ラブライブ!派生キャラ チュン(・8・)チュンまとめwiki - 私が日本橋のある住宅地にチュン(・8・)チュン専門のしつけ施設を開業して、早い…
 私が日本橋のある住宅地にチュン(・8・)チュン専門のしつけ施設を開業して、早いものでもう三年になる。
都内の一等地に高いローンを組んでなおも、未だこうして営業を続けられているというのは、それだけこの職への需要が高まっているという証左なのでもあろう。
 一要因には、チュン(・8・)チュンの飼育の流行に反しチュン(・8・)チュンそのものの生態というのが、実は広く知られていないということが挙げられる。
チュン(・8・)チュンの飼育が比較的難度の低いものであるという誤解は、未だ市井を漂流し、一向に消え去る気配はない。
見た目の愛嬌と、なにより人語を解し話すという特異性が、彼奴らの性質への理解を妨げているのだった。
 トイレの躾にも苦労する知能の低さ。それでいて一度食べたチーズケーキの味は忘れず、繰り返し繰り返ししつこく要求をしてくる。
驕慢な性格によって、我が儘を言うことに後ろ暗さも覚えず、甘やかせば甘やかすだけつけ上がり、施しに対して感謝することもない。
去勢の術が確立して幾らか飼い主への負担が減った昨今においてさえも、ノイローゼを催す人は多いのであった。
 私の職の繁盛することは、それだけ世間からチュン(・8・)チュンの苦労を軽減しているということでもある。駆け込み寺でもな
いが、飼い主にも最後の逃げ場があるという安心が広まってゆくことは、とても良いことのように感じられる。飼い主のほっとした表
情を見るたび、私は私の職への矜持を高めずにはいられないのであった。


 私の躾の手法は、当該のチュン(・8・)チュンを一週間預かり、生活様式全てを一から躾直して、飼い主に返還するというもので
あった。様々試行錯誤した結果、この方法が一番効率の良いことに気がついた。
 チュン(・8・)チュンの躾においては、チュン(・8・)チュン自身に、人間の庇護によってようやく自分は生かされている存在
なのだと分からせることが重要である。大抵の飼い主は要求をうんうんと聞き蝶よ花よと愛でるものだから、元々彼奴らの持っている
驕慢さに更に拍車を掛けているのである。それを取り除くことが、私の職の枢軸となるところであった。
 ある日の午前に訪れたサイドテールの少女は、その傍らに二尺強ほどのチュン(・8・)チュンを侍らせて、不安げな顔に店の敷居を
跨いだ。以前相談に赴きそのまま躾のコースを予約した、可憐な少女である。顔はストレスに青白く、また表情も不安げに歪められ、
発せられる陰気な雰囲気と相まって病的に見える。
 彼女の隣をふてぶてしく歩くチュン(・8・)チュンは、その恰幅からもう充分に甘やかされて育っていることが察せられた。下腹は足
の間に肥大し、危うく地面と擦れそうになっている。その表情には疑問の色が覗き、だが飼い主を信頼しているのでもあろう。何の恐
怖も抱かずに私の前にまで歩いてくる。

 「話に出てた子だね? 随分甘やかした様子ですね」

 既に料金は受領している。飼い主にそう冗談めかして声をかけると、

 「あはは……。すみません」

 存外に傷ついた声音に、そう返答された。

 「いえ、謝る事はありません。きちんと躾直して見せます」

 「はい。よろしくお願いします」

 腰を屈め、膝ほどの高さにあるチュン(・8・)チュンに手を差し出し、私はなるたけ優しい声音に声をかけた。

 「始めまして」

 「オマエダレチュン? キヤスクコエヲカケナイエホシイチュン」

 体格に不釣合いな小さな羽根が、私の指先を薙いでいった。すかさずに飼い主から

 「こらチュン(・8・)チュン!」

 と、甘い叱責の声があったが、当のチュン(・8・)チュンはぷいと顔を背けるばかりである。

 「いえ、いいんです。・・・奥の部屋に大きなチーズケーキがあります。チュン(・8・)チュンのために用意しました」

 「ホントチュン!? キガキクチュン!!」

 レジ奥のドアを開け誘導すると、チュン(・8・)チュンは一目散に、部屋に置いてあったホールのチーズケーキに突撃していった。
チュン(・8・)チュンの単純さは人を大いにイラつかせるものであるが、こういった謀りごとをする場面での鳥頭は実に都合が良い
ものでもある。

 「さぁ、いまのうちです。気付かれないように」

 「はい。あの、よろしくお願いします」

 店の出口を指して促すと、彼女は再び頭を下げてから小走りに退店していった。私も答礼した後に、ドアに掲げるopenの札をclose
に変えた。これから一週間のうちに、この憎たらしい鳥のレベルを、人と共生可能なほどにまで引き上げる。


