カメラ、写真に関連した漫画を紹介するWikiです。

著者小道迷子
掲載誌・連載時期月刊カメラマン'92.5〜'93.8
単行本潮出版社(絶版)

 「ネコじゃないモン!」の項で同じくヤングジャンプ連載であった「ド忠犬ハジ公」について少し触れましたが、あれも当時子供だった私にとって四コマ漫画との(鮮烈な!)出会いだったように思います。それから偶々これも父親が買ってきていた「週刊漫画TIMES」に掲載されていた「こにくらじいさん」、「ぴんくギャル」、そして小学生〜中学生時分にコロコロで大ブレイクしていた「つるピカハゲ丸」で大分洗礼を受けました。起承転結を一コマ一コマで描いて笑わせるこのジャンル、堪え性がなくて長々と続く漫画になかなかついていけないような私に取っては入っていきやすいのですな。そして今にして思えば
「こんな下品なの読むもんじゃありません」
 と母親に言われながらも内緒で読んで、(呉智英氏は「傍に寄ると跳ね飛ばされるほどのパワーだけで描いている」と評された)メッタメタガキな絵で強烈なインパクトをぶつけて、さっき惨殺されたはずのキャラクターが後のコマで何事もなかったように登場するような不条理さを持ち味に読ませることでは谷岡ヤスジ氏は秀でておられたのではないか、と思います。
 こうしたナンセンスコメディという四コマの主流の中で、小道迷子氏は面白い作品を描かれる作家の一人と言えましょう。「風します?」で羊の団体が
「日本チャチャチャ」
 というシュプレヒコールをしている中で、中の一匹が
「日本ちゃんこなべ」
 とちゃんこ鍋を出すとオチのコマで力士の大群に羊が追われる、あれは好きでした。そしてこのWikiで取り上げるからには彼女は月カメを舞台にカメラがテーマの漫画を連載していたこともあったのですが、さていかなる漫画だったのでしょうか?

 今回紹介する「ぱしゃりんこ」は「ライカの帰還」が終わって暫くしてから「カメラマン」'92年5月号〜'93年8月号に渡って連載された四コマです。私は今回のトピックのためにアマゾンの古本屋で単行本を購入したのですが、これが上質の紙を使った豪華な装丁で、話の区切りに適当なようで存外侮れない記述もある書き下ろしコラム(後述)もあれば、漫画評論では有名なインテリゲンツィアこと呉智英氏と作者の小道氏の対談も収録されている豪華な本でした。
 サブタイトルに「カメラマン島野大介とその家族の物語」とある通り、主人公のカメラマンでカメラ店経営者の島野大介とその妻、長男のかめお(大卒後家業を継ぐでもなく不良を気取ってブラブラして、後に家を出て自活するべく道路工事のアルバイトに就く)、長女のかさね(写真家を目指して一流写真家の荒林先生に師事すれどセンスから今一つ)の四人家族を中心に話が進んでいきます。持ち味は独特のシュールな話運びで、上記の設定を活かしたコメディが毎回展開される訳ですが、その最たるはリモコンで動かせるカメラ、シャッターを押すと祭囃子が流れるフィルム、秋刀魚に似せたスパイカメラといった大介の珍発明(後にその失敗作をかめおが作業中に発掘する件もあります)です。
 そんな一家以外にも脇も変わったキャラクターが多く、その代表が「風します?」の羊、「なんたって桃の湯」の河童といった小道氏の漫画では定番の「擬人化された動物」でありましょう。初回に絶滅したはずが突然変異で今日まで生きているという設定のニホンカワウソが登場したと思えば5話で何の脈絡もなくカバも登場し、両者とも島野家に居候してカメラ店を手伝ったり、カメラを扱ったりするレギュラーになってます。動物以外でも大介が惚れこんで、かさねも「あたしの本当のお母さま」と慕う和服の女性(だけど好物が立ち喰いそば)、子持ちの貧乏にもかかわらず新しいカメラが出るたびに欲しがる旦那と毎回必死で止める妻、大介と将棋を指したり、変わった発明品を持って来たりもする、野島という大介とは縁浅からぬ中年男性と一癖ある人物が脇を固めてストーリーに彩りを添えてます。

 シュールな話がメインでメカや萌えとは基本無縁の漫画ですから、本編に登場するカメラの描写は適当です。唯一サブタイトルで固有名詞が登場したミノックスも110カメラを適当に描いたような感じでしたし、このカメラは何だと調べる楽しみはありません……が、そこで登場するのが毎回の話の幕間に収録されている、先に触れたコラムです。
 心霊写真の撮り方(と見せかけてそう見える写真の撮れる原因の解説)や写真家の業界用語の解説(これを無闇に使うと逆に軽蔑されることもあると思うのだけど)をテーマにしていると思いきや、ぽっちゃりした女の子を斜めから狙うとスリムに見せられるとか、白いハンカチは物撮りのレフ板代わりに使えると結構実践で役に立つことが書いてあるほかに、挿絵に登場するカメラは丁寧とは言えないけど本編よりはっきり描いてあって、選択もニコンS2、マミヤ16、フーツラ(ドイツのレンズシャッター機)、ミノルタ16、キヤノンVTデラックス、ロボットツースター、トプコンホースマン980となかなか深い選択です。見る人が見ればそう思えると思いますけども。

 こちらも絶版中ですから古本屋を探すしかありません。「ライカの帰還」に比べるとマイナーであるが故に遭遇率も少ないですが、あればそんなに高い訳でもありません(私のはアマゾンに出店している古本屋で1円+送料でした)。私は本誌連載時は面白く読んでましたし、呉智英氏のお話にも価値があると思ってますので私に同意される方なら探してみてもいいのではありますまいか。

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