主に哀咲のTRPG(CoC)用wiki。ほぼ身内様向け。「そこのレディ、ティータイムの御供にクトゥルフ神話は如何かな」

概要

払暁の今際 (ふつぎょうのいまわ)
制作:哀咲
テキストオンセ:3〜4時間前後
使用に関して:改変、リプレイ等公開自由。制作者もしくはwikiのURLを明記してください。



シナリオ



<あらすじ>
でも。君は物語の主人公ではないのだから。
主人公になれたとしても、その苦労と痛みを味わいたいとは到底思えないのだろう、大人に嵌められたこころは。
真っ暗な空を。ぼうっと見上げていた。


<キャラシについて>
国籍職業問わず、だが導入状況的に酒が飲めるとかそういう人間がよい。もしくは深夜帯に散歩をするなど。
進行に特別に必要である技能はないが、博物学、歴史が使える場合がある。


<舞台>
線路際、踏切近く


<推奨人数>
一人


<敵対>
ヴルトゥーム(マレウス・モンストロルムp147)-不死性を持つ花の神。火星に存在し、精神を犯す。
構成要素であり、登場することはないが、化石化した花などを理解しているとよい。


<その他事項>
制作には第六版使用。SANCの数値が一回ずつでも大きいので、一時の判定や不定の計算に気を付けること。
正直思考しない限りはただの理不尽の塊であり、かつ内容が内容なので、人を選ぶこと。



<真夜中も過ぎて>
嬉しいことだったか。それとも嫌なことだったか。それすらも忘れてしまうほど夢中になって、
帰るための足を無くし、己が身体一つで線路脇を辿るように歩いていた。
普段は見上げることなどほとんどない空を見上げて、月がきれいだと思う。
時間を見るのは億劫だ。それでも確認するなら、もう三時を回り、これから世界は朝に向かっていくだろう。
幸い、今日の予定はない。家に辿り着ければ勝利だ。
疲労に重なるように眠気が漂うが、流石にこんなところで寝入るほど馬鹿になったわけでもない。
もう少しだ。
なんとか見知った景色になり始めた周囲は寝静まって、電気がついているところもなくはないのだろうが、
それはカーテン越しの光で、あまりにも僅かだ。
なんとか整備された街灯はしっかりと役目を果たしてはいるが、合間合間はやはり暗い。
その合間に小さな花などを見つけたりして、何とか穏やかに歩いているが。

<聞き耳>:少し先からだろうか、カンカンカンという一定のリズムで、金属のような独特の音がしてきている。

何かを叩く音?機械の駆動音?いや、一番腑に落ちるのは「踏切」だ。ただ、ここらに踏切はない。
そしてあった場所も通りすぎた。では、耳鳴りか何かだろう。
そう思うにははっきりとずっと―――警報機の音が鳴り続ける。(0/1)

どちらにせよ、貴方の進行方向にその音はある。このときに聴こえずともやがてはっきりとしたものになる。
目の前に開ける、夜闇の中でも赤いライトがはっきりと付き、長い棒が降りてきていて、進路を塞いでいる。
カンカン、となり続ける音。
本当にここに踏切なんて、ありはしない。位置情報を確認して周囲環境を調べるような工夫をしても、
そこに踏切があるという現実はなく、ただの自分の家まで続いているはずの一本道の傍らの線路にそれは存在した。
別に見なかったことにして通りすぎてもいい。後ろ髪を引かれるような感覚を警告のための音が生み出す異質さの中。
確かにそこにあるけれど、別に、なにがどうと、訴えるわけでもない、警告音と光が、繰り返す。


<別に、誰だったとしても>
不思議だった。小さくて狭いがひたすらに音と光を発するそこは、
踏切として機能しているのかと言われれば、していないだろう。
心の疲弊だろうか。それとも精神が壊れたか。嗤えないが、笑うしかない。
ただ、鋭角的なはっきりとした音が、ゆっくりと一枚の幕に覆われたかのように遠くなっていくまでは。

うっすらと、暗い世界に何かが浮かぶ。夢幻の類だ。そのはずだ。
けれども、踏切は警告音を鳴らしながらも、まだ「開いている」。確かな変化に目を瞬く。

鼓膜の上に何かを被せられたような遠巻きな音が、ふと浮かび上がった親子の姿を近く貴方に見せた。
嫌々という子供。小さな頃ならまだよくある話だろう。イヤイヤ期が来ると親は酷く憔悴するという。
それはそうだ、なにをするたびにも厭だと言われたら何も進まないし、何も終わらない。
けれど、その子の「嫌」はどこか、引っかかる。
その嫌にどれだけ削られたかは分からないが、母親らしき姿が繋いでいた手を振り落とすようにして放した。
母親とて人間だ。そういうときもある。締まり切っていない踏切をすっと渡っていくその親の心が、
どれだけ削られていたのか、<心理学>や<精神分析>を使えど薄らな影からははっきりと見通すことはできないが、
限界に近いところにいたことはわかること。
問題は置いていかれた方だ。
親に突き放されたも同然。厭な気持に困惑が重なり、知っていても分からない道に動揺している。
周りに人は少ないし、気づかないまま通り過ぎる人がほぼ。
手を伸ばせば届く距離にいるのは―――自分だけだ。
なんとなく、このあと起こるだろう惨事が見えるはずだ。
不運は重なるもの、それは感情論だけではなく、確かにそうである。悪影響が悪影響を呼ぶ。