 チーズケーキを貪る様子から、あのチュン(・8・)チュンの程度を推し量る。チーズケーキはその直径の十センチほど更に大きい
皿の上に乗せて置いてあった。行儀のいいチュン(・8・)チュンならば端から丁寧に突いていき、食べかすを飛び散らかすようなこ
となどしない。無論、どの個体も最初からそのレベルにあったなら、私の仕事など立ち行かないわけで、例の如く当該のチュン(・8・)
チュンの食いっぷりは酸鼻に過ぎるものであった。
 チュン(・8・)チュンは翼を羽ばたかせ、まるでベッドにダイブするかのようにケーキの上に飛び乗っていた。生地に足跡を刻みな
がら乱雑にくちばしを振り降ろし、度に盛大に食べカスが舞っていた。リノリウムの床には黄色い破片が転がり落ちて、時折でかい端
くれが零れ落ちると、奴はまた地面に降り立ちそれを回収した。無論、飛び降りる際には足が生地を削るから、また大きなクズが飛び
散っていく。
 これでもまだ、平均的なくらいであった。鳥に礼儀など期待できない。また、この散らかしが後の教育に使える教材ともなるから、
むしろ喜ばしいとも思えるほどだった。

 「チュン(・8・)チュン。君の飼い主さんはもうさっき帰ったよ」

 三号のチーズケーキが喰いカスを残してすっかり消失した頃合、私は端的に事実を伝えた。躾においてまず大切な、今回の目的を体
感的に覚えこませるための行程である。長い道のりの、まず第一歩だった。

 「オマエナニイッテユチュン? ハノケチェンガチュンチュンヲオイテイクハズナイチュン」

 「だったら呼んでみな」

 「ハノケチェン? ハノケチェン!?」

 それから五分ほど、チュン(・8・)チュンは声の限り飼い主を呼び続けた。ドアは全て開放して、捜しにいけるところは全て探索
させた。
 本当に彼女がいないらしいことが分かるなり、

 「ハノケチェンヲドコニヤッタチュン!」

 そう言って、こいつは目を血走らせて私の足をこんこん突いてくる。

 「本当に君を置いて帰ったんだよ。君が悪い子だから」

 「チュンチュンハカワイイオンナノコチュン!! ソンナハズナイチュン!!」

 「君が悪い子過ぎて、もう面倒をみるのが嫌になったから置いて帰ったんだよ」

 「ウソチュン!! ソンナノウソチュン!!」

 「じゃあ扉の前で待ってるといいよ。もう飼い主さんは帰ってこない」

 「イワレナクテモソウスユチュン!!!」

 この程度の挑発で、私が飼い主を隠したのではないかという推察をすっかり忘れる鳥頭である。こういった扱いやすさは、躾の上に
おいてはありがたかった。
 チュン(・8・)チュンは昼を過ぎ、夕方になっても店の出入り口の前に佇み続け、しかしとうとう陽も落ちきると、

 「ビィィィ、ビィィィ!」

 と嗚咽して涙を流すばかりとなった。

 「ほら、飼い主さんは君に愛想をつかせたんだよ」

 「ソンナハズナイチュン!! ソンナハズナイチュン!!」

 「君が頭の悪い、我が儘の、糞鳥だから飼い主さんは君を棄てたんだよ」

 「チュンチュンハクソトリヤナイチュン!! カワイイオンナノコチュン!! ココヲアケロチュン!!」

 「だめ。君がいい子になったら飼い主さんも帰ってくるよ。でも君が悪い子の間はだめ」

 「チュンチュンハイイコチュン!!」

 それから再び、「ビィィィ!! ビィィィ!!」という嗚咽である。
 その内、戸に向かって突進するようにもなるが、ガラスにぶつかって無様な悲鳴をあげるばかりだった。蓄えられた脂肪がクッショ
ンになり、貧弱な個体といえど怪我をするようなことはない。
 突進し、ぶつかり、ビタンビタンと床に転がる度に

 「イ゙ダイ゙ヂュ゙ン゙ン゙ン」

 と叫んでいる。でっぷりとした身体が地面を這いずる様というのは、人の神経を逆撫でするものがあるが、あくまで私は躾人。虐待
を目的とするのではなく、更正をさせるためにここにいるのだからイライラは堪えるのみであった。
 夕飯時ともなると、チュン(・8・)チュンはレジ奥の私の前にまで近づき、

