最終更新: chorus_mania 2024年04月15日(月) 23:03:26履歴
混声合唱組曲「稲作挿話」
宮沢賢治の詩に作曲。
「それでは計算いたしませう」には「農民芸術概論綱要」から台詞の引用がある。
「みさかえはあれ」の詩は戯曲「饑餓陣営」より。
初演時の曲順は「あすこの田はねえ」「みさかえはあれ」「それでは計算いたしませう」。
「それでは計算いたしませう」には「農民芸術概論綱要」から台詞の引用がある。
「みさかえはあれ」の詩は戯曲「饑餓陣営」より。
初演時の曲順は「あすこの田はねえ」「みさかえはあれ」「それでは計算いたしませう」。
場所は湯口の上根子ですな
そこのところの
総反別はどれだけですか
五反八畝と
それは台帳面ですか
それとも百刈勘定ですか
いつでも乾田ですか湿田ですか、
すると川から何段上になりますか
つまりあすこの栗の木のある観音堂と
同じ並びになりますか
あゝさうですか、あの下ですか
そしてやっぱり川からは
一段上になるでせう
畦やそこらに
しろつめくさが生えますか
上の方にはないでせう
そんならスカンコは生えますか
マルコや・・はどうですか
土はどういふふうですか
くろぼくのある砂がゝり
はあさうでせう
けれども砂といったって
指でかうしてサラサラするほどでもないでせう
堀り返すとき崖下の田と
どっちの方が楽ですか
上をあるくとはねあげるやうな気がしますか
水を二寸も掛けておいて、あとをとめても
半日ぐらゐはもちますか
げんげを播いてよくできますか
槍たて草が生えますか
村の中では上田ですか
はやく茂ってあとですがれる気味でせう
そこでこんどは苗代ですな
苗代はうちのそば 高台ですな
一日一ぱい日のあたるとこですか
北にはひばの垣ですな
西にも林がありますか
それはまばらなものですか
生籾でどれだけ播きますか
燐酸を使ったことがありますか
苗は大体とってから
その日のうちに植えますか
これで苗代もすみ まづ ご一服して下さい
そのうち勘定しますから
さてと今年はどういふ稲を植えますか
この種子は何年前の原種ですか
肥料はそこで反当いくらかけますか
安全に八分目の収穫を望みますかそれともまたは
三十年に一度のやうな悪天候の来たときは
藁だけとるといふ覚悟で大やましをかけて見ますか
そこのところの
総反別はどれだけですか
五反八畝と
それは台帳面ですか
それとも百刈勘定ですか
いつでも乾田ですか湿田ですか、
すると川から何段上になりますか
つまりあすこの栗の木のある観音堂と
同じ並びになりますか
あゝさうですか、あの下ですか
そしてやっぱり川からは
一段上になるでせう
畦やそこらに
しろつめくさが生えますか
上の方にはないでせう
そんならスカンコは生えますか
マルコや・・はどうですか
土はどういふふうですか
くろぼくのある砂がゝり
はあさうでせう
けれども砂といったって
指でかうしてサラサラするほどでもないでせう
堀り返すとき崖下の田と
どっちの方が楽ですか
上をあるくとはねあげるやうな気がしますか
水を二寸も掛けておいて、あとをとめても
半日ぐらゐはもちますか
げんげを播いてよくできますか
槍たて草が生えますか
村の中では上田ですか
はやく茂ってあとですがれる気味でせう
そこでこんどは苗代ですな
苗代はうちのそば 高台ですな
一日一ぱい日のあたるとこですか
北にはひばの垣ですな
西にも林がありますか
それはまばらなものですか
生籾でどれだけ播きますか
燐酸を使ったことがありますか
苗は大体とってから
その日のうちに植えますか
これで苗代もすみ まづ ご一服して下さい
そのうち勘定しますから
さてと今年はどういふ稲を植えますか
この種子は何年前の原種ですか
肥料はそこで反当いくらかけますか
安全に八分目の収穫を望みますかそれともまたは
三十年に一度のやうな悪天候の来たときは
藁だけとるといふ覚悟で大やましをかけて見ますか
あの種類では窒素があんまり多過ぎるから
もうきっぱりと灌水を切ってね
三番除草はしないんだ
……一しんに畔を走って来て
青田のなかに汗拭くその子……
燐酸がまだ残ってゐない?
みんな使った?
それではもしもこの天候が
これから五日続いたら
あの枝垂れ葉をねえ
斯ういふ風な枝垂れ葉をねえ
むしってとってしまふんだ
……せわしくうなづき汗拭くその子
冬講習に来たときは
一年はたらいたあととは云へ
まだかゞやかな苹果のわらひをもってゐた
いまはもう日と汗に焼け
幾夜の不眠にやつれてゐる……
それからいゝかい
今月末にあの稲が
君の胸より延びたらねえ
ちゃうどシャッツの上のぼたんを定規にしてねえ
葉尖を刈ってしまふんだ
……汗だけでない
泪も拭いてゐるんだな……
君が自分でかんがへた
あの田もすっかり見て来たよ
陸羽一三二号のはうね
あれはずゐぶん上手に行った
肥えも少しもむらがないし
いかにも強く育ってゐる
硫安だってきみが自分で播いたらう
みんながいろいろ云ふだらうが
あっちは少しも心配ない
反当三石二斗なら
もうきまったと云っていゝ
しっかりやるんだよ
これからの本統の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ
ではさようなら
……雲からも風からも
透明な力が
そのこどもに
うつれ……
もうきっぱりと灌水を切ってね
三番除草はしないんだ
……一しんに畔を走って来て
青田のなかに汗拭くその子……
燐酸がまだ残ってゐない?
みんな使った?
それではもしもこの天候が
これから五日続いたら
あの枝垂れ葉をねえ
斯ういふ風な枝垂れ葉をねえ
むしってとってしまふんだ
……せわしくうなづき汗拭くその子
冬講習に来たときは
一年はたらいたあととは云へ
まだかゞやかな苹果のわらひをもってゐた
いまはもう日と汗に焼け
幾夜の不眠にやつれてゐる……
それからいゝかい
今月末にあの稲が
君の胸より延びたらねえ
ちゃうどシャッツの上のぼたんを定規にしてねえ
葉尖を刈ってしまふんだ
……汗だけでない
泪も拭いてゐるんだな……
君が自分でかんがへた
あの田もすっかり見て来たよ
陸羽一三二号のはうね
あれはずゐぶん上手に行った
肥えも少しもむらがないし
いかにも強く育ってゐる
硫安だってきみが自分で播いたらう
みんながいろいろ云ふだらうが
あっちは少しも心配ない
反当三石二斗なら
もうきまったと云っていゝ
しっかりやるんだよ
これからの本統の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ
ではさようなら
……雲からも風からも
透明な力が
そのこどもに
うつれ……
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