子供は―――、もうすぐ降りようとしている棒が防げないほどの小さな子供が、走り出した。

ほぼ隣に立っているというべき自分が取れる行動は多くはない。
多くはないけれど。

試みることができることを提示する。
一、子供の腕を取るなどして引き留める
二、緊急停止ボタンを探して押す
三、傍観者でいる
同時に行うことは不可能とし、何か一点に行動を集約させる。これ以外にも発案があってもよいが、
結果から逆引きできるだろう。この行動の結果に至るまである程度の技能を使用させ、
失敗し続けた結果、「三」になるというのもよいが、演出改変の必要がある。

一に、もしも貴方が咄嗟にでも良心や一部始終を見ていた不安から手を伸ばせば、その子の腕は簡単に取れる。
子供は勿論痛がるし、その声にようやく気が付いた母親がはっとしたように、振り返って。
嗚呼。不運とは、重なるものとはよく言ったものだ。
貴方の行動は、正しいだろう。子供の咄嗟の行動を抑え、その幼い命を救う。
ただ、その動きが見ていなかった母親からすればどう見えるのかなんて、また別の話だった。
良くも悪くもこの親子は限界点で踏みとどまっていた。その限界を終えるのが今であったろう。
焦りと衝動に突き動かされた母親の必死な顔が、高らかに警笛を轟かせた電車の前面に掻っ攫われる。一瞬。
子供しか見ていなかった。
その伸ばされた手がどこかおいてけぼりにされたまま、高速に打ち穿たれ鮮血となる。(1d6/1d10)
その血が足元にぴしゃりと飛んできたという謎の理解と共に、
子供の腕も夢であったと語るようにあっさりと重みを無くして消えてしまう。
けれど、足元の血は消えていなかった。

二に、緊急停止ボタンなど、電車を止める方向の救助をと考える貴方は確かにそれに使用されるだろうものを見つけた。
間に合うかどうかは、正直天運だろう。手を伸ばし、保護のためのカバーを力で壊して殴るようにその小さな命綱を押す。
確かにかちりと反応があった。
子供はもはや後戻りも先行くこともままならない渦中まで奔っていたし、小さな足では自力で脱出して事なきを得るなんて期待できない。
自分の行動にさすがの周囲も異変を察知したか、あたりから「子供が線路に入った」というような類の叫びが聞こえるようになる。
渡り切った母親がその言葉にはっと振り返った。
すぐに危機を感じて母親が再び踏切内に侵入して子供を抱え上げようと荷物を振り落としていく。
今から自分が行ったところで何もできない。ボタンの傍らでただ祈る。
視界の端に写ったライトが電車の到来を告げていた。緊急停止ボタンに反応したのか、速度は落ちているように見えた。
警笛を轟かせて、ああ、今やっと子供を抱え上げ、そのままもつれ込むようにこちらに母親が必死に走る。
恐怖に打ち震えながらも動いている身体に迫る機械の巨体は、きっと止まるはずだ。
せめてと伸ばされた腕に、もつれ込んだ母親と、その腕に抱えられていた子供の重みが入り込み、貴方自身が支えきれなくなって尻餅をつくだろう。
視界の中に大きな、連結している独特の形状といえるタイヤが見える。
電車は線路との摩擦でわずかに砂煙のようなものを上げながらも確かに止まっていた。ただ、自分の尻がついた場所から思うに。
厭な予感がした。
耳に刺さるような静寂の中。興奮によって遅れていた知覚がようやくソレを理解したのだろう。
母親が、痛みに叫ぼうとして、あまりのそれに喉が絞られて、掠れた何かしか出なかった。
貴方の足先からじわりじわりと、何か温いものがやってきている。
腕の中に納まった子供は無事だったが、すぐ上に覆い被さったような母親は、あとから来た激痛にのたうちまわろうとして、叶わずにいる。
幸いにも子供は何も見ていないはずだ。ただ、貴方はそれを見せつけられている。
下半身を線路とタイヤの合間に挟まれ、かといって千切れもせず骨一つか皮一つか、どうにか繋がってしまっているが故の惨劇を。
もはやどこから出血などという話などではない、血の池の地獄がそこで生まれていた。(1d6/1d8+2)
温かくも感じる液状のものが血液だと理解するにはそう時間はいらない。
むしろ理解まで辿り着いた瞬間、あたりは蒸発したように熱を発し、揮発する。あとに残るのは足元にだけ及んだ池の末端だけだ。

三に、何もしない。夢か何かだとただ、傍観に尽きる者も多くはいる。
子供が走りゆくのをなんとなく目で追って、ああ、そろそろ踏切が閉じるだろうと思う少し前に、
自分を追ってきた子供の手を掬い取り、急いで向こう側へ渡り切る母親がいた。
カンカンカン、と警告音が鳴る。閉まり切った踏切の棒の向こう、
酷く目に鮮やかな四角い顔持ちの電車が閉塞的な空気を突き破って、貴方を瞬間、分厚い風と音の層にしまい込む。
その空気が、貴方とそこを切り離した。

