液体が混ざっていた。これを見分けるには恐らく、魔法使いの素養が必要だったろう。
これを珈琲と共に呑み込んでいたら一体どうなっていたのか、考えるだけでも恐ろしい。
ただ、すぐに噛みつくわけではなく、ただこっそりと混じることで近づく悪の影のその力量は恐るべきものではない。
断章「鉢満つ」を摘まみ上げてやれ。
HO4 「一杯の珈琲」
花の君が差しだした珈琲は、豊かに香り、貴方に休憩を誘いかけている。穏やかな陽気と、温かな一杯は至福の一言に尽きる。
【秘密】(HO3を取得し、断章「鉢満つ」との魔法戦にて勝利後)
珈琲の中に何か混ざっていたが、それを難なく掬い上げてお灸をすえた。
それはよく見れば「蜂蜜」に似たものだったらしく、甘い香りを伴っていた。
それを排除する行為を見た彼女は、新たに珈琲を注いでくれる。それに、邪悪なものはなく、純然たる嗜好品。
この【秘密】が公開された場合、任意の魔素もしくは一時的魔力を1d6点得る。
【秘密】(断章「鉢満つ」を除去していない全ての場合)
香り豊かな珈琲にただ誘われるまま、呑み込んでしまう。
苦いはずのそれに僅かな甘みと花の香りを感じ―――そして、喉を食い破ろうと牙を剥いた。
……はいいものの、あっさりと魔法使いの存在量に負け、胃まで堕ちていく何かの存在があった。
気持ち悪いが、後味だけは割といいのが癪に障る。
この【秘密】が公開された場合、魔力を1点減らし、断章「鉢満つ」を入手できる。
【秘密】(他HOに憑依している断章を未回収だった場合)
珈琲の味に冴えわたる感覚。勿論そんなものは気分だったろうが、確かに僅かな綻びに気が付くほどには効果のあるものだった。
目の前の彼女に礼を言う暇もなく、悪の欠片が牙を剥く。
この【秘密】が公開された場合、任意の魔素もしくは一時的魔力を1d6点得る。
そして断章「(未回収のもの)」と魔法戦となる。この場合、断章が先攻となる。
※未回収、秘密をまだ入手していない断章が二つ以上あった場合、どちらかとランダムで戦闘となり、余った方の断章は憑依先を特定できる。
(秘密を入手せずとも戦闘可能になる、データ公開可)
片方が「鉢満つ」の場合の処理は上記に従う。また、「独り占め」に関しては『封土』のためランダム戦闘の選択肢にはなり得ない。
そのため結果的に「戦闘」となるのは「人作餌」のみである。
<エンディング>
HOの秘密入手数でわずかに変化する。
・「断章」に関わるHO1〜3の秘密を全て回収
禁書編纂は余程でない限り、一人ではやることではないというに―――。
たまたま巻き込まれた庭先で行った編纂を、滞りなく完了した貴方は、
恐らくは今回の「被害者・加害者」とも言えなくはない、彼女を―――。
目で追うことはできなかった。けれど、ありがとう、と声がした。気がする。
叩きつけられたような衝撃に、冷たい床の感触。高い天井は、見慣れた場所だった。
「出られたのか」
そう語り掛けたのは貴方の同僚であった。首を傾げれば、同僚は一つのテーブルを指差した。
ぽつんとそこに乗っているのは、小さな四角形で、透明な硝子の箱。
その中にはミニチュアの庭のように形作られた、鉢植えとその上を彩る白い柵、テーブルと、チェア。
そして縮こまるようにも見える、樹木が白い花を咲かせ、身体の一部には赤い実を抱えていた。
ぼんやりと、思い出す。
貴方は、大切なあのひとから―――この、「プリザーブドフラワー」を受け取った。
なんでも、近くの花屋でずっと残っていた、ある種の曰く付きとも言えなくはないが、どうしても眼が離せなくなったから。
「取り込まれたのが愚者でなくてよかったな」
同僚の言葉に、いや、と口ごもる。回収した禁書の特性を思えば、狙いは少なくとも魔力であったから。
美しさを長く持たせるため、薬液に浸し、加工処理の施された自然のままの、自然ではない姿。
「ずっと残っていた」という情報エネルギーがそうさせたのか、もしくは書籍卿の悪戯か。
宿った禁書はこの小さな庭に箱詰めされてしまった樹木を、ただ輝かせようとして。
不思議なものだ。
純粋な美しさとして人の手から人の手に渡るものが、人を喰らうものになっていて。
だけど、その本来の身体は、理を越えて生きるその身を何と思うか言葉にもできずにいた。
「ありがとう」という感謝の言葉を、何処で覚えたのだろうか。
人を喰うことができなくなった庭に、ようやく「終わり」という概念がもたらされた。
勿論それは、加工されたソレがついぞ衰えた時まで、終わることはないだろうけれども。
それは、確かに貴女にとっては、救いだった。もう少しだけ、珈琲を嗜むといい。
……そも、その実が珈琲の元と思えば、嗜むも何も、か。
・断章に関するHO未回収(HO4の【秘密】の効果でまとめて断章のみを確保した場合)
禁書編纂は余程でない限り、一人ではやることではないというに―――。
たまたま巻き込まれた庭先で行った編纂を、滞りなく完了した貴方は、
叩きつけられたような衝撃に、冷たい床の感触を覚えた。高い天井は、見慣れた場所だった。
「出られたのか」
そう語り掛けたのは貴方の同僚であった。首を傾げれば、同僚は一つのテーブルを指差した。
ぽつんとそこに乗っているのは、小さな四角形で、透明な硝子の箱。
その中にはミニチュアの庭のように形作られた、鉢植えとその上を彩る白い柵、テーブルと、チェア。
そして縮こまるようにも見える、樹木が白い花を咲かせ、身体の一部には赤い実を抱えていた。
ぼんやりと、思い出す。
貴方は、大切なあのひとから―――この、「プリザーブドフラワー」を受け取った。
なんでも近くの花屋でずっと残っていた、ある種の曰く付きとも言えなくはないが、どうしても眼が離せなくなったから。
「取り込まれたのが愚者でなくてよかったな」
そうだな。と、ただ求められた答えを口にする。
貴方はあくまでも「働き蜂」なので。
・敗北
クライマックスでの敗北は、貴方を純然な魔素として蜜にする(キャラロスト)。働き蜂がせっせと集めて来た蜜と同様になる。
彼女のコーヒーカップの中に混ぜられて、彼女の時間の糧となる。
"ああこんにちは、蜂さん。ごめんなさい。"
<補遺>
HOの全入手を前提としていない、断章を揃い次第のクライマックス突入を推奨。
「魔素希薄」を含む高難易度の戦闘を通して行うことになるため、場合によっては魔力量を調整するなどの調整をGMの裁量で行ってよい。
珈琲の木と、珈琲の花だけで作らせた蜂蜜があるという小話、プリザーブドフラワーからできたシナリオ。
そのためNPCは言葉を発しないし、アンカーとしては物品として扱うこと。
時間を止められて閉じ込められ、たくさんのヒトの目にさらされ続けた小さな木が願うのは、終わることである。
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