 「オナカスイタチュン! チーユケーキヲヨコスチュン!!」

 ふてぶてしく命令してきた。

 「チーズケーキなんかもうあげるわけないだろ。君のご飯はこれ」

 差し出したペット用の皿に盛ってあるのは、薄茶色い固形粒の、文字通りただの『エサ』である。今回は躾に並列してダイエットも行
うため、量は通常の半分ほどだった。

 「チーユケーキヲヨコスチュン!!」

 「そんなものはない。これを食べなさい」

 「チュンチュンノホシイノハチーユケーキチュン!! チーユケーキ!!」

 癇癪を起こしたチュン(・8・)チュンは皿を蹴飛ばし、辺りにはエサの粒が散乱した。具体的な躾は、今日の、いまこのタイミング
より始めてゆく。
 私の右手に握られた、銀色の銃の形をした物体は、チュン(・8・)チュン用のゴム弾を発射する躾具である。発射された弾はチュ
ン(・8・)チュンの体表面に着弾した瞬間に伸び跳ね、半径五センチの円状に広く鞭打つようにできている。身体に切り傷、裂け傷
を作らず、また内部組織にも傷は与えずに、激烈な鞭打ちの痛みだけを与えることのできる優れものだった。

 「我が儘を言う子にはお仕置きをします」

 宣言と共に、二発。チュン(・8・)チュンの身体めがけてそれを撃った。

 「ヂュン! ヂュ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ン゙!」

 チュン(・8・)チュンは何が何やら分からぬ表情にただ身体をびくつかせ、弾の当たった場所を押さえながら悶絶した。今まで暴
力の類は一切受けてこなかったのであろう。恐怖より先に疑問の表情を浮かべるチュン(・8・)チュンは、概してそういうものであっ
た。

 「そのこぼしたエサをきちんと食べなさい」

 立ち上がり、銃口を向けながら静かに命じる。ポイントは怒りを面に顕さないことであった。人間が上であり自分は下という認識を
植え込まねばならない以上、あくまで感情は押し殺す必要がある。

 「フザケンナチュン!! チュンチュンニコンナコトシテドウナユカワカッテユチュン!?」

 口答えにはすかさずにゴム弾である。パンと一発、とさかの辺りに発射すると、

 「ヂィ゙ュ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ン゙!!!」

 チュン(・8・)チュンは身体を丸め、小さな翼に何とか額を押さえて暴れた。
 長年の業務経験から、チュン(・8・)チュンの痛覚その鋭い所鈍い所の範囲も知っていた。まず一番痛いのは、尻の穴やまんチュ
ンである。ことに後者は後々ワンヤフユヤッチュン、つまり発情関連の躾を行う際に重要なことであるが、それはその時に説明をする。
 次には翼。神経が集中するらしく、また脂肪もつきにくいため痛みが増すらしい。次に顔周辺、続いて脂肪に覆われた身体の順であ
る。
 普段は脂肪のついた身体。少し痛みを強めたいときは顔を狙うのだが、今回の場合は命令に従わないだけでなく口答えをしたので、
一段階痛みを強めたのであった。

 「イ゙ダイ゙チュン……」

 「お前が散らかしたご飯をきちんと食べて、床を綺麗にしなさい」

 「……イヤチュン」

 今度は身体に三発。トリガーの引いたタイミングに合わせて、

 「ヂュ゙ン゙! ヂュ゙ン゙! ヂュ゙ン゙!!」

 とリズム良く悲鳴が聞こえた。

 「食べなさい」

 不服と恐怖の顔に、チュン(・8・)チュンはようやく身体を起こし、エサの場所に向かっていった。
 後ろについて監視をし、逃げ場を無くして食べざるを得なくさせる。チュン(・8・)チュンは時折、

 「ハノケチェン……ハノケチェン……」

 と飼い主の名前を連呼しながら、しかめ面にエサを食べる。
 こうして地面を突いている様子を眺めると、改めて奴らが知性を獲得した人類の友などではなく、賢しいだけの薄汚い鳥なのだと認識
できる。総じて、チュン(・8・)チュンの飼い主に欠けているのは、そういった気構えなのであった。
 愛らしい見た目をしている。よくしゃべる。歌う。だから騙され、ストレスを抱える羽目になるのだ。最初から皆、獣に接する気構え
に飼うならば、私のような職業も生まれなかったであろうに。

 「タベタチュン」

 そう声を掛けたチュン(・8・)チュンは、私が視線を向けた途端、目を瞑って口を大仰に開けた。

 「マズイヂュ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ン゙ チュンチュンニコンナモノタベサセユナンテ、オマエバカチュン」

 つくづく腹の立つ挑発であったが、私はあくまで冷静に、再びとさかにゴム弾を発射する。

 「ヂュ゙ン!!!」

 チュン(・8・)チュンは大きく後ろに仰け反り、そのままパタリと倒れた。今の行動に明白だが、こいつはつくづく人を下に見て
いるのである。自身が善意によって庇護されている存在とも知らず、ふてぶてしく見下してくるのであった。
 続けざまに胴体に五発、こんどは間隔を空け、五秒に一発ほどの割合にトリガーを引いた。

 「ヂュ゙ン゙!! ヤメユヂュ゙!!! イタイチュン! ビィ゙ィ゙!! ビィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!! ヂュ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ン゙!!!」