カンカンカン、と警告は続いている。開かない踏切が目の前に夜闇に紛れてある。
まだ、いやな汚れが残っている、感触が残っている、はっきりとした夢を見た。
何を見せつけたいのか、踏切はまだ、啼き続ける。

<オカルト>もしくは<幸運>など:そういえば、最近の都市伝説に「今際の踏切」とかいうものがあると思い至る。
〇今際の踏切
深夜〜早朝に出歩いていると踏切の音がする。場所は日本国内というざっくりな分類だが、
それに遭遇するとただ、何かの事故の類の映像を幻視するだけ、という謂れも呪いも何もないものだが、
幻視する内容がショッキングかつ、スレッドなどの不特定の書き込みではあるが、同じようなものを見るが、
起こす行動で違う結果になるらしい、というシミュレーションじみたものを発生させるとして、興味をひいている。
出てきたのはここ数年だが、書き込みなどで確認できる初発生と見られるものから見て継続的に発生していて、なにがトリガーかもわからない。
読み込んでいけば、同じシーン、同じ行動結果の報告や、解決法(なし。三回シーンを見るまで解放されない)なども記述されていることに気が付いてよい。
また、一度シーンを見てしまったら解消されるまで(三回見るまで)解消されないとも教えてよいだろう。

周辺に<聞き耳>:警告音以外の音は環境音の類と自分の発する衣擦れ、呼吸音程度だ。心臓が酷くうるさいかもしれないが。
鉄の臭いがするのは気のせいだと思いたい。ただ、気がやられた鉄の臭いに混じって鼻先につくのは、
酷く濃い、と言えばいいのか、つけ過ぎた香水をいくらか、人工的ではない自然さで紛らわせた、花のようなにおいがする。
においに<アイデア>:発生場所はちょうど、踏切の最中、コンクリ詰めのどこかだろうか。少なくとも自分より後ろにあるものではない。


<ただ啼いている>
カンカンカン、とそれは啼いている。本来いるべき場所ではないここで何を求めてか。
その答えは誰も分かりなどしない。だが、どこかじんめりとした空気の中に甘いにおいがした。
それが何かを目で探すよりも先に、足元に注意が行く。
何もなかったか、選択次第ではすでに血の染みた地面。あなたの爪先、
まるでそこが出血点であるかのようにぼこりと湧いて出る赤い水。
それは誰にそうされるわけでもなく自ら伸びていって、三つに開いていく。
まるで、花のように。鮮やかな赤い花が咲いていく。花というには花弁が少ないような気もするが。
くらりと、血液らしい鉄の臭いと、花のかぐわしい匂いとが混ざり合って、意識を酩酊させるように投げかけられている。
ここには何もないのに、本当にそこに花が咲いているような、そこに血を流すものが倒れているような新鮮みを持っている。
『一見して人生には何の意味もない。 しかし一つの意味もないということはあり得ない。』
『酒を飲め。こう悲しみの多い人生は眠るか酔うかしてすごしたほうがよかろう。』
『幸福は夢にすぎず、苦痛は現実である。』……。
誰かが、男女も分からない声色の誰かが語りかける。

『誰もがすばらしい人になりたいと願っている。一方、成長することは誰も望んでいない。』

警告音すら遠のく。代わりに声がガンガンと脳髄を叩いて壊そうとする。
抱えた頭、その目の先に涙の膜越しにか、ぼやけた赤い花が見える。
ぶわり、と土から鉄の臭いが叩きつけられ、多くの感覚器官の処理をできずに呻きながら見た赤い花、
三つの花弁のうちひとつが、水気を取り戻して。
つい先ほど、一を選んだなら、そこに水風船が叩きつけられたかのように赤が弾け、
二を選んだなら花弁から溢れ出たようにまた水たまりを大きくして、三を選んだならただ、どこかへ流され地面の中へ消えていった。(1/1d3)

わけは相変わらずわからない。だが、足元に突然咲いたそれから片足を放すことができない。
重力がそこに集中しているわけでも、足を怪我して力が入らないわけでも、摺り足すら叶わない、
そこに縫い付けられたかのようにびくともしない。あまりに足を動かす試みを続ければそれこそ地面と対面しなければならない。
鉄と花のにおいの狭間は酷く、脳を揺らして。
また、カンカンカンと常に警告するその音を幕の向こうに追いやっていく。
うすらに浮かぶ光景を見れば、縫い付けられたはずの足が動く。地面にも花の形はなく、
まるで其処がまるごと他の空間と入れ替わったかのように空気も、温度も変わっていた。
夏のようである。少し遠のいた警告音の音圧の分を、何処かから来た蝉の啼き声が補っていた。
空は夜空のそれから遷り変り、なにも遮るものがない巨大なカンバスに青がぶちまけられている。
遮るものがない―――街灯や電柱の姿が見受けられない。家も何処かまばらで、道も雑草が蔓延る悪路のように見える。

