ココネ なう。 - 田中先生の英文法講座(1)
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「田中先生の英文法講座(全3回)」は、
田中先生が自由掲示板にお書きになられた英文法講座です。
先生がT教室で行なっておられた講義の前身にあたります。



田中先生の英文法講座(2010.11.28)

ここではトライアルで英文法講座を始めてみようと思っています。

現在形(現在・単純形)の働き

現在・単純形は現在を語る表現ですが、その特徴は何か?
一言でいえば、動き・変化が表現されない、ということです。

Jack hates cats. (ジャックは猫がきらいだ)、
She has beautiful blue eyes. (彼女は美しい青い目をしている)や
You're my assistant. (君はぼくの助手だね)などは、
動詞の意味の性質からいっても動き・変化がありません。

ここで特に注目したいのは、動きが感じられる動詞の場合です。
ここに現在・単純形の最大の特徴がみられます。
一言でいえば、スナップショット的に状況を描写する、ということです。
つまり、静止画的な捉え方が現在・単純形の共通の特徴です。
動いているものであれば、その動きを止めるという作用があります。

以下は、朝起きてからの日常的な行為を列挙する例です。

The alarm clock rings.
 → I jump out of bed.
 → I turn on the light.
 → I go into the bathroom.
 → I wash my face.
 → I brush my teeth.
 → I put in my contact lenses.

このように、一連の動作は現在・単純形で表現されています。
日本語にすれば「ああして、こうして、そしてそうする」という感じになります。
これは動作直前の状況を表す際にも現在・単純形が使われます。 

スナップショット的ということは、新聞や雑誌に写真が載っている場合、
その説明書きにはピッタリだということです。
例えば、「ジェームス・ブラウン、世界記録を樹立」という内容だと、
James Brown sets a new world record. のように現在・単純形を使います。

また、映画のスクリプトのト書きの部分は
「ああして、こうして、そしてそうする」のように手続き的に語られることから、
やはり現在・単純形が圧倒的によくつかわれます。

以下は、日常のある場面を取り上げたドラマのスクリプトを想定した例です。

Satoru wakes up and looks at the clock.
He goes to wake up Rika and Takuya, but finds no one in their room.
He then goes into the kitchen and finds Rika and Takuya having breakfast on their own.

いかがですか、現在・単純形の特徴がわかってきたと思います。

毎日同じ動作を繰り返すと、習慣になります。
例えば、I shave every morning. などがそれです。

さらに、例えば太陽の日の出の様子を毎日観察している人にとっては、
「太陽は東に昇るもの」という一般化が行われ、
一般的真理を述べる際にも、
The sun rises in the east. のように現在・単純形が活躍します。
そういえば、学術論文などでは、一般化した語りが多いため、
自然と現在・単純形がよく使われますよ。

現在・単純形は、これまで、
分かるようでいて、なかなか分からないという表現だったのではないでしょうか。
スナップショット的な捉え方、これが現在・単純形の本質です。
これを押させておけば、英語を使う場面で、実感を伴った表現の理解ができるようになると思います。

現在進行形

動画的に今を語る語る方法を見ていきましょう。
そのために使われる英語表現は現在・進行形と呼ばれる表現です。

例えば「本日は晴天なり、本日は晴天なり、ただいまマイク試験中」という内容を英語では、
”Testing, testing, one, two, three, testing.” といいますが、
ここでの、Testing, testing. というのは I'm testing, testing. ということで、この形が現在・進行形です。

「現在・進行形」とは、現在、進行している様子を表現する形のことです。
ここで注意しなければならないのは、ここでいう「現在」とはテンスの現在であって、
時間の現在では必ずしもないということです。
そして、ここでいう「進行」がアスペクトにあたります。

形は、「BE動詞の現在形(is/am/are)+ 現在分詞(doing)」になります。
現在分詞は「…している」という状態を表しますが、
そのままではテンスがないため、それが何時のことか不明です。

そこで、BE動詞の現在形 + doing とすることで、
「…している状態に現在ある」という状況を表現することができるのです。 
テンスは現在でアスペクトは進行という「現在・進行形」ですが、
これは、典型的に表現の時点において、何かが進行中であることを表します。

