河竹黙阿弥作の「
青砥稿花紅彩画」から。
知らざあ言って聞かせやしょう
知らざあ言って聞かせやしょう。
浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜、その白浪の夜働き、
以前を言やあ江ノ島で、年季勤めの児ヶ淵、江戸の百味講の蒔銭を、当てに小皿の一文字、
百が二百と賽銭の、くすね銭せえだんだんに、悪事はのぼる上の宮、岩本院で講中の、
枕捜しも度重なり、お手長講を札付きに、とうとう島を追い出され、それから若衆の美人局、
ここやかしこの寺島で、小耳に聞いた祖父さんの、似ぬ声色で小ゆすりかたり、名さえ由縁の弁天小僧菊之助とは俺がこった。