静かな光景だった。
その静寂を塗り替えるのは少年たちの声だった。泥のはねたシャツや着古したタンクトップにズボン、
帽子……というその風景にあるべき姿で手製のような釣り竿を担いで、駆けてゆく。
自分がまるでいないかのように脇をすり抜けていく少年たち。厭な感覚はなく、ただその光景を見ていられた。
もはやここには踏切の影さえない。ただのあぜ道が真っ直ぐ広がって、横には田んぼや畑の類があるだけだ。
何も心配することはない、と一息ついた頃、それは目に入る。
群となって駆けていく少年たちの一人が、何かに足を取られて躓いた。その光景が嫌にゆっくりに見えるのは、つまり。
少年が転ぶだろう、自らが作り出している影の範囲には特別命に何かを与えるようなものは存在しない。
転んだとしても擦り傷程度だろう。ただ、淡い青の花が誰かに忘れ去られたモノのようにぽつんとそこに咲いている。

<目星>:花は小さく、目立つものでもない。特別性があるようなものにも見えない。
普段なら自分自身が踏みつぶしてしまっていてもおかしくはない。本当にどうでもいいほど小さい、道端の花だ。
<博物学>:エゾムラサキ、―――勿忘草である。
エゾムラサキ(物忘草)と判明している状態で<アイデア>:「私を忘れないで」「真実の愛」などという言葉ほか、
古来より友愛や誠実の象徴とされている。
画像検索などで少し時間を取りそうな手段を用いて調べる場合、適宜<幸運>などを使用し、失敗すれば矯正選択などにする。

近くに立っているだけの自分が取れる行動は多くはない。
多くはないけれど。

試みることができることを提示する。
一、子供の腕を取るなどしてバランスを取り、転ばせない
二、背中を押すなどして花を潰さない場所に誘導する
三、傍観者でいる
同時に行うことは不可能とし、何か一点に行動を集約させる。これ以外にも発案があってもよいが、
結果から逆引きできるだろう。この行動の結果に至るまである程度の技能を使用させ、
失敗し続けた結果、「三」になるというのもよいが、演出改変の必要がある。

一に、転ばせないように腕を取るなどの手段を取るのなら、再び貴方は介入者となる。
先ほどは影であった自分の質量で子供を引っ張れば、転ぶ前にしっかりと立たせることができて、
―――そのまま少年がまた走り出せばそれで終わりだったのに。
蝉の鳴き声など甘ったれたものだと言わんばかりの低い唸りのような音が背後からやってきている。
それに空を見上げた少年たちは何事かを叫びながら、背を伸ばした畑の中へ飛び込んで身を隠す。
もはや、ここまでで悟るだろう。自分は、してはいけないことをしたのではないだろうか。
転ばなかったかわりに少年は、ワンテンポ遅れてしまったのだ。こうなることをわかっていれば、絶対にしないことだ。
勿論、分からなかったからやってしまって、勝手に罪の意識に囚われるのは自分のエゴではある。
だが、空からやってきた何かは影を落とした。もう少し線がごちゃっとしていたのなら鳥かなどと、変な期待もできた。それは許されなかった。
異様なほど洗練されたシルエットはそれが飛行機であると悟らせるには十分である。
飛行機がエンジンとは別の音を放つ。少年はその音の矛先に穴ぼことなり、その場にあっけなく崩れ落ちる。
体中に空いた穴、……穴と穴が繋がって、もはや肉塊というべきなのか、
それほどの範囲を喪失し、大量の血であぜ道を濡らしながらも少年の顔だけははっきりとしていた。(1d6/1d10)
蒼くて小さな花は、真っ赤に濡れていた。
スッ、とすべてのものが遮断されたように暗がりに戻って、耳が痛いほどの静寂に帰って来る。
少しの間、静かだったがやがて思い出したようにまた、警告音が鳴り響く。
花があったところだけ繰り抜いたような、赤い血の跡がそこに居残り続けている。

二に、あえて衝撃を与えるなどして転ぶところを調整するのなら、再び貴方は介入者となる。
先ほどは影であった自分の質量でその小さい背を押す。その方向に少年の身体は傾いた。影のうちから花が再び青空の下に姿を見せる。
少年はそのまま横に転び、あぜ道の外まで転がってしまう。うわっ、という声が聞こえたが、問題はなさそうだ。
花は少しの風でゆらゆらと揺れていた。
ふと、蝉の鳴き声など甘ったれたものだと言わんばかりの低い唸りのような音が背後からやってきた。
それに空を見上げた少年たちは何事かを叫びながら、背を伸ばした畑の中へ飛び込んで身を隠す。
転がり落ちた少年もそのまま凹んだ場所に身を屈めた。
空からやってきた何かは影を落とした。もう少し線がごちゃっとしていたのなら鳥かなどと、変な期待もできたのに、
異様なほど洗練されたシルエットはそれが飛行機であると悟らせるには十分である。
飛行機がエンジンとは別の音を放つ。
幸いにも、その音の力は隠れた少年たちには及ばず、ただあぜ道に叩き込まれて、周囲を土埃に包む。
飛び散った小石などがぶつかったのか、少しの痛みに呻く声は聞こえてきたが、それもどうしようもない絶望のソレではなく、
結果として救われているはずだ。
何も問題はない。
ただ、貴方の目の前から一つの忘れないでと語る花が、人間の破壊に無残に跡形もなくなっただけだ。(1/1d3)