  Look! Mary is running in the rain.
  (見て、メアリが雨の中を走っているよ)
  Sorry, but I'm still working. Can you call me later?
  (ごめん、まだ仕事中なの。後で電話しょうだい)

現在・進行形を用いるかどうかの基準は、
話し手にとって動き・変化が観察できるかどうかであって、その特徴には、
何か動き・変化が観察可能である、
何かが現に起こっている、
何かが連続的で未完結である、
が含まれます。

現在・進行形
何か動き・変化が観察可能である、
何かが現に起こっている、
何かが連続的で未完結である。

これは、動き・変化を観察することのできない現在・単純形と対比的です。言い換えれば、
現在・進行形で表現されていれば、どんな動詞でも、
なんらかの動きや変化を話し手が読み取っているということになります。

整理すれば、現在進行形の特徴は以下の通りです。

(1)どこかで起こっていること
 現在・進行形は、HERE and NOW(今、ここで)が基本的な文脈となりますが、
 「現に起こっていることがら」を描写するのであれば、たとえば、
 They're still fighting for religious reasons.
 (彼らはいまだに宗教的な理由で戦っている)のように表現することができます。
 あたかも実際に見ているかのような記述を現在・進行形を用いてすることが可能なのです。

(2)今、起ころうとしていること
 また、NOWの条件を満たしていない未来の事柄でも、
 今から気持ちの上である行為に向かって進行している、という心理が働けば、例えば、
 I'm leaving for New York the day after tomorrow.
 (明後日は、ニューヨークに飛び立ちます)
 のように未来時における動きを先取りした意味合いで現在・進行形を用いることができます。
 未来を向いた表現だけでなく、The bus is stopping. のように
 「バスが止まろうとしている」のような言い方もあります。

(3)一時性を表す
 現在・進行形は、「まだ続いている動き」を描写するため、
 行為は未完結の状態を表すことになります。そこで、
 Time is running out. Are you finished?
 (そろそろ時間ですよ。終わりましたか)に対して、
 No, I'm still working on the last question.
 (いえ、まだ最後の質問をやっているところです)と答えます。
 この「未完結な連続性」という特徴は、「目下のところ」とか「一時性」といった意味合いに発展します。
 そこで、例えば、
 I live in Osaka. だと「現住所は大阪です」といった感じですが、
 I'm living in Osaka. といえば、今は大阪に住んでいるが、それはずっとというわけではない、
 という意味合いが含まれます。
 My computer works perfectly. だと
 「私のコンピュータは完璧に作動します」ということですが、
 My computer is working perfectly. といえば、
 「今のところはまだ完璧に動いている」といった感じ。

(4)リアルな情景描写
 また現在・進行形は動画的に事柄を描写するため、リアルな感じが強くなります。
 情景を浮かべやすくなるということです。そうしたリアルな表現は感情の表出にも使われ、
 You're always buying her something expensive. だと
 「あなたは、いつも彼女に高価なものを買ってやっているね」のように、
 場合によっては、強い苛立ちの感情を含んだ表現にもなります。
 「本当だよ(だからちゃんと聞いてね)」は
 I tell you. というより、
 I’m telling you. のほうが、ピッタリですね。

現在完了形

「have / has +done(過去分詞)」の形の表現を「現在・完了形」といいます。

have が使われているところに注目してください。
have のコアはHAVE空間を表し、それは所有空間だったり、経験空間だったりします。
I have two cars. といえば、所有空間の HAVE に関心がありますが、
I had a good time. だと経験空間の HAVE ということになります。
現在・完了形の have は経験空間の HAVE として理解すると、その本質が見えてきます。

現在・完了形は have + done として表現されますが、
過去分詞の done だけでは意味のまとまりを示すことはできません。
そこで、[have done] をひとつの意味のまとまり(チャンク)として捉える必要があるのです。
そして、大切なことは、ここでの have の役割は、
仝什澆箸隆慙∪を示すということと
△△觜坩戮両態・結果を重視するということ
の2つがある、ということです。

現在・完了形の本質
現在との関連性
状態・結果の重視

例えば「ピカソの展示会には行きましたか」と問う場合、
Have you visited the Picasso Exhibition? と
Did you visit the Picasso Exhibition? の両方が可能です。
現在完了形を使う際には、
「現在まだ展示会が開催中である」という前提がなければなりません。
もし展示会が終了していることを知っていれば、過去形で表現する必要があります。
これが現在との関連性ということです。同様に、
I've cut a finger on the knife.
(ナイフで指を切ちゃった)といえば
「現在、指の怪我がまだ治っていない」という前提が働きます。