 ぐったりとしたまま翼の手先に腹を擦るチュン(・8・)チュンは、瞳から涙を滂沱とした。

 「ぐったりしてないで起きなさい。次はお前が散らかした部屋を綺麗にするんだ」

 私はチュン(・8・)チュンの手を掴み引き起こすと、そのまま乱雑にレジ奥の部屋のドアを開けた。件のチーズケーキが、床に散
乱している現場にまで連れてゆき、適当な布切れを渡してやる。

 「ここを掃除するまで今日は寝かせません」

 「ナンデチュンチュンガソウジシナキャイケナイチュン!!!」

 ゴム弾を尻肉に当ててやれば、

 「ビィ゙ィ゙!!!!」

 悲鳴を上げ無様に引っくり返り、それからおもむろに布を手に取るのだった。
 監視してみて改めて思うことには、チュン(・8・)チュンは酷く不器用である。身体が丸いため、拭き掃除するには身体の大半が
地面に着く。たちまち下腹は薄黄色く汚れてゆき、それが擦れてゆくから一向に地面も綺麗にならない。手が止まっていれば近くの床
にゴム弾を当て、二時間労働を続けてようやく、何とかチーズケーキの破片は消え去った。

 「ツ……ツカレタチュン……」

 「よし、寝ることを許可してあげましょう」

 掴み上げても、チュン(・8・)チュンはまったく暴れなかった。いや、というよりも、簡単に持ち上げられるようにこのような労働
を強いたわけなのである。
 こいつの住処は同じ部屋、一畳ほどの大きさに柵で囲った場所である。中にはワンヤフユヤッチュンに似せたボロボロの枕と、砂トイレ、それ
から新聞紙が敷き詰められてある。
 これほどの広いスペースを用意しているのも、無論目的があってのことである。主には、トイレの躾であるが、それはまたすぐの機会
に説明をする。
 適当に枕の方へチュン(・8・)チュンを放り、

 「ここがトイレです。ここ以外でしたらお仕置きですよ」

 といい終えるより先、

 「ワンヤフユヤッチュンガナイチュン!!」

 翼をばたつかせ、こいつはそう声を荒らげた。
 チュン(・8・)チュンには寝床としてある少女の使用済み下着が必要であるという通説もあるが、去勢済みの個体においては必ず
しもそうとは限らないということを私は今までの業務経験から察していた。

 「そんなものはない」

 「イヤチュン!! ハノケチェン!! ハノケチェン!! ハノケチェン!!」

 この段階においては騒がしいのも仕方ないが、ある躾の行程を行う事で、少女の衣服への執着を断ち切ることができる。今日のとこ
ろは喧しいこいつを放置して、電気を消して部屋を出る。たとえ不満はあれど、疲れている身体を引きずっては、そう何時までも声を
張ることなどできないのである。


 翌日部屋を開けると、鋭い異臭が鼻を刺した。チュン(・8・)チュンの糞はその個体の大きさから量も多く、また臭いもすさまじ
かった。こればかりは幾ら仕事を長く続けても慣れないが、諦観の心地にあれば粛々とした態度を継続できる。

 「これはお前がやったのか」

 柵の中、トイレと枕の中間には糞溜まりができている。枕元にふてくされた表情に座るチュン(・8・)チュンは、

 「オナカガヘッタチュン チーユケーキヲヨコスチュン」

 とふんぞり返っているのだった。私は昨日と同じサイズの布を渡し、

 「これを掃除するまでご飯はありません」

 「ヒドイチュン!! ナンデチュンチュンガウンチュンヲソウジスユチュン!!」

 「トイレの場所は教えました。なのにこんなところにしたんだから、きちんと掃除をしなさい」

 「イヤチュン!! ソンナハナシキイテナイチュン!!」

 ゴム弾を胴体に続けざま二発。いつもの無様な悲鳴を上げて、ようやくチュン(・8・)チュンは掃除を始めるのだった。
 チーズケーキの掃除でもそうだったが、チュン(・8・)チュンは身を屈ませると腹を擦る。即ち、下腹部はそのまま糞のこびりつ
くままとなるのであるが、女の子という自覚を持つチュン(・8・)チュンはそういった汚い状態を嫌っていた。

 「クサイヂュ゙ゥ゙ゥ゙ン゙!」

 時折呻きながら、それでもゴム弾に脅迫を続ければ仕事は継続された。自身の身体に付着した途端、糞を臭いものと認知する性質か
らも、彼奴らの驕慢が感じられる。
 作業の終わったのは一時間の後。チュン(・8・)チュンの身体は頭頂部から足先まで糞に塗れ、薄茶色に汚れきっていた。

