ラブライブ!派生キャラ チュン(・8・)チュンのまとめwikiです。

「ねぇねぇ、みんなはもう見に行った?」

 夕陽が差し込む音ノ木坂学院アイドル研究部部室。練習が終わり各々が着替えを始めるなか、唐突に穂乃果が話題を振った。

「いったい何です、藪から棒に…。商店街に新しくできたパン屋のことですか?」

「穂乃果ちゃんが前から観たがってた映画のことかなぁ?」

 穂乃果の急な振りにも即座に返しができるあたり、やはり海未とことりは幼馴染である。ところが、穂乃果の話題はどうやらそのいずれでもないようだ。

「違うよ〜。ほら、例の公園のアイドルだよ!」

「何よそれ、μ’sのお膝元でアイ活やるとはいい度胸してるじゃない!いったいどこのどいつよ!?」

 アイドルという言葉に敏感に反応するあたり、さすがはにこだ。アイドル研究部部長は伊達ではない。

「アイドルっていってもスクールアイドルじゃないよ。ほら、見てみて!」

 穂乃果は慣れた手つきでスマートフォンを操作し、画像フォルダを開いてみせた。海未たちは穂乃果を囲むように集まり、液晶画面に注目する。

「これは…鳥ですか?」

「ずいぶんと珍しい鳥さんやね」

「丸々しててかわいいにゃ〜」

「確か…チュンチュンだっけ?」

 穂乃果の画像フォルダはとあるチュンチュンの写真で溢れていた。ペットとして飼われていたチュンチュンが野生化するのはさほど珍しいことではないが、音ノ木坂学院近くの公園に住み着いたこのチュンチュンは人懐こくて愛嬌たっぷりなことから、ちょっとした人気者となっていた。初めは近隣住民だけがその存在を知っていたのだが、愛好家が撮影した写真をブログにあげたことでたちまち反響があり、今では遠方からはるばる公園を訪れる者も増えてきている。「公園のアイドル」という愛称もすっかり定着していた。

「いや〜、実際に見てみると写真よりもずっとかわいいんだよ。お菓子をあげるととっても幸せそうな顔するんだもん。デジカメの容量いっぱいに撮っても足りなかったから携帯にも撮っちゃった」

 チュンチュンのことを話す穂乃果の表情は満ち足りていた。他のメンバーも愛くるしいチュンチュンの姿に視線が釘づけになっている。かわいいものには目がない凛と真姫は早速携帯の取り合いを始めていた。

「真姫ちゃん、さっきから一人で見ててずるいにゃー!」

「うるさいわね。もう少しだけ見たら渡すわよ」

「さっきもそう言ってたよ!いつになったら凛にも見せてくれるの!?」

「はいはい、喧嘩しないの」

 絵里にたしなめなられて凛はようやく引き下がったが、頬を膨らませていかにも不満げだ。結局、穂乃果が後で画像を送信することを約束し、ようやく凛の表情は晴れたのだった。

「穂乃果ちゃんからの写真、楽しみだにゃ〜♪」

「良かったね、凛ちゃん」

 サンタからのプレゼントを待ちわびる子どものような凛の笑顔に、花陽の表情も明るくなる。

「そうだ、せっかくだから今からチュンチュンに会いに行こうよ!」

 凛はよほどチュンチュンが気に入ったらしい。しかし、さすがにあたりも暗くなってきたため、この提案は3年生を中心に却下されてしまった。

「しょうがないにゃあ…。また今度にするよ」

 諦めて帰り支度を始める凛。そんな凛を見て、花陽は週末にでもチュンチュン見物に付き合ってあげようと心の中で決めていたのだった。

 その日の夜、夕食を終えて自室に戻って来た花陽は、携帯に凛からの着信履歴があることに気づいた。電話を掛け直した花陽の耳にはすぐに元気のいい凛の声が響いてきた。

「もしもし、かよちん?さっきね、穂乃果ちゃんから写真が送られてきたんだ。部室で見れなかった写真もあって、本当にかわいいんだよ!」

 電話越しにもはじけるような凛の笑顔が目に浮かぶ。ひとしきりチュンチュンの魅力について語った後、しばしの沈黙を挟んで凛はこう切り出した。

「それでね、かよちん。来週のお休みの日なんだけど、もし時間があったら…」

「公園にチュンチュンを見に行くんでしょ?いいよ、私もちょうど予定が空いてるから」

「いいの!?」

 凛のお願いは花陽にはとっくにわかっていた。そしてそれを断る理由などどこにもなかった。たとえ何か予定が入っていたとしても、よほどのことがなければキャンセルして凛との約束を優先させていたはずだ。

「ありがとう、かよちん!凛ね、かよちんと一緒にあのチュンチュンを見に行きたかったんだ。カメラ持って行くから、いっぱい写真撮ろうね!」

「私も楽しみだよ、凛ちゃん」

 その言葉に嘘はなかった。アルパカの飼育委員を率先して引き受けるだけあり、花陽は動物好きである。写真で見たチュンチュンもかわいらしく思えた。けれど、花陽にとって一番の楽しみは太陽のように眩しい凛の笑顔を見ることだった。小さな頃からずっと見てきた、あの笑顔。見ているこちらまで元気がもらえ、気分が明るくなるあの笑顔。凛のささやかなお願いに付き合うだけであの笑顔が見られるのであれば、花陽には他に何もいらなかったのだ。

 μ’sの一員として練習を続ける毎日は流れるように過ぎていく。気が付けば凛と約束した休日になっていた。

「かよちーん!早く行こうよー!」

「ちょっと待っててね、凛ちゃん。今行くからー」

 凛にとっては待ち焦がれた日だ。元々は集合場所を決めていたのだが、待ちきれずに花陽の家まで迎えに来てしまった。部屋にいた花陽にも凛の元気のいい声が聴こえてくる。

「お待たせ。それじゃあ、行こっか」

「ごめんね、かよちん。あんまり楽しみでかよちんのうちまで来ちゃったにゃー」

「凛ちゃん、すごく楽しみにしてたもんね」

 前日の夜にも凛は花陽に電話をかけていた。もちろん、話題はチュンチュンについてだ。あちこちのブログをまわってチュンチュンのかわいい写真を見つけたこと、チュンチュン豆知識をまとめたサイトがあること…チュンチュンの話題を振る凛の声は弾んでいた。まるで遠足を待ちきれない小学生のような無邪気さに、花陽もついつい長電話をしてしまった。

「かよちん、そのバスケットには何が入ってるの?」

 花陽はピクニックにでも行くかのようなバスケットを提げていた。

「チーズケーキやマカロンを入れてきたんだよ。ほら、チュンチュンって甘い物が大好きでしょ?」

「すっかり忘れてたにゃー!かよちんにばっかり準備させちゃってごめんね…」

「そんな、気にしないで。凛ちゃんはカメラを持ってきてくれたんでしょ?チュンチュンと一緒におやつを食べてるところ、写真に撮ってあげるね」

「かよちん…ありがとう!かよちんはやっぱり凛の一番大切な友だちだにゃー!」

 花陽に抱き付く凛。飼い主に甘える猫のようなその姿に、花陽は優しい笑顔で頷く。私もだよ。私にとっても、凛ちゃんは世界で一番大切な友だちだよ。花陽は心の中でそう呟いていた。