二番目の「状態・結果の重視」については、例えば
I have just finished reading this book. の意味を考えてみてください。
「私は、ちょうどその本を読み終えた」とすれば、
I just finished reading the book. との違いが分かりません。
むしろ「私は、ちょうどその本を読み終えたところです」のように
「〜し終えた(過去分詞)ところです(have)」という感覚が現在完了形にはあります。
過去形だと「行為の終了」を示すだけですが、
現在完了形だと「読み終えたという状態に現在ある」という意味合いになります。

「状態・結果の重視」ということとの関連で、HAVE 空間で捉えるということの結果として、
「行為の直接性が弱まる」ということにも注目しておきましょう。

例えばボクシング試合で挑戦者が強いチャンピオンをノックアウトした瞬間に叫ぶコトバは
I did it! であって、
I've done it!ではありません。
むしろ、控え室に戻って、勝利したことに実感を込めて
「本当に俺やったんだ」という場合に
I've done it! が使われる可能性があります。
相手を倒した瞬間は、直接的でインパクトの強い表現が選ばれます。
それが、過去形なわけです。
I've done it. にすると、
done it を HAVE 空間で捉え直すことになり、
どうしても「やったという事実が現在の経験として感じられている」という意味合いが強くなってしまいます。
そこで、試合を回想して
「今、本当にやったんだ」
「やってしまったんだ」という場合には、
I've done it! がピッタリくるわけです。

文脈によって意味合いが異なる
現在完了形には「完了」「経験」「継続」の用法があるということを学びます。
しかし、それぞれの意味合いは何によって決まるのでしょうか。
例えば I have talked to my boss. といえば、have [talked to my boss] ということなので、
「上司と話をし終えた状態を現在 HAVE している」ということを表します。
しかし、文脈次第で、次のような解釈が可能になるのです。

(昇進の件はどうしたのと聞かれて)「ちょうど上司と話したところです」
(ある事業を実行するにあたり)「上司とは既に話しているよ」
(上司はどういう人物かが話題になって)「上司と話したことがある」(経験的な意味合い)

通常は、just(ちょうど), already(すでに), once(かつて) などの副詞を使うことで、
意図した意味を明らかにします。
「have +過去分詞」の現在完了形に、完了や経験といった用法があるのではなく、
どの意味合いかは文脈によって決まるのだということをおさえておくことが大切です。
I have been to Okinawa three times. は
「わたしは3度沖縄に行ったことがある」という意味ですが、
生まれてから発話時まで経験の範囲を広げ、
その中で3回沖縄に行ったという事実があるというのがこの表現です。

現在完了形は、「継続」の意味合いでも使われますが、
ここでも「状態・結果の重視」ということが重要です。
例えば、「(発話時まで)雨が3日間ずっと降り続いた」という状況を考えてみましょう。これは
It has rained for three days. と表現されます。
for three days という期間を表す副詞表現があるため、継続の意味合いが出てくるのです。
考え方としては、rained for three days で「3日間にわたり雨が降った」という継続状態を表し、
そういう状態を現在との関わりで表現するために has が使われるのです。

現在完了形の応用として have been doing (現在完了進行形)がありますが、これも考え方は同じです。
以下のやりとりを見てください。
A: Look outside. It's been snowing. I didn’t know that. (外を見て。雪が降っていたんだ。知らなかったな)
B: Yes, it has just stopped snowing. (そう、ちょうど今、雪は止んだところだよ)
外を見ると、雪は降っていないが、雪が積もっている。そこで「雪が降っていたんだ」と表現するとします。
この場合、It has been snowing. と表現します。
It was snowing. だと「(ある時)雪が降り続いていた」 という意味合いになり、
「雪が降っていたんだ」という現在とのかかわりを表現することができません。
ところが It has been snowing. だと「雪が降り続けていた」という状態があり、
それを現在の視点で表現しているため、「ずっと雪が降っていたんだ」という意味合いになるのです。 

