カメラ、写真に関連した漫画を紹介するWikiです。

著者高梨みどり
掲載誌・連載時期モーニング'03.46号〜'04.38号
単行本全2巻(絶版中) Yahoo!コミック 講談社デジタルコミックス
 「ウエスト・サイドストーリー」('61年封切りの映画版)に初めて触れたのは高校の時でした。「ジェッツ」と「シャークス」の二つの少年不良団のナワバリ争いとそのグループの対立を超えたトニーとマリアの恋物語を軸に、アメリカの世相も織り交ぜたなかなかの名作だと思い、同時にプエルトリコからの移民としてこの地で自由を夢見ながらも差別による辛酸を舐めてきたであろうシャークスの少年少女はさぞつらい思いをしてきたであろう(その象徴が劇中歌「アメリカ」ですな)とも思いつつ見ていました。様々な国からの移民が多い中、民族同士の軋轢が絶えないのも昔からの話で、現に現在に至るもアメリカでの黒人やヒスパニックに対する差別は根強く残っており、今回紹介する「アメリカなんて大きらい!」でも、白人の中年男性が黒人に拳銃を突きつけて、
「俺はカラードはすべてこの国から出て行って欲しいと思っている!」
 と凄む件があります。自由の国と言えどそれに甘んじる余りにトラブルが起こり得ないはずはない。人種によって、信条によって、或いはその他の些細とも思えるような事由によっても。だから庶民も武装する権利はある。ナインイレブン以降も彼らのそういう思いは変わってはいますまい……というように今もって海外へ行った経験のない私がアメリカ文化について高説を打とうなど誠に烏滸がましい話でしょうが、この国の近況を知るためのテキストとして本書は価値がある、と私は思っています。嬉しい事も、悲しい事も。

 2003年の東京。浅草の老舗中古カメラ店「タチバナカメラ」の一人息子で写真家の橘光はナインイレブン以来アメリカで消息を絶ち、彼女の緒方舞子は光を探すためにアメリカへ渡る。勤めていた会社を辞めて、住んでいたアパートも引き払って。そこで彼女達が見た物は? というのが大筋です。案内役として光の父親で「タチバナカメラ」の社長の橘譲治も同行して、文化の違いについて話したり光の手がかりを一緒に探したりもしています。店員の間では我がままで愛想のない社長で通っていて、最初は光はもう死んだと言っていても、後になって舞子と同じくらい、いやそれ以上に光の身を案じていたことが分かり、そしてぶっきらぼうでも決して悪い人ではないことが分かってきます。
 舞子と譲治はニューヨークのグラウンド・ゼロを振り出しにニュージャージー州、マサチューセッツ州、メーン州(以下ネタバレ回避のため割愛)と東海岸を転々と回り、その間にもカーディーラーのちょっと信じられない商売、銃についての考え方、カジノを根城にするさわ師(ギャンブルでカモをわざと勝たせて煽り、ここ一番で勝負を逆転させて金を巻き上げる悪党)との勝負、偶像禁止の部族との軋轢等に遭遇します。メインテーマはこうしたアメリカなりの文化であり、それらが現地で舞子が出会う人々、そして譲治の口から話の中で語られていきます。余談ながら昨年永田町にオープンした「フーターズ」も登場しており、こちらが紹介されるのはそれより5年早かったですね。
 あるレビューでは
「カメラの難しい話があったから今一つ人気がなかったのかもしれない」
 と書かれていましたが、私がカメラや写真に詳しいということを差し引いても特に難しいという印象はそれほどありませんでした。というよりフィルム感度、シャッター速度、絞り、EV値等専門的な事が話の肝になっているエピソードは全22話の内3話ほどしかありませんし、作中や欄外できちんと解説はされています。それでも頭が痛くなると仰る方もおありでしょうが、写真を撮るに当たってはこれくらいは知っておけば、コンデジを使うにしても思うように撮れなくて困る心配が減る、と思うのですが。とは言えこちらで取り上げてきた別の作品でもその辺りを解説するために苦心した跡が見られますし、理解を得るのも難しいのでしょうか(前にも書いた通り、私もミリタリー関係は好きだけど込み入った話にはなかなかついていけませんしね)。

 浅草の中古カメラ店(立地や品揃え、譲治のデスクの壁面や修理工房の充実ぶりから思い当たる店があるのですが)から物語が始まるとあって、カメラの登場頻度は当然高いです。光のカメラはライカM4とニコンFM3A(他にF3も使っていたようです)で、カメラ店の商品にライカB、レチナIIc、ライカM6TTL、ローライフレックス2.8F、現地で光が使っていたことになっているカメラとしてローライコードIII、カジノのエピソードではハッセルブラッド500C/M、ライカM3オリジナルブラックペイント(オーナーが自分でメッキするなり塗装専門業者に頼むなりして白いボディを後から黒く塗ったカメラもあるので、元から黒いモデルをこう読んで区別しています)が登場してます。カメラ好きなら嬉しくなるラインナップではありますまいか。描写は丁寧ですし、作者は実機をお持ちだけあってファインダーフレームまできっちり再現されてました。こちらのWikiを読まれている方ならこれだけでも読む価値はありましょう。

 この単行本、最近絶版になったようで書店でもネット通販でも新品は見なくなりました。私が本稿の執筆を決めた数週間前にはまだ流通在庫はあったはずなのですがそれもなくなったようです。上記の通りYahoo!コミックに上がっているので古本以外ではそちらをご利用ください。この他高梨氏は「ぽうとれいと」(こちらも絶版)というカメラ物も描かれており、こちらも写真、カメラにまつわる話は丁寧に描いてありますのでお勧めです。

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