 「さぁ、毛を綺麗にします」

 私のこの言葉を聞いたチュン(・8・)チュンは、期待に瞳を輝かせるのだった。こいつの思惟に想像されたのは温い湯に丁寧に身
体をマッサージされる、何時もの風呂なのであろうが、当然トイレの失敗を折檻している途中にあって、そのような褒美を給するわけ
にはいかなかった。
 同じ部屋の北東の隅には、チュン(・8・)チュン用の水場があった。ちょうど一般のペットトリミング施設の洗い場と同じ構造をし
ており、ステンレスの浴槽がそのままどっぷり腰辺りの高さに鎮座してある。排水口は隅にあり、中央には透明アクリルの板が二枚ず
つ四枚設置されている。これが、チュン(・8・)チュンを仕置く目的に私が作った、この施設の洗い場であった。
 まずチュン(・8・)チュンの手を広げさせ、それぞれアクリル板に挟んで固定した。まるで十字架に貼り付けられたキリストを思
わせる立ち居姿となるが、あくまで拘束を目的としているだけなので、痛みの発せられることはない。

 「ナニヲスユチュン!! ハナスチュン!!」

 身をよじることさえ叶わぬチュン(・8・)チュンは、私を睨み文句を言う程度のことしかできないのであった。私は専用の蛇口から
伸びるホースを手にとって、チュン(・8・)チュンに照準を合わせレバーを引いた。

 「チュン? ヂュブブゥババェ゙ェ゙ェ゙ゥ゙ゥ゙」

 洗浄を目的とする以上に格段に強い水の奔流が、チュン(・8・)チュンに殺到する。腹に当たればその箇所の脂肪が水圧に凹み、
顔に当たれば息を止めた。水圧に毛羽は逆立って、糞の汚れも吹き飛んでゆく。

 「ヤ゙メ゙ユ゙ヂュ゙ン゙!! ヅメ゙ダイ゙ヂュ゙ン゙!! ヂュ゙ブブバヷバム゙ブブュ゙ヂュ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙」

 無様な鳴き声を聞きつつ、およそ五分間水を当て続ける。臭いも全て拭えた頃合、チュン(・8・)チュンの毛羽は濡れそぼり、し
かし全て逆立ってもいて、なんとも形容しがたい醜さとなっていた。
 無論、この程度でトイレの失敗と折檻を結び付けられるチュン(・8・)チュンではない。奴らの知能の低さは利己主義に根ざした
ものであるから、私がチュン(・8・)チュンを苦しめたくていじめていると解釈するのが普通であった。しかし辛抱強く、トイレの
たびにこの行為を続ければ、学習ではなく教訓として理解が及ぶわけである。

 「オマエユユサナイチュン……」

 口答えを聞き流し、今度はブローである。アクリル板を寝かせ、まずチュン(・8・)チュンをうつぶせに固定する。飼い主に返還
する義務がある以上、毛並みは整えなければならないのだった。仕方なく櫛で梳いてやるわけであるが、それで心地よい思いをされて
も躾の上では困る。だから、やけどする一歩手前の温度に設定した熱風を吹き付け、櫛の安楽を相殺させる。

 「ア゙ヅイ゙ヂュ゙ゥ゙ゥ゙ン゙ン゙!!! ビィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!! ビィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙!!!!」

 これが意外と難しいのである。同じ箇所を継続して吹きつけては本当に外傷を負ってしまう。苦痛を与え、しかし怪我は負わせない
加減というのを、会得している必要があった。
 チュン(・8・)チュンの反応は何時も大仰だった。甘やかされて育ったから、痛みへの耐性がまったくない。普通の生き物ならじ
っと堪えるようなものであっても、チュン(・8・)チュンは喚き散らして暴言を吐く。

 「ブザゲン゙ナ゙ヂュ゙ン゙!!! ハノケチェンハノケチェン!!! ダユ゙ゲデェ゙ェ゙」

 ようやく乾き終わったら、住処に戻してやるのだった。
 トイレの失敗するたびすかさずこの行程を行って、その日のうちにトイレを体感的に覚えこませる。一週間のうちで一番きついのは
今日なのであるが、その理由は夜の間も起きて監視を続行し、トイレの失敗を見逃さないようにする必要があるからだった。
 チュン(・8・)チュンは鳥頭である。ここで手を抜いては、一生トイレを覚えられない。
 ゴム銃と水責めと熱風責めの組み合わせによって、一応表面的な部分の躾は大体完了する。


 三日目はワンヤフユヤッチュンの躾行程である。この頃になるとチュン(・8・)チュンは、フラストレーションの増大により、

 「ハノケチェンハノケチェンハノケチェン!!!!」

 といつでも喧しく騒ぎ立てるようになる。枕に対して尻を振るも、すぐに止めて暴れだす。柵に体当たりを繰り返しては、

 「イ゙ダイ゙ヂュ゙ン゙!!! ハノケチェンハノケチェンハノケチェン……」

 目を血走らせて身体をよじる。エサの時間さえそんな状態で、挙句ストレスによって

 「チーユケーキモヨウイデキナイナンテオマエハホントウニバカチュン」

 「シカタナクタエテヤッテユチュン スコシハカンシャスユチュン」

 とゴム弾も恐れず暴言を吐きつづけるのだった。語彙が少ないのは鳥頭ゆえ、私のような職業を続けているともうその馬鹿さに愛お
しみを覚えるくらいだった。
 この時ばかりは痛めつけず、