このように、現在完了形は、「現在との関連性」と「状態・結果の重視」の2つが
最大の特徴だということを覚えておいてください。
そして実際に使われた英語の中でそのことを確認してみてください。
タバコの箱に warning として
The surgeon general has determined that cigarette smoking is dangerous to your health.
のような内容が書かれています。衛生局がタバコが有害という結論に達したのは何年も前のことですが、
determined としたのでは警告の有効性が現在のものではなくなります。

冠詞

名詞にははじめから「数えられる名詞」と「数えられない名詞」があって、
その2つに分類することができるのではありません。
たとえば、piano は名詞ですが、これは数えられる名詞でしょうか。
実は、注目しなければならないのは、名詞の形、あるいは名詞形なのです。
piano と an piano は違った名詞形です。そして、
名詞形が違えば、それが指す対象も異なります。例えば、
「ピアノ科を専攻する」だと study [major in] piano となります、一方、
ピアノを買うだと buy a piano となります。また、
ピアノを弾くは、通常、play the piano で表現します。
ここでは、「名詞形」ということに注目して、
名詞形が違えばそれが指す対象も異なるということを学んでいきたいと思います。

「名詞形」って何だろう、と思われている人がいると思います。
日本語だと「学校は学校」で、学校を建てるも学校に通うも同じです。
しかし、英語では、school と a school は違った名詞形です。
どの名詞形を選ぶかで指す対象が違ってくるのです。
学校に通うだと go to school と言います。一方、
学校を建設するだと build a school とa school の形になります。
複数の学校であれば build schools となります。英語では5つの名詞形があります。
school を例にすれば、
a school, schools, school, the school, the schools の5つです。それぞれ、
a +名詞、名詞の複数形、ゼロ冠詞+名詞、the +名詞、the +名詞の複数形ということです。

通常は対象によって、名詞形を使い分けますが、
名詞によっては、ある特定の名詞形に限定されるという場合があります。
重要なものを見ておきましょう。

φ+ N の名詞形:形がなく、個体としてあるいは単位や種類として取り出すことができない場合はこの名詞形になります。
例えば、justice(正義)だとかwater(水)などはその代表例です。

N +-s の名詞形:基本的には複数の要素から成るという感覚があります。
eyes(目), pants(ズボン), glasses(めがね) のように「対」になっているものや、
French dishes(フランス料理)、cards (トランプ)のように、
複数の要素から成るという場合、あるいはそう感じられる場合には、通例、「名詞+-s」の名詞形で表現します。

the + N の名詞形:「the +名詞」が通例の表現としては、
the sun(太陽)、the sky (空)のように、皆が共有しかつ、複数個という意識が働かない場合用います。
また、the family(家族), the audience(聴衆), the class(クラス), the committee(委員会), the crowd(群衆)
など、個々の人をまとめる表現の場合にもこの名詞形が使われます。

ここでは、5つの名詞形のどれかを英語では使うということを押さえておきましょう。

どういうときに a +名詞の形を使うのでしょうか。
この問題を理解するために、a の使用原理に注目してみましょう。
a +名詞の形にはある特定の働きが備わっています。
その働きさえ理解すれば、英語の冠詞はぐっと身近なものになってきます。
a を使用する際の原理は以下の通りです。

a の使用原理
対象の「単一化(対象を取り出すこと)」が可能な場合で、
一つの対象を指すときには「a +名詞」の名詞形が、
複数の個体が想定される場合には「名詞+-s」(複数形)が使用される。
ここでは、対象を単一化(individuate)することができるということがポイントになります。
そのためには、対象が
(1)有形の(境界のある)個体であるということ、
(2)対象が複数個存在しうる
という2つの想定が条件となります。ちょうど、集合とサンプルの関係を考えてみるといいですね。
そして、複数個を取り出すと、それは名詞の複数形で表される、ということも理解できます。