「ほらほら、凛ちゃん。あんまり私にくっつくと、せっかくのお洋服が皺になっちゃうよ」

「うっかりしてたにゃー」

「そのお洋服、新しいよね?」

「うん。お母さんに先週買ってもらったばっかりなんだ。外に着ていくのは今日が初めてなんだけど…似合ってるかな?」

 そう言ってほんの少しうつむく凛。全体的に白を基調としたやわらかなシルエットに、かわいらしいフリルのスカート。似合っていないはずがなかった。

「とっても似合ってるよ、凛ちゃん」

 花陽の言葉にはにかむ凛。花陽に褒められて嬉しい一方で、すこし照れているようだ。普段の快活な凛の姿しか見たことがない者にとっては意外に思われるかもしれない。しかし、幼馴染の花陽にとってはいつもの凛なのだった。かわいいものが誰より大好きで、かわいらしさに誰よりも憧れている。そして、誰よりも可憐でかわいらしいのに、自分ではそれを認められない臆病なところ。その全てをひっくるめての星空凛なのだ。

「ほ、本当?」

「本当だよ。凛ちゃん、とってもかわいいよ」

「か、かよちん…//」

 さっきまでの快活さもどこへやら、頬をほんのりと紅く染めて黙ってしまう凛。スクールアイドル活動を通してだいぶ変わってきたとはいえ、凛の根底には自己の容姿に対するコンプレックスがあった。自分は女の子らしくない。そんな根拠のない先入観が邪魔をして、本当は誰よりもかわいらしいにも関わらず、自信が持てていなかった。どれほど周りが認めても、凛自身が認められなかったからかもしれない。花陽の率直な感想にも、どこか素直になれず、気恥ずかしさを感じてしまうのだった。

「そ、それよりかよちん。早くチュンチュンに会いに行こうよ!」

 恥ずかしさを誤魔化すように、凛は駆け出した。どこまでも広がる青空の下、花陽は凛の後ろ姿が離れてしまわぬよう、小走りにその後を追うのだった。

 道すがら楽しいおしゃべりをしているうちに、二人は件の公園に到着した。普段行き来する通学路とは反対方向にあるため、実際に訪れたのは今回が初めてだ。よく晴れた休日だが、公園には花陽たちの他には誰もいないようだ。頬を伝う涼しげな風が実に心地よい。

「チュンチュン、どこにいるのかなぁ?」

 凛は目をきらきらさせてチュンチュンを探している。しかし、チュンチュンはとても小さな生き物なので、草の茂った公園で探し出すのはなかなか骨が折れそうだ。

「凛ちゃん、お菓子を置いておけばチュンチュンの方から寄ってくるんじゃないかな?」

「かよちん、グッドアイディアだにゃー!」

 凛も花陽の提案に賛成した。二人は公園の中央に集まり、チーズケーキをセットする。ケーキから少し離れた場所で凛がわくわくしながら見守るなか、3分ほどすると上機嫌な歌声が聴こえてきた。

「ピュワピュワ〜♪ラビュラビュ〜♪オイチソウナニオイガスユチュン」

 ベージュカラーの羽毛に覆われた丸々とした身体、しゃんとしたとさかに小ぢんまりとしたリボン、そしてこの甲高い声。間違いない、チュンチュンだ。チーズケーキの芳醇な香りに誘われたのか、自分の背丈ほどもある雑草をかき分け、よちよちと歩いて来た。

「見つけたにゃー!」

 お目当てのチュンチュンを見つけて喜んで駆け寄ろうとする凛だったが、花陽に手を掴まれて止められてしまった。

「凛ちゃん、急に近づいたらチュンチュンが怖がって逃げちゃうよ。チュンチュンがチーズケーキを食べて安心してから近づこう」

「それもそうだね…。それじゃあ、もうちょっと待つにゃー」

 チュンチュンに近づきたくてうずうずしている凛だったが、ここはひとまず花陽のアドバイスに従うことにした。

「チューン!チーユケーキチュン!」

 大好物のチーズケーキを見つけたチュンチュンは羽をぱたぱたさせて喜んでいる。短い足を懸命に動かして駆け寄り、ケーキへとダイブした。

「アマクテオイチイチューン!」

 チーズケーキをくちばしで突いた瞬間、歓喜の声があがる。口内に拡がる濃厚な甘さに酔いしれたのか、チュンチュンは脇目も振らずにチーズケーキをついばみ始めた。

「一生懸命突っついてるところ、かわいいにゃ〜」

「きっとおなかを空かしてたんだね。もう少ししたら近づいてお話してみよっか?」

 花陽の言葉に凛は満面の笑顔で頷いた。

「ポンチュンイッパイチュン。ショクゴハオウタノレンシュウチュン」

 チーズケーキ1ピースはチュンチュンにとってはかなりの大きさのはずだが、それでも5分としないでぺろりとたいらげてしまった。小さな身体ながら食欲は旺盛らしい。チュンチュンは丸々とした身体を起こして歌を歌い始めた。きんきんと響くどこか音程の外れたその歌は、幼稚園児がお遊戯で歌っているようにも感じられる。ひとしきり歌うと、チュンチュンはまた地面に腰を下ろして休み始めた。

「キョウモチュンチュンノウタゴエハカワイイチュン。ヤッパリチュンチュンハセカイイチノアイドユチュン♪」

 気持ちよくお歌を歌って満足したようだ。足を伸ばしてくつろぐチュンチュンに花陽は優しく声をかけた。

「こんにちは。素敵な歌声だね」

「チュン?モシカチテチュンチュンノオウタキイテタチュン?」

 チュンチュンは花陽の方に振り返った。元々人間に慣れたことで有名なチュンチュンだったが、チーズケーキをたらふく食べたうえ、気持ちよくお歌を歌った後なので、人間に対する警戒心は微塵も感じられなかった。

「私たち、チュンチュンに会いたくてここまで来たんだよ。これ、よかったら食べてね」

 そう言って花陽はバスケットからマカロンを取り出した。色鮮やかなマカロンを目にしたチュンチュンは飛び跳ねて喜んだ。先ほどチーズケーキをたいらげたばかりだが、甘い物には目がないらしい。

「チューン!マカヨンホシイチュン!オネエサン、ハヤクチョウダイチュン!オンナノコニトッテアマイモノハベツバラチュン!」

 よほどマカロンが欲しかったのか、チュンチュンは羽を広げ、地面を足踏みし始めた。その様子はまるでダンスを踊っているようで、かわいらしいその動きに凛はすっかり虜になっていた。

「はいどうぞ。チュンチュン、ちょっとなでなでしてもいいかなぁ?」

「オネエサンヤサシイカラナデナデシテモイイチュン!チュンチュンハミンナノアイドユヤカラ、ファンサービススユチュン!」

 花陽の読みはずばり的中した。機嫌をとりつつダメ押しのマカロンを与えた結果、チュンチュンはなでようが掌に乗せようが、逃げる気配はまったく見せないようになった。これなら凛の望んだ写真も満足いくまで撮れるはずだ。