 「今までがんばったね。今日はプレゼントがあります」

 と優しく声をかけておく。それからエサを全て食べ終えたのを見計らい、ある少女のナプキンを巣に投げ入れる。
 チュン(・8・)チュンの行動は速く、普段の愚鈍さからは考えられないスピードにそれに跨った。チュン(・8・)チュンの研究
においては最大の謎とされる生殖行動である。
 チュン(・8・)チュンはある少女の経血を補給し、また自身の経血を擦り付けることによって卵を産むとされている。想像妊娠が
そのまま実体化している説や本当にその少女の経血にはチュン(・8・)チュンにとっての精子が含まれている説など、議論の絶えな
い習性であるが、最近は去勢されたチュン(・8・)チュンがほとんどで、たといどれだけなすり付けようと卵を産まないのが普通だっ
た。
 私は腰を振り股を擦り付けているチュン(・8・)チュンを掴み、無理やりに引き剥がした。

 「ナニスユチュン!! ジャマスユナチュン!!!」

 本気に暴れるのを押さえつけ、股を覗けば露出したまんチュンが赤黒くぬたついていた。

 「ミユナチュン!! チュンチュンハオンナノコチュゥゥン!!」

 チュン(・8・)チュンは手をばたつかせるも、非力に過ぎて数ミリ動く事さえ叶わなかった。
 現在の去勢術では、産卵を抑制できても生殖本能そのものまでは消失させることができない。自身の経血を擦り付ける事によって受
精するそのグロテスクさは、何度見ても身の毛のよだつ感がある。どの飼い主もそう思っているのではあろうが、この行動をやらせな
いことには益々凶暴化の一途を辿るばかり。コストも掛かり手間も掛かる。飼い主の大きな負担の、一役を担う習性だった。
 私は躾具を構え、ゴム弾をまんチュンめがけて発射した。

 「ヂッ゙……ヂィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ュ゙ュ゙ュ゙ュ゙ュ゙!!!!!」

 内臓器官への直接の攻撃である。今までの腹や顔めがけてのゴム弾も痛いのだから、その激烈さは察するに余りあるものだった。
 白目を剥き身体を痙攣させたチュン(・8・)チュンは、暴れる気力もそぎ落とされたか、

 「ビィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ……ビィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙」

 と涙を流して声を張り上げるだけだった。

一分もビクビクと身体を跳ねさせた後、

 「イ゙ダイ゙ヂュ゙ン゙!!! チュンチュンノマンチュンニナニスユチュン!!!」

 ようやく低いだみ声に悪態をつき始める。
 私は引き続き黙って、ゴム弾を発射した。この躾の目的は理屈を超越した所にあって、つまりこいつらのある少女への発情を、その
まま激烈な痛みの感に置換するということだった。発情する事イコールこのまんチュンへの痛みだと無意識に刷り込んでゆくのである。

 「ヂュ゙ン゙!! ヂ……」

 二発目の弾が当たった瞬間、チュン(・8・)チュンは口を半開きに気絶してしまった。無論この程度で躾を終わらせるわけにはいかな
い。気にせず更に弾を発射すれば、痛みが意識を覚醒させ、瞬間再び暴れだす。

 「チュン? ……ビ、ビィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙イ゙イ゙イ゙!!!!」

 それから気絶と覚醒を繰り返し、ひたすらにまんチュンを攻撃しぬいた。
 発情も終わり、腹の内部に収納された上でも尚、まんチュンの腫れていることは外観から確認できる有様だった。下腹部が一部分だ
け異様に膨らみ、もっこりと山を作っている。
 この段階で再びナプキンを寄こしてみると、

 「ハ……ハノケチェン、ハノケチェ……ウブェェェェ」

 身をにじり寄せるところは変わらないが、しかしまんチュンの露出は認められず、また嘔吐を催したことからも、拒否反応の植え付
けには成功したようだった。
 嘔吐感が発生すれば、もう発情それ自体が忌避されるようになって、更に後には幾ばくか性格も大人しくなるのだ。私が大学の研究
員でもあれば論文に起こし広く世間に知らせられる有益な知見なのでもあろうが、生憎学はない。仕事仲間に教えることしかできない
自身の無能に、日々口惜しさを募らせるばかりである。