三に、傍観に尽きれば、躓きかけた少年の足が花に迫っていく。
きっと、気になど留めていない、たまたま今、なんとなく気になっていたから、どうしてかその花を「救い」たかった。
けれど、自分だって何も知らないうちに土を踏みしめているのだから。
自分だって道を貫いた草なんて、踏みしめて何も思うことなく進むのだから。
ふと、なんとなく背を押されたような感覚があり、その場でたたらを踏む。
何事かと顔を上げば、後から追いついてきたのだろう新しい顔ぶれの少年が、転び掛けている子に半ばぶつかるようにして肩を組んでいた。
後ろから走ってきた勢いで、転び掛けていた足はもつれて前へと進んでいる。
なんだよ、と笑い合う少年たちを見送る。
少し、土があれて石ころが露出していたが、小さな花は変わらずに揺れている。
その光景に風が呼ばれて、自分と其処とを切り離す―――。

光景を越えれば、またずしりとした重力に足が囚われ、相変わらず花の中心に囚われている。
血の花弁がまた一つ。一を選んだなら、そこに水風船が叩きつけられたかのように赤が弾け、
二を選んだなら花弁から溢れ出たようにまた水たまりを大きくして、三を選んだならただ、どこかへ流され地面の中へ消えていった。

すん、と煩い世界の中、かぎ取った匂い。花のにおい。
なぜか、それが垣間見た花のものだと直感する。まだ、此処にいる。其処は、此処である。
本当に光景の場所と此処とが同じわけはないだろうが、なにを間違えたか花は、此処は其処だと言い張っている。
最後のひとひらになんの光景が詰まっているのか、計り知れないが、今に繋がる何かの事象だろう。


<夢であるように>
重たい足の下、最後に残った花弁が膨らみを持つ。延々となり続ける音にはもはや慣れただろう。
その音が遠のくのを感じながらも、花のにおいは花にこびりついていた。そんなに強い香りの花とは思えなかったのに。

空は、昼ほどだろうか。暗くもなく、ただ明るいわけでもない、少し雲がかかっている。
風が少々強い。そんな中、一人の少女がしゃがみこんで、土を弄っているようであった。
辺りは道や、踏切ではなく、何処かの小さな空き地や工事前の現場のような囲いがある場所である。
振り返れば、質素な家が一つそこにある。どうやらここは庭先らしかった。
少女は何処かで拾ってきた石を器用に使って庭の土を掘り返している。それを咎める大人の姿はなく、
一緒になってそれをするきょうだいや友人の姿もない。
ぽつんと座り込んだ先で、小さな穴を掘り終えた少女は傍らに置いていた土の塊を手に取った。
円錐台の形で整っているそれを別の土に置く、記憶にある知識などからすれば苗の植え替えのようであると言っている。
小さな芽が少しだけ顔を出したその円錐の土を庭先に安置し、掘り返した土をそっと被せてお椀で掬ってきた水をやっている。
それがどのような植物でその処理が正解なのかは、知識があっても見当がつく距離でも大きさでもない。
植え替えを終えた少女は石を適当に転がして服についた砂埃を払い、家に戻ろうとしてかこちらを向いた。
自分の横を通りすぎる。花のにおいがした。
意識が一気に現実に引き戻された。

足は地面から離れ自由に動く。少女の動きがスローモーションのようになり、選択の時を悟らせた。
もう三度目だ。もはや、何もしないことが正解かもしれないと、行動に移した者なら思うだろう。
傍観してきた者なら、何かが必要なのかとも。
異変はない。
ただ、少女が家に戻ろうとしているだけの光景に、一体何があると。

少女が家に戻るまでの一定の時間を探索時間とする。
まず事象を発見するに<アイデア>、<知識>、<目星>、<幸運>、<聞き耳>(RP、行動で補助可能)をし、
発見した事象から有益な情報を抽出する(補助不可)のに学術的な技能をそれぞれ要することとする。

<アイデア>:地面についた足裏からなにか、びりびりとした振動を感じる。
→<地質学>、<物理学>:何かが伝ってくるような振動ではないような気がした。
もっと大きな、それこそ大地から根付く力が来る。もしかすれば、前震―――。
<知識>:周囲には野良猫も野良犬も、小鳥の影すらもない。あまりに生物の気配が感じられない。
→<生物学>、<博物学>:逸話的な報告や情報源の信頼性に欠けることを主な理由に説としては提唱されていないこと、
動物が地震発生の前日にはその地域から完全に姿を消すという話がある―――。
<目星>、<幸運>:囲いを越えた向こうの遠くに、塔が一棟ぽつんと建っているのが見える。囲いを越えて見えるものはない。
→<歴史>、<言語:日本語(母国語の場合+10)>:赤煉瓦づくりの八角の塔。思い出してしまうのは、
浅草十二階、凌雲閣。雲をこえる塔。多くの作家俳人が口にするあの塔が、そこにあることを信じたくはなかった。
<聞き耳>:うっすらと、客引きのような声がしている。それは女の声ばかりで、鼻にかかるような甘く高い声を出している。
→<歴史>(浅草十二階・凌雲閣を確認し理解した後なら自動公開):夜も昼もない青白い夢や、
季節はずれの虫の音―――浅草十二階下の女というと、娼婦のことをいう。などと何故自分は知っているのか。

上記の情報から「日本」「地震」「浅草」といったワードを引き出している様子であれば、以下の情報を渡してもよい。(1ワードにつき一つか)
〇崩壊
凌雲閣は、関東大震災により建物の八階部分より上が崩壊した。