「チュンチュンの身体はふわふわだね。髪の毛もさらさらで気持ちいいな」

「トウゼンチュン♪オンナノコハミダシナミガダイイチチュン。マシテチュンチュンハアイドユチュン!」

 花陽の掌の上でマカロンをついばむチュンチュンは上機嫌そのものだ。

「かよちん、もう待ちきれないよ!凛にもなでなでさせて!」

 目の前で繰り広げられる花陽とチュンチュンのスキンシップに凛は我慢ができなくなったようだ。おもちゃをねだる子どものように花陽を見つめている。花陽にはそんな凛がチュンチュン以上に愛おしく感じるのだった。

「慌てなくてもチュンチュンは逃げないよ。凛ちゃんもなでてあげてみて」

 花陽はチュンチュンをそっと地面に降ろした。凛は大喜びで手を差し伸べる。待ちに待った瞬間だ。ところが、チュンチュンの反応は意外なものだった。

「ヤンヤンッ!」

 なんと凛の手を羽で払いのけるようにして後ずさりしたのだ。明らかに凛に触れられることを嫌がっている。思いもしない反応に凛は戸惑っていた。

「あれっ、怖がらせちゃったのかにゃ…?」

 チュンチュンは先ほどまでの上機嫌な態度とは打って変わって、神経質そうに凛から距離を取っている。突然の態度の変化に凛だけでなく花陽も首を傾げた。凛はチュンチュンを怖がらせるようなことは何もしていない。単になでようとしただけであり、それなら花陽がとうにやっていたことだ。

「ねぇチュンチュン、凛ちゃんにもなでなでさせてあげられないかなぁ?」

「ダメチュン」

 花陽の方からも頼み込んでみたが、チュンチュンは頑として首を縦に振らなかった。いったいどうしたのだろう。気まぐれで急に機嫌を悪くしてしまったのだろうか。試しにもう一度チュンチュンに手を伸ばしてみたが、なぜか花陽の場合は嫌がる素振りを見せないのだった。もしかすると、お菓子を与えた人間にしか懐かないのかもしれない。そう考えた花陽は凛の手にバスケットから新しく取り出したマカロンを握らせた。

「凛ちゃん、お菓子をあげればチュンチュンも怖がらないと思うよ」

「そ、そうだね。ほら、チュンチュン。お菓子だよ」

 凛はマカロンを掌に載せてチュンチュンに差し出した。しかし、大好物のマカロンを前にしてもチュンチュンは警戒して寄ってこないのだった。

「だめみたいだにゃー…」

 チュンチュンに触れることすらできずにがっくりと肩を落とす凛。これでは公園にやって来た意味がない。花陽は何とかして凛もチュンチュンに触れることができるように説得を試みた。

「チュンチュン、どうして凛ちゃんだとだめなのかな?」

 花陽がこう尋ねたのも、すべては凛のためだった。ずっと楽しみにしていたチュンチュンとのふれあい、それを遠巻きに眺めて終わるだけではあまりに味気ないからだ。しかし、花陽の善意は予想だにしないチュンチュンの返事を招くことになってしまった。

「チュンチュンハカヨワクテセンサイナオンナノコチュン。ダカヤ、オンナノコイガイニサワラレルノハヤンッヤンッ!」

「えっ…?」

 花陽も凛も、チュンチュンの言ったことをすぐには理解できなかった。そんな二人を後目にチュンチュンはしゃべり続ける。

「チュンチュンニサワッテイイノハオンナノコダケチュン。オトコノコハヤンッヤンッ」

 ほんの一瞬の沈黙の後、凛はチュンチュンの言葉を理解した。そう、チュンチュンは凛のことを少年だと勘違いしたのだ。元々、チュンチュンは自己愛の強い生き物である反面、他の生き物に対する関心は非常に薄い。チュンチュン同士ではスピカテイブユと呼ばれるリボンでお互いを識別できるものの、餌を分けてもらうなどの接点もある人間の区別はほとんどつかない。人間から見て縁日で売られるカラーひよこが色の違い以外はどれも同じように見えるのと同じように、チュンチュンからはどの人間も同じように見えるのだ。このチュンチュンも、身体に触れることを許すか否かを区分する人間の性別を髪の長さだけで判断していた。それゆえ、ショートカットの凛を少年だと考えたのである。

「オトコノコハランボウダカヤ、アイドユノチュンチュンニハサワラセテアゲラレナイチュン」

 突然の出来事に花陽は言葉を失っていたが、我に返って凛の方を振り向いた。凛は黙ってうつむいていた。唇をぎゅっと噛みしめ、身体は小刻みに震えている。その眼からは今にも涙が溢れてきそうだ。同じだ、あの時と…。花陽は心の中で呟いていた。幼いころ、スカートを履いていたことをからかわれた時の凛は、今と同じように口をつぐんで涙を堪えていた。チュンチュンの言葉は凛のトラウマを深く抉り、ガラスのように繊細な心を傷つけるには十分すぎるほどだった。

「ドウシテオトコノコナノニ、オンナノコノカッコウヲシテユチュン?オカシイチュン」

 凛の気持ちなど露知らず、チュンチュンは無遠慮な言葉を続けた。花陽はうろたえたが、もはやどうすることもできない。

「ご、ごめんかよちん…。凛、今日はもう帰るね…」

 凛の声は今にも消え入りそうだった。無理をして笑顔をつくろうとするが、頬は引きつり、涙がとめどなく溢れている。

「凛は…凛はやっぱり女の子らしくないんだ。こんなかわいい服も似合わないよ。チュンチュンだってそう言ってるもん…」

 涙声になりながらも言葉を続ける凛。花陽は何か言葉をかけなければいけないと思ったが、あまりに悲痛な凛を前に言葉が出てこないのだった。
 
「凛はね、勘違いしてたんだ…。μ’sに入れてもらって、スクールアイドルとして活動して、みんなから優しい言葉をかけてもらって…。もしかしたら、凛も女の子らしくできるんじゃないかって…。でも、それも勘違いだったんだよね…凛は…凛は…」

 最後の方は嗚咽が交じって声が聞き取れなかった。片手で涙を拭い、凛は公園から走り去ってしまった。

「り、凛ちゃん待って!」

 花陽も慌てて後を追うがとても追いつけない。公園にひとり残されたチュンチュンはのんきにマカロンをついばんでいた。それは穏やかな昼下がりの出来事だった。

 角を曲がった頃には足の速い凛の姿はもう見えなくなっていた。常日頃μ’sの基礎練習で走り込んではいるものの、元々運動があまり得意ではない花陽がこのまま追いかけるのは得策とはいえなさそうだ。

「ごめんね、凛ちゃん。私が余計なことを言わなければ…」

 花陽は後悔の念に押しつぶされそうになっていた。いつも明るく振る舞っている凛は、その実、他の誰よりも繊細で傷つきやすい。そのことは幼馴染の花陽には十分すぎるほどわかっていた。