単一化ができるということは、
「(複数の対象の中から)1つを個体、単位、あるいは種類などとして取り出すことができる」ということになります。
Give me an apple. と Give me apple. では、
an apple と apple の名詞形が違うように、それらが指す対象が異なります。
an apple だと個体としてのリンゴということですが、
apple だと「切り分けたリンゴ、すりつぶしたリンゴ、ジュースにしたリンゴ」などを指すことになります。
同じように、Give me a coffee, please. と言えば、a coffee は、
喫茶店なら「一杯のコーヒー(a cup of coffee)」、
コーヒー豆専門店なら「ある種類のコーヒー(a kind of coffee)」ということになるでしょう。
でも、Milk is better than coffee for your health. (健康のためにはコーヒーより牛乳がよい)という場合は、
個体・単位・種類として coffee を問題にしているのではないため coffee のままで使います。

見え方と数えやすさ / 1つの単位として意識されやすいかどうかで、単一化の働きは違ってきます。
例えば、「砂」は1粒1粒を数えることに関心が向かないことからsandと表現し、一方、
「小石」だと単体として意識しやすくなるため、a pebble (pebbles) といいます。また、
「ごはん」は rice ですが、「うどん」は一本一本を意識しやすいという理由で a noodle (noodles) と表現されがちです。
もちろん、砂の研究者であれば、1粒の砂にも関心があるため、a sand と言います。
白髪も数本までなら grey hairs と言いますが、全体が白髪であれば、grey hair になります。
羊などは離れて見ると白い塊に見えること、あるいは群れを成して動くという捉え方から、
複数いても sheep という傾向があります。これは見え方の問題です。

数えにくいものを数える手段
「一杯のコーヒー」という場合は、文脈から分かる場合には、a coffee とも言いますが、
通常は、a cup of coffee と言います。
カップはが有形で可算的であるため、a cup と表現し、a cup [two cups] of の形で「カップ一杯〔二杯〕分」
という意味合いになり、coffee などを計量可能な対象として扱うことができます。
同様のことが、
a piece of information,
a type of love,
a slice of ham,
plenty of water / full of water(shortages of water),
a piece of furniture などについてもいえます。

「a + 名詞」と「φ+名詞」を選ぶポイントは、名詞表現に注目するのではなく、意図している対象に注目することです。
固有名というのは対象が一人しかいないため、Hemingway のように大文字で表します。
ところが、「怒ったヘミングウエイ」だと an angry Hemingway となります。それは、
怒ったり、笑ったり、悲しんだり、むっつりしたりなど
いろいろなヘミングウエイの側面を想定することができるからです。
また、誰かを形容して、a Hemingway といえば、
「Hemingway のような人」あるいは「Hemingway という人」となり、
Hemingways だと「Hemingway という名前の人たち」という意味合いになります。

対象の単一化を行うには、複数の成員からなる集合を想定する必要があると説明しました。
「Hemingway のような人」の意で a Hemingway を使用した際には、
本物(米作家)の Hemingway と呼んでもよいほど本物の特徴と類似した特徴を備えた人を想定することになります。
「Hemingway という人」だとか「Hemingway という名前の人たち」だと、
複数の Hemingway が存在するという前提になり、想定する内容が異なります。
 単一化が出来ない場合には、「φ+名詞」形を使います。
「φ+名詞」形は、
a school (建物としての学校)と school (制度としての学校)、
a piano (楽器としてのピアノ)と piano(専攻としてのピアノ)のように、
抽象化の表れだということができます。
だから、抽象名詞の多くは、その名詞形で表現されるのです。

一方、単一化ができる場合は、単数なら a + 名詞ですし、複数なら名詞の複数形で表現します。
しかし、対象によっては、もともと複数の要素から成り立っていると感じられるような場合は、通常、複数形で表します。
以下がその例です。

複数名詞:leftovers(残り物), groceries(雑貨), noodles(うどん), peas(豆), valuables(貴重品),
refreshments(飲食物), woods(森), guts(内臓), bowels(腸), clothes(衣服)など

 複数名詞を使用する際のポイントは、数えようと思えば、数えられる個の集合と話し手が感じているということです。
内臓とか腸は素人には複雑な要素の集合であり、個々の要素をいちいち数えることはせず、
いろいろなものの集まりとして guts だとか bowels と表現するのです。