〇火災旋風
地震などの自然災害や空襲などの人災による都市部での広範囲の火災や、山火事などによって、
炎を伴う旋風(つむじ風)が発生し、大きな被害をもたらす現象である。関東大震災では、火災旋風により多くの被災者が吹き上げられた。
被災した人の中には十五キロほど離れた市川まで吹き飛ばされた人もあった。

〇最高気温46.4度
当時はまだ木造建築がほとんどであり、密集していた。また、発生時間が昼食の時間帯であり火を使っている家庭が多かったこと、
大学や研究所などの棚の倒壊による発火もあり、火災による被害が九割を占める。
鎮火したのは発生から四十時間以上後。正式な記録として残ってはいないものの、
気象観測によれば発生当日二十一時頃から高温となり、翌二日未明には最高気温46.4度を観測。

ある程度時間の経過を認めた頃、シーンを再開する。
玄関からか、声がかかった。それは男のものであったものの、少女は急ぎ戻ろうと小走りになる。
がらがらと戸を滑らせる音に、帰宅した誰かの気配が近づいてきたことを察する。
父か兄か、それはわからない。ただ、はっきりとしていることは一つあって、

『仰いで天に愧じず、俯して人に愧じざるは、二の楽しみなり』

この事象全てに根付いた悪意らしき声が、少女を手招きしているかのように発せられた。
少女はそれが聞こえているのか定かではなく、また、聞こえていたとしても首を傾げただろう。


近くに立っているだけの自分が取れる行動は多くはない。
多くはないけれど。

試みることができることを提示する。
一、少女の腕を取るなどして庭に残す、何かを倒す、音を発生させる行動をして少女の気をこちらに向かせる
二、傍観者でいる
同時に行うことは不可能とし、何か一点に行動を集約させる。これ以外にも発案があってもよいが、
結果から逆引きできるだろう。また、これについては特定の結果を出すための技能を使用することはできない。
ソレは、もはやすでに牙を剝いているのだ。猶予はない。

一、少女を庭に引き留める。
何処からか、酷く心臓に響く轟音が這い寄る。容赦なく、だが全て他人事に、全てを大地から抉り取る自然の破壊が訪れる。
知っている、分かっていた。だが、これほどまでの強烈なものを人の時間で感じるには相当「運が悪ければ」ならない。
悲鳴と怒号と家の柱が砕けるのと、煉瓦やコンクリートががらがらと崩れていく四重奏。歪で、絶望に満ちている。
空に聳えた新しい世界への技術も、そのおとの中に崩壊していく。少女はその音の中、
庭にへたり込んであまりの揺れに動けずにただ小さく身を竦めて、今植え替えたばかりの芽の傍に蹲った。
からころと転がる石や、めきめきと罅割れる家から溢れ出た何かに軽く小突かれることはあったが、
揺れは無事に乗り越え―――嗚呼、ダメだ。家が頽れる。
介入などして、それが一体何になるのだろうか。過去は―――過去だ。
激しい土煙に塗れ、一帯が隠されても尚、塔の影は目立っていた。その姿が半身になっていたとしても。
何処からかぱちぱちと火の粉が爆ぜる音がする。ここからまた始まる。歴史的な、絶望の一端が。(1/1d4)

二、傍観者でいる。
何処からか、酷く心臓に響く轟音が這い寄る。容赦なく、だが全て他人事に、全てを大地から抉り取る自然の破壊が訪れる。
知っている、分かっていた。だが、これほどまでの強烈なものを人の時間で感じるには相当「運が悪ければ」ならない。
悲鳴と怒号と家の柱が砕けるのと、煉瓦やコンクリートががらがらと崩れていく四重奏。歪で、絶望に満ちている。
空に聳えた新しい世界への技術も、そのおとの中に崩壊していく。
足を止めずに家の中に滑り込んでしまった少女の悲鳴が、地鳴りの合間に聴こえてくる。
それをどうしてあげられることもできないのだ。(1d3/1d6)


〇先の二回の選択で、二回とも(結果が一、二問わず)「介入」し、三回目も「介入」した場合
始まるものは仕方がなかった。これは自分が生まれるより昔の出来事で、もう完結したものだ。
目の前の命を寸秒救ったところで一体何が起こるというのか。
大きな揺れが収まり、土埃の落ち着いた頃には静寂とその中に根を張る火の音だけがする。
遠巻きにされる人の呻きや弱々しい呼吸のそれらが事態の深刻さだけを教えてくれる。
目の前で頽れた家だったものにもいずれ火の手が回るだろう。
視界が土煙で隠されたときに、もう諦めた。そんな気がしたのに。
小さな少女は、頬に軽い切り傷をつけながらも、足元で丸まっていた。
震えて目をぎゅっと瞑り、何も見ないように何も聞かないように、世界を拒絶しながらも、息をしている。
小さな命の呼吸を遮るように、遠いのに嫌に響くカンカンカンという金属音がする。
それは毎度やってくる踏切の警告音ではなかった。弾かれるように随分すっきりとしてしまった周りを見れば、
なんとか揺れを凌いだらしい尖塔で寺などで見るような鐘が誰かによって必死に鳴らされていたのだ。
知識としてそれがどういうものか知っても知らずとも、それが人に警戒を呼び掛けるものであると認識するまでに時間はいらない。
警告音と、呻きと悲鳴と、崩壊と。勢いを増す火の音の中、先ほど少女を呼んだ男の声がする。
恐らく少女を探しているのだろう声の意は不思議と聞き取れないが、それでも。