「どうして…どうしてあの時すぐに言ってあげられなかったんだろう。凛ちゃんはどんな女の子よりも女の子らしくて素敵だって…。世界で一番かわいい女の子だって…」

 その言葉に嘘偽りはなかった。花陽にとって凛はμ’sで一番、いや、どんなスクールアイドルよりも、プロのアイドルよりも輝いて見える存在だった。引っ込み思案な自分の背中をいつも押してくれる凛。いつも自分のそばにいてくれた凛。太陽が月を照らすように、凛の笑顔は花陽を勇気づけてくれた。凛がいなければμ’sとして活動することも遠い夢のままで終わっていたのだ。

「私にはわかってるよ、凛ちゃんが一番のアイドルだってことを…。だって、凛ちゃんのことを一番近くで見てきたのは私なんだもん…。凛ちゃん自身も気づかない魅力だって、私には全部わかってるよ…」

 いつの間にか花陽の目にも涙が溢れていた。いつも一緒に過ごしてきた凛と花陽。既に心は二人で一つになっていた。凛の哀しみは花陽の哀しみ。凛の心の痛みは花陽の心の痛みなのだ。

 その後も公園の周りを歩き回ってみたものの、花陽は凛を見つけることはできなかった。恐らく凛は自宅に帰ってしまったのだろう。まだ陽は高かったものの、花陽は凛に会いに行くことをためらった。心の整理のつかない凛のもとに無理やり押しかけたところで、自分に何ができるのだろう。かえって凛の気持ちを傷つける結果にしかならない気がする。時間が経つにつれて気まずい思いが募り、凛に顔を合わせづらくなっていった。

「ごめんね、凛ちゃん…。凛ちゃんの一番の友だちは私なのに…何もしてあげられなくて…」

 公園での出来事は花陽にとってもショックだった。すっかり気が滅入ってしまった花陽は、力ない足取りで自宅に戻ってきた。自室に入った瞬間、気が抜けて座り込んでしまう。ふと、手に提げていったバスケットが見当たらないのに気づいた。凛を追いかけることに夢中なあまり、公園に置き忘れてきてしまったらしい。

 あの中にはチュンチュンに食べさせるお菓子の他にも、凛と一緒に食べるための昼食が入っていた。凛のために作った特製おにぎりにはチャーシューやメンマが入っている。ラーメンが大好きな凛のために花陽が考えたものだ。凛とどこかに出かける時にはいつも作っていた特製おにぎり。今日も公園で一緒に食べるはずだったが、今の花陽にはバスケットを取りに行く気力もなかった。

「私のせいで凛ちゃんが傷ついたんだ…。私の、私のせいで…」

 結局、その日は凛に会うことはなく、連絡をとることもできなかった。凛の哀しげな表情がちらつき、花陽は眠れない夜を過ごしていた。

 翌日、凛はいつものように登校してきたが、別人ではないかと思えるほど気落ちしていた。休み時間にも黙ってうつむいたままで、昼食もほとんど喉を通っていないようだ。普段ならよそのクラスにまで聞こえるほど元気のいいかけ声をあげている体育の時間ですら活気がなかった。

「ちょっと、凛。いったいどうしたのよ?花陽と喧嘩でもしたの?」

 見かねた真姫が声をかけたものの、凛は首を横に振って何も話そうとしない。花陽も真姫から凛の態度について聞かれたが、昨日の一件を凛の前で話すのもためらわれ、わからないとだけ答えていた。

「凛ちゃん、今日の練習だけど…どうする?」

 放課後になっても元気がない凛に花陽が恐る恐る尋ねた。

「…行くよ。凛がいないとみんなに迷惑かけるから…」

 凛は部室の方に向かって歩いて行ったが、生気のないその目に花陽は不安になるばかりであった。

「海未ちゃん見てみて!これなら新曲のイメージにもぴったりだよね!」

「はしゃぎすぎです穂乃果!せっかくの衣装が破けでもしたらどうするんですか!」

 部室には既に他のメンバーが集まっていた。穂乃果は真新しい衣装を身にまといご機嫌だ。海未の忠告などどこ吹く風と軽快なステップを踏んでいる。

「やっぱりことりちゃんはすごいねー。曲のイメージにぴったり合った衣装が作れちゃうんだもん!」

「えへへ、穂乃果ちゃんに気に入ってもらえてよかったぁ♪」

 どうやら新曲とセットになる衣装合わせをしていたようだ。よく見ると穂乃果以外の衣装も壁に掛けてある。

「あっ、凛ちゃんに花陽ちゃん!次の新曲用の衣装ができたんだよ!すっごくかわいいから着てみて!」

 花陽たちに気づいた穂乃果は小走りで衣装を抱えてこちらに向かってきた。

「ねっ、すっごくかわいいでしょ?ほら、こっちが凛ちゃんのだよ」

 穂乃果が差し出した衣装はパステルカラーの映えるかわいらしいデザインだ。ことりがデザインしただけあり、凛のイメージを実によく表現している。ことりだけでなく、メンバーの誰もがそう考えたはずだ。しかし、当の凛にはそう思えなかったようだ。

「…ないよ」

「えっ、何なに?よく聞こえないよ、凛ちゃ…ん…?」

 そこまで言いかけて、穂乃果は凛の様子が普段と異なることに気づいた。いつもの明るさが微塵もなく、今にも泣き出しそうな顔をしている。

「凛には…凛には似合わないよ…。凛にはできない…みんなみたいにかわいくなんてできないよ…。凛は…凛は女の子らしくなんか…うぅ…」

 凛は両手で目許を押さえ、泣き出してしまった。突然の出来事に穂乃果はどうしていいかわからずに困惑している。

「ど、どうしたっていうの凛?いったい何があったの…?」

 絵里が間に入ったが、泣き崩れる凛を前にしてそれ以上言葉が続かなかった。先ほどまでの賑やかな雰囲気は一変し、部室は重苦しい空気が支配していた。誰も声をあげることはできず、ただ凛のむせび泣く声だけが響いていた。

「…ええよ、凛ちゃん。無理に話すことはないよ。せやけど、凛ちゃんが話せるようになるまで、うちもここにおっていいかな?」

 沈黙を破ったのは希だった。静かに手を伸ばし、凛を優しく抱きしめる。凛は泣きながらも無言で頷き、希の身体を抱きしめ返した。

「みんな、先に屋上の方に行っててもらえんかな?うちらは後から合流するから…」

 希の提案に絵里が頷き、メンバーは部室を後にした。花陽も凛のことが気がかりだったが、この場は希に任せた方がいいと考えて屋上へと向かった。

 希を除くメンバーは屋上へと向かったものの、いつものように練習を始める気にもなれず、皆一様に所在なさげだ。

「凛のやつ、どうしちゃったのよ…」

 口調はぶっきらぼうだが、にこの言葉には凛を心配する想いが滲み出ていた。

「ねぇ、花陽。あなた、やっぱり何か知ってるんじゃないの?」

 昨日の一件を話すべきか迷っている花陽に真姫が声をかけた。メンバーの視線が花陽に集中する。みんなを心配させるわけにはいかないが、かといって昨日の一件を伝えることは凛の気持ちを余計に傷つけるだけなのではないか。口ごもる花陽に真姫がたたみかけた。

「凛は私たちの大切な仲間よ。花陽だってそうだわ。だから、そんな大切な仲間がつらい想いをしているのを放っておけないわよ。何か知ってるなら全部話して。凛がつらいのも花陽がつらいのも、私は嫌なのよ」

