![]() んー……今夜も、月が綺麗♪ |
![]() ……でも、あなたも負けてないよ♪ 心を奪うような深紅の花びら♪ |
![]() あ、千夜ちゃん。 レッスンお疲れさま♪ |
![]() お嬢さま? お帰りではなかったのですか。 お仕事は、先に終わっていたのでは。 |
![]() すこし前にね。 でも、一緒に帰ろうと思って♪ |
![]() ありがとうございます。 お嬢さまと帰れて嬉しく思います。 ですが、待っていただくほどでは。 |
![]() そんなこと気にしないの。 限られた時間をどう使うかは、 私の自由でしょ♪ |
![]() それに、待ってる時間も楽しいよ。 ほら……この子。見て♪ |
![]() ……薔薇ですか? |
![]() そう。 スタジオから事務所に帰る途中、 道端にぽつんと落ちてたの。 |
![]() なるほど。ということは、 誰かの落し物でしょうか。 |
![]() うん、たぶんね。 道端に落とされて、短い命を 散らしていくのは可愛そうじゃない? |
![]() だから拾ったの。 誰にも愛でられず散るくらいなら、 私が愛でてあげようって。 |
![]() お嬢さまらしいですね。 |
![]() ほら、千夜ちゃんも見てあげて。 艷やかで、とっても綺麗でしょ? |
![]() ええ、綺麗ですね。 儚いようで力強く、美しく、 一目見たら目を離せぬ……魅惑の花。 |
![]() 薔薇って、魅力的だよね。 見るものの心を惹きつけて、奪って、 ずっと虜にしちゃうんだから。 |
![]() それに、この血のように赤い色。 千夜ちゃんの黒い髪にも白い肌にも、 よく似合うよ♪ |
![]() ……ありがとうございます。でも。 薔薇は、お嬢さまのように 美しい方にこそ相応しい。 |
![]() よろしければ、今度お嬢さまの お部屋に飾っておきましょう。 |
![]() それって…… 千夜ちゃんが私に薔薇を贈ってくれる ってこと? |
![]() ええ。お望みとあらば、毎日でも。 |
![]() あはっ♪嬉しい! |
![]() ねぇ、千夜ちゃん。 薔薇は贈る数によって、 意味が変わるんだよ。 |
![]() そうなのですか。 意味……。 メッセージのようなものですか? |
![]() そう。例えば…… 1本なら『一目ぼれ』、 3本なら『愛しています』。 |
![]() ……そうなのですか。 お嬢さま、博識ですね。 |
![]() ねえねえ♪ 千夜ちゃんだったら、 私に何本贈ってくれる? |
![]() そうですね………………。 |
![]() 1000本、でしょうか。 |
![]() ……あはっ♪ そんなにたくさん? |
![]() ええ。お嬢さまに贈るのであれば、 1本や3本ではとても足りません。 1000本くらいは必要かと。 |
![]() 千夜ちゃんらしい数字だね♪ そんなに想ってくれるなんて。 |
![]() でも……そんなにもらったら、 部屋に入れなくなっちゃう♪ |
![]() すみません。多すぎましたか。 |
![]() 多すぎるから……私からも、 千夜ちゃんにお返しを贈るね。 1本だけ♪ |
![]() ありがとうございます。 ……『一目ぼれ』ですか。 |
![]() あはっ♪ |
![]() では、私からは999本を贈ります。 ……ちなみに、999本は、 どのような意味になるのでしょう? |
![]() さあ……。 どんな意味だったらいい? |
![]() どんな意味であっても。 他人が決めたメッセージより、 自分が込めた気持ちが大切ですから。 |
![]() そうだね♪でもせっかく貰うなら、 花束じゃないほうがいいな。 切り花の命は、とっても短いもの。 |
![]() では、いつか…… また庭付きの家に住み、 たくさんの薔薇を植えましょう。 |
![]() 999本と1本の手入れは、私が。 お嬢様は、花を愛でたり、 月光浴をしてください。 |
![]() あはっ、それも素敵だね。 今夜みたいに月が綺麗だと、特に♪ |
![]() ……ええ。さて、こんな時間です。 帰って夕飯の支度をしますね。 |
![]() 今日の夕飯、何かなぁ♪ |
![]() お嬢さまがお好きなものですよ。 帰ってのお楽しみです。 |
![]() あはっ♪ 千夜ちゃんが作ってくれるものは、 なんでも美味しいよ。 |
![]() ……気持ちを込めていますので。 さあ帰りましょう、お嬢さま。 私たちの家へ。 |
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