此処だ。

そう、願う。
がらがらと家の残骸をどけながら、苦しい足場に苦心し、現れた男の影に、安堵すら覚える。
その顔が蜃気楼のように揺らいでわからなかったとしても。僅かに捉えることのできる唇が開かれた。

『誠実さと信念だけが人間を価値あるものにする。』

人の手でつくられる警告音が、機械的なものへと変わっていく。
男の手が少女を抱え上げ、そのまま何処かへ走っていく。その行動に迷いはない。
代わりに自らの足が重力に囚われて、その場に落ちる感覚を覚える。見下ろせば最後の一枚が、
そっと爪先から離れていくところだった。風にふわふわとあおられるような動きを見せながら、
少しずつ地面に吸収されるように消えていく。
かくりと足にかかる負荷が消え、地面に膝を付けた頃。
そういえば、警告音は聞こえなくなっていた。
大きなシルエットを描く踏切もなく、そこには土手のようになっていて、頭に路線を乗せている。
いつもの道に戻っていた。
視界の端っこから赤紫の光が昇り始めている。
此処がどうあれ―――せかいはめぐりめぐる。せめて早く帰ろう。
厭なものを見たが、それはそれ。今は今。帰巣本能を手繰り寄せてまた道を進んでいく。
その足元に小さく青白い花がいることに、気づかなくてもいい。
此処は此処だから。
貴方の価値は貴方のおもいが決めるのだ。
忘れないでだなんて、言い寄ったとしても、それはお願いだ。宿命でも使命でも命題でもない。
ただ、誠実であれ。


〇全三回での選択で一回以上、全三回未満「介入」した場合
始まるものは仕方がなかった。これは自分が生まれるより昔の出来事で、もう完結したものだ。
目の前の命を寸秒救ったところで一体何が起こるというのか。
大きな揺れが収まり、土埃の落ち着いた頃には静寂とその中に根を張る火の音だけがする。
遠巻きされる人の呻きや弱々しい呼吸のそれらが事態の深刻さだけを教えてくれる。
目の前で頽れた家だったものにもいずれ火の手が回るだろう。
視界が土煙で隠されたときに、もう諦めた。そんな気がしたのに。
小さな少女は、頬に軽い切り傷をつけながらも、足元で丸まっていた。
震えて目をぎゅっと瞑り、何も見ないように何も聞かないように、世界を拒絶しながらも、息をしている。
小さな命の呼吸を遮るように、遠いのに嫌に響くカンカンカンという金属音がする。
待ってくれ、せめて、目の前のこの子だけは、あきらめたくは、

無情な警告音に、遮られる。
足がずどっと大地に吸われ、何かを奪われていくような、喪失を感じている。
最後に残った花弁が自分から奪い取った何かで膨らんでいく。
まずいという思いを裏腹にその膨らみは土すら持ち上げ、何かを芽吹かせた。
血管が切れて、勢いづいていた血液がそのまま弾け出ていくように瞬間に、それは出てきた。
小さな、手だ。
それは何をするでもなく、ただ握っていた花をぽとりと落として、ひらひらと手を振り、
まるでバイバイとでもいうようにまた血管の中へと潜り直し、花弁はちぎれて消えていく。
残った花の色は酷く赤かったが、それが幻想の道中に見たそれと同じということだけはなぜか直感する。
花の赤はあまりの量にその小さな身では到底受け止め切れることはなく、地面に染みていく。
それが言葉になるなどどうして信じられるだろうか。

『誠実さと信念だけが人間を価値あるものにする。』

まるで自分が価値のないものと嘲り嗤われているような。何様のつもりだとも、不気味だとも、その通りかもと、思いは巡る。
還って行った手の平と同じように赤色もまた、土の中へと少しずつ溶ける。最後に残ったのは本来の色を取り戻した青白い花だ。
まるで、誰かに供えられたもののように其処に横たわる。
踏切の影は消えて、残ったのは土手と、供えの花。
視界の端っこから赤紫の光が昇り始めている。
此処がどうあれ―――時間は朝に回って来る。想うことに使える時間は、案外少ない。