「真姫ちゃんの言う通りだわ。何?あたしたちは悩みを相談できないくらいに信用できないっていうわけ?あたしたちの絆はそんなヤワなもんじゃないでしょーが!」

「無理にとは言わないよ。でも、私たちは凛ちゃんと花陽ちゃんの力になりたい。私たちにとって、凛ちゃんと花陽ちゃんは大切な友だちだから…」
 
 真姫の言葉に、にこと穂乃果も続く。他のメンバーも想いは同じだ。花陽は意を決して昨日の出来事を全て話した。

「そんなことがあったんだ…」

 凛に降りかかった災難の顛末を聞いたメンバーたちは神妙な面持ちだ。

「私が悪いんです…。あの時、余計なことを言わなければ凛ちゃんは…」

「花陽ちゃんは悪くないよ!元はといえば私があの公園の話なんかしたからで…」

 自分を責める花陽を穂乃果が庇う。

「責任の擦り付け合い…じゃなくて背負い合いをしてもしょーがないわよ。凛が元気になるにはどうしたらいいかを考えるべきでしょ」

 にこの提案に無言で頷くメンバーたち。しかし、そうそういい考えが思い浮かぶわけでもなく、沈黙が続く。もっとも、花陽には何をすればいいのかはわかっていた。昨日はためらってできなかったが、自分以外の誰かにこの問題を任せるわけにはいかない。花陽は軽く深呼吸をしてから扉の方へ歩んでいった。部室に向かい、凛と直接話すためだ。

「花陽ちゃん…」

「ここは花陽に任せましょう。凛の気持ちを一番よくわかっているのは花陽よ」

 後を追いかけようとする穂乃果を絵里が止める。穂乃果もそれに従い、花陽の後ろ姿を見守っていた。

「凛ちゃん、少しは気持ち落ち着いてきたかな…?」

 部室では希が凛をなだめていた。9人では狭く感じる部室も、2人だけではどこか閑散として寂しげだ。いつもは明るいおしゃべりの絶えない部室もひっそりとしてしまい、外からはよその部活動の練習の声が聴こえてくる。

「凛にはできないよ…凛は…みんなみたいにかわいくないから…」

 泣き通しだった凛が初めて口を開いた。その声は震えている。

「どうしてそんな風に思うん?うちは凛ちゃんのこと、とってもかわいいって思うとるよ。うち以外のみんなだってそうや」

「だって…だってみんなは優しいから…凛はちっとも女の子らしくないのに…」

 これは重症やなぁ。希は心の中でそう呟いた。何があったのかはわからないが、凛は心を閉ざしてしまっている。こんな時は、たとえ仲間であっても力になってあげるのは難しい。そう、一番の友人を除いては…。今の凛には花陽からの言葉が必要だ。カードを引くまでもなく、希にはそのことがわかっていた。

「凛ちゃん…!」

 花陽が部室の扉を勢いよく開けたのはその時だった。

「かよちん…?」

 凛が花陽の方に振り返る。泣き腫らしたその目は真っ赤になっていた。

「ごめんね、凛ちゃん…。昨日は何も言えなかったけど、私にはわかってたよ。凛ちゃんは世界で一番かわいい女の子だってこと…。だって私は、いつも凛ちゃんと一緒にいて、誰よりも凛ちゃんのことを知ってるんだもん…!」

「かよちん…」

「私だけじゃない、みんながわかってることだよ。認めてないのは凛ちゃんだけ。お願い、そのままの自分を受け入れてあげて…。凛ちゃんはそのままで、誰よりも輝いているんだから…」

 気が付くと、凛は花陽を強く抱きしめていた。

「かよちん、ありがとう…。凛がばかだったよ。かよちんがこんなに凛のことを想ってくれているのに、凛はいつも自分に自信が持てなくて…。かよちんの言葉も素直に信じられなくて…」

「凛ちゃん…」

 二人は泣いた。けれど、その涙は哀しくて流れているのではなかった。希にも、心配で部室までこっそりつけてきた他のメンバーにもそれはわかっていた。どれくらい時間が経っただろう。ようやく泣き止んだ凛が顔をあげた。目は赤いままだったが、いつものような屈託のない笑顔だった。

「えへへ、やっぱり凛ちゃんには笑顔が一番よく似合うね…。泣いてたら、せっかくのかわいい顔が台無しだよ…」

 涙を拭いながら花陽が微笑む。

「だいぶ時間も経ったことだし、部長権限で今日は練習中止にするわ。ほら、凛。みんなであんたの好きなラーメンでも食べに行くわよ。あたしがおごってあげるから」

 にこの粋な計らいに凛の表情が明るくなる。部室にはいつもの賑やかな雰囲気が戻っていた。

 花陽とμ’sの仲間たちにより、凛は笑顔を取り戻した。しかし、これですべてが解決したわけではない。思い出してもみてほしい。そもそも今回の一件は誰に非があったのか。花陽の言葉でも、穂乃果の振った話題でもない。もちろん、凛のコンプレックスでもない。そう、チュンチュンなのである。チュンチュンの無遠慮な言葉がなければ、あの日は何事もない穏やかな一日で済んでいたのだ。

「許さない…。凛ちゃんを傷つけたこと、絶対に許さないよ…」

 凛の一番の親友である花陽がそう考えたのは当然の成り行きだった。花陽は穏やかで心の優しい少女だ。自分自身のことであれば、たとえどれほどひどい言葉を投げかけられようと、ぐっと堪えてやり過ごすような性格だ。しかし、凛を傷つけられたのであれば話は別である。既に涙は乾いていた。代わりに、火のように激しい怒りが花陽の目に燃え盛っていた。

 μ’s全員でラーメンを食べに行った帰り道、花陽は用事があるからと急いで自宅に戻った。無論、復讐の準備に取りかかるためである。手際よく道具を整え、花陽は再びあの公園へと向かった。

 公園に着いた頃には既に陽が傾き始めていた。遊具も少ないためか、遊んでいる子どもの姿も見られない。花陽は昨日と同じように、公園の中央にチーズケーキを1ピース置いた。夕陽を浴びオレンジに染まる木々を風が静かに揺らしている。花陽はケーキの置かれた地面を黙って見つめていた。

「チュン?キョウモイイニオイガスユチュン!」

 程なくして、雑草をかき分ける音と甲高い声が聴こえてきた。ガサガサと草むらを踏みしめながら、チュンチュンがひょっこりと姿を現した。

「キノウノヤサシイオネエサンチュン!チュンチュンガカワイイカヤ、マタチーユケーキモッテキテクレタチュン?プワプワーオ!」

 挨拶もそこそこに、チーズケーキに駆け寄ってついばみ始めるチュンチュン。昨日まではその姿が愛らしく思えた。しかし、今となってはただただ憎しみの対象でしかなかった。花陽はリュックから銀色に輝くステンレス製のボウルを取り出した。古くなって捨てるはずのものを台所から持ってきたものである。花陽は無言のまま、チーズケーキに夢中なチュンチュンを覆うようにボウルを被せた。

