室生犀星の詩に作曲。「朱の小箱」のみアカペラ。
「赤の小箱」は合唱名曲シリーズNo.46(2017年度全日本合唱コンクール課題曲集)のF4として選ばれた。
朱の小箱
君がかはいげなる卓のうへに
いろも朱なる小箱には
なにを秘めたまへるものなりや
われきみが窓べをすぎむとするとき
小箱まづ目にうつり
こころをどりてやまず
そは優しかるたまづさのたぐひか
もしくば
うらわかき娘ごころをのべたまふ
やさしかるうたのたぐひか
すて石に書きたる詩
神よ
彼女おもひあがりて
め鳩のごとく
小さき胸をいためてあらば
はや 逢ふときをすすめたまへ
その通ひくる路のべに
さく花あらば
つつがなく暖かき光のなかに
はれやかに咲かしめたまへ
ああ 血もて血をしたたむごとく
蝙蝠
かうもりは闇のしたたり、
われの憂へるもののしたたり、
げにかうもりの過ぎゆくとき、
女らの乳ぶさはやぶられ
女ら処女をうしなふ、
かうもり来よ
その翼は闇のひとくれ、
かうもり来よ、
その鋭どきくちばしをもて、
円き乳ぶさを破りて去れ。
冬草
かなしきひれをうちふり
をみな湯にいればまことに魚のごとし。
その肌はなめらかに泳ぎいで
しめやかになまめきしにほひもす。
さればかの浴場のながれ湯のもとに
冬もあやしく萌ゆるみどりの草ありて
さみしき空にかげをうつせり。
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