 四日目以降の躾は、労働量自体は今までよりも軽くなるが、しかし重要性は寧ろ増大してゆくような、この一週間の要となる作業だ
った。
 現状のチュン(・8・)チュンは、一見してよく教育された風に振舞ってはいる。エサはこぼさない。トイレも覚え、文句を言うこ
ともない。躾銃も昨晩は一回もトリガーを引かなかったし、ワンヤフユヤッチュンの無いことへのストレスも軽減している風である。
 だが、これは私への憎悪と恐怖が、一応の体裁を整えているだけなのであって、この状態に飼い主の元に戻してしまったら、寧ろ来
店前より凶悪化する。私が他の躾業者と違うのは、また他の業者よりも成功を収めているのは、ここから先きちんと『人間様が上』で
あるということを丁寧に教え込んでゆくことだった。
 四日目の十二時、チュン(・8・)チュンを地下室に連れてゆく。表面上、利口なように演じているチュン(・8・)チュンは、も
う私に掴まれても文句も言わず、ただ黙してぎゅっと指に掴まっている。
 高い建設費をかけてわざわざ作った地下室は、むき出しのコンクリートが薄暗い明かりに照らされた、寂寞を覚えずにはいられない
部屋である。奥には柵に区切られた一畳のスペース。上の部屋の住処と違うのは、トイレも枕も一切無く、ただ平坦な地面が続いてい
るだけという点である。隅にはチュン(・8・)チュンの躓くこともないほどに目の細かい排水溝が設置されており、それ以外に目立った
特長はなかった。

 「今日からお前はここで一匹で暮らしていきなさい」

 「チュン?」

 察しの悪いチュン(・8・)チュンは、一寸思惟を廻らすこともせずに疑問の表情を向けてくる。

 「今日からは一匹で暮らしていくんだよ」

 「ワカッタチュン ナラチーユケーキヲヨコスチュン」

 「お前は私の力がないと一匹で生きていくこともできないというわけですか」

 「ソンナコトナイチュン!! チュンチュンハオマエノテナンカカリナイチュン!!」

 「ならチーズケーキもいりませんね」

 そして私は柵の中へチュン(・8・)チュンを放り入れ、黙って部屋を後にした。
 設置された複数の監視カメラの映像を、上の部屋にて確認する。あそこまで丸々太ったチュン(・8・)チュンならば、数日は飲ま
ず喰わずでも生きていけるはずだった。
 初めて経験する極限の飢えは、自分の立場を認識するのに充分な衝撃を与えてくれる。これから先の二日日間はチュン(・8・)チ
ュンへの干渉を完全に絶ち、地下室のドアさえ開けない予定であった。

 今のチュン(・8・)チュンにとっては、私との生活など不満しかない窮屈なものであるのだろうが、それは飼い主に飼われていた
頃が恵まれすぎていただけのことだった。
 この施設の暮らしさえほどこしに溢れた豊饒の生活であったのだと、身をもって認識させる。そして自身がいかに非力で無価値な存
在なのかを分からせて、この躾はようやく目的を達成するのだった。
 画面を見るにチュン(・8・)チュンは現状の危殆さを認知し始めたか、柵を叩き暴れだした様子だった。しかし、地面に固定され
た鉄柵を非力なチュン(・8・)チュンがどうにかできるはずもない。

 「ヂュ゙ベ!! ヂュ゙ブ!!」

 体当たりするたびに、肉を潰した時のような鳴き声を発していた。
 二時間も経つと、諦観の境地に内心思っていることをぶつぶつ吐露するようにもなる。

 「チュンチュンガカワイイカライジエテユチュン」

 「ドウセスグチーユケーキモッテクユチュン」

 そして糞尿を垂れ流し、ふてくされたように身を転がす。やはり根底の驕慢さに変革は起きておらず、即ち現状、まだ飼い主の元に
返せるレベルにはないということだった。


 六日目の早朝。地下室の戸を開けると、この私さえ眉を顰めてしまうような激烈な臭いが溢れ出てきた。床一面糞に塗れているのは、
一箇所に纏めてするという教えを反抗心から怠ったためであろう。たとい直接の範囲は限られているのだとしても、愚鈍なチュン(・
8・)チュンは知らずの内、糞を踏みぬいてしまうのだった。また、自称するには綺麗好きのこいつであるから、そのショックに吃驚
し暴れ、ますます床全体を汚してゆく。毛の灰色全てを茶色く上書きしたチュン(・8・)チュンは、縋る目つきによたつく足で、なん
とか柵にまで近寄ってきた。