「ピイィィ!?キュウニマックラニナッタチュン!コワイチュン!オネエサン、タスケテチュン!」

 突如として周囲が暗くなったことに怯えるチュンチュン。花陽に助けを求めたが、聞き入れてもらえるはずもない。花陽は左手でボウルを押さえながら、右手を伸ばして落ちていた小石を拾った。そして、勢いよくボウルに打ちつけた。

「チュウウゥウン!?」

 石が打ちつけられた衝撃で、ステンレス製のボウルはぐわぁんと音をたてた。中にいるチュンチュンはたまったものではない。大晦日に鳴らす鐘の中にいるも同然の状況だからだ。

「ア、アタマガクラクラスユチュン…」

 チュンチュンはよろめきながらも脱出を試みたが、その前に次の一撃が加えられた。

「ビイィィイィ!?ヤ、ヤメチュン!」

 チュンチュンの懇願もむなしく、花陽は何度も石をボウルに打ちつける。そのたびに襲い来る衝撃波にチュンチュンは泡を吹いて痙攣しだした。鳴き声が聞こえなくなったのを確認して花陽がボウルを外すと、チュンチュンは脳震盪を起こして失神していた。よく見ると足許は濡れている。失禁してしまったのだろう。花陽は携帯電話を取り出し、動かなくなったチュンチュンをカメラで撮影した。

「これでおとなしくなったね…」

 花陽はチュンチュンを無造作に掴むと、持ってきた虫かごに放り込んだ。この虫かごは小学生の頃に使っていたものだ。虫取り網を振り回してバッタやセミを追いかける凛の隣でいつも抱えていたものだ。花陽はふと昔のことが懐かしくなり、虫がいないか公園を眺めまわす。すると、昨日置き忘れたバスケットが転がっていた。中を覗くと、凛のために作ったおにぎりはすっかり食べ散らかされていた。ところどころに羽が落ちていることからも、チュンチュンが中を漁ったのは間違いなかった。

「これは凛ちゃんのために作ったのに…」

 花陽は虫かごの中で気絶しているチュンチュンを睨みつける。どうやら徹底的に報いを受けさせる必要があるようだ。

「チュン…。ハッ!?チュンチュンノチーユケーキドコチュン!?」

 目を覚ましたチュンチュンは、先ほどまでついばんでいたチーズケーキが消えたことに驚いている。しかし、本当に驚くべきは自分が公園ではなく鉄製の柵に囲まれたケージに押し込められていることだろう。

「こんばんは。目が覚めたみたいだね」

 きょろきょろと辺りを見回すチュンチュンに花陽が声をかけた。その声は穏やかだが、どこか冷たさが漂っている。花陽はチュンチュンを虫かごに入れて連れて帰り、自室でケージに移し替えていた。チュンチュンはしばらく気絶していたため、目が覚めた頃には既に夜になっていた。

「ココハドコチュン?チュンチュンノオウチジャナイチュン!」

 ようやく自分の居場所が公園でないことに気づき騒ぎ立てるチュンチュン。しかし、鉄製のケージは自慢の羽ではたいたところでびくともしない。

「オネエサン、チュンチュンヲドコニツレテキタチュン!イクラチュンチュンガカワイクテモ、ヒトリジメハダメチュン!」

 ぴぃぴぃとやかましい喚き声には耳を貸さず、花陽は携帯電話を操作し、おもむろに液晶画面をチュンチュンに見せつけた。

「チュン…?コイツダレチュン?トンダブサイクチュン!」

 液晶画面を見て毒づくチュンチュン。しかし、液晶画面に映っているのは失禁して気絶したチュンチュン自身だ。白目をむき、口から泡をこぼして股間を濡らした無様な姿が自分だとは微塵も思っていないようだ。

「これはあなただよ。さっき公園で写真に撮ったんだから」

「チュン!?ナニイッテユチュン!ソンナブサイクガチュンチュンナワケナイチュン!」

 花陽から告げられた残酷な事実をチュンチュンは受け入れようとしなかった。羽を気ぜわしく動かして地団駄を踏んでいる。文字どおりとさかにきたのだろう。

「かわいくないなら合ってるんじゃないかな?だって、チュンチュンは少しもかわいくないもん」

「ヂュンッ!?」

 花陽の言葉はチュンチュンの尊大すぎる自尊心をひどく抉った。このチュンチュンは公園のアイドルとしてもてはやされていたため、他のチュンチュン以上に己のかわいらしさを信じて疑うことがなかった。産まれてこのかた言われたこともないとげとげしい暴言に打ちすえられて、チュンチュンは明らかに動揺していた。

「シ、シンジナイチュン!チュンチュンハカワイイオンナノコチュン!セカイイチノアイドユチュン!」

 甲高い声で抗議するチュンチュン。これでは議論をしても無駄なようだ。ため息をついた花陽だったが、ふと妙案を思いついた。

「…そうだよね。チュンチュンは元からその程度だもんね。だから、かわいいだなんて突拍子もないことを思うんだね」

 チュンチュンは自分以外には関心がないと言っていいほどに自己愛の強い生き物だ。それゆえ、他の生き物と比較して「かわいらしさ」の程度を認識することは期待できない。それなら、自分自身と比較させれば済む話だ。要はチュンチュン自身が嫌でもわかるくらいに醜くしてしまえばいいのだ。

「ヂュンッ!?ナニスユチュン!ハナスチュン!」

 ケージを押し開けてチュンチュンを掴む花陽。チュンチュンは必死にもがいて逃れようとするが、花陽は空いている左手でサイドに流した髪をしっかりと握り締めた。

「チュンチュンノカワイイカミニサワッチャ、ヤンッヤンッ!」

「かわいい?これのどこがかわいいのかなぁ?」

 言い終わるや否や、花陽はチュンチュンの髪を力いっぱい引き抜いた。

「ビイィィイィッ!?イダチュウゥウウゥウン!」

 ミチッという音ともにベージュカラーの毛がはらはらと落ちていく。根本から引き抜かれたため、鬱血した皮膚が露出していた。

「そんなものがあっても邪魔なだけだよ。よかったね、身軽になって」

 花陽は机の上に置いてあった手鏡をチュンチュンに見えるように構えた。鏡の中には無惨にも髪を引き抜かれたチュンチュンの姿が映っている。

「ヂュウウウゥン!?チュンチュンノカワイイカミノケガアアァアアァア!」

 自慢の髪を引き抜かれた姿を見て、チュンチュンは身をよじらせて泣き出した。花陽はそんなチュンチュンには目もくれず、ケージの中に放り込む。

「もう遅いから続きは明日にしようね。おやすみ、チュンチュン」

 そう言って花陽はチュンチュンのケージを押入れの中に入れてしまった。押入れの中ではチュンチュンのすすり泣く声が一晩中響いていた。

 翌朝、押入れから響く騒がしい物音で花陽は目を覚ました。中を確認すると、チュンチュンがケージの鉄柵に体当たりをしていた。

「ハヤクココカラダスチュン!オマエハチュンチュンヲイジメユワルイヤツチュン!ハヤクシナイトオトモチュンガ…ビギャアッ!?」

 金切り声をあげて怒りを露わにするチュンチュンだったが、花陽がケージを開けて手際よく拳骨を見舞ったため仰向けに倒れてしまった。

「朝からうるさいよ。口やかましい女の子は嫌われるってわからないかなぁ…?」

 寝起きの花陽は少々不機嫌だった。もっとも、チュンチュンが喚き散らす喧噪の中で目が覚めれば誰だってそうなることだろう。くちばしを伸ばしてひっくり返っているチュンチュンを掴み直した花陽は、生意気にはねたとさかを勢いよく引き抜いた。

