ココネ なう。 - 感情表現と前置詞
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今日は、みなさんが疑問に思っているテーマです。
be surprised by なのか?
be surprised at なのか?
be pleased の場合の前置詞はどうか?
こういった問題です。

ある調査をしてみました。それによると
be surprised at が 386回
be surprised by が 403回
be surprised at としか日本では教わりませんが、
実際は be surprised by のほうが少し多いという結果がでています。

もちろん、どちらでもいい、という話ではありません。
at か by かでは違いがあるのです。
今日は、このあたりをしっかり理解していただけたらと思います。

be pleased の場合、都合のいいことに、
at
about
by
with
のどれも可能です。

例えば、
John was pleased at the results of his experiment.
これは実験結果がよくて喜んだということです。
Are you pleased about your job?
今度は about ですが「仕事はたのしいですか?」こんな感じですね。

次に、
Jane was pleased by his nice comment about her work.
こんどは be pleased by となっています。
ジェーンは彼女の作品についての彼のコメントに喜んだ、こんな意味合いですね。

もうひとつ、
I'm pleased with the plan of going to Paris with her.
これは彼女とパリに行く計画があり、それをうれしく思っている、こんな感じです。

このように be pleased は4つの前置詞を使うことができます。
be disappointed の場合も同じです。

では、この4つを区別する原理はなんでしょうか?
実は、すっきりとした原理があるんです。

at の場合「ところ(場所)」を表します。
だから、瞬間的な感情と結びつきやすい。
その場で〜した、そんな感じですね。
John was pleased at the results of his experiment.
これは実験の結果が出たところで喜んだということです。

一方、with は「〜とともに」ということで、
一定時間持続する感情との結びつきがポイントです。
She got angry at me.
ある場で彼女がぼくに憤慨した
She is angry with me.
これは「まだ怒っている」

つまり、with は「〜とともに」なので、持続する感情との関連があります。
I'm pleased with the plan of going to Paris with her.
この場合「彼女とパリに行く計画」があり、そのことを喜んでいるといった感じですね。

では、about は「〜の周辺、あたり」ということなので
「いろいろな要因で」といったあいまい性があります。
Are you pleased about your job?
これは、新しい仕事で、人間関係やら時間的拘束やら金銭的なことやら、
いろいろあるけど満足しているの?といった感じです。

おもしろいのは be anxious の場合は be anxious about と、about しかとりません。
anxious とは anxiety のこと。
つまり、「不安」なので不安は何であるか不確定、
ばくぜんとしているからつまり、すっきりしないから不安を感じるのです。
だから、英語でも be anxious about となります。

さて、by の場合ですが、
これは「近く、近接」ということで「寄って」から「拠って」と意味展開します。
The computer was broken by John.
この by ですが、
一方に The computer was broken(コンピュータが壊れていた)という事実があり、
その傍らにジョンがいるこのことを by John で表現します。
すると、壊れたコンピュータのそばにジョンがいれば、
ジョンがなんらかの行為の責任があるという推論が成り立ちます。

これは、Langacker *1という認知言語学の大物が 1980年の論文で指摘したことです。
彼の主張は、空間の by が行為の by と関連があるということでした。

話を戻します。
by は感情が何かによって引き起こされる場合に使います。そこで、
Jane was pleased by his nice comment about her work.
だと his nice comment が Jane が喜ぶ原因を作ったということです。

だとすると、be pleased の場合 at, about, with, by の4つが可能ですが、
どの前置詞を使うかには理由があるということです。
そして、その理由は
前置詞の本来の意味(空間的・場所的な意味)から派生しているということです。

ひとつの小説からの引用です。
これは手紙の部分ですが、次のような表現がありました。
My dearest Johnathan
I thought I had to write, although I shall be seeing you soon,
just to tell you that you really mustn't be jealous about Mike,
because honestly I never think of him at all.
こういう手紙です。
  親愛なるジョナサンへ
  すぐにあなたに会うんだけど、どうしても書いておきたいと思ったの。
  マイクのことについては嫉妬しないでほしいと。
  正直、私は、彼のことを何とも思っていないんだから。
こんな内容です。

注目点は be jealous about Mike
be jealous of が一般的です。
でもここではあえて about を使っています。
about を使うことで、
マイクのことでいろいろあれこれ考えて焼きもちをやかないで。
こんな気持ちが伝わってきます。

すると、最後に、
何かがあってその場で驚く、これは be surprised at。
何かによって驚きの感情が引き起こされる、これは be surprised by となるんです。

be angry も
be angry at
be angry with
be angry about
どれも可能です。

with は、持続的感情といいました。
それは with の本来の意味(コア)が
「〜と伴って」ということから「持続する感情」が出てくるんです。

先ほど指摘したように、
彼女が私に怒った、これは
She got angry at me.
She was angry at me.
彼女はまだ怒っている
She is angry with me.
こうなるわけです。

もちろん、言語なので 100%とはいきませんが、かなりの部分が説明できる。
つまり、ちゃんと理由がある、ということを
今日、感じていただけたられうれしいです。

今日の授業はここまでです。

《生徒 : 前置詞が楽しくなりました》
それはうれしい言葉です。
前置詞は30個ぐらいです、重要なものは。
50年たっても前置詞の数が増えることは想像できません。

《生徒 : 先生、いつか for good(永遠の)の理由をおしえてください.》
あっ、for good (永遠)またやりましょう。

30個ぐらいなので、
体系的に学んでおくと英語の表現がぐっと自分に近くなると思います。

この授業は、これからも続けていきますが、
英語のおもしろさ、英語の原理のようなものを
「なるほど」という気持ちとともに感じていただけたら最高ですね。

ココネならではの授業というのもアリだと思っています。
では、今日はありがとう。