カメラ漫画夜話 - ゆりてつ
著者松山せいじ
掲載誌・連載時期サンデーGX'11.04〜連載中
単行本小学館 サンデーGXコミックス1巻〜 ソク読みイーブックジャパンでも読めます

「キャラ萌えできれば全て良し」
 一部の方達からはこのお言葉は「真理」とまで言われているオタの金言であります。私とてもその金言の価値についてどうこう言う前に自分を省みれば、一人でも気に入ったキャラがいるなら他のブロガーやレビュアーからの評価はどうあれ付いていく、という傾向はかなり強いです。現に私は「機動戦士ガンダム」ではガンダムばかりではなくフラウ・ボゥの存在も気になってましたし、「けいおん!」では秋山澪に惚れてましたし、「瞳のフォトグラフ」でも一宮ユイの存在が読むきっかけになった大きな理由でした。「侵略!イカ娘」でも佐倉清美が登場してから読むのが一層楽しくなりましたしねぇ。その他社会人以来リア充一直線だったのが「東方シリーズ」以来登場キャラにハマった事例もあり、別のあるオタは、
「女子小学生にまではハマらないよ」
 と常々言っていたはずが、どういうきっかけによるものか「魔法少女プリティサミー」を見て砂沙美に熱を上げていたものです。同じ頃私は「カードキャプターさくら」を読んでいて、それならきっと私もハマるであろうと
「砂沙美のほか魔法少女はいまさず、砂沙美のほか嫁はいまさず」
 と言わんばかりに「天地無用!」シリーズにさほど興味のなかった私(更に言えば私は観月先生派でした……なんて言ってても「魔装機神」でプレシア・ゼノサキスに惚れてたりしますけども)に熱心に布教してきたのには閉口しましたが(この辺りのこともいずれ書いてみたいものです、んっふっふー)。
「それでいいのかお前、この駄作からお前の嫁を取ったら一体何が残るっていうんだい?」
「これほどの良作だ、他にもっと評価されるべきところはあるはずじゃないか」
 というようにそうした漫画やアニメに向き合う姿勢についていい顔をされない事例も確かにありますが、

「(何かを好きになる)きっかけなんて人の数だけあるはずだし」(相原ハルカ@瞳のフォトグラフ)

 それでいいではありませんか。ストーリーが面白い、作画が自分好み、演出が凝ってる等の一つだけの理由でもアニメや漫画を好きになる事ができたなら。ましてそれが未知の面白い世界への招待状になるなら、ね?

 そこで今回取り上げるのは「ゆりてつ 市立百合ヶ咲女子高鉄道部」です。前作「鉄娘な3姉妹」に引き続いて毎月日本全国津々浦々の鉄道の旅をしていく漫画ですが、今回は作品の雰囲気をガラリと変えて女子高生四人が「部活」という体裁で旅をするというスタイルになってます。絵柄も「エイケン」以来の鋭角的なタッチから目がくりっとしたどんぐり目になって輪郭線も柔らかいタッチに変えられてます(奥様の紗夕氏の絵柄に近くなってますね。松山氏はそれで毎回苦労なさっているそうですが)。前作から引き続いて能登まみこ(本作からはひらがな表記)がツッコミポジションで登場しており、彼女が食いしん坊の石塚まろん、ハードオタの鶴見はくつるを誘って、三人に運命的な出会いを果たして部長に祭り上げられることになる日野はつねも加えて部を発足させて旅立つ訳ですが……
 いきなり北斗星で上野から札幌まで行くのがトバしてます。絵柄が変わってもインパクトでガツンと見せる松山氏の作風は健在ですね。そして行く先々での絵になる観光スポットやグルメ情報も丁寧です。1巻では「とある魔術の禁書目録」と「けいおん!」の聖地巡礼案内もあり、はくつるが時折かますネットスラングやオタ会話も本作を楽しむポイントと言えましょう。
 今回はテツ用語が「わけがわからないよ」という読者でも観光で楽しめるような話になっているな、と読んでいて思いました、全体的に。髪型や私服も毎回変化をつけて、知る人ぞ知るネタも要所々々で散りばめられていて、それを探す楽しみもありますね。そうして
「今回もこうして楽しい旅ができて、私たちが一つになれたのは部長のはつねちゃんのおかげだよ、はつねちゃん大好き!」
 と部員の想いがクライマックスで語られており、そのほのぼのした雰囲気も見所ですな。
 カメラははつねが入学祝いに買ってもらったという富士ファインピックスZ800EXR(ピンク)、まみこがソニーα55を持ってます。レンズは普段使いがDT18-250mmF3.5-6.3で、望遠が要る時は70-400mmF4-5.6Gを使ってます。サブカメラなしでどんな被写体でも大体不自由しないレンズを一本常用して、気合入れて電車を撮るなら白バズーカズームとごく実用的な組み合わせですね。1巻にははくつるのフィーチャー回がありましたし、この先まみこの当番回があれば、カメラ屋写真について語っていただきたいところです。

 先にも話した通り、今回は鉄道用語に関する深い話題は抑え目にしてトリビア的な話題を多くして(電車も法定の車検をパスしないと走れないしそのためのお金も維持費として要る、某駅で降りる一般客は釣り人しかいない、予約しないと買えない駅弁がある等)、電車を降りた後の観光にも重きを置いている構成なので旅行漫画としても楽しめるようになっています。少なくとも表紙買いしても楽しめる事と思われますので是非どうぞ。でも私の近所の本屋さんでは軒並み同じ10/19発売の「マンけん。」と比べて入荷数少なかったんですよね。そちらの方が注目度高かったのでしょうか?


↑現在サンデーGXチャンネルで「ゆりてつ取材ウラ日記!!」が配信されてます。連載中の話と合わせてご覧ください。