「ビィイヤアァアアァア!?」

 激痛はすぐさまチュンチュンを正気に戻した。よく見ると、引き抜かれた毛根は血に染まっている。花陽は汚いものでも触ってしまったかのように、顔をしかめてとさかをゴミ箱へ放り込んだ。

「イタイチュン…。ドウシテイジメユチュン?チュンチュンハミンナノアイドユチュン…」

 力ではかなわないことを察したのか、チュンチュンは懇願を始めた。

「ビギャアアァアアァアッ!?」

 しかし、花陽の答えは垂れ下がった前髪を引き抜くことだった。

「朝からあなたの相手をしている暇はないんだよ。そこでおとなしくしていてね?」

 泣きじゃくるチュンチュンを睨みつけてケージへ押し込む花陽。普段は虫も殺さぬ穏やかな少女ほど怒らせたら怖いものはない。これは世の鉄則である。

 凛がすっかり元気を取り戻したため、μ’sの練習は再開された。ラブライブ優勝へ向けての練習は自然と熱が入り、花陽が帰宅したのは陽が暮れかけた頃だった。

「ただいま、世界一のアイドルさん」

 花陽の皮肉にもチュンチュンは無反応だ。それもそのはず、昨夜から水一滴すら与えられていないからだ。チュンチュンはぐったりとケージの床に這いつくばっていた。

「ポンチュンスイタチュン…。ノドモカワイタチュン…。オネエサン、チーユケーキホシイチュン…」

 朝の勢いはどこへやら、弱々しい声で懇願するのがやっとのようだ。惨めなチュンチュンの姿を見て満足した花陽は、ケージの前にあるものを差し出した。

「ピイィィッ!チーユケーキチュン!オネエサン、ハヤクチョウダイチュン!」

 花陽が差し出したのはチーズケーキを乗せた皿だった。大好物を見つけた途端、チュンチュンは衰弱した身体をなんとか起こし、鉄柵の前までよろよろと歩いてきた。

「食べたいの?」

 花陽の問いにチュンチュンは羽をぱたぱたさせながら頷いた。精一杯媚びて、なんとしても餌にありつきたいのだろう。しかし、何の対価もなしにチーズケーキがふるまわれることなどありえなかった。

「そうだねぇ…それじゃあ、チュンチュンはかわいくないって認めたら食べさせてあげるよ」

「チ…チュンッ!?」

 花陽の提示した条件はチュンチュンという生き物の本質からは到底受け入れることのできないものだった。しかし、背に腹は代えられない。このままでは飢え死にすることは目に見えているからだ。チュンチュンはくちばしをぎりぎりといわせて考え込んでいたが、やはりチーズケーキの魅力には勝てなかったようだ。

「ワ、ワカッタチュン。ダカラチーユケーキチョウダイチュン!」

「だめ。先に言わないとあげないよ。それと、アイドル失格っていうのも付け加えてね」

「チュン…」

 しばしの沈黙の後、チュンチュンは叫んだ。

「チ…チュンチュンハカワイクナイチュン!チットモカワイクナイチュン!アイドユシッカクチュン…チュン…」

 本能に逆らう行動をしているためか、チュンチュンの表情は引きつり、くちばしはかたかたと震えている。黒々とした眼からは涙が滲んでいた。

「まったくその通りだね。ほら、見てごらんよ。チュンチュンはこんなに醜いんだよ」

 花陽に差し出された手鏡には、とさかも前髪も引き抜かれたみすぼらしい自分の姿が映っている。否定し難い現実を突きつけられ、チュンチュンは座り込んでしくしくと泣き始めた。

「それじゃあ、ご褒美に食べ物をあげようかな」

 花陽はケージの中に2つの小皿を入れた。泣いていたチュンチュンも小皿に気づいて駆け寄るが、中を覗きこんで呆然としている。

「ドウシテチーユケーキジャナイチュン?チーユケーキクレルッテヤクソクチュン…」

「私は食べさせてあげるとしか言ってないよ?チーズケーキをあげるだなんて一言も言ってないと思うけどなぁ…」

 花陽が差し入れた小皿には、ホームセンターで投げ売りされていた鳥の餌と水道水が入っているだけだった。騙されたことに気づいたチュンチュンは地団駄を踏んで喚き出した。

「ハナシガチガウチュン!チュンチュンヲダマスナンテヒドイチュン!ゼッタイユルサナ…ピイィィ!?」

 言い終わる前に花陽に掴まれてしまった。そのままケージの床に叩きつけられ、チュンチュンは白目をむいて昏倒した。

「ごはんを粗末にしちゃだめだよ?チュンチュンにはもっとひどい目に遭ってもらうから、もう少しだけ長生きしていてね」

 そう、お仕置きはまだ終わらないのだ。誰よりも大切な親友を傷つけた罪。チュンチュンの罪は苦しんで苦しんで苦しみ抜いたうえでの死をもってしか償えないのだった。

「ヤメユチュン!モウイタイノイヤチュウウゥウン!」

 翌日もチュンチュンを待っていたのは凄惨なお仕置きだった。花陽が手にしているのは沸騰した湯の入ったやかんだ。天井に向かって昇る湯気がその熱さを示している。昨夜餌を食べさせたのは、今から始めるお仕置きを最後まで楽しめるよう、体力をつけさせるためだった。

「イヤチュン!カワイイチュンチュンヲイジメナチュ…ビギャアアァアアァアッ!?」

 頭から降り注ぐ熱湯にチュンチュンはもんどりうって転げまわる。何とか逃れようとするチュンチュンだったが、逃げた先でも無慈悲な熱湯は執拗に魔の手を伸ばすのだった。

「アチュイチュン!アチュイチュウウゥウン!」

 全身を苛む激痛に恥も外聞もなく泣き叫ぶチュンチュン。そんなチュンチュンに花陽はさらなる追い打ちをかける。

「ほらっ、これがチュンチュンだよ。ちっともかわいくないね。ねぇ、そうだよね?」

 チュンチュンの目先に手鏡を押し付ける花陽。鏡の中に映るチュンチュンは全身が火傷で爛れていた。

「チガウチュン…チュンチュンハカワイイオンナノコチュン…」

 息をするのもやっとの状態でチュンチュンを突き動かすのはせめてものプライドだろうか。しかし、二束三文のプライドなど何の役にも立ちはしない。蔑んだ目で見下ろしていた花陽は、あるものをチュンチュンからもぎ取った。髪を束ねる小ぶりなリボン。通称スピカテイブユである。