〇全三回での選択で全て「傍観」した場合
始まるものは仕方がなかった。これは自分が生まれるより昔の出来事で、もう完結したものだ。
目の前の命を寸秒救ったところで一体何が起こるというのか。
大きな揺れが収まり、土埃の落ち着いた頃には静寂とその中に根を張る火の音だけがする。
遠巻きされる人の呻きや弱々しい呼吸のそれらが事態の深刻さだけを教えてくれる。
目の前で頽れた家だったものにもいずれ火の手が回るだろう。
視界が土煙で隠されたときに、もう諦めた。
カンカンカン、とあの音がやってくる。
足が重い。
まるで、感覚が奪われ、動く機能を失ったように重い。そこにあるのに、自分のものではないような。
それなのに自分が二足で立てている違和感をどうすればいいのか。
動きはする。だが、それが自分の足だとどうにも信じられなかった。
残っている花弁が、消えるわけでもなくふわりと足に焼き付いた。傷むはずなのに痛みも感じられず、ただ受け取ってしまった。
目の前の踏切だったそこも元通りになり、何も支障はなく。何処かぼうっとした頭で帰ろう、とだけ思う。
せめてとなんとか土手のふもとに咲いている花も知らずのうちに踏み抜いて、家へ。
赤紫の光が目を覚まさせる頃になって、ようやく自分の異常に気が付いた。
家の中が―――石鹸や洗剤、柔軟剤、香水、芳香剤、部屋に飾った花、全ての香りが―――酷く、鉄のものを帯びている。
だから、どうというわけではない。食物の類にはそれを感じ得ないし、本当にどうしようもなく気分を害し、日常生活を脅かすものでもない。
ただ、ただ、不快なだけだ。
寝床に辿り着いて泥のような眠気に沈んでも、鼻の奥に染みついた鉄はとれなかった。
ふわふわとした脳に、なにか、こえがきこえたようなきがする。

『誠実さと信念だけが人間を価値あるものにする。』

しかしてその先に何が置いてあっても、人間にはわからない。


<END分岐について>
ENDの分岐についての項。最終選択(三回目)後の結果を含み、最終分岐となる。これを上からA,B,Cと割り振って明記する。

END A 「価値ある者」 全三回中すべてに「介入」した場合
全介入:1d10
選択する意思:1d6
ただ誠実であれ:1d8
此処にあるもの:1d4+1

絶望を見ても尚、その心は選択することを選び続けた。目の前のこと、出来得ることを見ていた。
何かを為すことに真っ直ぐで、それが何から来る衝動かは、問わない。
ただ、それが「誠実」であったと、ちいさな花が評価した。
誰もが素晴らしい人になりたいと願っている。その足取りが続きますように。
その誠実が探索者として進む貴方の命を蝕んでも、此処がどうあれ―――せかいはめぐりめぐる。


END B 「迷う者」 全三回での選択で一回以上、全三回未満の「介入」
介入:1d8
選択する意思:1d3
信念なく:1d3
此処はあるということ:1d3

絶望を見ても尚、選び続けることは難しいことだ。選んだ結果がさらなる絶望を呼ぶことも
あると分かっていながら突貫するのは無謀か?蛮勇か?それとも英雄たり得る道か。
その答えは永遠に貴方には分からないかもしれない。いつか、分かるかもしれない。
どちらにせよ、貴方は自分の迷いのままに在った。
人間らしい。それは好ましい。
ただ時には選ばなくてはならない。そのことを忘れなければ、いずれ「価値」を評価されるだろう。
その迷いが探索者として進んだ貴方の命を時に救うかもしれない。此処がどうあれ―――時間はやってくる。


END C 「受け身」
未介入:1d6
選択しない心:1d3
受皿:+1
「わすれないで」:+2
嗅覚の異常:1d6か月〜1d10か月。本来「花」の香りがするもの全てに鉄分の臭いを嗅ぎ取ってしまう。
日常生活動作に支障はないが、ふとした時に心を抉るだろう。一週間ごとにSANC(1/1d3)。自然治癒以外に収まる手段はなく、治療できない。

絶望を見ても尚、選び続けることは難しいことだ。あなたはすでにそれを何処かで悟っていたのか?
なんにせよ「何もしない」というのも正しいことだ。例えば今回のような夢幻にはいいだろう。だが、それが、いつか。
何も観ず、何も選ばず、ただ流すだけではどうしようもない世界があることを思い知らされるだろう。
忘れないで。
貴方がどうあれ―――死はやってくる。
その臭いを少しでも感じられることに感謝してほしいぐらいだ。

extra
「今際の踏切」をスルーする

嗅覚の異常:1d6か月〜1d10か月。本来「花」の香りがするもの全てに鉄分の臭いを嗅ぎ取ってしまう。
日常生活動作に支障はないが、ふとした時に心を抉るだろう。
自然治癒以外に収まる手段はなく、治療できない。一週間ごとにSANC(1/1d3)。
聴覚の異常:1d6か月〜1d10か月。カンカンカンという警告音が続く。寝る時も。
言葉を交わしているときも。何の時でも。日常生活動作に支障はない(職業次第では十分に支障が出ることがあるだろう)が、
ふとした時に心を抉るだろう。自然治癒以外に収まる手段はなく、治療できない。。一週間ごとにSANC(1/1d3)。
これは「今際の踏切」との遭遇を望み、シナリオに対し前向きになると解消される。


<補遺>
"一見して人生には何の意味もない。 しかし一つの意味もないということはあり得ない。"-アインシュタイン
"酒を飲め。こう悲しみの多い人生は眠るか酔うかしてすごしたほうがよかろう。"-ウマル・ハイヤーム
"幸福は夢にすぎず、苦痛は現実である。"-ヴォルテール
"仰いで天に愧じず、俯して人に愧じざるは、二の楽しみなり"-孟子

"誰もがすばらしい人になりたいと願っている。一方、成長することは誰も望んでいない。"
"誠実さと信念だけが人間を価値あるものにする。"-ゲーテ

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