THE の使用原理:
ここでは、the の使い方に注目します。a は「不定冠詞」、the は「定冠詞」と呼ばれることがあります。
そして、「この場合 a をつけるのか the をつけるのかよくわからない」ということをよく耳にします。
がしかし、a の問題と the の問題は、性質が違います。
a +名詞の名詞形かφ+名詞の名詞形かの選択は、話し手がどういう対象を意図しているのかによって決まる話であり、
対象認知の問題です。
一方、the を使うかどうかは、どういう対象を指しているかが問題というよりは、むしろ、
コミュニケーションのやりとりにおいて、相手と情報を共有できるかどうかで決まります。
相手と情報の共有感覚を持つことは、コミュニケーションにおいて決定的に重要なことです。
情報の共有感覚に支えられるかたちでことばのやりとりは行われるからです。
ここでは、情報の共有のしるしである the の使用原理をみていくことにしましょう。

the は「その」という意味だと理解していると、なかなか使い切ることができません。例えば、
I was planning a trip to Takayama. But the car was out of order.
(高山への旅行を計画していたが、車が故障していた)という文で、
the car は「その車」と訳すと、日本語として少し変です。
The earth goes around the sun.(地球は太陽のまわりを回る)の
the earth とthe sun も「その地球」や「その太陽」ではおかしいですね。
また、the は「指しているものが特定できる場合に用いる」という説明がありますが、例えば、
公園で喧嘩をして、泣きながら返ってきた子どもが、母親に
The boy hit me. (あの子がぼくを叩いたんだ)
といえば、子どもの側からは、どの子か特定できるため the boy でもよさそうですが、
この場合、A boy hit me. のほうが自然です。

ここでは the を使う原理――つまり、「the + 名詞」形を使う際の考え方――を
しっかりと押さえておきたいと思います。
the を使う際の原理は、a の場合とは違います。
a の使用原理は、話し手がどういう対象を念頭に置いているのかが最も重要なポイントでした。
しかし、the は話し手と聞き手の関係で使うかどうかが決まります。
a の使用は対象をどう認知するかということでしたが、
the の場合は、認知した対象を相手と共有しているかどうかが問題となります。
一言でいえば、the は指定可能な対象であることを示します。
対話の場面では、対象を共有していることが the で表示されるわけです。
the の使用原理をまとめますと、以下のようになります。

the の使用原理
相手(聞き手・読み手)が自分で指された対象が何であるか指定できると想定する場合のみ、the を使う。

この原理は、話し手にとって対象が何であるかが分かっていても、
相手が分からなければ the を使うことはできないということが含まれています。
もうすこしで事故になる場面を目撃した人が、「あの車がその男の子をひくところだった」と報告しようとして、
いきなり The car almost hit the boy. と言ったとします。しかし、車も少年も現場にはいません。
すると、聞き手には the car, the boy といわれても、どの車か、どの少年かは分かりません。
そこで、the を使うのは自分勝手で相手にとっては不親切ということになります。

順番から言えば、例えば「リンゴ」といってもどういったリンゴを想定しているかを決め、
続いてその想定されたリンゴが相手にも共有されているかどうかを決めるということになります。
リンゴサラダの中のリンゴを想定している場合には、(some) apple であって (some) apples とは言いません。
そして相手とのやりとりにおいて、Let me put more apple in the salad. のように the を使用しない場合もあれば、
Remember the apple in the salad? It was delicious. (サラダのリンゴ覚えている?あれはうまかった)のように
the で表示する場合もあります。ここでの the apple の背後にあるのは、 an apple ではなく、apple です。

対話状況では、対象の共有感覚はきわめて重要なものです。
対象がどの対象であるかを相互に了解できるという共有感覚があれば、the を使うことができるわけですが、
どういう場合に共有感覚を持ちうるかといえば、次のように3通りの可能性が考えられます。

(1)常識的共有:一般常識の共有
The earth goes around the sun.
How can I get to the post office?
I couldn't use my car. The tires were slashed.
(2)文脈的共有:
 2-1 先行状況の共有
  (I bought a cat. )The cat always makes me comfortable.
 2-2 指定可能であることを予期
  the man I'm going to introduce to you is .....
(3)指示的共有
Look at the car across the street. It's a Mustang.