「ナ、ナニスユチュン…。ソレハチュンチュンノタカヤモノチュン!カエスチュン!」

 タカヤモノズを奪われたチュンチュンはぼろぼろになった身体を懸命に起こし、取り返そうとしている。

「盗ったりなんかしないよ。はい、返してあげる」

 花陽はチュンチュンの前にリボンを投げつけた。慌てて駆け寄ろうとするチュンチュンだったが、黄緑色のリボンは突如真っ赤に染まってしまった。花陽がスプーンですくった食べるラー油「辛そうで辛いガチで辛いラー油(フライドガーリック入り)」が降り注いだからだ。このラー油さえあれば白飯3杯は軽くいけるというシロモノだ。

「どうしたの?早く拾ったら?」

 花陽に促されてもチュンチュンは身動き一つとろうとしない。それもそのはず、このラー油のうまみを引き立たせるニンニクを前にして足が震えているからだ。

「大事な宝物なんでしょ?女の子は身だしなみが大事なんでしょう?」

 結局、チュンチュンはスピカテイブユに近づくことすらできず、ケージの隅で痛めた身体を横たえて泣き続けることしかできなかった。

「チュンチュン、今日もひどいお顔だね。そんな恰好でアイドルだなんて、アイドルをバカにしてるとしか思えないよ」

 翌日も花陽の言葉責めは続く。しかし、チュンチュンは怒ることはせず、鉄柵の前にすり寄って餌をねだってきた。

「オネエサン、ポンチュンスイタチュン。チュンチュンハモウスグタマチュンウムチュン。チュンチュンノタカヤモノノタメニ、ポンチュンイッパイニシナキャイケナイチュン。オネガイチュン…」

 どうやら産卵を間近に控えているようだ。よく見ると腹部が少しだけ膨らんでいる気もする。産まれてくる生命のためにも、餌をねだって栄養をつけなければいけないと本能が働いたらしい。

「タマチュンハチュンチュンノタカヤモノチュン…。オネエサンナラヤサシイカラワカッテクレユハズチュ…グビェエエェッ!?」

 躊躇なく、まさに何の躊躇もなく花陽はチュンチュンの丸々とした腹部に拳を振り下ろした。鈍い音とともに拳がめり込み、チュンチュンの口からは血の混じった泡が噴き出てきた。

「そういうのもうやめて…。私はあなたが女の子だなんて認めない。あなたはただの動物…。誰にも愛されないただの醜い動物なんだよ…」

 花陽は机の上に転がっていたボールペンを握り締めると、芯を出して力いっぱい振り下ろした。それはちょうどチュンチュンの下腹部あたりに突き刺さった。

「ヂュギャアアァアアアアッ!?」

 チュンチュンの股間が鮮血で染まっていく。血の染みはケージの床に余すところなく拡がっていった。

「もう子どもを産む心配なんかしなくていいよ。あなたみたいな醜い生き物がこれ以上増えても仕方がないもんね…」

 血の滴るペン先を見つめながら、花陽は満足そうに微笑むのだった。

「ビギィ…ビィ…ビイィィイィ…」

 急所を突き刺されたチュンチュンは瀕死のエビのように身体を捻じ曲げ痙攣していた。もう長くはもたなさそうだ。そう感じた花陽は、血に汚れたチュンチュンを掴むと、机の引き出しから取り出したカッターナイフを突きつけた。鋭い刃は羽毛のみならず肉ごと削ぎ落としていく。花陽は台所でじゃがいもの皮をむくかのごとく、お気に入りのμ’sの楽曲を口ずさみながらナイフを動かしていく。もっとも、羽毛を削がれて文字どおり鳥肌が露わになったチュンチュンはじゃがいもと言うより里芋だろうか。

「ほら、こんなに醜いんだよチュンチュンは。よーく見て、ほらっ!」

 チュンチュンを禿裸に剥き終えた花陽はいつものように手鏡を差し出した。既に虫の息となったチュンチュンの目に映ったもの、それは自慢の髪どころか羽毛すべてを削ぎ落とされた自らの姿だった。火傷の痕と内出血が身体中を覆い尽くし、早くも黒ずみ始めた血に塗れている。くちばしは苦痛とストレスのためおかしな方向にねじ曲がり、片足は無惨にも折れていた。大切なスピカテイブユはケージの中央付近に打ち捨てられ、ニンニクの香りに侵され変色している。下腹部からはねっとりとした血が流れ続け、二度と子を宿すことができないことは誰の目にも明らかだった。

「ヂュ…ヂュウウウゥン!ヂュウウウゥンッ!」

 チュンチュンは叫んだ。醜いという概念が具現化したとしか思えない自らの姿を見せつけられ、最後まで自分を支えていた自尊心が崩壊したのだ。喉が張り裂けるほどに泣き叫ぶチュンチュンを見て、花陽は満足そうだ。

「そうそう、この醜い姿を見せてあげたかったんだ。それじゃあ、そのかわいげのないお目々も、もういらないよね?」

 花陽は先ほどのボールペンを手にし、涙で濡れるチュンチュンの黒々とした眼を二つとも貫いた。

「ヂュギャッ!?」

 チュンチュンの口からは血に混じって白い液体が溢れてきた。花陽はチュンチュンの喉の奥目がけて再びボールペンを突き刺した。ごふっという音とともに、白い液体が勢いよく溢れて来る。チュンチュンはしばらく痙攣していたが、やがて動かなくなり、ただの血に塗れた肉塊と化した。それは、かつての公園のアイドルの成れの果ての姿だった。

「チュンチュンは幸せだね。こんなにも醜いのに、自分のことを誰よりもかわいいと思えるんだから…。本当にかわいいのに、自信がなくてそれを認められない女の子だっているんだよ…」

 息絶えたチュンチュンをケージに投げ捨てると、花陽はため息をついて椅子に座り込んだ。これで最低限の復讐は果たせたはずだ。慣れないことをしたせいか、どっと疲れが襲ってくる。今日は早めに休もう。そう思い、花陽は血で汚れた手を洗うために洗面所へと歩いて行った。

 入念に手を洗い自室に戻って来ると、ちょうど携帯電話が鳴っていた。着信音は大切な友人からだと教えてくれる。

「もしもし、凛ちゃん?」

「かよちん、いま電話しても大丈夫かにゃー?」

「大丈夫だよ、まだ起きてるつもりだったから」

 本当は疲れていたが、凛からの電話なら話は別だ。むしろ今の花陽にとっては、凛の声を聴くことが何よりの気分転換になるだろう。

「あのね、来週の日曜日なんだけど空いてるかな?穂乃果ちゃんたちが駅前のペットショップに行くみたいなんだよ。うみうさちゃんっていう、とってもかわいいうさぎさんがいるんだって!」

 凛の声はいつものように元気に溢れていた。その声を聴いて安心する花陽。返事はもちろんOKだ。花陽の返事を聞いた凛は大喜びで、その後もとりとめのない話題が続いた。おやすみと言って電話を切った時にはすっかり遅くなっていた。

 花陽は携帯を充電器にセットしてベッドに横になった。明日からは新曲に合わせた練習が始まる。早ければ今月中にはことりが作ってくれた衣装を使ってのリハーサルをする予定だ。その時には、きっと凛のかわいらしい姿が見られるはずだ。誰よりも輝くアイドルの姿を思い浮かべ、花陽はそっと目を閉じるのだった。

おわり

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