 「……ゴ、ゴハンヤホシイチュン……チーユケーキヤナクテモイイチュン……オネガイチュン」

 どれだけ脂肪を蓄えていたのか。存外にまだ声音は元気そうであった。

 「一人で生きていけと言いました」

 「ムリチュン……オネガイチュン」

 「嫌です」

 「ソ、ソンナ……ピィィィ……ピィィィィィ!! オ゙ネ゙ガイ゙ヂュ゙ゥ゙ゥ゙ン゙」

 柵をガシガシと揺らしながら、耳障りな泣き声を発する。潤んだ瞳からはすぐに涙が零れだし、その雫の通った筋の部分だけ本来の
毛色に戻っていった。

 「私の言う事をなんでも聞くならご飯をあげます」

 「キクチュン!! オネガイチュン!!」

 上向けられたチュン(・8・)チュンの表情に、まだ媚びの色のあることを私は見逃さなかった。

 「では先に掃除をします。何をされても文句は言わない事」

 「ウ……ワカッタチュン ガマンスユチュン」

 我慢、という言葉からも、もうこのチュン(・8・)チュンにはその場を凌げればなんでもいいというような、浅い、表面的な忠誠
しかないことは明白である。仕事に不備があってはならないので、無論、この浅ましい精神も鍛え直す。
 私は部屋の隅に巻かれてある大型のホースを手に取った。まるで消防車に搭載されている物のようなそれは、そのものずばりそれを
製造している企業に私個人が注文し作らせた代物である。水圧、水量は尋常でなく、乾きこびりついた糞でさえも一瞬の内に剥離して
くれる。そしてその目的の範囲は、清掃だけには留まらなかった。

 私はまずチュン(・8・)チュンに照準を向け、予告もなくレバーを引いてやった。
 床をゴム鞠のように跳ねながら、チュン(・
8・)チュンは壁の方にまで吹っ飛んでいった。もはや声を出す余裕さえないのか、ただ黙って水圧に押され、脂肪をへこませながら
壁面に磔にされている。
 二十秒ほど経ってから一旦水を止めてやると、

 「ブベッ チュ、ブ……ナニスユチュン!! フザケンナチュン!!」

 やはり先ほどの約束は口先だけのもの。目を細めビィビィ文句を言いながら、近寄ってくるのだった。
 もう一度放水し、壁のほうにまで吹き飛ばしてやる。

 「ヂュ゙ェ゙」

 という醜悪な悲鳴の後は、もう水に紛れて聞こえなかった。

 「文句を言ったので、エサはあげません。さようなら」

 むせ返りへばっているチュン(・8・)チュンを置いて、私は再び部屋を出た。
 流石に今度の放置については日を跨ぐわけにはいかなかった。無論もう一週間のリミットが近づいているということもあるのだが、
以上に低体温になって死んでしまうことだけはなんとしても避けたいのである。チュン(・8・)チュンの羽毛は撥水性に乏しく、水に
濡れた際の体温保持機能に著しい欠陥があるのだった。故にこの折檻はせいぜい二時間ほど。しかし、飢え、汚れ、そして究極の寒さ
に苛まれたチュン(・8・)チュンは、ようやく自身の驕りを棄てる決心をするのだった。
 監視カメラに確認してみれば、チュン(・8・)チュンはしばらくの間は地団太を踏み、怒り狂った様子だったが、十分も経つと身体
をガタガタ震わし始め、一時間の後には死んだように身を丸ませた。
 時間になり、再び地下室に赴いてみると、

 「ワユカッタチュン……ゴメンナサイチュン ハンセイシタチュン」

 ずるずると湿った身体を引き摺り、そう頭を垂れるチュン(・8・)チュンの姿が視界に入った。
 私は無言のままに床への放水を開始した。無論チュン(・8・)チュンも巻き込みつつ、水圧を先ほどより幾分強めて、全体十分ほど
の行程である。その間壁に叩きつけられ、床をはね続けたチュン(・8・)チュンは、それでも「ヂュ゙エ゙ェ゙ェ゙」「ブヂュ゙ッ」と悶絶の
声を出すだけで、一切文句は口にしなかった。上に連れて行き、あの熱風ブローをしても、

 「ヂッ……ヂュン……」

 そう呻くだけ。特別不味い安物のエサを寄こしても、ただ黙って啄ばんでいた。
 私は確信した。このチュン(・8・)チュンに調教の余地はなく、そしてあの飼い主にも迷惑をかけることのない、きちんとした個
体になったのだと。本来あるべき姿、驕慢さの除かれた、鳥に相応しい振る舞いを植えつけられのだと。


 七日目、飼い主の少女の目の前にしたチュン(・8・)チュンは、

 「ハノケチェン……イママデゴメンナサイチュン コレカラハイイコニスユチュン」

 恭しく頭を下げて、そう口にするのだった。姦しい声音もなりをひそめ、落ち着いた、静謐の悔悟である。
 飼い主のはっと驚いた顔、そしてあとから滲み出てくる微笑。その表情を見たとき、私は私の職業に対して無上の充足感を覚えるの
だ。

 「なにかまたトラブルがありましたら、お気軽にいらしてください」

 店の扉を開け、軽く頭を下げる。彼女の憑き物の落ちた笑顔と、

 「ありがとうございました」

 という溌剌としたお礼の言葉こそが、お金以上の私にとっての最高の報奨なのであった。
 チュン(・8・)チュンに精神を蝕まれる人は未だ数多い。一人でも多く、そういった人たちを救うべく、私の仕事は今日も明日も続いてゆく。

<完>