(1)の常識的共有というのは、ある集団内で常識とされていることを前提に、
相手も対象を指定可能であろうという想定を立てる場合がそれです。
How can I get to the post office? と聞く側は、
the post office と指定可能な対象として差し出すことで、
相手が「最寄りの郵便局」への行き方を教えてくれるものと想定します。
I couldn't use my car. The tires were slashed. では、
車にはタイヤがついているという常識を
相手も共有しているという前提が働いています。
もし相手が車がどういうものであるかを知らなければ、
The tire といきなりいうことはできません。
Go to the fridge and get me a beer.
(冷蔵庫に行ってビールを取ってきて)と妻が夫に言ったとします。
その家庭に3台の冷蔵庫が置いてあるとしても、
いつも使っている冷蔵庫がどれかが互いに分かっていれば、
the fridge ということが可能です。

(2)の文脈的共有というのは、既にふれた対象を取り上げる場合と、
これからその対象がどういうものかを説明するという場合の2つを指します。
The cat always makes me comfortable. では、例えば、
話し手が猫を買ったという事実が聞き手に知らされているという想定が働きます。
ところが、いきなり The man ということがあります。
この the は対象が指定可能になることを予期するはたらきをし、
例えば、The man I'm going to introduce to you is .... といえば、
「ぼくが君に紹介しようとしている男性」ということで、
後続の I'm going to introduce to you が the の使用を可能にしているのです。

(3)の指示的共有というのは、外界の何かを指差すことで、相手と対象を共有することを可能にするというものです。
Look at the car across the street. では、
聞き手はこの発話によって注意を道路の向こう側にある車に注意を向けることになりますが、
場面的に指定可能であるため、話し手は the car といっているのです。

このように the を使う際の原理は、
聞き手が対象を特定できるという想定が成り立つかどうかにかかっているということです。
聞き手が特定できる対象は共有された情報として取り扱うことが可能となるのです。

使役動詞

動詞のタイプの1つで、文法的に重要なものとして使役動詞と呼ばれる動詞があります。
日本語ではちょうど「〜させる」に当たるものです。
「太郎は花子の部屋で勉強した」と「次郎は太郎に花子の部屋で勉強させた」では事態がだいぶと異なります。
2つ目の文では、次郎が太郎が勉強するということをさせた、ということで、こうした表現を使役表現といいます。
「〜させる」に対応する英語の動詞は have, make, let があります。
また、get も「〜させる」という意味合いで使われます。
使い分けがよくわからないと感じている人が多いのではないでしょうか。

まず、get ですが、I’ll get him to do it. のように get + 人+ to do という構文を使います。
不定詞の to do を使うというところがポイントです。
to do には「行為と向き合う」といった感覚があり、「予定された行為」を表します。
get には「働きかけてある状態を得る」という意味合いがあることから、
人を動かして、何かをするようになる状況に仕向ける、そのことで何かを達成するという感じです。

get A to do と同じ構文をとる動詞で覚えておきたいものとして cause と force があります。
cause は名詞だと「原因」ということですが、動詞でも、
「何かが原因となって何かを動かして何かをするようにさせる」という意味合いです。
原因なので、主語には人というより原因となる出来事などが来ます。
また、原因なので原因を作る側の意図は関係ありません。

force も force A to do の構文になります。
人や状況がAをむりやり動かして何かをするようにさせる(つまり、強調する、強いる)という意味合いです。
They forced me to break up with her. だと「彼らはぼくを無理やり彼女と別れるようにさせた」ということです。

一方、make, have, let は共通して、動詞 + A + do の構文になり、to を使いません。
これは、Aが何かをする(つまり、A が do する)という状況を生み出すという構文です。
make は「何かに手を加えて何かを作る」という意味であることから、
使役構文の場合も、「なんとかして、ある状況を生み出す」という意味合いになります。
「なんとかして」に強制的にでもいうニュアンスを読み取ることができます。

have A do だと have が「ある状態を have する」ということから「状態の確保」が強調される表現です。
make が変化と結果の両方に関心が及ぶのに対して、have は結果のみが強調されます。
I'll have my son do the shopping. だと
[my son do the shopping] という状況をちゃんと HAVE する、
ということで、主語の権限である状況を可能にさせるという意味合いがあります。
ただし、「〜させる」だけでなく「〜してもらう」という意味合いでも使います。

let A do は「Aが何かをする」ということを阻止しない(そのままにさせる)という意味合いです。
I'll let you go. だと「あなたが行くというのを、私はそのままにさせる」ということから
「行きたいというなら行かせてやろう」ぐらいの意味になります。
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